6月開催の阪神競馬場は初日から芝のレースで速い時計が出るなど、馬場が高速化しています。梅雨の時期にあたるこの開催は雨の影響を受けることが多く、芝が傷み路盤が緩むにつれてインコース有利から外差し馬場へと変化するのがデフォルトです。最終週には春のグランプリGⅠ宝塚記念が組まれている今開催の阪神競馬場。この高速馬場はどこまで続くのでしょうか?
また、この馬場は今週末に組まれている牝馬限定のGⅢマーメイドSにどのような影響を与えるのでしょうか?
今回の記事では、速い時計の出る現状と今週末に行われるマーメイドSへの影響を考察します。
阪神競馬場はエアレーションの実施なし
阪神は中山、東京、京都に比べると1年を通して「時計のかかる馬場」になる競馬場です。
中山や東京、京都競馬場は開催前にエアレーション作業(路盤に空気を入れて柔らかくする)をすることで、クッションの効いた開幕週の芝はそこまで速い時計が出ることはありません。それに対して、阪神競馬場はもともと時計のかかる馬場のためエアレーション作業が実施されることはなく、開催が進むにつれてより時計のかかる馬場へと変化します。
エアレーション作業と馬場
エアレーション作業を実施しているかどうかによって、馬場の変化は大きく異なります。その違いについて見てみましょう。
エアレーション作業を実施
開催前に実施されたエアレーション作業によって、路盤が柔らかくなった芝はクッションが効き、時計のややかかるコンディションになります。この路盤の状態は馬に踏み固められると硬度が増すため、開催が進むにつれて速い時計の出る馬場へと変化するのです。
エアレーション作業が実施された春の東京開催は、7週目を迎えた安田記念でも1分31秒5と速い時計の決着になり、馬場が高速化しています。つまり、雨の影響を受けて馬場が悪くならない限りは開催が進むにつれて高速化していくのが大きな特徴です。
エアレーション作業を実施していない
阪神競馬場のようにエアレーション作業を実施ていない場合、開幕週の馬場は路盤が柔らかくないため速い時計の出やすいコンディションでレースが行われます。
開催が進むと内の芝が傷み、インコース+逃げ・先行有利の馬場から時計のかかる+外差し馬場へと変化するのです。
エアレーション作業はJRAのHPに記載
馬場がこれだけ変わるのですから、馬券を検討する上でも開催前にエアレーション作業の有無をチェックしておきましょう。
JRAのHPにある「馬場情報」の中にエアレーション作業が行われたどうか、開催前には記載されています。
阪神競馬場は高速馬場?
6月3日(土)、4日(日)の阪神競馬場は芝コースはかなり速い時計が出ていました。また、2歳新馬戦を除く芝レースは逃げた馬が(3 - 1 - 1 - 4)と好成績を残していたように、前に行った馬が粘れる先行有利な馬場。ここでは、開幕週の馬場傾向を時計とともに振り返ります。
6月3日(土)
土曜日は2歳新馬戦を除くと、芝のレースが5R組まれていました。500万下クラスの芝1200mで1分7秒台が出るなど、初日からかなり速い時計での決着が目立った1日に。
4R 3歳未勝利 芝1400m
1分21秒0
解説
3歳未勝利戦ながら1分21秒0の好タイムがマークされました。1着のエイシンルークは中団より後方から大外を伸びての差し切り勝ち。前半3Fが33.9で入り、その後もペースが緩んでいなかったことを考えると先行勢には厳しい競馬になりました。
7R 3歳未勝利 芝2600m
2分40秒0(コースレコード)
解説
3歳未勝利を勝ち上がったばかりのナムラマルが好スタートからじわっとハナに立つと、後続を寄せ付けずに逃げ切り勝ちをおさめた1戦。レースレコードが記録されたのは阪神芝2600mという条件が行われることが珍しいからですが、このレースを観てもイン+先行有利なことは窺えました。
9R 戎橋特別 3歳500万下 芝1200m
1分7秒7
解説
1000万下クラスから降級したダイアナヘイローがハナに立つと、前半3F33.2のハイペースをものともせずに逃げ切り勝ち。ダイアナヘイローは上のクラスでも好走歴のある実力馬だとは言っても、500万下で1分7秒台の決着にはなるのは明らかな高速馬場と言えます。ここもイン+先行有利の傾向
10R 三木特別 3歳1000万下 芝1800m
1分45秒8
解説
前走同条件を快勝した素質馬テオドールが人気に応えて中団からの差し切り勝ちをおさめました。逃げ粘ったプリメラアスールが2着。1000万下クラスの少頭数戦とすれば、1800mで1分45秒8は好タイムです。
11R 鳴尾記念GⅢ 芝2000m
1分59秒4
解説
外枠からじわっとハナに立った3人気のステイインシアトルが武豊騎手の絶妙なペースに導かれての逃げ切り勝ち。外から押し上げたスマートレイアーが上り33秒6の脚で追い上げて2着に入り、3着にはインのポケットから粘り込んだマイネルフロストが入線しました。
