阪神牝馬(2018年)は中距離馬とマイラーのどちらに適した舞台なのか?ーーリスグラシューは?

f:id:hakusanten:20180404181107j:plain

GⅠヴィクトリアマイル(東京芝1600m)へのステップ・レースとなる阪神牝馬ステークス(阪神芝1600m)は2016年に施行条件が1400m内回り→1600m外回りへと替わり、実力馬がすんなりと好走するレースになりつつあります。

今年はソウルスターリング、リスグラシューなどのクラシックを湧かせた4歳馬と昨年のヴィクトリアマイルを制したアドマイヤリードが出走し、かなりの好メンバーが揃いました。

オークス馬ソウルスターリングは昨秋の不振を払拭できるのか、4歳馬はここで「世代交代」を告げることになるのかなど、注目のポイントの多いですが、今回の記事ではマイル重賞における「スプリンター・マイラー・中距離馬」の関係について考察します。

 

4歳以上牝馬のマイル重賞は面白い!

JRAの牝馬限定GⅠは1年間に7レースが組まれており、その内エリザベス女王杯とヴィクトリアマイルの2つは世代限定戦ではありません。つまり、4歳以上の古馬になっても出走できる牝馬のGⅠは、わずかに2レースのみ。

秋シーズン

エリザベス女王杯:京都芝2200m

春シーズン

ヴィクトリアマイル:東京芝1600m

3歳の秋以降は牡・牝の競走能力に差が出てくるため、牝馬は斤量の恩恵を受けたとしても牡馬混合の中長距離GⅠではなかなか好走できないのが通例です。

近年ではウォッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタ、ジェンティルドンナなどの名牝が牡馬混合の中長距離GⅠを制しているものの、昨秋のソウルスターリングの走りから、牝馬にとっての牡馬の壁は厚いと言えます。

 

ヴィクトリアマイルの面白さ

古馬牝馬が牡馬混合のGⅠをシーズンの最大目標とすることはほぼありません。多くは中距離馬ならエリザベス女王杯、マイラーならヴィクトリアマイルを目指します。

ただ、ヌーヴォレコルトやショウナンパンドラなどの実力ある中距離馬がヴィクトリアマイルへ出走したように、大阪杯がGⅠへ昇格する以前は「牝馬だから、天皇賞・春へ使うならヴィクトリアマイルへ」という選択肢になるのも自然なことでした。

春シーズンに行われるヴィクトリアマイルは、高松宮記念を経由するスプリンター、安田記念へ向かうマイラー、宝塚記念へ向かう中距離馬と異なるカテゴリーの牝馬が集まる「面白い」GⅠです。

 

高配当も!

2015年に3連単2000万超の配当が出たことからもわかる通り、出走馬はさまざまなカテゴリーから集まりため、思わぬ波乱が起こります。ショウナンパンドラ、ヌーヴォレコルト、ミッキークイーンなどのGⅠ馬がアッサリと馬券圏外へとぶっ飛び、スプリンターのストレイトガールが連覇するのですから、一筋縄ではいかないレースと言えるでしょう。

 

阪神牝馬Sも面白い!

ヴィクトリアマイルの前哨戦となる阪神牝馬Sは、今年もさまざまな距離適性をもつ馬が顔を揃え、面白い1戦となりました。まずは有力馬のなかから、マイラーと中距離馬は振り分けてみましょう。

✳︎ここではピュアマイラー(1600mベスト)、長めマイラー(1600〜1800m)、中距離馬(1800m以上)の3つに分類します。

ピュアマイラー

デンコウアンジュ

ミスパンテール

レッドアヴァンセ

長めマイラー

アドマイヤリード

ミリッサ

ラビットラン

中距離馬

ソウルスターリング

リスグラシュー

ピュアマイラーと長めマイラーの差は難しいものの、私的には以上のような分類になります。今走の上位人気を形成する2頭、ソウルスターリングとリスグラシューは中距離馬にカテゴライズ!

 

リスグラシューは中距離馬?

