牡馬クラシック・レースの最後の1冠は「もっとも強い馬が勝つ」と言われる菊花賞(GⅠ・京都芝3000m)。今年はダービー馬のワグネリアンが神戸新聞杯をステップに天皇賞・秋へと向かうため、主役は3歳馬として35年ぶりに新潟記念を制したブラストワンピースが務めます。
3冠牝馬のアーモンドアイを筆頭に、今年は「シルクレーシング+ノーザンファーム生産馬」の当たり年。ステップレースをパスしたブラストワンピースはアーモンドアイに続くことができるのでしょうか?
シルクレーシング+ノーザンファーム生産馬
今年の「シルクレーシング+ノーザンファーム生産馬」はアーモンドアイ、ブラストワンピースの3頭が重賞を勝ち、GⅠでも好走を果たしています。当たり年と言えるほどの好成績を上げているなかで、特徴的なのはこの3頭のローテーションです。
アーモンドアイが最少のキャリアで牝馬3冠を達成したように、今年の「シルクレーシング+ノーザンファーム生産馬」はGⅠの前にステップレースを使うことを避けています。上記の3頭のこれまでのローテーションを振り返ってみましょう。
・アーモンドアイ
桜花賞:シンザン記念からの直行
オークス:桜花賞からの直行
秋華賞:オークスからの直行
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・ブラストワンピース
ダービー:毎日杯からの直行
菊花賞:新潟記念からの直行
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・プリモシーン
桜花賞:フェアリーSからの直行
NHKマイルC:桜花賞からの直行
秋華賞:関屋記念からの直行
もっともレース間隔の詰まったローテーションはプリモシーンの桜花賞→NHKマイルC(1ヶ月弱)で、これを除くとすべて1ヶ月以上の休養を挟んでレースに使われています。これはGⅠに向けてノーザンファーム天栄(外厩)で調整するためのもの。
前哨戦(ステップレース)に出走するとレース間隔が短くなるため、外厩に出すことができません。アーモンドアイが早々と「オークス→秋華賞」のローテーションを定めたのも、ノーザンファーム天栄の調整力でGⅠを勝てると踏んでのものだと言えます。
ブラストワンピースのローテーションは?
ブラストワンピースと同じく夏に古馬相手の重賞に出走してから菊花賞へ向かったのは、過去5年で以下の2頭です。
2017年
ウインガナドル(非社台系)
新潟記念4着→菊花賞16着
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2016年
レインボーライン(ノーザンファーム)
札幌記念3着→菊花賞2着
ノーザンファーム生産馬のレインボーラインが菊花賞を好走していますが、これは「ノーザンファームしがらき」からのもの。天栄からではない分だけ、ブラストワンピースにはマイナスです。
ただ、昨年のアエロリットがクイーンSから天栄を経由して秋華賞(7着)へ出走しており、この経験が活かされるようなら、好走のチャンスもあるかもしれません。
✳︎アーモンドアイが秋華賞を勝った経験というのは、ブラストワンピースにもプラスの効果を与えるはずです。
ローテーションに不安?
ブラストワンピースのローテーションはアーモンドアイと同じく「ノーザンファーム天栄だから大丈夫!」とは言えません。この2頭が大きく異なるのは管理する厩舎の「差」です。
アーモンドアイを管理する国枝栄調教師は3冠牝馬アパパネなど数多くのGⅠ馬を手掛けています。それに対してブラストワンピースを管理する大竹正博調教師はルージュバックやグレーターロンドンなどの素質馬を預託されているものの、未だにGⅠに手が届いていません。
ノーザンファームがいかに天栄で調整したとしても、レースに出走するためには入厩しなければならないので、どうしても「厩舎力」が問われてしまいます。ダービーでも馬券圏内に入れなかったように、この点だけが大きな不安です。
ブラストワンピースは菊花賞を好走できるのか?
さて、ここまではブラストワンピースのローテーションにまつわるアレコレについて見てきました。ここからはこの馬の血統やコースと距離の適性について考えてみましょう。
ブラストワンピース 3歳牡馬
父:ハービンジャー
母:ツルマルワンピース(母父キングカメハメハ)
厩舎:大竹正博(美浦)
生産:ノーザンファーム
昨年、秋華賞を制したディアドラを皮切りに、エリザベス女王杯のモズカッチャン、マイルCSのペルシアンナイトとハービンジャー産駒はGⅠ3勝の大活躍を見せました。
コテコテの欧州血統ながら、種牡馬ハービンジャーは時計の速い日本の芝にもフィットする産駒を出しています。今年の3歳クラシック戦線において、「素質馬」と呼べる産駒はこのブラストワンピースが筆頭格。昨年に続いてGⅠ馬を出せるのかに注目が集まっています。
ハービンジャー産駒の特徴については以下の記事に詳しく解説しているので、よければご覧下さい。
血統
これまでにGⅠ馬となったハービンジャー産駒3頭はすべて母系にNureyevの血を引いており、ブラストワンピースもこれに当てはまります。母父キングカメハメハはモズカッチャンと同配合で、Kingmanbo←Nureyevの血が長い直線に向いたストライド走法の源です。
✳︎ブラストワンピースは母母父にフジキセキが入り、しなやかストライドで走るトーセンバジルとも配合が似ており、ここからも直線の長いコース向きであることがわかります。
父と母父ともに中距離馬の配合とあって、完成が遅めのストレッチランナーとなりました。今春、そして夏の新潟記念でもまだ緩さの残る馬体をしており、これが締まってくればいよいよ完成期と言えるでしょう。
ベストは2000〜2400mの中距離馬。ただ、気性的に難しい馬ではないので、速い時計の出る京都の芝であれば3000mの距離も問題ありません。ストライド走法なので外回りコースはプラスですし、「淀の下り坂」も苦にはしないでしょう。
菊花賞に向けて
新潟記念の豪快な追い込みが鮮烈ですが、毎日杯のように好位のインで我慢する競馬もできる馬。そのため、内枠ならスタート次第で好きなポジショニングが取れます。
菊花賞はサトノダイヤモンドが制した2016年のように中盤でガクンとペースが緩んだとしても、3コーナー過ぎからペースアップするのがデフォルトなので、ストライドで走るブラストワンピースに合っているレースです。
不安点は1つあります。
・極端なインベタ馬場になること
近年の菊花賞は「高速馬場+インベタ」になることが多く、残り5Fからのロングスパート戦になったとしても、本質的なスタミナを問われることがありません。不良馬場となった昨年はスピードよりもパワーを求められましたが、2016年3着のエアスピネル、15年2着のリアルスティールなど1800mベストのマイラーでも好走できるのが近年の菊花賞です。
インコースを距離ロスなくスムーズに走れるかが問われるので、枠順による有利不利が発生します。ブラストワンピースにとって、「外枠+インベタ馬場」だとレースの組み立てが難しくなるでしょう。
まとめ
近年の菊花賞は関東馬が劣勢のレースが続いています。美浦所属馬は2001年優勝のマンハッタンカフェまで遡らなければなりません。それだけ関東馬にとって鬼門のレースだけに、ブラストワンピースを送り出すノーザンファーム天栄としても力が入るところでしょう。
ブラストワンピースが異例のローテで菊花賞馬となることができるのか、今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。