香港国際競走4レース(2017年)に出走する日本調教馬をズバっと解説!ーーヴァーズからカップまで

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12月10日(日)、シャティン競馬場を舞台に行われる香港国際競走4レースは、日本調教馬8頭が出走を予定しています。凱旋門賞に続く海外競馬の馬券発売とあって、今年も注目が集まるレースです。

日本調教馬は以下の4競走に出走を予定しています。

香港国際競走に出走する日本調教馬

香港ヴァーズ

GⅠ・シャティン芝2400m

キセキ 3歳牡馬

トーセンバジル 5歳牡馬

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香港スプリント

GⅠ・シャティン芝1200m

レッツゴードンキ 5歳牝馬

ワンスインナムーン 4歳牝馬

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香港マイル

GⅠ・シャティン芝1600m

サトノアラジン6歳牡馬

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香港カップ

GⅠ・シャティン芝2000m

ステファノス 6歳牡馬

スマートレイアー 7歳牝馬

ネオリアリズム 6歳牡馬

(50音順)

今回の記事では「香港国際競走」4レースのポイントと日本調教馬8頭についてそれぞれ解説します。

 

香港ヴァーズ

香港国際競走のなかでもっとも長い距離となる2400mで争われる1戦。香港ではクラシック・ディスタンスの競走が極端に少なく、年間で3レースしか行われないこともあり、地元馬よりも海外遠征組が優勢のレース。

昨年は日本調教馬のサトノクラウンがハイランドリールを撃破してタイトルを獲得しました。芝中長距離の一線級であれば日本馬にもチャンスのあるレースです。GⅠに格上げされた2000年以降、フランス調教馬がトップの7勝を上げているのも大きな特徴と言えます。

 

日本から出走する2頭

香港ヴァーズに出走する日本調教馬は以下の2頭。

キセキ 3歳牡馬

トーセンバジル 5歳牡馬

注目は今秋の菊花賞馬のキセキがジャパンカップや有馬記念をパスして香港に遠征したことでしょう。同馬の父ルーラーシップが香港のGⅠクイーンエリザベス2世Cを制していること、重厚なストライドで走る馬なので直線の長いコースが合っていることを考えると、ここでも十分にチャンスはあります。

もう1頭のトーセンバジルは前走の京都大賞典を2着と好走し、好ムードでここへ出走。その前走はジャパンカップを制したシュヴァルグランに先着する走りだったことからも、京都と同じく直線が平坦なシャティンで大金星を上げられるのかに注目です。

 

キセキ 3歳牡馬

父:ルーラーシップ

母:ブリッツフィナーレ(母父:ディープインパクト)

厩舎:角居勝彦(栗東)

生産:下河辺牧場

騎手:M・デムーロ

3歳春は新馬戦を勝ち上がった後で足踏みし、GⅢ毎日杯3着など重賞でも強敵相手に好走したものの獲得賞金を積み上げることができませんでした。角居廐舎らしくその後は秋に備えてしっかりと休養に入ります。復帰戦となった平場の500万下と前々走の1000万下信濃川特別(*)は圧巻のパフォーマンス。

信濃川特別は速い時計の出る馬場だったとしても、勝ちタイム1分56秒9、上り3F32.9を手応え十分に楽々と差し切り、重賞レベルの走りを見せました。このレースで2着に入ったブラックプラチナムはOP級の素材ですから、これを問題にしなかったのは掛け値なしに素晴らしいの一言です。

2走前の神戸新聞杯は後方からレースを進め、直線で馬群を割るように鋭く伸びての2着。レイデオロとは現時点で力差を感じさせるレース内容でしたが、この馬だけが上り3F33秒台の脚を使っており、母父ディープインパクトらしい瞬発力を見せました。ルーラーシップ産駒としては上りの速いレースもOKの馬ですから、京都コースはダンビュライトよりも合っています。

