「遅れてきた大物」グレーターロンドンの全8戦を解説ーーGⅠレースに向けて!

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1年の長期休養を挟みながら、5連勝でオープンまで駆け上がった素質馬グレーターロンドンがGⅢダービー卿CTに出走します。後方から鮮やかに追い込む勝ちっぷりから「遅れてきた大物」と評判の馬が、初めての重賞でどのようなレースを見せるのか? 今回はグレーターロンドンの全7戦を1レースごとに解説していきます!

 

グレーターロンドンの全8戦をプレイバック!

グレーターロンドンの全8戦を解説付きでプレイバック。張り切って行ってみましょう!

 

3歳新馬 東京芝1600m

馬場状態:良

出走頭数:16頭

着順:1着(1人気) 着差:0.4秒

タイム:1:37.3 上り:33.7

通過順: 5 - 4

鞍上:北村宏司

解説

2月の新馬戦でデビュー。スタートを五分に出ると、逃げ・先行馬を行かせて5番手の位置をリラックスした状態での追走。折り合いも十分で終始外目をスムーズに走り、4角手前からじわっと前を捕らえに上がります。直線の坂下で馬なりのまま先頭に立ち、残り200m辺りで北村騎手が仕掛けると後続を突き放し、最後はもったままの楽勝。

レースのペースが遅かったので、全体の時計はかかっていますが、最後の1Fはもったままで上りを33.7でまとめたのは能力のある証拠です。上りのラップは11.6 - 11.0 - 11.4と最後の1Fがほとんど失速していないラップを刻んだことからも、将来性に期待できるレースだったと言えます。

新馬戦としては余力たっぷりに勝ち上がったこと、そしてレース振りが大人びていた(気性的な難しさを見せなかった)ことは高評価。

 

山吹賞 3歳500万下 中山芝2200m

馬場状態:良

出走頭数:12頭

着順:2着(1人気) 着差:0.0秒

タイム:2:13.8 上り:34.1

通過順: 7 - 7 - 6 - 5

鞍上:北村宏司

解説

新馬戦に続いて好スタートを決めると、逃げ・先行馬を行かせて自然と下げる形に。1角を回る前に少し口を割るシーンもありましたが、折り合いを欠くというものではありませんでした。向こう正面では中団の外目をスムーズに追走。3〜4角にかけて北村騎手が促して捲り気味に外目を進出し、直線であっさりと先頭に立ち後続を突き放しますが、大外から「これぞピッチ!」という脚の回転の速さで追い込んだレッドライジェルにクビ差競り負けての2着。

グレーターロンドンは前脚の捌きがとても優雅で、フォームを見ていると地面から両脚が離れている時間が長いのですが、これはしなやかさだけではなく母ロンドンブリッジのパワーが前肢に伝わっているからだと思います。

このレースでもレースの上り3Fが11.7 - 11.5 - 11.6とほぼ失速していないので、中山の急坂も苦にせずにきっちりと駆け上がっていることがわかります。

 

3歳以上500万下 東京芝1800m

馬場状態:良

出走頭数:18頭

着順:1着(1人気) 着差:0.0秒

タイム:1:47.8 上り:33.5

通過順: 12 - 12 - 11

鞍上:横山典弘

解説

山吹賞2着から6ヶ月の休養に入り、500万下の条件戦から再出発。

スタートを五分に出ると、自然と下げる形で後方の外目を追走。折り合いがつかないというわけではなく、3〜4角にかけてペースが緩んだところで前へ前へと進出を開始し、直線では大外へ進路を取ります。

直線坂下でももったままで、「あ〜、強い馬に乗る時のいつものノリ!」と声が出そうになるほど余裕の手応えで、追い出したのは残り200m地点からでした。着差はほとんどありませんでしたが、レース上りが11.7 - 11. 2 - 11.2のラップを33.5で差し切るのですから、このクラスでは能力が違ったという内容。スローの上り勝負になったので、33秒台の上りに驚きはないものの、あの手応えでこのラップをマークしているのは末恐ろしい…

東京コースでもグレーターロンドンが地面を蹴るときの「パカッパカッ」という飛んでいるような脚捌きは見ていて気持ちがよくて、これ、パワーは相当なのではなかろうかなどと思ってしまいます。

(1年以上休養)

 

3歳以上500万下 東京芝1600m

馬場状態:稍重

出走頭数:18頭

着順:1着(1人気) 着差:0.1秒

タイム:1:34.8 上り:33.4

通過順: 15 - 11

鞍上:田辺裕信

解説

1年以上の休養明けで挑んだレース。ここから田辺騎手が主戦となります。スタートは五分に出て自然と後方へ下げる形に。逃げたナイアガラモンローの作ったペースは1000m通過が60秒フラットのスロー。4角まで馬群は詰まった状態で進み、グレーターロンドンは4角から田辺騎手が促して大外へもち出します。坂下から追い始めるとしっかりと脚を使い前との差をじりじりと詰め、坂を駆け上がってからスピードの惰性で先に抜け出したショウナンアンセムを捕らえての勝利。

