GⅡアイルランド府中牝馬S(2017年)は重馬場に適性をもつステイゴールド産駒の2頭に期待してーー予想

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GⅠエリザベス女王杯(京都芝2200m外回り)へのステップレースとして、2011年にGⅡに格上げされた「アイルランド府中牝馬S(東京芝1800m)」は、実力のある牝馬が顔を揃える1戦。今年はヴィブロス、アドマイヤリード、クイーンズリングと3頭のGⅠ馬が出走し、エリザベス女王杯の前哨戦に相応しい好メンバーが集まりました。昨年の優勝馬クイーンズリングがここからエリザベス女王杯を制したように、GⅠにつながる重要なステップレース。今年はどの馬が好走するのでしょうか?

 

M・デムーロとC・ルメールが2年連続でワンツー

府中牝馬Sは2015、16年と2年連続でM・デムーロ騎手とC・ルメール騎手のワンツー決着になっています。

 

府中牝馬Sの2015、16年の成績

時計 着順 人気 馬 名 騎手
2016 1:46.6 1 3 クイーンズリング デムーロ
60.6 - 46.0 2 2 マジックタイム ルメール
2015 1:46.3 1 11 ノボリディアーナ ルメール
59.2 - 47.1 2 1 スマートレイアー デムーロ

2016年はスローペースを察知したデムーロ騎手とルメール騎手がいずれも好位からレースを進めてのワンツー。15年は平均ペースからノボリディアーナが馬場の真ん中を鋭く伸びて1着、馬群の中を割ったスマートレイアーが2着という結果に。

レースのペースに合わせて、好走するための最適なポジションを取れるところがこの2人の騎手の特徴です。もっともシンプルな馬券はこの2人の馬連1点。1点買いならどのようなオッズでも当たればプラスになりますから。

 

2人の騎手は上位人気の馬に騎乗

ルメール騎手は今春のGⅠドバイターフを制したヴィブロスに、デムーロ騎手は昨年のエリザベス女王杯の勝ち馬クイーンズリングに騎乗します。2頭ともに上位の人気に推されるでしょうから、3年連続で「ルメ・デム」のワンツーという結末になる可能性も十分に。

 

ヴィブロスとクイーンズリングは好走例がない56kgの斤量がネック

ヴィブロスとクイーンズリング、この上位人気に推されるGⅠ馬の2頭は今回56kgの斤量を背負います。牝馬の56kgは牡馬に換算すれば「58kg」ですから、2頭にとってはここがネックとなるでしょう。府中牝馬SがGⅡに格上げさた2011年から、斤量56kg以上を背負った馬の馬券圏内はありません(✳︎そもそも、56kgの斤量を背負う馬の出走数が少ない)。

ヴィブロスは56kgを背負うのが初めてとなる上に、馬体重が420kg台の細身ですから「斤量」が堪える可能性も……。クイーンズリングは京都牝馬Sとエリザベス女王杯で56kgの斤量を背負い勝ち星を上げていることから、それほど不安視する必要はないかもしれません。

 

重馬場はOK?

東京は金曜日から雨が降り(18:00現在)、土曜日もこのままカラリとは晴れない予報が出ています。東京競馬場は馬場の排水性が良く、雨が降ったとしても日差しが出ればすぐに乾くとは言え、このままの天候が続くなら「道悪」でのレースは避けられません。

ヴィブロスは稍重のドバイターフ、クイーンズリングは重馬場の京都牝馬Sを制していることから、「道悪」のコンディションを苦にしないのは強みと言えるでしょう。2頭ともに極端な重馬場にならないかぎりはこなせるはずです。

 

重馬場でペースは上がらず、上りのかかる展開に

馬場が重くなり時計のかかるコンディションになると、騎手は直線までスタミナや末脚をできるだけ残そうとする意識がより強くなります。その結果、各馬の仕掛けが遅くなり、全体としてスローペースになってしまうことがあるのです。今年の府中牝馬Sは重馬場が巧く、上りの時計がかかったときにズドーンと重厚なストライドで走れる馬をピックアップします。

 

重厚なストライドで走る馬は?

今年の府中牝馬Sに出走する14頭のなかで、重馬場を苦にせず、重厚なストライドで走る馬をピックアップすると以下の通りです。内枠から順番に馬名を上げていきます。

 

重馬場OKの重厚なストライドで走る馬

ハッピーユニバンス

クイーンズリング

アドマイヤリード

クロコスミア

ワンブレスアウェイ 

アスカビレン

1人気のヴィブロスは全姉のヴィルシーナと同じく、スローペース+重馬場はOKなのですが、Halo3×4の機動力と器用さに長けた馬で、東京の長い直線をズドーンと差せるのかは「?」がつきます。前走のドバイターフの勝利が素晴らしいストライドでの差し切りとは言え、アレは「モレイラ・マジック」が発動してのもの。前走のように最内枠から差しに回るようだと不安が先行します。

トーセンビクトリーとクイーンズミラーグロは小気味の良いピッチ走法。どちらも上りのかかるレースが得意なので馬場が渋るのはプラスです。ただ、小回り・内回りコース向きの器用さをもった2頭なので、直線の長いコースだとスローペースがベター。東京の重馬場で甲乙を付けるのなら、クイーンズミラーグロ>トーセンビクトリーという適性です。

ヴィクトリアマイル2着のデンコウアンジュはスローペース専門の差し馬。この馬が好走するときはマイルの距離で上り33秒台の決着になることが条件です。メイショサムソン産駒は血統の字面ほど重馬場を得意としていないですし、ここは割引。

