GⅢ京成杯AH('17年)は中団のインから捲れるウキヨノカゼに◎をーー予想

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秋の中山開幕週は土日に1つずつ重賞が組まれ、日曜日のメインレースはサマーマイルシリーズ最終戦となるGⅢ京成杯AHが行われます。

土曜日に行われた秋華賞トライアル「GⅢ紫苑S(中山芝2000m)」はオークス4着のディアドラが春の実績通りに力を発揮し、1分59秒8の好タイムで勝利。このレースでは前後半の1000mが61.3 - 58.5と2.8秒のかなりのスローペースながら、道中で中団よりも後方にいたディアドラが上り33.8の鋭さで差し切ったように、今年の秋の中山開催はかなり速い時計の出る馬場と言えます。以下はここ3年の紫苑Sの成績をまとめた表です。

 

紫苑S 中山芝2000m 過去3年の成績

時計 着順 人気 馬 名 上り
2015 2:00.2 1 8 クインズミラーグロ 34.5
2 5 ホワイトエレガンス 35.0
60.6 - 59.6 3 6 エバーシャルマン 34.5
2016 1:59.7 1 1 ビッシュ 35.3
2 3 ヴィブロス 35.5
59.6 - 60.1 3 5 フロンテアクイーン 36.2
2017 1:59.8 1 1 ディアドラ 33.8
2 6 カリビアンゴールド 34.0
61.3 - 58.5 3 4 ポールヴァンドル 33.7

2015年は前後半の1000mの差が1.0秒のスロー、それに対して2016年はほぼイーブンのペースとなっており、時計も2分台を切っています。2016年のペースだと速い時計も出やすいのですが、今年のようなスローペースで全体の時計が2分を切るということは「馬場がかなり速い」と判断するしかありません。京成杯AHも1分33秒を切る時計になることはほぼ間違いないでしょう。もしかしたら、1分31秒台に突入するかも……。

 

近2年よりも時計の速い秋の中山開催

ここ数年の秋の中山開催は開幕週だからといって逃げ・先行馬がバンバン残るわけではなく、差し・追い込み馬も好走できる馬場。とくに2015と2016年は全体的に芝コースは時計がかかり、キレよりもパワータイプが好走する柔らかい(ソフトな)馬場でレースが行われています。

最近では、さまざまな競馬メディアで「エアレーション作業が実施された開幕週=差しも利く馬場」として取り上げられ、競馬ファンの間でも広く知られるところとなりました。

ただ、ここ2年はそれ以前と較べるとマイル戦で約1.5秒近く時計にかかる馬場になっていて、JRAがこの低い硬度の馬場を今年も続けるのかは不透明でした。そして、今年はイザ蓋を開けてみたら、かなり時計の速い馬場へと様変わりをしています。

(*秋の中山開催開幕週の馬場については週中に詳しい解説記事をかいているので、よければそちらをご覧下さい)

秋の中山開催開幕週はエアレーション作業によって2017年も「外差し」になるのか?ーー馬場考察 - ずんどば競馬

 

京成杯AHは1:32.0秒台の争いに?

2013年の秋から、JRAは馬場の硬度を低く(馬場を柔らかく)するため、開催の1ヶ月前に路盤に穴を開けるエアレーション作業を実施しています。以下は2013、15、16年の京成杯AHのレース時計をまとめた表です。14年は新潟競馬場での代替開催だったので、表からは除いています。

 

京成杯AHのレース時計

勝時計 着順 人気 馬 名 通過順位
2016 1:33.0 1 1 ロードクエスト 12 - 10 - 6
2 6 カフェブリリアント 8 - 7 - 8
46.4 - 46.6 3 3 ダノンプラチナ 13 - 12 - 10
2015 1:33.3 1 13 フラアンジェリコ 15 - 15 - 15
2 11 エキストラエンド 9 - 4 - 4
47.0 - 46.3 3 7 ヤングマンパワー 6 - 9 - 9
2013 1:31.8 1 3 エクセラントカーヴ 6 - 5 - 4
2 2 ダノンシャーク 9 - 8 - 7
45.2 - 46.6 3 7 ゴットフリート 2 - 3 - 3

ここ2年は1分33秒台の決着になっているように、やや時計のかかるタフな馬場でのレース。今年はここまで時計が遅くなることはなく、13年に近い時計が出ることが予想されます。「逃げ専門」のマルターズアポジーが出走していることから、おそらく1分32秒台前半の時計になるのではないでしょうか。

 

GⅢ京成杯AHの予想

今年の京成杯AHを予想する上でのポイントは、「馬場」と「逃げ・先行馬のつくるペース」の2つの点です。馬場については先にも述べたように時計が速く、京成杯AHの勝ち時計は1分32秒台を想定。逃げ・先行馬のつくるペースは、マルターズアポジーとボンセルヴィーソの枠の並びから「前半800mが46秒前後」の締まった流れになることが考えられます。まずはペースについて考えてみましょう。

 

レースのペースは?

