12月10日(日)、シャティン競馬場を舞台に行われる香港国際競走4レースは、日本調教馬8頭が出走を予定しています。凱旋門賞に続く海外競馬の馬券発売とあって、今年も注目が集まるレースです。
日本調教馬は以下の4競走に出走を予定しています。
香港国際競走に出走する日本調教馬
▼香港ヴァーズ
GⅠ・シャティン芝2400m
キセキ 3歳牡馬
トーセンバジル 5歳牡馬
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▼香港スプリント
GⅠ・シャティン芝1200m
レッツゴードンキ 5歳牝馬
ワンスインナムーン 4歳牝馬
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▼香港マイル
GⅠ・シャティン芝1600m
サトノアラジン6歳牡馬
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▼香港カップ
GⅠ・シャティン芝2000m
ステファノス 6歳牡馬
スマートレイアー 7歳牝馬
ネオリアリズム 6歳牡馬
(50音順)
今回の記事では「香港国際競走」4レースのポイントと海外の有力馬についてそれぞれ解説します。
香港ヴァーズ
香港国際競走のなかでもっとも長い距離となる2400mで争われる1戦。香港ではクラシック・ディスタンスの競走が極端に少なく、年間で3レースしか行われないこともあり、地元馬よりも海外遠征組が優勢のレース。
昨年は日本調教馬のサトノクラウンがハイランドリールを撃破してタイトルを獲得しました。芝中長距離の一線級であれば日本馬にもチャンスのあるレースです。GⅠに格上げされた2000年以降、フランス調教馬がトップの7勝を上げているのも大きな特徴と言えます。
海外の有力馬
香港ヴァーズに出走する海外調教馬のなかで、有力と目されるのは2頭。
ハイランドリール 5歳牡馬(アイルランド)
タリスマニック 4歳牡馬(フランス)
アイルランドの名門A・オブライエン厩舎が送り込むハイランドリールは、2015年1着、16年2着とこのレースと好相性を誇ります。世界各国の芝中距離GⅠを制している欧州のトップホース。実績はこのメンバーであれば断然のNO.1。
今秋のBCターフを制したタリスマニックは、4歳になった今年に入りメキメキと力をつけた1頭。そのBCターフではハイランドリールを退ける快走で勝利し、勢いに乗って香港ヴァーズに出走します。
ハイランドリール 5歳牡馬
父:Galileo
母:Hveger(母父:デインヒル)
厩舎:A・オブライエン(アイルランド)
騎手:R・ムーア
キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS、BCターフなどGⅠ6勝を上げている欧州中距離のトップホース。香港ヴァーズは3歳時(2015年)に勝利しており、コースへの適性に不安はありません。
今年はプリンスオブウェールズSとコロネーションCの2つのGⅠを勝ち、5歳になっても能力に大きな衰えはなく、ここも有力な1頭。
血統
英愛を代表する種牡馬Galileoを父にもち、母父もNorthern Dancer系の大種牡馬デインヒルですから、コテコテの欧州血統。全弟のアイダホは今秋のジャパンカップに出走し、時計の速い日本の芝にも対応する5着(走破タイムは2分24秒7)と好走しました。
ハイランドリールは弟よりもさらに軽い馬場で走れる「しなやかさ」をもっており、これはGalileoの母である名血・名牝のアーバンシーを通して、高速馬場向きのMiswakiを引くからでしょう。また、祖母Circles of GoldがNorthern Dancerをもたない異系の血で固められているのも好配合。
香港ヴァーズに向けて
昨年は3着以下を大きく引き離す2着。今年のメンバーを見渡せば、サトノクラウン級の持続力に富んだ末脚をもっている馬は不在で、与しやすいメンバーとなりました。
