函館開幕週を飾る重賞「GⅢ函館スプリントS」は3歳牝馬のジューヌエコールが50kgの軽量を活かし、鮮やかな差し切り勝ちを上げました。勝ち時計の1分6秒8はコースレコード。2番手からレースを進めた1番人気のセイウンコウセイは直線で伸びを欠き4着と敗れる波乱の決着に。
函館芝はレコードの叩き売り!
土曜日の函館10R「駒ヶ岳特別(芝2600m)」を皮切りに、土日の全24R中レコード決着が5回を数えるなど、今年の函館芝は「レコードの叩き売りか!」と突っ込みたくなってしまうほどの高速馬場。
昨年の函館スプリントSも1分7秒8のレコードが出る速い馬場だったのですから、そこからさらに芝が硬くなっているのは驚きです。
函館と札幌競馬場はケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラス、トールフェスクの3種混合の洋芝を使用し、他の競馬場に較べて時計がかかりやすいと言われています。これまではクッションが効いて柔らかい芝を求めて、北海道に遠征してくる馬もいました。ただ、これだけ時計が速くなるとパワー型の洋芝巧者の優位性が薄らいでしまうでしょう……。
レース回顧
1分6秒8のレコード決着になった函館スプリントS、まずはレース展開から振り返ってみましょう。
レース展開
好スタートのシュウジが内の馬を制してじわっとハナに立ちます。セイウンコウセイはいくらか促して外目2番手の位置に付け、隊列はすぐに決まりました。
武豊騎手はシュウジの気分を損ねないように無理に抑えることはせず、前半の3Fが32.2の猛烈なペースを刻みます。前後半のラップパランスが32.2 - 34.6と2.4秒差のハイペース。高速馬場だったとは言え、これは先行馬には厳しい流れでした。
勝ったジューヌエコールは先行勢を見る形で中団のインのポジションに付け、4角手前から外へ進路を取ると直線は馬場の真ん中よりも内目を鮮やかに伸びて快勝。後半3Fが11.0 - 11.4 - 12.2とゴールに向けて減速するラップで、大きくバテることなく我慢が効くタイプに向いたレースに。
ハイペースの2番手を追走して直線先頭に立ったセイウンコウセイにとってはかなり厳しい流れになりました。1400mベストのしなやかなスプリンターがこのペースを追走して4着に粘ったのは立派の一言です。
2着キングハート、3着エポワスとジューヌエコールの後ろから捲り差しのレースをした馬が好走し、これだけペースが速くなると後方からの追い込みでは届かないレースでした。
1着:ジューヌエコール 3歳牝馬
デイリー杯2歳S(GⅡ京都芝1600m)以来の重賞制覇となった3歳牝馬のジューヌエコール。直線の長い京都の外回りでも好走をしている馬ですが、本質的には小回り・内回りコースをピッチで捲るのが合っています。
斤量50kgの恩恵とコース・距離への適性があったとは言え、GⅠ馬セイウンコウセイをちぎり捨てて古馬混合重賞を制覇するのは並みの馬にはできない芸当で、スプリンターとしてのポテンシャルの高さには目を見張ります。
母ルミナスポイントは現役時代にダート短距離で活躍した馬で、その仔どもにも自身のスピードとパワーを伝えます。ジューヌエコールは今後馬体に筋肉がつききれば1200mがベストの馬へと完成するのでしょう。
サマースプリントシリーズに向けて
桜花賞から十分な間隔を取って臨んだ函館スプリントSを快勝し、サマースプリントシリーズのチャンピオンも狙えるジューヌエコール。
コース・馬場への適性、輸送などを考えると次走は札幌競馬場で行われるキーンランドCが有力。ここで好走することができれば、シリーズチャンピオンも現実味を帯びてきますね。
2着:キングハート 4歳牡馬
ジューヌエコールには突き放されてしまったものの、ハイペースの流れに対応しての重賞2着はこの馬の今期の充実ぶりを物語っています。
スタートを五分に出て、騎手が促しながら中団で流れに乗り、道中は勝ち馬のジューヌエコール直後の位置取り。4角手前から勝ち馬の動きに合わせるように仕掛けて捲り始め、直線もしっかりと伸びて2着を確保しました。