菊花賞は歴史に残る不良馬場でのレースとなり、この馬のポテンシャルと心身の「強さ」を示す1戦となりました。このレースの詳しい解説記事は以下をご覧下さい。

 

血統

母ブリッツフィナーレは今春の安田記念で4着に入った素質馬グレーターロンドンの全姉で、競走馬としては未出走。繁殖牝馬としてはキセキ以外に目立った活躍馬は出ていません。

祖母のロンドンブリッジは英ダービーを制した父ドクターデヴィアスよりも父父Ahonooraと母父Dangizのパワーとスピードで「ワァーっ」と先行するパワーマイラーで、産駒にもそのパワーを伝えます。

キセキは脚が長く、いかにもルーラーシップという体型。追い出されると前脚をグングンと伸ばし、重厚かつパワフルなストライドでゴールまで走る姿はいかにも素質馬。前走の神戸新聞杯で上り33.9の脚を使ったように、このキレは父よりも母父ディープインパクトによるものでしょう。

キセキのもつ瞬発力は、キングカメハメハ×トニービンのキレをもつ父ルーラーシップに対して、HaloとSir Ivorのしなやかさをもつディープインパクトの別方向のキレが付加されているイメージ。血統表に引く血の良い部分だけを抽出したような馬で、これは母系に引くAhonooraの異系の血がアクセントになって全体に活力を与えているのかもしれませんね。

 

香港ヴァーズに向けて

不良馬場の菊花賞を走った後での疲労は間隔を空けたことでしっかりとケアできているでしょう。名門・角居厩舎の管理馬ですから海外遠征もお手のもの。体調面での不安点を上げるとすれば、12月4日に発表された「皮膚病」がレースにどれほどの影響を与えるのか……

症状が軽かったということは幸いですが、少なくとも100%順調と言える調整過程ではありません。レースへの影響が少ないことを願うばかりです。

 

シャティン芝2400mはほぼベスト

直線が430mの長さをもつシャティン競馬場は、重厚なストライドで走るキセキにとってはほぼベストのコース。理想は直線に坂のある東京や阪神コースですが、この馬は母父ディープインパクトのしなやかさも受け継いでいるので、上りの速くなる直線が平坦なコースもOKのタイプ。

 

ハイランドリールが持続戦にもち込むのなら

有力馬と目される1頭ハイランドリールは、逃げ・先行からレースを組み立てるタイプで、持続力戦で強さを発揮します。この馬が昨年の香港ヴァーズのようなロングスパート戦にもち込むのなら、重厚なストライドで走るキセキにはチャンスが巡ってくると言えるでしょう。

 

トーセンバジル 5歳牡馬

父:ハービンジャー

母:ケアレスウィスパー(母父:フジキセキ)

厩舎:藤原英昭(栗東)

生産:ノーザンファーム

騎手:J・モレイラ

 3歳時から重賞レースで再三好走している実力馬。前走の京都大賞典は好位から抜け出す競馬で「重賞初制覇か!?」と思わせたものの、スマートレイアーにインを強襲されての2着。ただ、GⅠ馬シュヴァルグランに先着したのは胸を張れるものです。

これまでの戦績から、京都の外回りコースがベストなだけに、直線が平坦なシャティン競馬場も適性とマッチしています。J・モレイラ騎手を確保したのは大きなプラスで、重賞初制覇が海外GⅠという「大金星」があっても驚けません。

 

血統

種牡馬ハービンジャーは今秋、ディアドラ→モズカッチャン→ペルシアンナイトがGⅠを制覇して大ブレイク。「GⅠではそこ力が足りないのでは?」という評価を覆してみせました。

ハービンジャー産駒については、以下の記事で詳しく書いているので、よければそちらをご覧下さい。

この 3頭はいずれも京都のGⅠを制していることと母系にNureyevを引くことが共通しています。ハービンジャーのA級産駒は直線が平坦なコースで、Nureyevゆずりの重厚なストライドでバキューンと弾けるのです。