BCターフで先着を許したタリスマニックは小回り向きの機動力に優れた配合ですから、香港であれば逆転の可能性は十分です。
ハイランドリールが逃げてロングスパート戦にもち込んだときに、強敵となるのは日本調教馬のキセキのみ。R・ムーアを背に昨年2着の雪辱を晴らします。
タリスマニック 4歳牡馬
父:Medaglia d'Oro
母:Magic Mission(母父:Machiavellian)
厩舎:A・ファーブル(フランス)
騎手:バルザローナ
BCターフではハイランドリールを退けてGⅠを初制覇。小回りのデルマー競馬場の4コーナーをもっとも俊敏に捲ったのは、タリスマニックの素晴らしいピッチ走法によるもの。これほど小回り向きの馬がフランスの名門ファーブル厩舎で管理されているのですから、「世界の競馬」の多様性に驚かされます。
▼2017年 BCターフ
血統
Medaglia d'Oroの父El Pradoは、Sadler's Wells直仔ながら北米のリーディングサイアーに輝いた異色の種牡馬。早熟なマイラーだったこともあり、そのスピードを見込まれて北米へ輸出されました。
El Pradoが北米で活躍したのは、小回り向きのピッチ走法とコーナーでの加速力を産駒に伝えたからです。タリスマニックがBCターフの4コーナーをもっとも俊敏に走れたのも「It's El Prado」によるもの。
母父Machiavellianは日本でもBMSとして優秀で、今秋のジャパンカップを制したシュヴァルグランやヴィルシーナ=ヴィブロス全姉妹を産んだ名牝ハルーワスウィートの父として知られています。この名種牡馬も小回り向きの機動力に優れていることから、タリスマニックはBCターフを勝つために産まれたような配合です。
日本のクラシック・ディスタンスのGⅠで表現するなら、有馬記念>ジャパンカップという適性の馬と言えるでしょう。しなやかに差す馬ではないので、直線の長いコースは不向きです。
香港ヴァーズに向けて
シャティン競馬場の芝コースは1周1899m、直線が430mですから、小回り向きのタリスマニックにとっては有利とは言えないレイアウト。
枠順にもよるものの、ハイランドリールが逃げて昨年のような持続戦にもち込むとすれば、ピッチを活かして4コーナーを捲りたいタリスマニックには不向きな流れ。ただ、スローペースになれば、俊敏に加速できるこの馬に向くとも言えますが……。
人気がかぶるようなら、バチコーンと外したい1頭と言えますね。
香港スプリント
世界の主要なスプリント戦をシリーズ化した「グローバルスプリントチャレンジ」の最終戦とあって、芝のトップスプリンターが集まります。
香港競馬はオセアニア産のパワー・スプリンターが続々と輸入されていることから、1200m路線は層の厚い地元勢が優勢。ロードカナロア以降、日本馬は馬券圏内に入ることすらできません。
海外の有力馬
香港スプリントに出走する海外調教馬のなかで、有力と目されるのは香港の3頭。
ラッキーバブルズ 6歳騸馬(香港)
ミスタースタニング 5歳騸馬(香港)
ザウィザードオブオズ 6歳騸馬(香港)
ラッキーバブルズとミスタースタニングは、香港の春のスプリント・チャンピオンを決めるGⅠチェアマンズスプリントプライズの1、2着馬。
日本のファンにも馴染みの深いエアロヴェロシティ(15年の高松宮記念を制覇)が引退後、この2頭が香港のスプリント路線を引っ張る存在となりました。
その他の馬ではJ・モレイラ騎手が騎乗するザウィザードオブオズに注目。「マジック・マン」がこの大一番で「魔法」を使うことができるのか……に期待しましょう。
ラッキーバブルズ 6歳騸馬
父:Sebring
母:Bubble Below(母父:Hussonet)
厩舎:K・ルイ(香港)
厩舎:H・ボウマン
昨年の香港スプリントは後方のインから直線で外へ出して追い込んだものの、「インコース有利」の馬場コンディションもあって、先に抜け出していたエアロヴェロシティを捕まえられずに2着と敗退。