というわけで、東京コースの重馬場で力を発揮できそうなのはハッピーユニバンス以下の上記6頭です。◎はここから選びます。

 

◎クロコスミア 4歳牝馬

父:ステイゴールド

母:デヴェロッペ(母父:ボストンハーバー)

厩舎:西浦勝一(栗東)

昨年のローズS(GⅡ・阪神芝1800m外回り)はクロコスミアがスンナリとハナに立ち、ゴール板前まで粘りに粘っての2着。中団から直線で猛然と伸びたオークス馬シンハライトにハナ差だけ差されたものの、直線の長い阪神外回りコースで一線級の牝馬に対して接戦を演じたパフォーマンスは高い評価が必要です。

ローズS以降は4着に好走した今年の阪神牝馬S(GⅡ・阪神芝1600m外回り)をのぞき、すべて小回り・内回りコースへの出走。今回の府中牝馬Sはこの馬のストライドが活かせる待望の舞台です。クロコスミアは逃げ・先行馬ながらパワーあふれるストライドで走るため、直線の長いコースがベター。条件戦を勝ち上がったばかりとは言え、もともと重賞で好走していた馬。GⅡのレースでも格負けはしません。

 

血統

3代母のアルヴォラは凱旋門賞馬Sea the StarsやGolden Hornを出した名種牡馬Cape Crossの半姉。クロコスミアはそこにボストンハーバー×ステイゴールドがかけられ、血統構成の近いノーザンテーストとVice Regentを通じてNorthern Dancerのクロスが発生しています。このクロスがクロコスミアのパワーの源です。スタミナも豊富な中距離馬なので、1800m以上の距離がベスト。ステイゴールド産駒としてはストライドも伸びるので、東京コースはずんどばと言えます。

クロコスミアの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

府中牝馬Sに向けて

関西からの長距離輸送で、前走以上に馬体を減らさなければ……。純粋な逃げ馬がいないため、クロコスミアが外からジワっとハナに立てるメンバー構成。揉まれなければ逃げなくてもOKなので、レースのしやすい枠に入りました。鞍上はローズS2着のときの岩田康誠騎手。体調面と馬体重の問題をのぞけば、大きなマイナスのない馬です。

 

ワンブレスアウェイ 4歳牝馬

父:ステイゴールド

母:ストレイキャット(母父:Storm Cat)

厩舎:古賀慎明(美浦)

ワンブレスアウェイは1600万下を2連勝し、今夏にオープン入りを果たしました。全成績(5 - 4 - 1 - 2)が示すように安定感のある走りが最大の長所です。ステイゴールド産駒としては馬格があり、パワーのあるストライド走法。走るフォームはしなやかなので、小回りよりも直線の長いコースに向く馬。

 

血統

ワンブレスアウェイの全姉キャットコインはGⅢクイーンCの勝ち馬で、半妹ロックディスタウン(父:オルフェーヴル)は今夏のGⅢ札幌2歳Sを制しているように、母ストレイキャットはステイゴールドと好相性。

ワンブレスアウェイは体型や走りが姉よりも妹に似ており、走らせるとしなやかに動けるのが特徴。母の半弟で2004年のJRA年度代表馬となったゼンノロブロイ(父:サンデーサイレンス)もしなやかに動ける馬でしたが、ローミンレイチェルを祖とするこの牝系は柔らかさを伝えるのでしょう。

ワンブレスアウェイは体型や配合からもマイラーというよりは1800mがベストの中距離馬で、ロックディスタウンと同じように速い上りにも上りのかかるレースにも対応できます。初重賞挑戦となる今走でも気後れしないだけの良血馬です。

ワンブレスアウェイの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

府中牝馬Sに向けて

あまりにも馬場が悪くなり過ぎるとこの馬のしなやかさが削がれてしまうシーンも考えられます。ただ、時計のかかるコンディションそのものはまったく問題ありません。

骨っぽいメンバーが揃い、ワンブレスアウェイが好走するのは簡単でないとしても、血統やこれまでのレースぶりからは不安よりも期待の大きい素質馬。クロコスミアを逃がせてすっと2番手が取れる組み合わせというのも有利で、田辺騎手であればこの馬の最適なペースで走らせることができるでしょう。

斤量面とコース+重馬場への適性から、出走メンバーのなかではもっとも不安の少ない1頭。クロコスミアとワンブレスアウェイが先行し、そのまま「行った行った」のシーンも十分です。

 

買い目

ヴィブロス、クイーンズリング、アドマイヤリードなどは3着内にちょろっと好走する可能性もあります。◎と◯が直線を向いてアレヨアレヨと粘っている間にどの馬が差してくるのかは難しく、配当面を考えると人気薄の△ハッピーユニバンスを3着候補として拾います。あくまでも本線は◎◯の馬連ですね。

 

馬連

11 - 12

(✳︎馬連よりも枠連7 - 7の方が高配当であればそちらを)

 

3連複 

2 - 11 - 12

 

まとめ

今年の府中牝馬Sが「ルメール - デムーロ」で決まり、3年連続でこの2人のワンツーとなるのでしょうか?

東京は金曜日から土日にかけてかなりの雨量があり、府中牝馬Sの行われる土曜日は少なくとも陽が差さない予報。時計のかかる重い馬場コンディションとなる可能性が高いと言えます。今年の府中牝馬Sはクロコスミアとワンブレスアウェイがこの馬場を味方につけ、アレヨアレヨと前で粘るシーンを期待して。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。