スローからの斬れ味勝負で、レースラップは11.1 - 11.3 - 12.0という4角で一気にペースアップしたのがグレーターロンドンにとっては厳しい流れになったと思います。上りを33.4でまとめられたのは坂を駆け上がる時のパワーに優れているために、残り200mの平坦部分でスピードに乗り切ることができるからです。1年以上の休養明けで、グレーターロンドンがこれまでに経験したことのないキツいレースになったにも関わらず勝ち切ったのは立派の一言。

 

3歳以上1000万下 中山芝1600m

馬場状態:良

出走頭数:13頭

着順:1着(1人気) 着差:0.0秒

タイム:1:34.1 上り:33.7

通過順: 13 - 13 - 13

鞍上:田辺裕信

解説

グレーターロンドンはスタートで少し遅れて最後方からのレースになります。ハナに立ったカープストリーマーの逃げは1000m通過が58秒のミドルペース。残りの600mが12.0 - 11.8 - 12.1ですからゴールに向かって徐々に失速するレースラップになりました。グレーターロンドンは4角でも最後方で、大外へもち出します。直線で馬群を割って伸びてきたデルカイザーを大外から33.7の脚を使ってハナ差捕らえたところがゴール。デルカイザーの上りが34.9ですから、1秒以上直線だけで差を詰めたことになるわけで、ちょっとこれは「モノ」が違うという差し切り勝ちでした。

気になったのはグレーターロンドンが4コーナーで置かれ気味になったことです。これはストライドで走る馬が小回りの中山でスピードに乗せようとするとカーブを曲がる時にどうしても外へ膨れてしまうことが原因なのですが、1000万下クラスになるとコーナーを曲がるスピードも上がりますから、今後はこのコーナリングの部分が課題になります。

 

節分S 4歳以上1600万下 東京芝1600m

馬場状態:良

出走頭数:13頭

着順:1着(1人気) 着差:0.2秒

タイム:1:33.6 上り:32.3

通過順: 12 - 12

鞍上:田辺裕信

解説

少し遅れたスタートで後方からの競馬になります。逃げたメドウヒルズの1000m通過は60秒フラットでこのクラスとしてはスローペース。直線に向くまで内ラチ沿いをぴったりと距離ロスなく追走します。直線に向くと馬群が横に広がったことが功を奏して、グレーターロンドンの前はクリアに開いていました。坂下から田辺騎手が軽く促して前と差を詰め、坂を駆け上がった200m過ぎで馬群の間をキレイに割って先頭に立ちます。ストライド走法なのでスピードに乗り切ってしまってからは楽で、最後の50mは田辺騎手が馬の走るリズムに合わせた手綱の動きを見せての快勝。

上り32.3は直線の長い東京コースと言ってもなかなか出せない数字です。ピッチ走法のオートクレールが一瞬の加速で勝ちパターンにもって行ったところをアッサリの差し切りですから、東京コースのマイルで進路がクリアになっていれば重賞級の脚が使えることがこのレースではっきりしました。

 

東風S 4歳以上オープン 中山芝1600m

馬場状態:良

出走頭数:10頭

着順:1着(1人気) 着差:0.2秒

タイム:1:36.7 上り:33.3

通過順: 9 - 9 - 8

鞍上:田辺裕信

解説

スタートからいつもの通り後方へ下がります。逃げたダイワインパルスの1000m通過が63秒というオープンのマイル戦としては異例のスローペース。3〜4角にかけて早々と外目に出し、直線の入口では大外に進路を取ります。コーナーでは外に膨れて置かれ気味になりますが、これはスピードに乗せるためなので致し方なし。レース上りが11.9 - 11.1 - 11.2の流れをグレーターロンドンは33.3の鋭さで差し切ります。

レース映像を観るとわかりますが、残り250mのところで田辺騎手がギアチェンジを促してスピードに乗り始めるとパワー満点で坂を駆け上がり、トップスピードになってしまえば後は楽で余力十分の差し切り。前走の節分Sもこの東風Sもとにかくスローの斬れ味勝負になればグレーターロンドンは取りこぼしの可能性が少なくなります。

 