香港のスプリント路線では最上位の実績をもっている馬なので、前走のジョッキークラブスプリント(GⅡ)9着からきっちりと立て直しができているのかがポイントです。
血統
父SebringはオーストラリアGⅠゴールデンスリッパーSを勝ったスプリンター。More than Ready(サザンヘイロー直仔)×Flying Spur(デインヒル直仔)という配合からも父系はどこを切ってもスプリンター色が色濃く出ています。
自身はしなやかなMr. Prospector5・5×3と器用なHail to Reason5×6をもつため、平坦な香港でビュンとキレる脚を使えます。オセアニア産のスプリンターとしてはゴリゴリとパワーで押すだけではなく、素軽さももち合わせているのが特徴です。
香港スプリントに向けて
昨年の香港スプリントはイン優勢の馬場バイアスによる惜敗ですから、外差しの利く流れになれば……チャンスも巡ってくるでしょう。鞍上のH・ボウマン騎手は内枠から馬群を捌けるので、その点はプラス。
力の衰えなども見られないので、極端な外枠に入らないこととレースのペースをスローにコントロールされなければ、昨年並みの走りを期待できます。
▼2017年 チェアマンズスプリントプライズ
ミスタースタニング 5歳騸馬
父:Exceed And Excel
母:With Fervour(母父:Dayjur)
厩舎:J・サイズ(香港)
騎手:N・ローウィラー
今春のGⅠチェアマンズスプリントプライズをラッキーバブルズの2着と好走し、この路線のトップレベルへと仲間入りをしました。今秋は休み明け初戦を6着と崩れたものの、その後の2戦はGⅡを連勝してここへ臨みます。
▼2017年 香港ジョッキークラブスプリント
血統
父Exceed And ExcelはNorthern Dancer3×3の強いクロスをもち、この血をいじるとゴリゴリのパワー・スプリンターが出る配合。ミスタースタニング自身もDanzig3×3のクロスをもつことから、Northern Dancerを累進しています。
母母Fran's ValentineがNorthern DancerやHyperionをもたず、しなやかなスピード血脈のNasrullahを多く引き、これがこの馬に活力を与えているのでしょう。平坦な香港の芝向きにカスタマイズされているのも、母系の影響によるものです。
香港スプリントに向けて
この馬はラッキーバブルズよりもやや前で競馬をするので、ペースをスローにコントロールされてもソコソコには対応が可能です。時計の速い決着もOKとあって、ここに向けて大きな不安はありません。
前走の香港ジョッキークラブスプリントを観ても、抜け出す時のパワーと俊敏さはDanzig譲りで、ペースが速くなればなるほど強さを発揮できるでしょう。当日が外差しの利かない極端なインベタ馬場にならないかぎりは有力な1頭。
ザウィザードオブオズ 6歳騸馬
父:Redoute's Choice
母:Princess Coup(母父:Encosta de Lago)
厩舎:J・サイズ(香港)
騎手:J・モレイラ
前走の香港ジョッキークラブスプリントはミスタースタニングの5着と敗退。実績はGⅢ1勝のみと上記2頭には及ばないものの、日本でもお馴染みのJ・モレイラ騎手がこの馬を選んだのですから、ここも期待をかけたくなります。
血統
父Redoute's Choice×母父Encosta de Lagoの掛け合わせは、日本でもOPのマイル路線で活躍しているキャンベルジュニアと同じ(正確には父と母父をひっくり返した配合)です。また、このに頭は母系にSir Tristramが入るのも共通しており、16分の13が同血。
ザウィザードオブオズはキャンベルジュニアよりも胴が詰まっているものの、伸びやかなフォームは母系に入るSir IvorとHabitatのしなやかさによるものでしょう。パワーでゴリゴリと押すタイプではなく、高速決着+直線平坦なコースがベター。