トーセンバジルはストライドで走る馬なので、上記 3頭と似たタイプ。母系にNureyevは入らない替わりに、母父フジキセキからNasrullahなどのしなやかな血を取り込んでいます。軽いストライドがもち味なので、シャティン競馬場は適性に合う舞台です。

 

香港ヴァーズに向けて

やや軽いストライドのため、ハイランドリールがロングスパート+上りのかかるレースにもち込むとやや不安です。ある程度スローからの 3F勝負であれば、このメンバーなら好走の可能性も十分にあります。

J・モレイラ騎手が騎乗するのも心強く、このメンバーであれば、前走のように積極的な位置取りから、直線で鋭く抜け出したいところです。

 

香港スプリント

世界の主要なスプリント戦をシリーズ化した「グローバルスプリントチャレンジ」の最終戦とあって、芝のトップスプリンターが集まります。
香港競馬はオセアニア産のパワー・スプリンターが続々と輸入されていることから、1200m路線は層の厚い地元勢が優勢。ロードカナロア以降、日本馬は馬券圏内に入ることすらできません。

 

日本から出走する2頭

香港スプリントに出走する日本調教馬は以下の2頭。

レッツゴードンキ 5歳牝馬

ワンスインナムーン 4歳牝馬

今年のスプリンターSを2、 3着と好走した2頭がここへ照準を絞っての参戦となりました。レッツゴードンキもワンスインナムーンも1400mがベストなタイプだけに、ピュアなパワー・スプリンターが揃う香港勢がやや優勢でしょうか……。

 

レッツゴードンキ 5歳牝馬

父:キングカメハメハ

母:マルトク(母父:マーベラスサンデー)

厩舎:梅田智之(栗東)

生産:清水牧場

騎手:岩田康誠

桜花賞を制した後にスランプに陥ったものの、1200〜1400mのスプリント路線に転向してからはGⅠでも好走するなど、輝きを取り戻しました。

今年は高松宮記念とスプリンターズSのGⅠを2着と好走しているように、充実のシーズンを迎えているレッツゴードンキ。前向きな気性をコントロールできれば、グンと弾ける脚が使えます。

1400mがベスト+ピッチ走法の馬なので、直線の長いシャティンの1200mで、ピュアスプリンターの香港勢が相手となるとやや劣勢も、後傾バランスになるようならチャンスも出てくるでしょう。

 

血統

父キングカメハメハは母系の特徴を引き出す種牡馬なので、芝・ダートや距離を問わずにさまざまなタイプの産駒を出します。母マルトクはダートの短距離で活躍した馬で、血統の字面以上にパワーの勝ったスプリンター。

レッツゴードンキ自身はKingmanbo=ジェイドロバリー(血統構成が類似)2×3のクロスによって、スピードとパワー、そして前向きな気性を父母から受け継いでいます。

この馬がスプリントGⅠでも折り合いに苦労するのは、名牝Specialの前向きな気性とパワーがオンになっているから。また、Specialをクロスすることでパワーにあるれたピッチで走るのも特徴と言えるでしょう。

 

香港スプリントに向けて

そもそもが小回り向きのピッチ走法で走るので、直線の長いシャティンだとスローペースがベスト。また、本質的にピュアなスプリンターでないことも割引です。

ただ、パワースプリンターなので、香港の馬場そのものは苦にしないでしょうから、岩田騎手がインにこだわった競馬をしてどこまで……というのが順当な評価。

香港のトップスプリンターではないブリザードがスプリンターズSでレッツゴードンキと0.2秒差の5着に好走していることから、香港勢の壁は厚そうですが……。

 

ワンスインナムーン 4歳牝馬

父:アドマイヤムーン

母:ツーデイズノーチス(母父:ヘクタープロテクター)

厩舎:斎藤誠(美浦)

