現2歳世代の初めての重賞となる「GⅢ函館2歳S」は7月23日(日)、函館競馬場の芝1200mで行われます。まだデビューして日が浅い2歳馬たちの争いとあって、完成度(早熟性)と豊なスピード能力を問われるのがこのレースの特徴です。
今年初めての2歳重賞ウィナーに輝くのはどの馬なのでしょうか?
ロードカナロア産駒が絶好調
今年の日本ダービーがレイデオロの優勝で幕を閉じると、JRAでは次の世代の2歳戦がスタート。
今年、初年度産駒をターフに送る新種牡馬のなかでも期待に違わない活躍を見せているのが、香港スプリント連覇を含む国内外のGⅠを6勝したロードカナロア。
7月16日(日)終了時点で産駒の全成績が(4 - 1 - 3 - 8)、ステルヴィオ、スズカマンサク、トロワゼトワルの3頭が新馬勝ちを上げる好スタートを切っています。
スズカマンサクが函館2歳Sに出走
函館芝1200mの新馬戦でデビュー勝ちを上げたスズカマンサクは、ロードカナロア産駒として初めての重賞出走となります。
その新馬戦は大外枠から好スタートを切っての押し切り勝ち。412kgと小柄な牝馬ながら直線に入って岩田騎手が促すとパワーのあるフォームで後ろをアッサリと突き放す好内容。父からスピードとパワーを受け継いだスズカマンサクは馬体に緩さもなく、新馬戦としては完成度の高い走りを観せました。
スズカマンサクは父ロードカナロアへ初めての重賞をプレゼントすることができるのでしょうか?
スズカマンサク 2歳牝馬
父:ロードカナロア
母:スズカローズマリー(母父:アフリート)
厩舎:橋田満(栗東)
新馬戦を勝ち上がった3頭のロードカナロア産駒のなかで、もっともパワー体質なのがスズカマンサクです。ポンと好スタートを切って行き脚がついたのも、馬体に緩さがないからだと考えられます。ロードカナロアはその父キングカメハメハからはパワーを、Storm Cat産駒の母レディブラッサムからはしなやかさを受け継いでいて、スズカマンサクのパワーはキングカメハメハに由来するものでしょう。
血統
母スズカローズマリーはGⅠ高松宮記念を勝ったスズカフェニックス(父:サンデーサイレンス)の半妹。母系に名種牡馬Sadler's Wellsの全弟フェアリーキングが入ることから、スズカローズマリーはこれまでKingmamboの血をもつ種牡馬が配合されることが多く、キングカメハメハ直仔のロードカナロアを付けたのも、この流れに沿ったものでしょう(ちなみに、スズカマンサクの妹にあたる現1歳はキングカメハメハ直仔のルーラーシップが配されています)。
スズカローズマリーの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com
Kingmamboは母父Nureyevから名牝Specialの血を引き、スズカローズマリーの母系に入るフェアリーキングの母Fairy BridgeもSpecialの仔どもですから、これをクロスすることでNureyevとフェアリーキングのパワーを発現させることができます。
スズカマンサクの馬体や走りからはSpecialのクロスによるヨーロッパ風味のパワーが現れていることがわかるのです。
スズカマンサクの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com
新馬戦の内容
好スタートからハナに立ち危なげなく逃げ切った新馬戦の勝ちタイムは1分10秒9(良馬場)。前日に行われた2歳未勝利戦(函館芝1200m)の勝ちタイムが1分9秒4ですから、スズカマンサクのレースは時計としては平凡なものと言えます。その新馬戦のレースラップは前後半600mが35.8 - 35.1の後傾ラップ。
▼7月2日(日)函館5R 2歳新馬戦 芝1200m
12.6 - 11.5 - 11.7 - 12.0 - 11.4 - 11.7 = 70.9
スタートして2F目が遅く、3〜4コーナーでも「青色」でマーキングしたようにたっぷりと息の入る流れでした。このコーナーで前へ押し上げて来れる馬がいなかったため、逃げたスズカマンサクとしてはとても楽なペースにもち込めたことは確かです。ゴールまでの2Fが11.4 - 11.7とそれほどペースを落とすことなくゴールまで走り切れているのは全体のペースが遅かったからだと言えます。
レース映像を観るとわかりますが、スズカマンサクは直線入口で岩田騎手に追い出されるとしなやかに身体が沈み込むフォームではなく、前脚をフワッと前へ伸ばしてかき込むパワー走法。残り150mあたりからはピッチの回転が上がらないままだったため、ゴールまでワンペースに走り切ったという内容でした。
函館2歳Sに向けて
パワーの勝った走法から、新馬戦よりもコーナーでの加速力は上げられるはずで、3〜4コーナーでの時計はもう少し詰められます。時計面で言えばスタートしてから2F目のダッシュが遅いため、ここをどれだけ短縮できるかが鍵になります。
追い出されてしなやかにグイグイと伸びるタイプのロードカナロア産駒ではなく、いかにもNureyevとFairy Bridgeらしいパワーかき込み走法なので、馬場が渋って時計がかかると浮上の余地もありそうです。
また、母父アフリートということから馬群に揉まれると走る気を失くす恐れがあるため、できれば外枠からスムーズに先行するか、内枠の場合はスタートを決めてハナを切る必要があります。
鞍上は前走の岩田騎手から香港で活躍するK・ティータン騎手に乗り替わる予定。香港の活躍馬はデインヒルに代表されるDanzigの血を引く馬が多く、ティータン騎手にとってもNureyevとFairy Bridgeのパワーで走るスズカマンサクは乗りやすいのでは……と思います。
ロードカナロア産駒は2つのタイプに分けられる
ここまで新馬戦を勝ち上がった3頭のロードカナロア産駒は、大きく2つのタイプに分けることができます。
▼しなやかさをもったタイプ
ロードカナロア産駒の初勝利を上げたステルヴィオ(牡馬木村哲也厩舎)やトロワゼトワル(牝馬安田隆行厩舎)は、直線の長い東京や中京のマイル戦をしなやかなストライドで駆け抜けたように、ロードカナロアの母レディブラッサムの柔らかさが現れたタイプ。
ロードカナロア産駒としては小回り・内回りよりも直線の長い東京や中京、そして外回りコースに適性があると言えます。
ステルヴィオ | 競走馬データ - netkeiba.com
トロワゼトワル | 競走馬データ - netkeiba.com
▼パワーの勝ったタイプ
スズカマンサクはSpecialとMr. Prospectorのクロスががっちりと入ったため、パワーの勝ったピッチ走法。
もう少し馬体が成長し、前躯に筋肉がつききったらパワー・スプリンターになるのではないかなというタイプです。
しなやかさもパワーも伝えるのは種牡馬として優秀な証
種付けする牝馬によってさまざまなタイプの産駒を出すというのは、ロードカナロアの種牡馬としての優秀さを示すものです。
'17年の2歳馬として登録されているのが180頭と同じ新種牡馬のオルフェーヴルよりも多いのは、サンデーサイレンスを血統表にもたないのに加えて、父が名血・名種牡馬、母レディブラッサムも名血・名繁殖牝馬という配合も大きいと言えます。
パワー・タイプのスズカマンサクの活躍に期待
ステルヴィオやトロワゼトワルといったしなやかタイプに較べて、パワータイプのスズカマンサクはロードカナロア産駒としての評価はそこまで高いものではありません。母スズカローズマリーのパワーで前へ前へと突進していくスズカマンサクが函館2歳Sでどのような走りを見せるのかには注目が集まります。
ロードカナロア産駒としての初重賞制覇がなるのか、今から日曜日のレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。