1400mベストのしなやかスプリンターなので、パワーの求められる前傾ラップになりすぎると、苦しくなります。
香港スプリントに向けて
後方からしなやかに差す馬なので、インベタ馬場だと不安が残ります。理想は高速馬場+平均ペースでしなやかな差しが活きる流れになること。パワーが求められる前傾くラップだと苦しくなるので、乗り方が難しいですね……。
イメージとしてはレッドファルクスに近いスプリンターですから、展開がバチコーンとはまれば1着まで突き抜ける可能性も……。ただ、香港のスプリント路線は1200mがベストのパワースプリンターが強さを発揮するので、モレイラ・マジックでどこまで……というのが本音です。
香港マイル
香港国際競争の準メインを務めるレース。平坦コースのマイル戦とあって、レースのイメージとしては京都の外回りコースで行われる「マイルCS」と似ています。
パワーだけではなくコーナーで加速する器用さと瞬発力が求められるコース。昨年はロゴタイプ5着、サトノアラジン7着、ネオリアリズム9着と日本馬は馬券に絡めませんでしたが、 3頭ともに直線に坂のある東京コースでパフォーマンスを上げる馬で、今年もそこがポイントになるでしょう。
海外の有力馬
香港マイルに出走する海外調教馬のなかで、有力と目されるのは香港の3頭。
ビューティーオンリー 6歳騸馬(香港)
シーズンズブルーム 5歳騸馬(香港)
ランカスターボンバー 3歳牡馬(アイルランド)
ビューティーオンリーは昨年の同レース覇者で、今春の1分31秒台の決着となった安田記念を6着と好走しました。シーズンズブルームは前走でマイル重賞を初めて制覇し、その勢いに乗ってここへ臨みます。
香港馬2頭に対抗するのは、A・オブライエン厩舎が送り出す3歳馬ランカスターボンバー。前走のBCマイルは直線で抜け出すのに手間取り、やや脚を余したレース。ここで巻き返しなるのかに注目です。
ビューティーオンリー 6歳騸馬
父:Holy Roman Emperor
母:Goldendale(母父:Ali-Royal)
厩舎:A・クルーズ(香港)
騎手:Z・パートン
昨年の香港マイルを制した実力馬。今春の安田記念はサトノアラジンと0.3差の6着に敗退したものの、1分31秒台の高速決着になったことを考えれば悲観する内容ではありません。今秋に復帰してからの3戦が5着→9着→4着と馬券圏内に好走していないのは不安ですが、前走の香港ジョッキーズクラブマイルは大外から鋭く脚を伸ばしての4着と体調が上向いているのはプラスです。
▼2016年 香港マイル
血統
父Holy Roman Emperorはデインヒル直仔で、2011年に英愛の2歳リーディング・サイアーに輝いた種牡馬。デインヒルのパワー産駒に伝え、香港ではビューティーオンリーの他にもマイルGⅠ勝ち馬のデザインズオンロームを出しています。
母系にStorm Catと血統構成に似ているロイヤルアカデミーⅡ、Sir Ivorなどしなやかな血が入り、これが平坦なコースでズバっとキレる脚を使える源でしょう。SecretariatやNijinskyなどの血は長い直線向きのストライド(胴が長めに出る)走法を伝えるのも、シャティン競馬場にマッチしています。
香港マイルに向けて
しなやかなストライドで走る馬で、平坦+直線の長いシャティン競馬場は適性と合っている舞台です。ただ、トップスピードに乗るまでにやや時間がかかるので、スローからの瞬発力勝負は苦手。高速決着に対応できることからも、ペースが流れれば差しやすくなります。
過去の走りを観ても、直線で大外に出してからグイグイと伸びてくる馬なので、極端なインベタ馬場になるようだと先行馬に捕らえられないことも……。このメンバーに入れば実績は最上位ですから、体調面が整い展開が噛み合えば好走の可能性は十分です。
シーズンスブルーム 5歳騸馬
父:Captain Sonador
母:Pyramisa's Lass(母父:Not A Single Doubt)
