12月9日(日)、2歳女王の座を目指して18頭が出走した「阪神JF(GⅠ・阪神芝1600m)」は、1人気のダノンファンタジー(中内田充正厩舎)がC・デムーロ騎手のアクションに応え、1着でゴール板を駆け抜けました。勝ちタイムは1分34秒1(良)。
同馬はこれで未勝利戦から3連勝を飾りました。ディープインパクト産駒とあって、来春のクラシックを引っ張る存在になれるのかに注目です。この馬のGⅠ勝利によって、来週の朝日杯FSに出走するグランアレグリアの評価はさらに高まりました。
ノーザンファーム生産馬の上位独占
今年の阪神JFは1〜3着をノーザンファーム生産馬が占めました。さらに4着と5着も社台ファームの生産馬ですから、戦前に揶揄された「社台系ファーム生産馬の運動会」が現実に……。
予想記事でも述べたように、ノーザンファーム生産馬が上位を占めると、どうしてもオッズが厳しく(低配当)なります。そのため、これらの馬の上げ下げを検討する(限られたリソースを割く)ことは非効率的です。
阪神JFは非社台系ファーム生産馬に期待して高配当を狙うか、素直に上位人気の社台系ファーム生産馬の馬連BOXを買うか、今後もその2択となるのでしょう。
1着:ダノンファンタジー
ディープインパクト産駒らしく、しなやかなストライドで走るのが最大の長所です。この馬自身はLyphard4×5、Sir Gaylord6×6・7のクロスをもち、母系にしなやかなスピードを伝える血(Caro、Habitatなど)を多く引くので、これが柔らかいフットワークの源でしょう。
2着クロノジェネシスとの追い比べにおいて最後まで寄せ付けなかったのも、この馬が長い直線に向いたしなやかなストライドをもつからです。このバキューンと弾ける脚は来春の桜花賞が楽しみとなりましたね。
クラシック級なのか?
阪神JFでマークした1分34秒1の勝ちタイムは過去と較べてもなかなかのものです。前後半800mは47.0 - 47.1と平均だったことから、シェーングランツのようなピュアなマイラーでなくても対応できるペースでした。
上り3Fが11.0 - 11.8 - 12.0とゴールに向かって減速しており、これはトップスピードを長く持続できるストライド走法に有利なラップです。しなやかストライドのダノンファンタジーにとってプラスな流れになったと言えるでしょう。
そう考えると、ダノンファンタジーが小回り向き(器用さに秀でた)のクロノジェネシスに詰め寄られたのはやや不満。もちろん、ゴール前で並ばせなかったことは評価できるものの、クラシック級のインパクトのあるレースとは……。今後の成長に期待したい1頭ですね。
2着:クロノジェネシス
クロノジェネシスはTwitterでつぶやいていた通り、「ノーザンファームが北村友騎手にGⅠを!」と願った素質馬です。
阪神JFに出走するクロノジェネシスは昨年のラッキーライラックと似たパターン。
— 白三点 (@hakusanten) 2018年12月3日
ノーザンファームが関西で目をかけている若手は北村友一騎手。おそらく、石橋脩騎手と同じく、近々GⅠを取るのでしょう。そして、それを可能にしそうなのがクロノジェネシス。
後方からバキューンと脚を使える馬に有利なレース展開になったことから、スタートの後手はそれほど大きなロスとはなりませんでした。この馬は半姉ノームコアと同じく俊敏な脚さばきが最大の長所とあって、直線の長いコースならスローがベターでしょう。
今走のようなゴールに向かって減速するラップは不得手な馬で、2着となったのは競争能力の高さを示すものです。クラシック路線を考えると、桜花賞よりも秋華賞に向くタイプだと考えています。
厩舎力をどれだけアップさせられるか
クラシック路線を歩む上で、クロノジェネシスにとってネックとなるのは「厩舎力」です。管理する斉藤崇史厩舎は開業3年目。この馬がクラシックを走る上で、経験の浅い厩舎がどれだけ地力をアップできるのか……そこが最大のキーポイントです。
ノーザンファームのバックアップがあったとしても、今年の菊花賞を1人気に推されながらも4着となったブラストワンピースのように、厩舎力の差でGⅠを勝てないことも……。
シェーングランツは4着
ソウルスターリングの半妹シェーングランツは4着と好走しました。まだ馬体の緩さが残り、まだまだ未完成の部分が多い素質馬。長手の馬体はあきらかな中距離馬ですから、前半800mが47.0となったのはこの馬にとってプラスだったと言えます。
アルテミスSと同じく、阪神JFにおいても素質だけで4着に入線しており、今後に向けて楽しみの広がる内容だったと言えます。今回のメンバーのなかではもっともオークスに向くタイプだけに、来春以降の走りが楽しみな1頭です。
ただ、アルテミスSから武豊騎手が乗っていることを考えると、現時点ではグランアレグリアよりも厩舎の期待は低く(✳︎)、今後どれほど成長するのかが鍵となるでしょう。
✳︎C・ルメール騎手は同じく藤沢和雄厩舎のグランアレグリアの主戦
阪神JFのポイント
今年のレースを踏まえると、阪神JFのポイントは以下の点です。
・社台系ファーム生産馬が上位人気になっているのか
阪神JFはもともと高配当の望めないレース。今年のようにノーザンファームと社台ファーム生産馬が上位人気を占めると、より低配当になる確率は高まります。出走馬の過半数を社台系ファーム生産馬が占める年は、上位人気に従うのが無難でしょう。
高配当は非社台ファーム生産馬から
ただし、高配当が出るときは非社台ファーム生産馬が2着に入るときなので、穴党としてはそれをじっくりと待つしかありません。もともと荒れることの少ないレースだと腹をくくって、来年も懲りずに非社台系ファーム生産馬を狙います。
まとめ
今年の阪神JFはダノンファンタジーが勝ったことで、朝日杯FSに出走するグランアレグリアの評価をより高める結果となりました。この路線のヒロインはどの馬なのか、朝日杯FSが気になりますね。
以上、お読みいただきありがとうございました。