3歳馬のレイデオロがジャパンカップを好走するためには?ーーペースと騎手が鍵?

f:id:hakusanten:20171122113216j:plain

マイルCSをペルシアンナイトが制し、M・デムーロ騎手が10戦連続GⅠ3着以内を達成しました。今秋のGⅠはここまでC・ルメール、M・デムーロ、武豊騎手の3人しか勝っていません。

スプリンターズS:M・デムーロ

秋華賞:C・ルメール

菊花賞:M・デムーロ

天皇賞・秋:武豊

エリザベス女王杯:M・デムーロ

マイルCS:M・デムーロ

ここまで偏ると、GⅠレースはいかに上位の騎手を確保するのかの争いになります。例えば、菊花賞馬のキセキとアルゼンチン共和国杯を楽勝したスワーヴリチャードは、M・デムーロ騎手を鞍上に配するためにジャパンカップへは不出走。前者は香港へ、後者は有馬記念へと向かいます。

 

ジャパンカップに出走する有力馬3頭は、上位の騎手を確保

東京芝2400mの「チャンピオン・コース&ディスタンス」で行われる国際GⅠジャパンカップは、キタサンブラック+武豊、サトノクラウン+M・デムーロ、レイデオロ+C・ルメールと有力馬の3頭が上位の騎手をしっかりと確保しました。

注)サトノクラウンは当初R・ムーア騎手を予定。ただ、ムーア騎手が専属契約を結んでいるA・オブライエン厩舎のアイダホに乗ることになり、サトノクラウンの鞍上は宙に浮いてしまいました。そこから、シュヴァルグランの先約があったM・デムーロ騎手を引き抜いてくる形に……。

 

レイデオロは早々とルメール騎手を確保

今年のダービーを制したレイデオロは早々とC・ルメール騎手を配して、大目標のジャパンカップへ出走します。陣営は早くから秋のローテーションを神戸新聞杯→ジャパンカップと決めており、GⅠレースに向けての「準備」は万端です。

レイデオロは新馬戦から乗り替わることなくルメール騎手が手綱を取っており、人馬のコンタクトも大きな不安はありません。現役最強馬のキタサンブラック、そして、M・デムーロ騎手+サトノクラウンを、ルメール騎手は止めることができるのでしょうか?

 

レイデオロ 3歳牡馬

父:キングカメハメハ

母:ラドラーダ(母父:シンボリクリスエス)

厩舎:藤沢和雄(美浦)

生産:ノーザンファーム

父キングカメハメハ×母父シンボリクリスエスという配合のレイデオロはサンデーサイレンスの血を引かないダービー馬です。現代日本の競馬のレベルを格段に引き上げたと言われる名種牡馬サンデーサイレンスの血を引かないのは珍しいと言えます。

レイデオロの前にダービーを制した「非サンデーサイレンス 」の馬は2010年のエイシンフラッシュまで遡らなければなりません。そして、不思議なことに、この2頭のダービーの勝ちタイムは2分26秒9とまったく同じです。「歴史的なスロー」のダービーを制したのが非サンデーサイレンスの馬というのは、とても興味深いものがあります。

 

レイデオロの女性的なキレ

エイシンフラッシュはダービーと天皇賞・秋の東京コースで行われる2つのGⅠを制しているものの、小回り・内回り向きの機動力を備えていました。直線の長いコースをしなやかにストライドで差すのではなく、女性的なキレで差すタイプ。そのため、東京コースだと上りの速くなるスローペースがベスト。

このストライドを伸ばすのではなく、俊敏な脚さばきで「女性的にキレ」るのはレイデオロも同じです。本質的には小回り・内回り向きの馬ですが、スローであればサササッと直線を抜け出してストライド走法の馬を封じることができます。

 

レイデオロの俊敏さとキレ

レイデオロは俊敏な脚さばきが最大の特徴で、前脚がしなやかに伸びる走りではありません。そのため、本質的には東京よりも中山向きの機動力をもつ馬。今年のダービーは歴史的なスローを小気味良いフットワークで抜け出すと、「女性的なキレ」でスワーヴリチャード以下を完封しました。

回転の速いフットワークは瞬時にトップスピードに乗れる反面、そのスピードを長く持続するのが苦手。先週のマイルCSで先に抜け出したピッチ走法のエアスピネルが重厚なストライドのペルシアンナイトに差されたように、ペースが流れると苦しくなってしまうのです。

 