競馬ファンがこの分類を見れば、「アレ!?リスグラシューはマイルの重賞を2勝してるじゃん!マイラーじゃないの?」と反論するはずです。そう、ややこしいのは中距離馬であってもマイルの重賞を勝ってしまうこと……。

それではこのカラクリを説明するために、リスグラシューの勝った東京新聞杯を例にとってみましょう。

2018年東京新聞杯(東京芝1600m)

勝ち時計:1分34秒1

前後半800m:47.6 - 46.5

このレースは後半が前半よりも0.9秒速い後傾ラップとなりました。マイルを走る中距離馬にとってもっとも苦しいのは速いペースを追走して脚を使ってしまうことです。

中距離馬のリスグラシューにとって前半800mが47.6、1000mが60.0という緩いペースは願ってもないもの。2000mの重賞と大きく変わらない流れですから、追走に脚を使わずに済みました。

つまり、中距離馬がマイルの重賞を好走するには平均〜後傾くラップになるか、やや時計のかかる馬場でのレースになることが必要条件になるのです。昨年の安田記念は45.5 - 46.0の前傾ラップ+1分31秒5の決着だったため、中距離馬のステファノスが7着と敗れたこともそれで説明がつきます。

 

マイラーか中距離馬か?

現在の阪神芝コースは速い時計の出るコンディションとなっています。今年の阪神牝馬Sは週末に雨が降らなければ、勝ち時計は1分32秒後半から33秒前半が出ても驚けません。

勝ち時計が1分33秒0(93秒)

46.0 - 47.0→マイラー

47.0 - 46.0→中距離馬

前後半800mのペースで考えれば、同じ時計でもマイラーと中距離馬で好走できるペースは異なります。牝馬限定戦はスローになることが多く、それだけに中距離馬にも台頭の余地があると言えるでしょう。

✳︎また、「キレる脚」をもつマイラーであれば、後傾ラップがマイナスになることはありません。長めマイラーはソコソコの前傾でもOKのタイプで、ベストは平均〜後傾ラップ。

 

ペースはどうなるのか?

「今年はスローなの? ハイなの? どっちのペース?」を読むのが阪神牝馬Sのポイントです。その観点から出走予定馬を見てみるとーー

逃げ馬がいない……

先行馬も少ない……

もともと牝馬は「キレる脚」をもつ馬が多く、限定戦だとどうしてもスロー・バランスになります。昨年の府中牝馬Sでもドスローになったように、ステップレースだとなおさら先行勢がペースを引き上げることは期待薄……。常識的にこのメンバーだと、まずスローでしょうね。

 

馬場はどうなるのか?

メンバーの顔ぶれからはどこをどう考えてもスロー・バランスが濃厚ですが、ペースに紛れがあるとすれば、週末の降雨によって馬場が渋化したときです。馬場がタフになると、時計のかかる消耗戦(✳︎)になることがあり、それだと距離適性よりも道悪の巧拙とパワーの有無へ好走のポイントが変わります。

✳︎各馬がタフな馬場に体力を消耗し、残り800mからゴールまでどんどんとスピードが落ちて行くレース

天気だけはどうしたって読めないので、当日の阪神芝レースの傾向をしっかりと把握してから馬券を考えたいですね。

 

スローならデンコウアンジュが面白い

スロー・バランスになったからといってマイラーが好走できないわけではありません。例えば、昨年のヴィクトリアマイルを2着と好走したデンコウアンジュはキレる脚が最大の武器で、ハイペースだともち味が削がれてしまいます。

この馬は馬場が渋ってもOKですから、直線の長いコースのマイル戦でスローなら、このメンバーに入っても好走のチャンスは十分です。後はこの馬自身のオッズと有力馬の上げ下げで買うかどうかは判断します。

 

まとめ

個人的にはソウルスターリングとリスグラシューにはここで好走してもらい、高速馬場になることの多いヴィクトリアマイルは1分31秒台の決着で「あー!中距離馬だと苦しいのかー!」というシーンを夢想しつつ……。

牝馬のマイル重賞はさまざまなカテゴリーの馬が集まるので、予想をするのも楽しくなりますね。

以上、お読みいただきありがとうございました。