前2走は京都と中山の1200mをともに1分7秒台で走っていることからも高速馬場への適性がある馬で、ハイペースでもしっかりと伸びてきたのは全体的な地力がアップしているからでしょう。勝ち馬とは0.4秒差ですから、斤量差を考えれば上々の内容です。
父も母も平坦巧者の配合から函館でパフォーマンスを上げたのは納得。4角手前からの捲りの加速力ではジューヌエコールには劣りましたが、あのスピードを見せられるのであれば小回りコースの多い夏シーズンは今後も注目の1頭。
3着:エポワス 9歳騸馬
スタートを五分に出て、道中はキングハートと同じ位置取り。4角手前から仕掛けたものの、コーナーでは1、2着馬に若干置かれ気味になり、直線で盛り返しての3着。
1分7秒台の高速決着に対応したのは素晴らしく、9歳にして大きな衰えを感じさせないレース内容でした。パワーの勝ったスプリンターで、今日はゴールに向かって減速する消耗戦だったことがこの馬の適性に合っていたのでしょう。
身体がほぐれる暖かい時期に好走する馬で、函館→札幌と続く北海道シリーズでは目が離せない存在です。これまで重賞では昨年の函館スプリントS5着が最高着順でしたから、9歳にしてこの好走は立派の一言。
4着:セイウンコウセイ 4歳牡馬
GⅠ馬らしく、シュウジを追いかけて直線で一旦は先頭に立つ走りを見せました。このハイペースの中、先行勢で大きく崩れなかったのはこの馬だけで、力があるところを十分に示した1戦。
GⅠ高松宮記念での勝利を見ても重馬場巧者なのは確かですが、高速馬場が不得手ということはありません。むしろ、しなやかな体質の1400mがベストのスプリンターなので、ハイペースの追走に脚を使ってしまった分の負けだと思います。
GⅠスプリンターズSに向けての1戦だったということもあり、体の造りも余裕残しの部分もあったはずですから、次走での巻き返しに期待したいですね。
ただ、今後も1200m戦で前傾ラップになった場合は今回のように崩れる場面もあるはずで、スピードとパワーでゴリ押しするスプリンターではないことがはっきりとしました。
6着:エイシンブルズアイ 6歳牡馬
◎に期待した馬でしたが、スタートで後手を踏み後方からの競馬。吉田隼人騎手が出ムチを盛んに入れていたので、行き脚も一息でした。
スタートをまともに出てスムーズな立ち回りができたとしても、ジュールエコールに迫れたかどうかは「?」が付く内容。ただ、道中の走りを見てもまだ衰えはなく、重賞レースでもスムーズな走りができるのなら好走するチャンスは十分にあります。
函館スプリントSは高速馬場でのレースに?ーーセイウンコウセイの馬場適性とレース予想 - ずんどば競馬
シュウジについて
好スタートから逃げの手に出たシュウジは武豊騎手でもそのスピードを制御できずに10着と敗退しました。
前半3F32.2はいかに高速馬場とは言っても明らかなハイペース。しかしながら、騎手が押して押してスピードを上げたわけではなく、気持ち良さそうに走って楽々とマークするのですから、もっているエンジンの高性能ぶりを改めて感じさせるレースになりました。
シュウジはもう「バリバリのスプリンター」で、力まずに息を入れる走りができればいつでも好走できるのですが、そのスピードをコントロールするのが本当に難しい……。そう考えると、昨年のキーンランドCでシュウジを気持ちよく逃がせて2着と好走させたJ・モレイラ騎手の技術は素晴らしいのだなと、改めて痛感しますね。
これだけスピードが有り余っているのですから、次走はアイビスサマーダッシュでの走りを見てみたいもの。とりあえず、どこかで復調へのキッカケを掴みたいですね。
J・モレイラが日本にやって来る!ーー安田記念 - ずんどば競馬
まとめ
開幕週の函館競馬は芝コースはレコードが叩き売りされるほどの高速馬場でした。
函館競馬場の1200m戦で1分6秒台の決着になるとは……とにかく驚きの馬場状態でのレースとなり、今後も洋芝実績はそれほど考えなくてもOKな競馬が続くかもしれませんね。来週以降も、時計の出方には要注目です。
以上、お読みいただきありがとうございました。