生産:岡田スタッド

騎手:Z・パートン

古馬になってから、GⅡ京都牝馬S2着やスプリンターズS 3着と重賞でも好走する力をつけました。小気味の良い先行力が魅力で、自分のペースで走れれば1400m前後のレースで力を発揮できます。

 

血統

母ツーデイズノーチスはJRAでデビューしたワンスインナムーン、ディバインコード(父マツリダゴッホ)の2頭がOP級の活躍を見せていることから、優れた繁殖能力をもっていることがわかります。

この母はその父ヘクタープロテクターのスピードを産駒に伝えるで、アドマイヤムーンが配されたワンスインナムーンも1400mがベストの距離でしょう。OP級の高配合であることは間違いないものの、GⅠを勝ち切るだけの底力があるのかは微妙です。

 

香港スプリントに向けて

内枠からのスタートになったのは、この馬にとって大きなプラス。1400mベストのマイラーなので、1200mのGⅠだと前走のスプリンターズSのようにスローバランスがベター。

ピュアなパワー・スプリンターが揃う香港勢に一泡吹かせられるのか……逃げなくてもOKの馬ですが、前傾ラップになるようだと苦しくなります。

 

香港マイル

香港国際競争の準メインを務めるレース。平坦コースのマイル戦とあって、レースのイメージとしては京都の外回りコースで行われる「マイルCS」と似ています。
パワーだけではなくコーナーで加速する器用さと瞬発力が求められるコース。昨年は内枠からスムーズに馬群をさばけずに7着と敗れたサトノアラジンですが、今年はGⅠ馬としてここへ参戦します。

 

サトノアラジン 6歳牡馬

父:ディープインパクト

母:マジックストーム(母父:Storm Cat)

厩舎:池江泰寿(栗東)

生産:ノーザンファーム

騎手:川田将雅

今春の安田記念で、待望のGⅠ初制覇。1分31秒5の好タイムでの勝利とあって、外からスムーズにエンジンをかけられれば、素晴らしい脚を引き出せることを改めて示しました。

今秋は毎日王冠2着の後は、不良馬場の天皇賞・秋→タフな馬場のマイルCSとリズムに乗れないレースが続きましたが、引退レースのここは力の入る1戦となります。

 

血統

母マジックストームは全姉弟となるラキシス=サトノアラジン(父ディープインパクト)の2頭のGⅠ馬を出した名繁殖牝馬。ディープインパクト×Storm Catは言わずと知れたニックスで、この姉弟の他にもGⅠ馬を出しています。

サトノアラジンは母系に入るNijinskyとFappianoの影響が出たのか、胴長のマイラーです。そのため、重厚なストライドが大きな特徴で、レースではブレーキをかけずエンジンをかけきれたときに好走しています。

香港マイルと相性の良いDanzigの血を引かないことを除けば、直線の長いシャティンのマイル戦は適性に合った舞台です。また、Storm Catをもつことから、速い時計の決着がベター。

 

香港マイルに向けて

マイルCSに続いて内枠を引いてしまいました。これだと最後方から外に出して「どれだけ脚を使えるのか?」というレースをするしかなく、外差しの利く馬場コンディションになっているのか大きなポイント。

香港勢はエイブルフレンド級のトップホースが不在ですし、展開や流れや馬場が噛み合えばサトノアラジンが1着に突き抜けても驚けません。ここ2走のリズムの悪さで体調面などを崩していなければ好勝負は可能でしょう。

良馬場の高速決着でスムーズに外目を追走したときには崩れることの少ない馬だけに、好走できるゾーンのレースになるのかが……ビューティーオンリーやランカスターボンバー、シーズンズブルームなどをまとめて負かすだけの力はもっています。

 

香港カップ

芝中距離のチャンピオン決める、香港国際競走のメインレース。昨年はモーリス、一昨年はエイシンヒカリと日本調教馬が2連覇を果たしています。香港やドバイでの活躍からも、日本の芝中距離馬は世界トップレベル。 3連覇への期待が高まる1戦です。

