11月25日(土)、京都競馬場のメインレースは2歳中距離重賞の「ラジオNIKKEI杯京都2歳S(芝2000m)」が行われます。今年、ホープフルS(中山芝2000m)が2歳GⅠへと格上げされ、中距離の路線が拡充されました。
✳︎2歳GⅠはこれまで、1600mの朝日杯FSと阪神JFの2レースのみ
京都2歳Sは2歳中距離のチャンピオンを決めるホープフルSに向けて、大切なステップレースとなります。ここからGⅠを展望する馬は現れるのでしょうか?
京都芝2000mは内回りコース
ラジオNIKKEI杯京都2歳Sの行われる京都芝2000mは、直線の短い「内回り」コース。そのため、直線でバキューンと脚を使うだけではなく、コーナーをいかにロスなく立ち回るのかの「器用」さも求められます。
内回りコースはピッチ走法が優勢?
コーナー距離が長く、直線の短い内回りコースは脚の回転の速いピッチ走法の馬に有利な舞台。ストライドを大きく伸ばすタイプだと、コーナーでスピードを上げにくく、ロスが生じてしまいます。
2歳戦は素質が器用さを上回る
2歳戦は来春のクラシックを展望する素質馬が出走している場合、コーナーの器用さがなくとも高い能力で押し切ってしまうこともあります。素質が器用さを上回るシーンも頭に入れておきましょう。
ラジオNIKKEI杯京都2歳Sの注目馬は?
前日の時点で単勝オッズ10倍を切っているのは4頭。未勝利→OP萩Sと連勝したタイムフライヤーが抜けた1人気の支持を集めています。それでは、この上位人気の馬を1頭ずつ見ていきましょう。
タイムフライヤー 2歳牡馬
父:ハーツクライ
母:タイムトラベリング(母父:ブライアンズタイム)
厩舎:松田国英(栗東)
生産:社台コーポレーション白老ファーム
重心の低い迫力満点のフォームはいかにも素質を感じさせるもの。新馬戦は札幌2歳S(GⅢ・札幌芝1800m)を制したロックディスタウンの2着と敗れたものの、その後は余裕十分に2連勝を上げ、ここへ駒を進めてきました。
血統
父ハーツクライ×母父ブライアンズタイムの配合は、ダービー卿CTを制した牝馬マジックタイムと同じ。前脚を力強くかき込むようなタイムフライヤーのフォームはマジックタイムと似ていて、小回り+急坂をパワーで捲るのが真骨頂でしょう。
新馬→未勝利と速い上りを出して好走しているように、直線の長い外回りコースだとスローがベター。重賞レベルになると「軽い」瞬発力よりは持続力で勝負したいタイプです。本質は中山芝2000mで行われるホープフルSや皐月賞向きの馬だと言えます。
京都2歳Sに向けて
コーナーをスムーズに加速できるので、内回りコースに替わるのはプラス。直線が平坦な京都よりは、急坂のある阪神や中山がベターです。ただ、やや時計のかかって「外差し」になっている現在の京都芝は、この馬に向いている条件です。
C・デムーロ騎手は前走でこの馬に騎乗しているため、内回りコースでの仕掛けどころも間違わないでしょう。前走、タフな芝コンディションで勝ち上がったので、その疲労がしっかりと取れていれば、好走の可能性も十分です。
グレイル 2歳牡馬
父:ハーツクライ
母:プラチナチャリス(母父:ロックオブジブラルタル)
厩舎:野中賢二(栗東)
生産:ノーザンファーム
菊花賞の当日、不良馬場で行われた新馬戦を快勝すると、1勝馬として重賞に挑戦してきました。前脚を力強くかき込む走法はいかにも母父ロックオブジブラルタル(デインヒル直仔)の影響です。陣営が新馬→京都2歳Sと同じ内回りの舞台を選んでいるのは、この馬の適性を考えてのことでしょう。
血統
母プラチナチャリスはダービー卿CTを制したロジチャリス(父ダイワメジャー)などの活躍馬を出している好繁殖牝馬。ハーツクライ産駒のグレイルは、半兄よりも馬体に伸びのある中距離馬の体型。ただ、走る姿は半兄と同じくパワー型で、不良馬場を苦にしなかった新馬戦の走りも納得です。
同じハーツクライ産駒のタイムフライヤーと較べると、こちらはトモが立派なのが大きな特徴。その分だけ馬体の完成も早いタイプだと言えます。現状では小回り中山芝2000mがベストです。
京都2歳Sに向けて
それほどストライドが伸びるタイプではないので、内回りのコースに向いています。タイムフライヤーよりもトモが発達していることから、3コーナーの下り坂をスムーズに走れるのかがポイントとなるでしょう。
パワー型なので外差し+やや時計のかかる現在の京都芝は苦にしませんし、馬場は重くなればなるほど好走の可能性は高まります。新馬戦と同じように、瞬発力を問われないレースになれば、大きく崩れることはなさそうですが……。
スラッシュメタル 2歳牡馬
父:ワークフォース
母:ゼマティス(母父:ゼンノロブロイ)
厩舎:西村真幸(栗東)
生産:ノーザンファーム
