阪神JF(2017年)はオルフェーヴル産駒のラッキーライラックがGⅠ初制覇!ーー回顧

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2歳女王の座を目指して18頭が争った「阪神JF(GⅠ・阪神芝1600m)」は、2人気のラッキーライラック(松永幹夫厩舎)が石橋脩騎手のアクションに応え、1着でゴール板を駆け抜けました。勝ちタイムは1分34秒3(良)。

同馬はこれで無傷の3連勝。昨年このレースを制したソウルスターリングのように、来春の牝馬クラシックを引っ張る存在となるのかに注目です。

2着には直線で一旦先頭に立った3人気のリリーノーブル、3着に中団から脚を伸ばした4人気のマウレアが入線し、2勝馬がワンツースリーの上位を独占しました。

 

種牡馬オルフェーヴルは初年度産駒からGⅠ制覇

新種牡馬オルフェーヴルは初年度産駒から、ラッキーライラックとロックディスタウン(札幌2歳S)の重賞勝ち馬を出し、生産者の期待に違わぬ活躍を見せています。

2017年12月10日(日)終了時点で、新馬・未勝利戦を勝ち上がったの産駒は7頭と少ないものの、GⅠを制覇する「大物」を初年度から出したことは、今後に向けて順調なスタートを切ったと言えるでしょう。

オルフェーヴル産駒の特徴については以下の記事で詳しく解説しているので、よければご覧下さい。

 

ラッキーライラック 2歳牝馬

父:オルフェーヴル

母:ライラックスアンドレース(母父:Flower Alley)

厩舎:松永幹夫(栗東)

生産:ノーザンファーム

3代母ステラマドリッドからは、今年のNHKマイルCを制したアエロリットが出るなど、現在もその活力を子々孫々に伝えています。母ライラックスアンドレースは代々、Alyder→Seattle Slew→Flower Alleyと北米の血統が重ねられており、スピードとパワーと前向きな前進気勢はここによるものでしょう。

母父Flower Alleyは日本のGⅠを制したトーセンラー=スピルバーグ(父ディープインパクト)の半兄で、名牝プリンセスオリビアから産まれた良血馬。この名牝はNorthern Dancer4×3、Goofed4×4の濃密なクロスをもち、これがオルフェーヴルのもつノーザンテースト4×3のクロスを上手く刺激していると言えます。

ラッキーライラックの母系はFlower Alley←プリンセスオリビアだけがNorthern Dancerを引くため、その他はしなやかなスピードと豊かなパワーで固められているため、オルフェーヴル産駒としては奥行きのある配合です。

 

阪神JFのレース内容

スタートを5分に出ると内枠の先行馬と外から前へと押し上げたロックディスタウンを先に行かせて、中団のポジションで折り合いに専念します。

リリーノーブルを前に置く形で直線に向き、馬場の真ん中から伸びての完勝。追い出しのタイミングがドンピシャリだった2着馬を問題なく交わしたことからも、このメンバーだと総合力で上回っていたと言えるでしょう。

前半3F35.3とやや速かったにもかかわらず、前後半800mのバランスは47.7 - 46.6と1.1秒の後傾ラップ。3コーナー過ぎで息の入る流れになったことで、4コーナーから追い出された上位3頭はゴールまでしっかりと脚を使えました。

 

今後に向けて

スタート、道中の折り合い、仕掛けられてからの反応が高いレベルにあるラッキーライラックは、来春のクラシック候補と呼べる1頭。仕掛けられてからのフットワークは重厚かつ柔らかみも感じさせるもの。

桜花賞→オークスと3歳春の牝馬クラシックは直線の長いコースが続くので、適性として大きな不安はありません。オルフェーヴル産駒としては完成度が高く、今後は成長力が鍵となります。

 

2着リリーノーブルと3着マウレアについて

リリーノーブルは仕掛けのタイミングもドンピシャリでしたし、この馬の能力を出し切る川田騎手の好騎乗。この馬は父ルーラーシップの重厚なストライドで走る中距離馬というよりも、マイラー寄りのスピードタイプ。

現時点ではラッキーライラックに完敗したものの、成長力はある馬ですから桜花賞とNHKマイルCが楽しみな1頭です。

3着のマウレアは道中で騎手が促しながらの追走だったように、全姉の桜花賞馬アユサンよりも距離適性が長めなのでしょう。今走は後傾ラップになったために追走で脚を削がれることなく差してこれましたが、マイルでペースが速くなるようだと不安が残ります。

しなやかなストライドで走るので、直線の長いコースがベスト。桜花賞よりもオークス向きの馬ですから、3歳春を無事に過ごして欲しい1頭。

 

ロックディスタウンは9着

ラッキーライラックと同じオルフェーヴル産駒のロックディスタウンは9着と敗退しました。大外枠から前目のポジションを取りに上がって行ったときにリラックスして走れなかったこと、レース前からテンションが高かったことなど敗戦の原因として上げられます。

ここまでは前半3F35秒台のペースを経験したことがなかったため、最後まで脚を残せませんでした。姉のキャットコインは無傷の3連勝で臨んだ桜花賞で大敗してからスランプに陥ってしまったこともあり、ここからの立て直しが今後の大きな課題です。

 

マドモアゼル10着、モルトアレグロ5着

1〜4人気に推されたロックディスタウン、ラッキーライラック、リリーノーブル、マウレアの4頭のどれかが1着になる可能性の高いレースだったため、2、3着に人気薄が紛れる展開を期待しましたが、マドモアゼルもモルトアレグロも好走することはできませんでした。

10着のマドモアゼルは好位をスムーズに追走したものの、1400mベストのスピードタイプが好走するような平均〜前傾ラップにならなかったため、スピードを活かしきれずに敗退……。

5着のモルトアレグロはいかにも1400mベストの馬らしく、直線で一瞬反応したもののそこからビュンと伸びることはなく……。来年のNHKマイルCに期待します。

 

まとめ

昨年のソウルスターリングの勝ちタイム1分34秒0は前傾ラップによるものでしたが、今年は前半800mを47.7で通過しながら1分34秒3の決着となったように、今開催の阪神の芝はかなり速い時計が出るコンディション。そのため、ラッキーライラックがクラシック級の馬になるのかは時計面だけでは計れません。

ただ、現時点での総合力が高い馬なのは間違いなく、このまま順調に来年の春を迎えて欲しい1頭です。今後の走りに注目しましょう。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。