 

日本からの出走は3頭

香港カップに出走する日本調教馬は以下の3頭。

ネオリアリズム 6歳牡馬

スマートレイアー 7歳牝馬

ステファノス 6歳牡馬

香港馬のワーザー、イギリス調教馬のポエッツワードなどの有力馬は傑出した存在とは言えず、日本馬の3頭はともにタイトル獲得へチャンス十分と言えます。

日本馬のなかでは今春、香港のGⅠクイーンエリザベスⅡ世Cを制したネオリアリズムが大将格。J・モレイラ騎手を確保したのも大きく、上記のレースでワーザーを退けているのは強みとなるでしょう。

スマートレイアーとステファノスも香港の芝に実績があり、今シーズンのレースでも力のあるところを発揮していることから、ここで初GⅠ制覇となっても驚けません。

 

ネオリアリズム 6歳牡馬

父:ネオユニヴァース

母:トキオリアリティー(母父:Meadowlake)

厩舎:堀宣行(栗東)

生産:ノーザンファーム

騎手:J・モレイラ

昨年の札幌記念でモーリスを相手に逃げ切り勝ちを上げ、重賞を初制覇。今春は中山記念(GⅡ・中山芝1800m)→クイーンエリザベス2世Cと重賞を連勝し、素質馬がいよいよ本格化の時を迎えました。
昨秋はマイルCS→香港マイルと1600mのGⅠを2戦しましたが、1800mがベストの中距離馬。香港のコースも苦にしないだけに、ここでも有力な1頭です。

 

血統

母トキオリアリティーはGⅠ馬リアルインパクト(父ディープインパクト)やアイルラヴァゲイン(父エルコンドルパサー)などの重賞馬を出した名繁殖。母がバリバリのパワー・スプリンターのため、中距離の種牡馬を配すると産駒は前進気勢の強い先行脚質を受け継ぐのがデフォルトです。
この母の産んだ活躍馬はスピードとパワーで小回り・内回りを先行して粘り込むタイプが多いものの、3歳で安田記念を勝ったリアルインパクトのように、父ディープインパクトらしいしなやかさで直線の長いコースを好走するタイプも出ています。
ネオリアリズムはリアルインパクトの4分の3弟。父がネオユニヴァースに替わり、より母系のパワーが強調されているため、ベストは小回り+直線急坂の中山芝1800mでしょう。走らせるとサンデーサイレンス系らしいしなやかさも感じさせる馬で、兄と同じく直線の長いコースは苦にしません。リアルインパクトとアイルラヴァゲインは高齢になっても重賞で好走していましたから、6歳のネオリアリズムはまだまだ成長するでしょう。

 

香港カップに向けて

内枠に入ったので、馬の後ろにつけて好位から抜け出す競馬をするのか、それとも逃げてしまうのかは難しいところ……。スローペースでも俊敏に抜け出すことはできるものの、キレ味勝負だと分が悪いので、早めに先頭に立つ積極的なレースが理想です。

持続戦になったときの強敵は海外勢よりもむしろスマートレイアーとステファノスの日本馬。この2頭はストライドを伸ばして走るので、外差しが利く馬場だと警戒しなければなりません。

 

スマートレイアー 7歳牝馬

父:ディープインパクト

母:スノースタイル(母父:ホワイトマズル)

厩舎:大久保龍志(栗東)

生産:岡田スタッド

騎手:武豊

昨年のGⅢ東京新聞杯(東京芝1600m)で逃げ切り勝ちを上げ、それまでの差し・追い込みからモデルチェンジを果たしたスマートレイアー。

昨年末にシャティン芝2400mで行われた国際GⅠ香港ヴァーズをサトノクラウンの5着と好走すると、今年はGⅡ京都記念(京都芝2200m)2着やGⅡ京都大賞典(京都芝2400m)1着など、2000mを超える距離で好走しています。