新馬戦は危なげない完勝劇。4コーナーをスムーズに立ち回ったのはこの馬の器用さの表れで、母ゼマティスのもつHalo3×5のクロスによるものでしょう。M・デムーロ騎手への乗り替わりとあって、好走への期待も高まりますね。
血統
母ゼマティスはダービー馬ロジユニヴァース(父ネオユニヴァース)の4分の3妹で、名牝ソニンクを祖母にもちます。今年の秋華賞を勝ったディアドラもこの牝系の出身。
Machiavellianを父にもつソニンクはサンデーサイレンス系の種牡馬を配するとHaloのクロスが発生し、この牝系が総じて小回りを苦にしないのは、器用さに秀でたHaloの血によるところが大きいと言えます。
スラッシュメタルの俊敏な脚さばきはいかにも内回り向き。ただ、新馬戦では騎手に追われてからグッと前脚が伸びているところもあり、ワークフォース産駒としては体質が柔らかい馬です。
京都2歳Sに向けて
新馬戦と同じ京都の内回りコースはこの馬の適性に合った舞台。上りの速い瞬発力勝負だと苦しいので、時計のかかるコンディションになっているのはプラスです。
M・デムーロ騎手を配し、いかにも勝負気配が漂っていますね。母系の質としては重賞を勝てるポテンシャルはあるはずです。ワークフォース産駒はJRAの重賞が未勝利なので、ここで初勝利なるのかに注目しましょう。
マイハートビート 2歳牡馬
父:ゼンノロブロイ
母:トゥーピー(母父:Intikhab)
厩舎:高橋義忠(栗東)
生産:ノーザンファーム
好繁殖牝馬トゥーピーの仔は「サトノ」の冠名でお馴染みの里見氏の所有馬であれば池江寿厩舎に入りますが、マイハートビートは高橋義忠厩舎に入厩。
新馬戦から前走の紫菊賞まですべて小回り・内回りコースを走っているように、コーナーでの器用さに長けたタイプです。ここまでの3戦はルーカス、サヤカチャン(アルテミスS2着)、トゥザフロンティアなどの素質馬と対戦しており、崩れることなく走っている安定感が魅力の1頭。
血統
母トゥーピーはダービー2着のサトノラーゼン(父ディープインパクト)など、重賞級の馬を出す好繁殖牝馬。マイハートビートは父がゼンノロブロイに替わり、Mr. Prospector4×5のクロス譲りの柔らかさも合わせもっています。
母父IntikhabはRoberto系なので、パワーを伝えるため、配合のアウトラインはタイムフライヤーと似ています。内回り向きの器用さとしなやかさを合わせもっていることから、京都内回りはベストコースでしょう。
京都2歳Sに向けて
今年は芝での活躍が少ない幸騎手が重賞を勝ち切れるのかがポイント。母系の配合的にも2歳重賞は好走できるレベルにあるので、ここも大きく崩れることは考えにくい1頭です。
これまではハイレベルな相手にも好走しており、前走でも器用にインから素質馬のトゥザフロンティアを差しましたから、同じような競馬ができればチャンスも十分です。
予想
4頭ともに内回り向きのパワーと器用さを備えていることから、どの馬を軸にしてもOKのレースです。馬体や走りからはタイムフライヤーが一歩リードしている印象(個人的な好みによります)です。
いずれも社台系ファーム生産馬ですから、2〜3歳戦の重賞としては心強いかぎり。馬個体云々よりも、騎手の腕と厩舎の調整力の戦いになりそうですね……。
◎タイムフライヤー 2歳牡馬
芝の重賞を勝つとしたら、C・デムーロ+松田国英厩舎というのは大きな魅力。まだまだ伸びしろの大きなハーツクライ産駒ですし、時計のかかる今の京都芝もベストでしょう。
内枠に入ったので、クリスチャンが4コーナーで上手くさばければ……。ここを勝てれば、年末のホープフルSが楽しみになりますね。
相手は混戦
グレイルもスラッシュメタルもマイハートビートもここで好走する可能性も十分ですが、それぞれに騎手と厩舎に不安が……もっとも無難なのはミルコ騎手のスラッシュメタル。
ただ、西村真幸は重賞未勝利ですし、このコンビ(M・デムーロ+西村真幸厩舎)は京王杯2歳Sで2人気に推されたタイセイプライドを8着にトバしてます。
というわけで、馬券を買うならタイムフライヤーから人気薄へ。相手の候補はアイトーン1頭。当日のパドックとオッズを見て、買うかどうかは判断します。
アイトーンについて
新馬戦は出遅れて上り最速(33.6)で差したものの届かず7着。未勝利戦は一転して逃げの戦法に出て後続を完封しました。前脚を伸ばし、叩きつけるような走りからも、ベストは外回りコース。
とは言え、スンナリと逃げられるメンバーですし、国分恭介騎手が後ろを話して逃げられれば……。不安点としては逃げ馬には苦しい外差し馬場になっていること。ただ、その分だけ前を追いかけないはずですから、アレヨアレヨの可能性も。
まとめ
京都2歳SはホープフルSに向けて素質馬が揃った1戦となりました。どの馬がここを勝ち上がるのか、今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。