高速決着は得意

レイデオロやエイシンフラッシュのように「俊敏な脚さばき」で走る馬は、上り3Fと全体の時計が速くなるレースは大の得意です。その理由は以下の2つ。

1. 脚さばきが俊敏なので、時計が速くてもスタミナをロスしない

2. 瞬時にトップスピードに乗れるため、速い上りに対応できる

レイデオロがスローになった神戸新聞杯(GⅡ・阪神芝2400m)を上り3F34.1、勝ちタイム2分24秒6で駆け抜けたのも、高速決着が得意なことの表れでしょう。

 

ジャパンカップは女性的なキレが優勢

ジャパンカップは過去10年で5頭の牝馬が優勝しています。天皇賞・秋に較べると牝馬の好走率が高いのが大きな特徴です。

過去10年のジャパンカップを制した牝馬

2015年:ショウナンパンドラ

2013年:ジェンティルドンナ

2012年:ジェンティルドンナ

2011年:ブエナビスタ

2009年:ウォッカ

ジャパンカップは牝馬の「キレ」が優勢なレースで、5F以上のロングスパート戦にならず、4〜3Fの勝負になることがデフォルトだからでしょう。また、東京競馬場は2008年から傷みに強い野芝「エクイターフ」を導入していることで、時計が速くなっています。そのため、開催最終週に行われるジャパンカップも「タフ」なレースにならず、牝馬のキレが活きる流れに……。

「エクイターフ」については、小島友美さんの書いた『馬場のすべて教えます』が教科書として最適なので、ぜひご一読下さい。

 

 

現在の東京芝は高速化

東京の芝は天皇賞・秋の不良馬場から回復し、現在は良好な状態が保たれています。また、少しずつ高速化していることから、女性的なキレで勝負したいレイデオロにとっては願ってもないコンディションと言えるでしょう。

 

今年のジャパンカップは逃げ馬がドイツのギニョール

今年のジャパンカップは純粋な逃げ馬がドイツのギニョールのみ。そのため、どのようなペースで逃げるのかが不明。もし、ギニョールが逃げるとしてもスタミナを削り合うようなラップを踏むかは不透明で、実質的にキタサンブラックのペースメイクでしょう。

キタサンブラックが楽に2、3番手に付けられるのなら、「いつものスロー+4Fからのスパート戦」になる可能性が大。そうなれば、前目のポジションを取れるレイデオロにとって、好走できる下地は揃いますね。

 

M・デムーロ+サトノクラウンがキーポイント

今年のジャパンカップで展開の鍵は、5F以上のロングスパート戦にもち込みたいサトノクラウンが握っています。おそらく、ミルコ騎手は宝塚記念のようなイメージで騎乗するので、途中からキタサンブラックへプレッシャーをかけに行くはずです。

5F以上のロングスパート戦になれば、上り3Fの時計がかかるレースになりますから、ストライドの伸びないレイデオロにとっては不利な展開。ルメール騎手は宝塚記念でシャケトラに騎乗し、サトノクラウンの脚の質を理解しているでしょうし、どのようにそれを封じるのかは楽しみですね。

 

3歳牡馬のレベルは?

春のクラシックで好走した3歳牡馬は、マイルCS1着のペルシアンナイト、アルゼンチン共和国杯1着のスワーヴリチャードと古馬混合の重賞で好結果を出しています。今春の時点では「3歳牡馬のレベルは低いのでは?」と揶揄されましたが、ここにきてそれを覆すレースぶり。

ただ、ペルシアンナイトの好走はマイル路線のレベルが低かったこと、遅咲きのハーツクライ産駒スワーヴリチャードは夏を越してグンと成長していたことを考えると、全体のレベルが高いのかどうかはまだわかりません。

今のところは、5歳馬世代に素質馬が揃っているというのが、個人的な印象です。4歳世代もなかなかハイレベルではあるものの、古馬になってからの成長力がイマイチですから……。

 

まとめ

レイデオロは早くからルメール騎手を確保していたこと、前走から十分な間隔を取ってフレッシュな状態でレースに臨めることなど、ジャパンカップに向けての準備は万全と言えます。

また、エイシンフラッシュのような俊敏な脚さばきは、東京コースで「スローペース」になれば強さを発揮することからも、例年のジャパンカップのレースの流れと合っていることも確かです。

サトノクラウンがしなやかなストライドで好走するレースの質になると苦しくなるものの、キタサンブラックの得意な4Fのスパート戦ならOKのタイプ。また、高速決着にも強いので、時計がどれほど速くなるのかにも注目しましょう。

今から、ジャパンカップが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。