厩舎:C・シャム(香港)
騎手:J・モレイラ
前走の香港ジョッキークラブマイルを直線の外からバキューンと鋭く差し切り勝ちを上げ、ここへ臨みます。ビューティーオンリーに負けず劣らずのストライド走法で、マイラーとしてはやや細身な馬体も柔らかみを感じさせるもの。GⅠ初出走となるものの、モレイラ騎手が乗るとあって好走の期待が高まりますね。
▼2017年 香港ジョッキークラブマイル
血統
父Captain SonadorはStorm Cat系の種牡馬。母父のNot A Single Doubtはオセアニアを代表するマイラーRedoute's Choice直仔です。父系にHabitat、自身はSir Ivor直仔のSir Tristram5×4のクロスをもつため、これらがしなやかさの源になっています。いかにも平坦+直線の長いコースでビュンとキレる脚が使える配合。シャティンのマイル戦なら能力全開のシーンも十分に。
香港マイルに向けて
馬のタイプとしてはビューティーオンリーに似ています。ただ、こちらの方が馬体が細身で、ピュアなマイラーなのかはやや「?」が……。1分33秒前半の決着になったときやパワーが求められる前傾ラップになったときには不安が残ります。
前走は中団から差す競馬をしたものの、おそらく好位でもOKのタイプ(父系に入るMachiavellianの器用さが出ていれば)。GⅠのここは前々の競馬から有力馬の追い込みをしのぎ切りたいところです。
ランカスターボンバー 3歳牡馬
父:War Front
母:Sun Shower(母父:Indian Ridge)
厩舎:A・オブライエン(アイルランド)
騎手:R・ムーア
2走前のクイーンエリザベスⅡ世S(GⅠ・芝1600m)は14着と大きく崩れたものの、2歳夏のデビューから重賞戦線でいつも掲示板内に好走している安定感のある馬です。UAEダービー2着の後はマイル戦に絞ったローテーションが組まれています。
前走のBCマイルを含めてここまでGⅠ2着が5回と後一歩でタイトルに手が届いていないシルバーコレクター。香港の地で初のGⅠ制覇となるのかに注目です。
血統
父War FrontはDanzig×Mr. Prospector系の組み合わせで豊かなスピードを伝えます。北米の種牡馬ながら欧州の芝でも活躍馬を出しているように、ポテンシャルの高い種牡馬です。
母Sun ShowerはNorthern DancerもHyperionも引かない異系血脈で固められており、ランカスターボンバー自身も5代アウトの配合。半兄のExcelebration(父Exseed And Excel)は仏英のマイルGⅠを3勝した活躍馬で、種牡馬としてもGⅠ馬(バーニーロイ)を出しています。
この馬は父母のスピードとパワーをストレートに表現しており、まだまだこれから成長を見せるでしょう。
香港マイルに向けて
前走のBCマイルは直線に向いたところで進路を探すのに手間取り、やや脚を余す形に……。欧州でのマイル戦のレースを観ると、頭の高い走りの分だけ前脚がグイっと伸びないものの、体質はわりとしなやかなのがわかります。以下はバーニーロイの2着と好走したセントジェイムズパレスS(GⅠ)の動画です。
バーニーロイはしやかなストライドで差すマイラーなのでそれと較べるとアレですが、ランカスターボンバーもなかなかのストライドで走っています。この走りであれば、シャティンも苦にはしないでしょうし、有力馬のなかでも好位のポジションを取れるのは大きなアドバンテージ。R・ムーア騎手であれば、インから鋭く叩き出せるでしょうから、好走のチャンスも十分です。
香港カップ
芝中距離のチャンピオン決める、香港国際競走のメインレース。昨年はモーリス、一昨年はエイシンヒカリと日本調教馬が2連覇を果たしています。香港やドバイでの活躍からも、日本の芝中距離馬は世界トップレベル。 3連覇への期待が高まる1戦です。
海外の有力馬
香港カップに出走する海外調教馬のなかで、有力と目されるのは2頭です。