1分32秒0を基準とすると、前後半の800mのバランスは46.0 - 46.0でイーブンなペースになります。前半が46.0よりも速くなるようだと2013年のように差し馬のワンツーになり、これよりも遅くなって上りが速い決着だと先行馬に有利な流れ。

今年は、スタートのセンスが抜群で二の脚も速いマルターズアポジーが飛び出して、それをボンセルヴィーソ以下が追いかける展開。問題は、マルターズよりも内の枠に入ったボンセルヴィーソが好位の「インのポケット」で我慢する展開でもOKなのかどうかです。ボンセルヴィーソはここまで馬群に揉まれた経験がありません。そのため、松山騎手はスタートしてから内で包まれないように外目に馬を誘導したいはずで、マルターズにハナを譲るとしてもかなり押して押してポジションを取りに可能性が大きいと言えます。そこへウインフルブルームとマイネルアウラートが絡む展開ですから、この4頭が後続を離しての先行体勢に入り、前半の800mは46秒ソコソコに。

58kgの重い斤量を背負うマルターズアポジーはどうしてもトップスピードがここ2走よりも鈍るはずで、46.0前後だとかなり苦しい展開です。ボンセルヴィーソはNHKマイルC3着時に東京の芝1600mを1:32.9で走破していますから、全体的なペースを引き上げたいタイプ(上りの速い勝負にしたくないタイプ)。そのことを考えても、ボンセルはマルターズにかなりプレッシャーをかける展開にもち込みたいのでしょう。

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先行勢の直後のポジションを取れる馬が有利

レースの展開からは、マルターズアポジー、ボンセルヴィーソ、ウインフルブルーム、マイネルアウラートの先行勢が後続を引き離した、その直後のポジションを取れる馬が有利になります。それに加えて速い上りを使える馬であればよりプラスです。ここを取れるのはダイワリベラル、オールザゴー、ウキヨノカゼ(昨年末、横山典騎手が騎乗したターコイズSのような位置取り)の3頭。このなかで速い上り使える可能性があるのは、オールザゴーとウキヨノカゼの2頭でしょう。

 

◎ウキヨノカゼ 7歳牝馬

父:オンファイア

母:アドマイヤダッシュ(母父:フサイチコンコルド)

厩舎:菊沢隆徳(美浦)

重賞3勝の7歳牝馬。重賞での勝ち鞍が中山・札幌・福島とすべて小回りコースというのが物語っているように、3〜4コーナーでスピードを上げて最後までしぶとく脚を使えるのがこの馬の最大の武器です。7歳と高齢ながら今年の春に重賞の福島牝馬Sを制しているように力の衰えはありません。

中山コースはGⅢフェアリーS1着、GⅠスプリンターズS3着を含めて(1 - 0 - 1 - 2)。馬券圏外になった昨年のターコイズS4着は中団から捲って一旦は先頭に立つ積極的なレースでのもの。このレースの上位1〜3着馬のマジックタイム、カフェブリリアント、レッツゴードンキはいずれも牡馬相手の重賞でも好走歴のある牝馬で、かなりメンバーの揃った1戦でした。

父オンファイアはディープインパクト、ブラックタイドの全弟。3戦1勝の競走馬成績ながら、血統の良さで種牡馬入りを果たしました。オンファイアはディープよりもブラックタイドに似た馬で、産駒は粘り強い先行力とパワーを受け継ぐのが特長です。ウキヨノカゼはオンファイア×フサイチコンコルドですから、フサイチコンコルドの代表産駒バランスオブゲームやオースミハルカのように機動力が抜群で、ジリジリとしぶとく脚を使います。中山のマイルはほぼベストの舞台で、1分31秒台の決着にならなければチャンスも。

横山典騎手はゴールドシップの天皇賞・春で見せた向う正面の捲りや昨年の大阪杯でキタサンブラックを敗ったアンビシャスの先行策といったトリッキーというか奇想天外な騎乗が取りざたされる騎手ですが、基本的には「馬を気分よく走らせるには?」と考えているだけであって、「後方ポツン」や「追い込み馬で逃げる」とかの戦法は揉まれるとダメなタイプの馬に乗ったときがほとんど。ウキヨノカゼに乗った昨年のターコイズSでは中団の位置をしっかりと取ってからの捲りのレースをしていますし、ここで「ポツン」はないでしょう。

 

◯オールザゴー 3歳牡馬

父:ステイゴールド

母:アルーリングボイス(母父:フレンチデピュティ)

厩舎:矢作芳人(栗東)

内田博幸騎手から解放されての1戦。前走の関屋記念大敗は「休み明け」に加え、スピードに乗せたいところで手応えが悪くなってしまったのが……。今回は一叩きされて、前目のポジションが取れるメンバー構成。前走よりもペースが流れる可能性が高く、パワーで勝負したいこの馬にとってはプラス。レース時計が1分31秒台に突入したときには不安はあるものの、NHKマイルC5着馬でボンセルヴィーソとそこまでの能力差はありません。これだけ人気がないのであれば。

 

その他の△候補として

以下は△候補として、1分32秒台の決着に対応でき、速い上りが使える馬をピックアップします。

△ガリバルディ

△ブラックスピネル

△アスカビレン

△トーセンデューク

(△ダイワリベラル)

トーセンデュークは中山マイルは適性に合っていない舞台ですが、時計が速くなるようなら。( )にしたダイワリベラルは速い時計の決着には大きな不安があるとは言え、ポジションを取れるので……。ガルバルディが突っ込んで来てくれたら胸熱ですね。

グランシルクは今走は田辺騎手がほぼ最後方まで下げそうで、そのときに上りの速い決着だと届かないおそれは十分にあります。まぁ、田辺騎手が中団を取るようなら好走の可能性も……。ただ、1分32秒前半の時計になったときは不安のある1頭です。

GⅢ京成杯AHはエアレーション作業の実施によって開幕週から「外差し」になるのか?ーーレース展望 - ずんどば競馬

 

買い目

◎1着固定の馬単と◎◯2頭軸の3連複を。

 

馬単

9 → 4. 3. 8. 11. 12. 1

 

3連複

9. 4 - 3. 8. 11. 12. 1

 

皆さまにとっても素晴らしいレースになりますように。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。