安田記念 GⅠ 東京芝1600m

馬場状態:良

出走頭数:18頭

着順:4着(6人気) 着差:-0.1秒

タイム:1:31.6 上り:33.9

通過順: 11 - 11

鞍上:福永祐一

解説

スタートをやや出負けし後方から。内枠の各馬が積極的に前々の位置でレースを進めたことから、グレーターロンドンはポッカリと空いたインコースへロスなく潜り込みました。前後半800mが45.5 - 46.0のミドルペースを手応え十分に追走し、外目に進路を探しながら直線へ。福永騎手は前方の進路が開くまでじっくりと構え、残り350mから仕掛けると馬群を割って鋭く伸びて4着。初めてのGⅠ出走の上、58kgの斤量を背負って1分31秒6のタイムで走破したのですから、素晴らしいの一言です。

坂を駆け上がり、ゴール前50mの伸びは1、3、5着馬に劣っており、これを順調さを欠いて前走から間隔が空いたことによる影響か、それとも長く脚を使えないのか……どちらなのかは判断が難しいですね。直線で前が詰まり他馬よりも仕掛けを待たされた分だけ鋭く伸びたとも言えるので、安田記念の4着を評価するとしても、もう1走一線級とのレースを観るまではこの馬がGⅠ級の能力をもつのかを保留しておきます。

今年の安田記念は前半800mが45.5秒と1400〜1600mベストの馬に向く流れになりました。グレーターロンドンはこの流れを楽々と追走し、直線できっちりと伸びてこれましたから、本質はマイラー。安田記念を勝ったリアルインパクトのように、1400〜1800mでの活躍が見込めます。

 

グレーターロンドン5歳牡馬

東京でも中山でも斬れ味は変わらず、ペースがスローでもミドルでもグレーターロンドン自身の上りは33秒台がデフォルトです。パワー+ストライドを伸ばす走りなので、中山や東京の坂を駆け上がる時の加速は抜群。中山だとスピードに乗せるためにコーナーでいくらか膨れてしまうところが難点ですが、田辺騎手はコースロスよりもいかにスピードを殺さずに走るかを優先している乗り方をしているので、この点は目をつむるしかありません。

スピードに乗り切ってしまった後の豪快というか優雅なフォームがこの馬の最大の特徴で、これが中山で捲らずに直線で脚を伸ばせる要因だと思います。

グレーターロンドン | 競走馬データ - netkeiba.com

 

血統

父:ディープインパクト

母:ロンドンブリッジ(母父:ドクターデヴィアス)

厩舎:大竹正博(美浦)

母ロンドンブリッジは新馬からファンタジーSまで無傷の3連勝、その後の桜花賞では2着に入線したパワータイプの快速マイラーでした。繁殖牝馬としては初年度からオークス馬ダイワエルシエーロを送り出しています。

グレーターロンドンは母系の欧州風味のパワーとスピードを譲り受け、父ディープインパクトからはしなやかなストライド走法を受け継いでいます。筋骨量もしっかりとあるため、ディープ産駒の弱点である「非力さ」がないのはこの馬の大きな長所と言えるでしょう。

母ロンドンブリッジがNorthern Dancer4×3のクロスをもち、全体的にパワーを伝える血が詰まっているので、これがグレーターロンドンの馬体を締めている要因です。この馬自身は強いクロスをもたないので、5歳となった今年もまだ成長が見込めます。

 

今後について

安田記念はミドルペースの持続戦になったため、この馬のマイラーとしての資質を示す好走となりました。グレーターロンドンが平均ペースでもキレる脚を使えることがはっきりとしたので、前走のGⅠは今後に向けて展望の拓ける1戦となりました。一瞬のピッチ加速ではなくスピードに乗り切るまで時間がかかるタイプ。スローでもキレる脚を使え、締まったペースでもストライドで伸びてこれるため、どんな流れになっても対応できるのは魅力。

初重賞制覇に向けた1戦となる毎日王冠はスローペースになりやすいため、オールカマーのように「流れが遅いのにもかかわらず馬群が縦長になる」ことがなければ、グレーターロンドンにとっては追い込みやすいレースではあると言えます。毎日王冠は今後のローテーションを決める上でも大切なレースです。

 

まとめ

グレーターロンドンのこれまでのレースを観れば、GⅠ級の能力があることは間違いのない素質馬です。4着と好走した安田記念は1分31秒台の勝ちタイム+平均ペース以上の流れになったため、グレーターロンドンがマイラーとしての資質をもち合わせていたことがわかります。

注目すべきはこの馬の距離適性。安田記念のレースからは1600〜1800mがベストと思えますが、毎日王冠の後に天皇賞・秋へ向かうのかどうか……。天皇賞・秋はジャパンカップよりも全体のペースが流れやすいため、マイラーとしての資質が問われやすいレースになることも。グレーターロンドンが毎日王冠で好走できるか、そして、天皇賞・秋へ向かうのかは今後の楽しみのひとつですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。