前後半の1000mは61.6 - 57.8と3.8秒差の後傾ラップ。このペースで2分を切るタイムが出たことを考えるとかなりの高速馬場であることが分かります。道中で中団より後ろに位置していた各馬が4角手前から捲ったものの、伸びて来たのはスマートレイアーのみで、やはり外差しは効きにくい馬場になっています。
6月4日(日)
新馬戦を除くと芝のレースは4Rが組まれ、グリーンSではレースレコードが出るなど馬場の傾向は土曜日から大きくは変わりませんでした。
6R 3歳未勝利 芝1800m
1分47秒5
解説
道中は先行勢を見る形で進めたスピリットソウルが馬場の真ん中へ出しての差し切り勝ち。2着には大外を伸びたタイセイレガシーが入り、3着には2番手から粘り込んだダノンクライムが入線。このレースは差し・追い込みの決着になりました。
1、2着は差し・追い込みの競馬をした馬ですが、2頭ともに道中は内ラチ沿いを走っていたように、道中外目を回してからの差しは厳しいのでしょう。
8R 3歳500万下 芝2000m
2分00秒6
解説
逃げたマルカブリスクを終始2番手でぴったりとマークしたマウントゴールドが直線早々に先頭に立っての押し切り勝ち。2着には3番手を進んだレンジャックマン、先行勢を見る形で中団に構えたフォーラウェイが逃げるマルカブリスクをゴール前で交わして3着に入線。少頭数の500万下クラスとしては好タイムの決着に。
このレースは道中1〜3番手を進んだ馬が1、2、4着に入ったように、イン+先行勢での決着になりました。
9R 鶴橋特別 3歳500万下 芝1600m
1分33秒7
解説
直線で馬場の真ん中よりも内目から余力十分に抜け出したキアロスクーロが快勝。少頭数で馬群が凝縮する形でレースが進み、前後半のラップは47.6 - 45.4のスローペースになりました。
8頭立てのスローペースで、道中の位置取り以上に4角過ぎからの瞬発力勝負に。勝ったキアロスクーロは1000万下クラスで好戦歴のある馬で、高速馬場で速い上りを使える強味を十分に発揮したと言えるでしょう。
11R グリーンステークス 3歳以上1600万下 芝2400m
2分24秒1(コースレコード)
解説
ウインスペクトルが1角手前でじわりとハナに立つと、12.5以上のラップがひとつも入らない(スタートしてすぐの200mは除く)持続戦の流れに持ち込み、2分24秒1のコースレコードになりました。
道中3番手を進んだシホウがインから抜け出して1着、単勝1倍台に支持されたリッチーリッチーも前目の競馬から追い上げて2着、3着には逃げ粘ったウインスペクトルが入り、先行有利の決着に。
馬場の傾向として
1回京都開催の猛烈な「イン+先行有利」の馬場と比べると、土日の阪神競馬場はそこまで露骨な偏りではないものの、外からバンバン差せる馬場でないことは確かです。
阪神競馬場は今の東京競馬場の高速馬場とは異なり、エアレーション作業が入っていません。そのため、どこかのタイミングで外差しにシフトします。今週のこのタイムの速さを見る限り、雨の影響を受けなければ宝塚記念の週までこの傾向は続いても……。日本はこれから梅雨に入るので、例年通りに宝塚記念の頃には時計のかかる馬場になっていてもおかしくはありません。
この高速馬場がどこまで続くのかは天気とともにしっかりと注視したいところです。
マーメイドSと馬場
6月11(日)には牝馬限定の中距離重賞マーメイドS(芝内回り2000m)が行われます。
昨年のマーメイドSも2分を切るタイムの決着だったように、今年の馬場であれば1分59秒5前後を想定。時計勝負にも対応できるパワー型の馬をピックアップしたいですね。
阪神内回りコース
阪神の内回り2000mで行われるマーメイドSは、中山牝馬S(GⅢ中山芝1800m)とコースの設定が似ています。
・内回り小回りのため、コーナー加速力が問われる
・4角手前からのペースアップについていけるピッチ走法に有利
・最後に急坂があるので、パワー型に有利
今年の登録馬の中には中山牝馬Sを好走した馬が上位人気に支持されそうなので、まずはその馬たちの取捨選択を考察するのが近道ですね。
ただ、その中山牝馬Sは1分49秒5と遅い時計での決着になったことから、高速馬場のマーメイドSとリンクするのかはじっくりと考えなければいけないポイントになります。
まとめ
エアレーション作業が行われる他の競馬場と異なり、阪神競馬場が開催が進むにつれて時計のかかる馬場になります。時計がかかるようになれば今のイン+先行有利の状況も変化するので、その見極めをしっかりとしたいところですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。