GⅢ小倉2歳S('17年)は北米の良質な血統をもつモズスーパーフレアに注目ーー展望

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6週間(全12日間)におよぶ夏の小倉開催の最終週を飾るのは、GⅢ小倉2歳S(小倉芝1200)。このレースで重賞初制覇に挑む藤田菜七子騎手(フローラシトラスに騎乗)の参戦にも注目が集まりますが、今年の小倉2歳Sは良質な配合をした素質馬が揃った印象を受けます。

1番人気が想定される音無秀孝厩舎のモズスーパーフレアは北米の良質な血が重ねられた味のある配合の外国産馬。8月19日のデビュー戦でマークした1分8秒5の勝ち時計は、今開催の小倉で行われた「芝1200mの2歳新馬戦」の最速。完成度の高い外国産馬がそのあふれるスピードで重賞制覇となるのでしょうか?

今回の記事では、モズスーパーフレアの血統とレース内容について解説します。

 

モズスーパーフレア 2歳牝馬

父:Speightstown

母:Christies Treasure(母父:Belong To Me)

厩舎:音無秀孝(栗東)

音無秀孝厩舎からはモズスーパーフレア、アサクサゲンキ、イイコトズクシの3頭が小倉2歳Sにスタンバイ。厩舎の主戦ジョッキー・松若風馬騎手が乗るのがモズスーパーフレアとあって、この馬の期待の高さがわかります。8月19日の新馬戦(小倉芝1200m)は外国産馬らしい完成度とスピードで押し切り勝ち。重賞でも十分に通用する良質なスピード能力を見せました。

 

Speightstown産駒は外れが少ない?

現在、北米リーディングサイアー・ランキングの16位(Bloodhorse.com参照)に位置するSpeightstownはGone West直仔のスプリンター。日本では今年のNHKマイルC2着のリエノテソーロの他、ドスライスやエーシンジェイワンなどのOP馬を出しています。ここまで('17年8月27日終了時点)19頭がJRAに出走し15頭が勝ち上がり、その内2勝以上が13頭とかなりの好確率で走る仔を出しています。

SpeightstownはGone Weat直仔らしい短距離向きのスピードと完成度の高さが武器で、芝・ダートを問わずに1400m以下で好成績を上げているのが特徴。GⅠを勝ち切るまでの底力に欠けるものの外れが少ないため、馬主や生産者にとっては重宝する種牡馬と言えるでしょう。

 

モズスーパーフレアの配合は?

モズスーパーフレアは父Speightstown×母父Belong To Me(Danzig直仔)ですから、同じ父をもつリエノテソーロ(母父がDanzig直仔の)と配合のアウトラインは似ています。この2頭は父がMr. Prospector系×母父Nothern Dnacer系ですから血統表の8分の5が同血の間柄。母母父にNothern Dnacer系スプリンターのDanzigを引くことで、ゴリゴリとパワーで先行しスピードで押し切るレースが理想でしょう。

モズスーパーフレアの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

リエノテソーロの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

この2頭の違いは血統表の8分の3の部分で、モズスーパーフレアは母母母のBid GalがBold Ruler系ですから、この血をより増幅しています。特徴的なのは父父母Secrettameと父母母Siken Doll、母母母Bid Galが似た血統構成をしていることです。

Secrettame:父父母
Secretariat Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
Somethingroyal Princequillo
Imperatrice
Tamarett Tim Tam Tom Fool
Two Lea
Mixed Marriage Tudor Minstrel
Persian Maid
 
Silken Doll:父母母
Chieftain Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
Pocahontas Roman
How
Insilca Buckpasser Tom Fool
Busanda
Copper Canyon Bryan G.
First Flush
 
Bid Gal:母母母
Bold Bidder Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
High Bid To Market
Stepping Stone
Nowmepache Hangover Apache
Corn Likker
Fool - Me - Not Tom Fool
Cuadrilla