ポエッツワード 4歳牡馬(イギリス)
ワーザー 6歳騸馬(香港)
イギリスの名伯楽M・スタウト調教師が送り出すポエッツワードはGⅠ未勝利ながら、英愛のチャンピオンS(GⅠ・芝2000m)をいずれも2着と好走し、好ムードでここへ臨みます。
ワーザーは香港ダービーを含む芝2000mのGⅠ4勝の実力馬。今春のクイーンエリザベスⅡ世Cはネオリアリズムの3着に惜敗したことから、雪辱を果たす1戦です。
ポエッツワード 4歳牡馬
父:Poet's Voice
母:Whirly Word(母父:Nashwan)
厩舎:M・スタウト(イギリス)
騎手:A・アッゼニ
3歳時にはクラシック路線を歩めなかったものの、4歳になってから重賞(GⅢ)を制覇し、GⅠでも2着と好走するまでに逞しくなりました。ここ2走は2000mのGⅠ英愛チャンピオンSを続けて2着と好走し、ここへ臨みます。
血統
父Poet's VoiceはDubai直仔で「Mr. Prospector系×Danzig系」の組み合わせ。香港国際競走はマイルやスプリントはDanzigをもつパワー型のオセアニア産が活躍し、香港カップでも昨年の覇者モーリスがDanzigを引くように、この血と好相性のレースです。
母はNashwan(Blushing Groom直仔)×Shirly Heights(Mill Reef)の配合からも、重厚かつしなやかなキレを血で固められています。ポエッツワード自身はShirly Heights5×3のクロスをもつので、シャティンでもキレる脚を使える可能性が高いと言えます。
香港カップに向けて
日本馬3頭と香港馬ワーザーは強敵とは言え、この馬も軽い芝への適性を感じさせる好配合。前走の英チャンピオンSはクラックスマンに7馬身差をつけられているものの、3着のハイランドリールには先着しており、ここでも力は足りるはずです。欧州馬のなかではもっとも期待できる1頭。
アッゼニ騎手ではなくR・ムーア騎手なら自信をもってグイグイと推せたのですが……。
ワーザー 6歳騸馬
父:Tavistock
母:Bagalollies(母父:Zabeel)
厩舎:J・ムーア(香港)
騎手:T・ベリー
香港ダービーを含むGⅠ4勝の実力馬。今春のクイーンエイリザベスⅡ世Cは1人気の支持を受けながらも、ネオリアリズムの前に3着と敗れ、ここは香港の中距離チャンピオンとして雪辱を果たす舞台となります。
血統
父TavistockはSadler's Wells系の種牡馬ながら、ニュージーランドのマイルGⅠ馬。ワーザーは名牝Special5×5のクロスをもつことからNureyevの重厚なストライドがオンになっており、ビュンとキレるよりもグイグイと力強く伸びる脚を使います。母系にはSir TristramやDanzigなど香港の芝に適性のある血が入り、しなやかさがあるのはこれらの影響でしょう。
2400mのGⅠを勝っているものの、おそらく1800〜2000mがベスト。日本のトップレベルの馬との対戦であれば、ヴァーズよりもカップがベターでしょう。
香港カップに向けて
3着と敗れたクイーンエリザベスⅡ世Cは、向正面で捲ったネオリアリズムとモレイラ騎手のペースにはまったもの。頭数の揃った香港カップはもう少しペースも流れるはずで、この馬にとってはレースの組み立てはしやすいでしょう。
実直な末脚がもち味の馬ですから、スローの瞬発力勝負は苦手。前目のポジションを取って、積極的な仕掛けで押し切れれば……。日本馬との力差をそれほど感じさせず、香港馬のなかではもっとも有力な1頭です。
▼2017年 クイーンエリザベスⅡ世C
まとめ
1日に4つのGⅠレースが組まれている香港国際競走は、距離のカテゴリー別に世界各国の多様な競馬を観戦できる素晴らしい催しです。日本でも馬券の発売をすることから、注目度も高いレース。今回は海外調教馬について取り上げたので、予想の参考になれば幸いです。
以上、お読みいただきありがとうございました。