初GⅠ制覇をかけて臨んだ今春のヴィクトリアマイルも直線でしぶとく伸びての4着。好走すれど勝ち切ることができなかったのは、もう渋い差し脚が武器のこの馬にとって、マイルの距離は短いのでしょう。

 

血統

スマートレイアーの母父ホワイトマズルは牡馬と牝馬で異なるタイプの産駒を出す種牡馬です。牡駒はアサクサキングスやイングランディーレなど長距離GⅠを勝つスタミナ型に、牝駒はビハインドザマスクなどの短距離を得意とするスピード型に出ます。

現在のスマートレイアーが「男性的」な末脚で牡馬相手の重賞を好走しているのは、このホワイトマズルのスタミナが加齢とともに前面に出てきているからでしょう。

このスタミナの源はホワイトマズルの母父Ela-Mana-Mouとディープインパクトの母母Burghclereとの相似の血統構成によるものです。この2頭に共通するDonatelloやHyperionやCourt MartialやPetitionのパワーとスタミナの血のクロスが、スマートレイアーに伝わっていたスタミナを加齢とともに発現させたのだと考えられます。

 

香港カップに向けて

シャティンの2000mはこの馬の適性に合っている舞台。後1F長ければ……GⅠ制覇のチャンスもより広がったでしょう。ネオリアリズムが早めに先頭に立つような流れであれば、この馬のストライドを存分に活かせます。

不安点は武豊騎手が京都大賞典のようなイメージで乗ってしまうこと。あのレースはインからストライド・ロスなく差し切りましたが、あのコース取りは香港だとまず無理。もう、先行してしぶとい脚を使う馬にモデルチェンジしているので、スタミナをふり絞るレースにもち込めるかどうかがポイントです。

武豊騎手だと中団から外を回して差すレースを試みそうなだけに、その点が……GⅠのタイトルを取って欲しい馬だけに、「世界の武豊」と呼ぶのにふさわしい騎乗を期待します。

 

ステファノス 6歳牡馬

父:ディープインパクト

母:ココシュニック(母父:クロフネ)

厩舎:藤原英昭(栗東)

生産:ノーザンファーム

騎手:H・ボウマン

香港へは4回目の遠征となるステファノス。GⅠでは2着3回、3着2回ともう後一歩に好走する安定株。昨年の香港カップはモーリスの3着とコースへの適性も申し分ありません。

今春の大阪杯2着の内容からも大きな力の衰えはなく、トップホースが不在のここは初GⅠ制覇に向けて期待の高まる1戦になります。

 

血統

ディープインパクト×フレンチデピュティ(クロフネの父)はショウナンパンドラやマカヒキなどのGⅠ馬が出る好相性の配合。ステファノスは牡馬なので、牝馬らしいキレをもつショウナンパドラよりも、マカヒキに近いパワー型です。

スローになっても鋭い脚が使えるのは父ディープインパクト譲りで、ペースが流れて持続戦になってもフレンチデピュティ←Deputy Ministerのパワーとスタミナで踏ん張れる馬。馬場やコースも問わないのが最大の強みでしょう。

 

香港カップに向けて

好走のチャンスがあるメンバー。GⅠレースで強さを発揮するタイプなので、ここも楽しみなレースとなります。ネオリアリズムが前を走る逃げ・先行馬を潰す競馬をしてくれるなら、この馬の差し脚が活かされるシーンも十分です。

 

まとめ

1日に4つのGⅠレースが組まれている香港国際競走は、距離のカテゴリー別に世界各国の多様な競馬を観戦できる素晴らしい催しです。日本でも馬券の発売をすることから、注目度も高いレース。香港スプリントを除けば、どの日本馬にも好走するチャンスがあるだけに、今からレースが楽しみですね。

海外の有力馬については、以下の記事で解説していますので、よければそちらもご覧下さい。



以上、お読みいただきありがとうございました。