Bold Ruler×Tom Foolという似た血統構成の3頭の繁殖牝馬が5代血統表の3代目に位置することで、よりこの血を強めていることがわかります。

Bold Rulerは北米の大種牡馬の血統表には「ほぼ」入っている血。A.P. IndyやSeattle Slewなどのしなやかさを伝える種牡馬にもその名前を見つけられますが、北米の平坦・小回りのダートにマッチしたStorm CatがもっともBold Rulerらしさを伝える種牡馬と言えるでしょう。ここから小回りを先行する器用さとスピードが子々孫々に伝わっているのです。

モズスーパーフレアはそのBold RulerとTom Foolという「無駄のないキレイな脚さばき」で走る血を併せもっていて、新馬戦の4コーナーをスピードを上げながら曲がってきたのは、いかにもこの名種牡馬2頭の影響を感じさせる走りでした。

今年のダービー馬レイデオロ、オークス馬のソウルスターリングともにこのTom Foolの血を引いています。レイデオロがダービーで一気に先行勢に取り付いてからスッとペースダウンできたのも、ソウルスターリングがオークスで好位から直線でスッと抜け出したのも、器用さと乗り手の指示に従順なところがいかにも「Tom Fool的」。

モズスーパーフレアはこのBold RulerとTom Foolがしつようにクロスされ、より小回り向きのスピードと機動力に長けている配合。上り坂のない小倉芝1200mはもってこいのコースで、2歳限定の重賞であればやや大レースを勝ち切る底力に欠けるGone Westであっても大丈夫でしょう。

 

新馬戦の内容

デビュー戦の勝ちタイム1分8秒5は今開催に行われた「小倉芝1200mの2歳新馬戦」の最速。前後半3Fは34.0 - 34.5の0.5秒の前傾ラップを先行しての押し切り勝ち。今夏の小倉は開幕週からここまで速い時計の出る馬場コンディションとは言え、余力十分に走ってのこの時計は高評価できるものです。

好スタートを切ると、内からハナを主張するミンミンレジーナを一旦は行かせて好位の外に控えたものの、3コーナーではスピードの違いで先手を取っての逃げ。4コーナーから仕掛けられるとスッと反応し、外からポジションを押し上げてきたジャスパープリンスをしっかりと抑えての1着。3着以下を1秒以上離す快勝で、ここでは力が抜けていたという内容でした。

レースラップは12.1 - 10.7 - 11.2 - 11.6 - 11.1 - 11.8で、残り600〜400mの区間でやや緩めてから、しっかりとラスト2Fを11.1 - 11.8とまとめてゴール。4コーナーでジャスパープリンスに並びかけられたところでしっかりと加速して後ろを離したように、この器用さとスピードの緩急の自在さがBold RulerとTom Foolを体現しています。

470kgとこの時期の牝馬としては馬格にも恵まれ、仕掛けられたときのしなやかさはダートよりも芝への適性を感じさせるもの。逃げなくてもレースのできるタイプで、これだけクロスのうるさい配合ながらも気性的な難しさを出さなかった初戦からも、極端に揉まれなければ馬群の中でもレースができるはずです。

 

小倉2歳Sに向けて

中1週での長距離輸送となること、前半3Fが33.5を切るようなペースでの追走になったときに初戦のようなコーナー加速力を見せられるのかなどの不安はあるものの、新馬戦の内容は掛け値なしに優秀なもので、好位追走からしっかりと脚が使えればここでも好走の可能性は十分に。

逃げの手に出そうなアサクサゲンキは同厩舎+武豊騎手ですから、モズスーパーフレアにとって不利なペースを作るとは考えられません。内枠に入り、スタートで後手を踏み、極端に馬群に揉まれるような展開にならなければ……。おそらく1番人気に支持されるので、オッズと凡走のリスクとを天秤にかけて……という感じの1頭ですね。

 

まとめ

モズスーパーフレアはSpeightstown産駒としても味のある配合で、これだけアメリカ血統で固められていると繁殖牝馬としても楽しみな1頭と言えます。

欧州系の種牡馬とは好相性で、母父にパワー・スプリンターのSpeightstownが入るため、もちろんディープインパクトをつけたらそれだけで重賞のひとつくらいはツモれそうですね。

重賞でモズスーパーフレアがどのような走りを見せるのでしょうか?今からレースが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。