GⅡ神戸新聞杯('17年)はラブリーデイ的なピッチのレイデオロが好走できるのか?ーーレース展望

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歴史的な「超」のつくスローペースとなった第84回東京優駿を制したレイデオロが秋の始動戦として選択したのは、阪神芝2400m外回りのGⅡ神戸新聞杯。すでに、菊花賞ではなくジャパンカップへ向かうことが発表されているレイデオロにとっては、同世代NO.1の座をしっかりとアピールしたい1戦です。あまりにも勝ちタイムが遅かったこともあり、「凡戦」と評される今年のダービーの価値を高めるためにも、神戸新聞杯は勝ち負けだけではなく内容も問われるレースになりました。

 

ピッチ走法がストライドを制した今年のダービー

第84回東京優駿は、小脚の利いたピッチで走るレイデオロとストライドを伸ばすスワーヴリチャードが直線で叩き合い、スローからの上り勝負を俊敏な加速で抜け出した前者が3歳世代の頂点に輝いたレースとなりました。レース映像のリプレイを観ればはっきりしますが、レイデオロはゴール板まで前脚が伸び切らない走りで、このピッチ走法が直線の長い東京芝2400mを制したのは、「超」のつくスローによるものでしょう。

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スローペースを制するピッチ走法

長い直線をもつ東京競馬場のGⅠは、しなやかにストライドを伸ばして走る馬が活躍しやすいレース。一般的に、ストライド走法はスピードに乗ってしまえば、直線をグイグイと伸びることができるため、コーナーの多い小回り・内回りよりもコーナーが緩く直線の長いコースに向いています。それに対して、一瞬の加速が武器のピッチ走法はびゅんと加速できるものの、長い時間スピードを維持するのが苦手です。東京競馬場で行われるレースは、ストライド>ピッチというのがもっともノーマルな予想と言えます。

 

ジェンティルドンナやラブリーデイ

近年(ここ10年くらい)、俊敏な加速をもつピッチ走法のGⅠ馬と言えば、内回りの宝塚記念と小回り中山の有馬記念を制したドリームジャーニー、牝馬3冠を含めてGⅠ7勝の名牝ジェンティルドンナ、古馬になってからメキメキと力をつけ宝塚記念と天皇賞・秋を勝ったラブリーデイなどが挙げられます。

この3頭のなかで、東京コースの古馬GⅠを勝ったのはジェンティルドンナとラブリーデイの2頭。ジェンティルドンナがジャパンカップを勝ったときの上り3Fが33.9、ラブリーデイの天皇賞・秋の上りが33.7ですから、どちらもスローペースをピッチで一気に抜け出しての勝利でした。また、2頭ともに先行して抜け出す競馬を得意とし、ピッチ走法の馬というのは総じてスタートが巧いというのも大きな特徴です。

今年のダービーをもち出さなくても、東京コースの中距離GⅠはスローペースがデフォルト。ジェンティルドンナが東京のGⅠで好走したのは、高い競走能力だけではなく、スローペースが得意な名牝だったからでしょう(今でもジェンティルドンナのベストパフォーマンスは引退レースとなった有馬記念1着だと思っています)。

だから、キングカメハメハ×シンボリクリスエスで伸びのある体型にもかかわらずストライドの伸びないレイデオロが、2番手から上り33.8の脚でダービーを制したとしても、驚くことはないのです。

 

レイデオロの神戸新聞杯は?

一夏を越して馬体がパワーアップしたとしても、走法そのものが大きく変わることはないので、直線の長い阪神芝2400m外回りコースで行われる神戸新聞杯は、レイデオロにとってスローペースが望ましいレース。上り3F33秒台のレースになれば、ダービー馬としての力を発揮するシーンもあり得ます。

 

今開催の阪神は直線の路盤が硬い

秋の阪神開催はここ2週のレースを観ても、上りの速い決着が目立ちます。これは、コースの路盤が硬くなっていることが最大の原因です。雨の降り続いた16日(土)に行われた2歳OPの野路菊Sで、勝ったワグネリアンは上り3F33.0をマークしました。レースがスローペースだったとは言え、2歳戦+重馬場でこのタイムが出るというのは、路盤が硬くなっているからに他なりません。

17日(日)のメインレースとして行われた3歳牝馬の重賞「GⅡローズS」も勝ったラビットランの上りは33.5とかなり速いタイム。前半1000mの通過が58.5秒とペースが流れたなかでも、勝ち馬はこれだけ速い脚を使えたので、馬場もレイデオロにはプラスと言えるでしょう。

 

神戸新聞杯はスローペースになるのか?

神戸新聞杯に出走登録している馬のなかで、ハナに立つ可能性が高いのは、ハイペースの若葉Sを2番手から押し切り、レースレコードの皐月賞でもかかんに逃げたアダムバローズが最有力。スタートはそれほど速くはないものの、しっかりとペースを作っての逃げ・先行がもち味の馬ですから、それほどのスローペースは考えられません。ただ、アダムバローズのこれまで走ったレースのもっとも長い距離は2000mということから、初距離の2400mでややスローにコントロールすることもあり得ます。

ダービーを逃げたマイスタイルは、スローペースのスムーズな展開であればハナにこだわらなくてもOK。アダムバローズが離して逃げるのであれば、2番手のポジションでレースの流れをコントロールすれば良く、ムリな競り合いは100%ないでしょう。

問題な2番手以下の先行勢が前を積極的に突つき、レースの上りがかかるような展開にもち込むのかどうかです。スローペースのダービーで、長く良い脚を使える長所を出し切れなかったダンビュライト+武豊騎手は、内で包まれないように外目のポジションを取るでしょうし、上りの速い競馬にならないようなレースメイクをするはずです。上記のことを考えても、レイデオロの望むようなスローにはならない公算が大きいと言えます。

 

レイデオロは前目のポジションを取れるのか?

レイデオロは新馬戦を除くと、残りすべてのレースで後方からの競馬をしています。ダービーはスローペースを見越してルメール騎手が向正面で2番手にポジションを押し上げましたが、スタートしてから2コーナーまでは後方を追走。ポンと好スタートを切って先行するようになれば、レイデオロはその力を100%発揮できるのですが……。

ジェンティルドンナやラブリーデイのような先行押し切りの競馬をするためにも、一夏を越して馬体がパワーアップし、好スタートを切るための筋肉が付いているのかに注目しましょう。

 

ジャパンカップよりも菊花賞の方が……

馬主や生産者、そして厩舎の方針などから、レイデオロは神戸新聞杯のあとに菊花賞ではなくジャパンカップを目指します。距離適性からの選択肢とは言え、今年の菊花賞は3000mは昨年のようなスローペースになる可能性の高いメンバー。レイデオロはスローペースがドンと来いですし、淀の3コーナーに待ち構える下り坂もそれほど苦にしないので、天皇賞・秋よりは……と私的には思います。天皇賞・秋だと上り33秒台のレースになるかどうかは半々ですしね。

 

まとめ

阪神芝2400mの外回りコースで、レイデオロのピッチが活きるレースになるのか、それともダンビュライトやキセキ、カデナといったストライドで走る馬がバキューンと弾ける脚を使えるのか、神戸新聞杯は菊花賞トライアルとして以上に馬券としても楽しみなメンバーが集まりました。

ラブリーデイ的なピッチ走法のレイデオロが神戸新聞杯とジャパンカップで輝きを放てるのかは、今秋の注目となるでしょう。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。