「不運の名馬」キタサンブラックは、ジャパンカップ(2017年)で再び「歴史的名勝負」を演じられるのか?

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キタサンブラックは「不運」の名馬だ。引退までジャパンカップと有馬記念の2レースを残して、GⅠ6勝、天皇賞の春秋連覇などの実績を積み上げているのだから、競走馬として「運がない」とは言えない。2016〜17年シリーズの「現役最強馬」として一時代を築いたキタサンブラックが、「運に恵まれていない」のはどうしてなのだろうか?

 

名馬としての条件

「名馬」かどうかは「GⅠ◯勝」などの客観的な数字ではなく、その馬に対する主観的な「イメージ」によるところが大きい。例えば、ワンサイドのレースでクラシック3冠を達成したディープインパクト、凱旋門賞を2年連続で2着と好走したオルフェーヴルのように、私たちの想像を超える「走り」を観せた競走馬こそ、「名馬」と呼ぶのにふさわしいのだ。

キタサンブラックの上げたGⅠ6勝の内、私たちの想像を超えるような走りは、不良馬場をものともせずにサトノクラウンと叩き合った今年の天皇賞・秋がその筆頭だろう。これだけの実績を上げながら、「名馬」と呼ぶにはインパクトに欠けていたのは、この馬が「名勝負」に恵まれていなかったからだと言える。

 

ライバルの不在

現5歳のキタサンブラックは「ライバル」に恵まれなかったのも、「名勝負」の少ない原因の1つだろう。この世代の2冠馬ドゥラメンテはダービーを制した後に脚部不安を発症し、古馬になってから復帰したものの、昨年の宝塚記念を最後に引退。キタサンブラックとしのぎを削るレースをする前にターフを去ってしまった。

もちろん、この世代を代表するリアルスティール、アンビシャス、サトノクラウンも「ライバル」に近い存在だったとは言え、2016年シーズンの芝2400〜3200のカテゴリーでは、キタサンブラックと名勝負を繰り広げるまでに至らなかったのだ。

また、1つ世代が上のモーリスは1600〜2000mのカテゴリーのチャンピオン。1つ下の世代のサトノダイヤモンドは今秋の凱旋門賞に挑戦した後は年内休養が発表され、年末の有馬記念での引退が決定しているキタサンブラックと雌雄を決するレースはできないままとなってしまった。ライバルとの「名勝負」が少ないのは、不運としか言い表せない。

 

「枠」に恵まれなかったキタサンブラック

キタサンブラックが不運だったことはもう1つある。それは「枠」に恵まれなかったことだ。それがもっとも表れたのは、サトノダイヤモンドとの対決で注目された今年の天皇賞・春だろう。

このレースはディープインパクトのレコードタイムが大きく更新されるほどの「高速馬場」で行われ、インコースが有利なコンディション。キタサンブラックは有利な内枠、サトノダイヤモンドは不利な大外枠からのスタート。前者はコースロスなく1着となり、後者は終始外目を回っての3着という結果だった。

GⅠを勝つための「運の良さ」は、名馬と呼ばれるための「運の悪さ」に繋がっている。サトノダイヤモンドへのリベンジの舞台となる天皇賞・春において、内枠という「ハンデ」をもらってしまったキタサンブラックは、つくづく不運としか言いようがない。

 

サトノクラウンとの名勝負

不良馬場となった天皇賞・秋は、キタサンブラックとサトノクラウンの胸が締め付けられるほどに壮絶な叩き合いとなり、歴史的な名勝負と言えるレース。5歳の秋に、ライバルと呼べる実力馬との叩き合いを制したキタサンブラックは、これから「名馬」への道を歩むことになるだろう。

芝2400mのチャンピオン・ディスタンスで行われるジャパンカップは、ベストの条件のサトノクラウンと雌雄を決するには願ってもない舞台。「名勝負」と後に語り継がれるほどの内容で、このライバルををふたたび撃破することになれば、キタサンブラックは「名馬」と呼ぶにふさわしい「イメージ」を私たちに与えることになる。

 

想像を超える強さを

ディープインパクトやオルフェーヴルを知らない人に、その「強さ」や「凄さ」を伝えるときには、誰であっても『恋ともぜんぜん違うエモーション』(『FLASH』by Perfume)を感じさせるレース映像を観せるのが手っ取り早い。

私たちの想像を超えるような強さを、キタサンブラックはジャパンカップで魅せることができるのか?

また、サトノクラウンと歴史に残る叩き合いを演じることができるのか?

他馬が手も足も出ないような圧倒的な「逃げ・先行」を演じることができるのか?

紅白歌合戦に登場したときの北島三郎の存在感を、キタサンブラックは再現することができるのか?

今から、名馬への道を歩む馬の出走するジャパンカップが楽しみでならない。

 

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「ちはやぶる」レースを期待して