サトノダイヤモンドが阪神大賞典を快勝してから一夜明け、JRAの3日間開催も滞りなく終わりましたが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?
配当面では多くの人が「安っ!」と叫んでいたであろう阪神大賞典ですが、人気の2頭がお互いの力を出し切って直線で叩き合う姿に、馬券を購入していなくてもワクワクしてしまいました。
サトノダイヤモンドの2017年初戦
サトノダイヤモンドにとって2017年の初戦となった阪神大賞典。馬体面や距離適性など、気になったポイントをチェックしてみましょう。
馬体
パドックを周回している姿は全体的に筋肉がついて(とくに前駆のボリュームが増した)、母マルペンサの父Orpenのマイラーとしての頑強さが少しずつ発現してきたのかな、という印象を受けました。胴長の体型は3歳の頃から変わらずですが、このまま筋肉がつききれば、今後はより距離の適性が2000m前後にシフトしていきそうです。
レース内容
サトノダイヤモンドはスタートを五分に出て自然と後方へ下げる形になり折り合いに専念します。1週目の1コーナーから逃げるマドリードカフェを、抑えきれずに番手まで上がったレーヴミストラルが突つき、ホームストレッチでウインスペクトルが外からハナを奪うという入れ替わりの激しい流れになりました。
後方に構えた人気の2頭が3角過ぎからペースを上げて前へ上がっていくと、縦長だった馬群もぎゅっと凝縮され、4角から直線にかけての「美しく、鮮やか」な2頭の捲りはこれぞ「Haloクロス!」と声を上げてしまうほどの素軽さでした。
直線に入ったところでは、もう2頭の2017年のNO.1と言える捲りを見られたのでお腹いっぱいになりつつ、サトノダイヤモンドがしっかりとシュヴァルグランを競り落としたのを確認して、ほっと胸を撫で下ろしました。
3000mは適性から外れた距離
古馬になったサトノダイヤモンドにとって、もう3000mという距離は適性から外れた長さです。最後は持てるスピードと馬個体のポテンシャルの高さでシュヴァルグランを捩じ伏せましたが、ベストパフォーマンスを叩き出せる距離ではないことがはっきりとしました。(昨年、サトノダイヤモンドが勝利したGⅠ菊花賞はエアスピネルが3着に好走したように、1600〜2000mが適性距離の馬が走れる中弛みのスローで、3000mのスタミナ勝負ではありませんでした)
チャンピオンであろうとするなら
きさらぎ賞で見せたサトノダイヤモンドの美しすぎる「捲り」は2000mの皐月賞でこそずんどばにはまるのではないかと思っていたのですが、結果はディーマジェスティ、マカヒキに続く3着。ハイペースを悠然と捲ったのですから、サトノダイヤモンドが皐月賞で「強い」競馬をしたのは確かだと言っても、「本当のチャンピオン」になれないのではないか?とダービーの前に不安になったのです。
ダービーは2着に敗れたものの、その後の菊花賞でGⅠ制覇。その菊花賞もスローからのひと捲りという、強さよりも速さが際立った勝利だったために「本当のチャンピオン」とは言えないレースでした。ところが、有馬記念のレースを観た時、サトノダイヤモンドは「チャンピオン」ではなかったとしても、2000mのスピードで中長距離の馬をねじ伏せる「チャンピオンとしてのレース」ができる馬なのだ、と思ったのです。
2000mのスピードで、菊花賞の3000mも有馬記念の2500mもこなしたサトノダイヤモンドが「チャンピン」を目指すのだとしたら、距離がさらに200m延びる天皇賞・春でもキタサンブラックやゴールドアクターなどの強敵をねじ伏せなければなりません。
この卓越したスピード、素軽いスピードこそがサトノダイヤモンドの強さの源なのですから、適性な距離ではなくても「これこそがチャンピオン」と呼べるようなレースを期待したいのです。
シュヴァルグラン
阪神大賞典のレース内容は完璧でした。サトノダイヤモンドを負かすなら「これしかない」という先捲りで直線先頭に立っての粘り込み。福永騎手の腹を括った素晴らしい騎乗で、シュヴァルグランの総合力の高さを再認識させられたレースになりました。
改めてシュヴァルグランの長所はーー
1. 操縦性が高い(スピードの緩急が自在)
2. 素軽い走りで機動力に優れている
3. 気性が穏やかなので、ロスなく長距離を走れる
もちろん、馬個体のポテンシャルが高いことが前提としてあるのですが、これら3つの長所があれば本番の天皇賞・春でも積極的な競馬で好走する可能性は十分にあります。
シュヴァルグランが天皇賞・春でサトノダイヤモンドを負かすには
Haloクロスの機動力で走るところはサトノダイヤモンドとシュヴァルグランの共通するところで、天皇賞・春の舞台となる京都の勝負所の下り坂でどちらがよりスピードに乗れるのかがポイントになりそうです。
直線が平坦な京都ですから、シュヴァルグランが下り坂でスピードに乗せて直線を向いたときにサトノダイヤモンドとの差をかなりつけていれば…ただ、きさらぎ賞のサトノダイヤモンドもかなりのスピードだったので…ここは天皇賞・春までじっくり考えたいところですね。
阪神大賞典のレースを観て気になった馬について
サトノダイヤモンドとシュヴァルグラン2頭のマッチレースになった阪神大賞典で、気になる走りを見せた馬がいたので簡単に触れておきます。
スピリッツミノル
スピリッツミノルは父ディープスカイ×母父ラムタラの血統通り、速い脚に欠けますがスタミナが豊富なので、3歳時には逃げてオープンのすみれSを勝利しました。逃げていたのは馬群に揉まれる競馬が苦手という側面もあったのだと思います。
阪神大賞典では最内枠に入り、4角の手応えとしてはずるずると後退しそうなところからじりじりと盛り返して5着に入線。時計のかかる馬場の長距離戦で外枠に入った場合は狙ってみたいな、と。
タマモベストプレイ
3歳時にきさらぎ賞を制しているように、京都の下り坂でスピードに乗って粘り込む競馬が合っているタマモベストプレイ。
適性としてはズレている阪神の内回りコースで、直線先頭に立ってシュヴァルグランに抵抗した姿は「京都替わりで!」と期待するには十分な内容でした。
天皇賞・春は強力な先行馬キタサンブラック(こちらも京都の下り坂でスピードに乗るのが得意)がいますから楽ではありませんが、地力がついていることは確かで、好走に期待がもてます。
まとめ
サトノダイヤモンドが天皇賞・春で「チャンピオンらしい走り」を見せることができるのか、あるいはシュヴァルグランが巻き返すのか…長距離のチャンピオン・キタサンブラックが王者の貫禄を見せるのか…
今から淀の2マイルの戦いが楽しみでワクワクしますね。