宝塚記念が行われる6月の阪神開催は、「開幕週:高速→最終週:タフな馬場」になるのが近年のデフォルトです。JRAの芝コース(✳︎)はエクイターフとエアレーション作業によって、馬場が傷みにくくなっています。また、開催が進むにつれて速い時計の出るコンディションに変わるのも大きな特徴です。
✳︎洋芝の函館・札幌開催は除く
ただし、6月の阪神開催は「梅雨」の影響を受けることが多く、開幕週が高速馬場だったとしても最終週にはタフになることがままあります。高速馬場に適性のないゴールドシップが13・14年と連覇し、タフな馬場に強いマリアライトがキタサンブラックやドゥラメンテを退けたように、宝塚記念が高速馬場にならないレースと言えるでしょう。
現在の阪神芝は高速馬場
開催初日のメインレースとして行われた鳴尾記念(GⅢ・阪神芝2000m)はストロングタイタンが1分57秒2のレコードタイムで勝利。このことからも、現在の阪神芝コースは速い時計の出るコンディションだとわかります。
ストロングタイタンが直線で内を突いて伸びてきたように、阪神の芝コースは「前々+イン」有利。外回りコースでも直線を外から差してくる馬が見当たらなかった(✳︎)ですし、インベタ馬場と考えてOK!
✳︎3〜4コーナーでペースが上がらず、直線入口で逃げ・先行馬が捲られたときは外差しになることも。
6月10日(日)のメインに組まれているマーメイドS(GⅢ・阪神芝2000m)も雨の影響を受けなければ、勝ちタイムが2分を切る好時計が期待できます。
マーメイドSの注目馬
マーメイドSは中距離に適性のある牝馬が集まる重賞。ハンデ戦ということもあり、「実績馬 vs 条件戦からの上がり馬」が火花を散らします。ヴィクトリアマイルが創設されてからはGⅠ実績のある馬の参戦が少なくなり、上がり馬の好走も目立つレースです。
今年はエテルナミノル、キンショーユキヒメ、トーセンビクトリーの重賞馬3頭が上位の人気に推されるメンバー構成。条件戦を連勝してきた勢いのある上がり馬がいないため、実績馬が人気の中心になります。とは言え、実績馬だけですんなりと決まらないのが牝馬限定の重賞レース。ここではソコソコに人気のない注目馬をピックアップします。
エマノン 5歳牝馬
父:ハーツクライ
母:ピラミマ(母父Unbridled's Song)
厩舎:平田修(栗東)
生産:ノーザンファーム
エマノンは500万下を単勝52.1倍、1000万下を単勝45.7倍で制しているように、「あっ!」と驚く人気薄での好走が目立つ馬です。掲示板内に安定して入線する馬ではないため、未勝利戦を除く全3勝はすべて5番人気以下でのもの。スワーヴリチャードの全姉という良血ながら、「人気先行」にならないのが嬉しいですね。
マーメイドSは3歳時に出走したフローラS以来となる重賞挑戦となります。1600万下の身とあって、ここで好走するには高いハードルを越えなければなりませんが、もてるポテンシャルは引けを取らないはずです。ハンデ差を活かしての好走に期待したい1頭。
血統
母ピラミマはどんな種牡馬を配してもスワーヴリチャード(父ハーツクライ)やバンドワゴン(父ホワイトマズル)などの「しなやかストライド」の馬が出ており、柔らかさとスピードを高確率で伝える繁殖牝馬です。
Unbridled's Songは母父として優秀な種牡馬で、日本でもスワーヴリチャード、トーホウジャッカル、ダノンプラチナの3頭がGⅠを勝っています。スピードとパワー、軽い芝にも対応できる柔らかさをもつことから、今後も母系に入って力を発揮するでしょう。
エマノンの母ピラミマとダノンプラチナの母バディーラはUnbridled's Song × General Meeting × Never Bendとほぼ同じ配合。父ディープインパクトのダノンプラチナは父ハーツクライのスワーヴリチャードやエマノンよりも「しなやかさ」が優れていますが、この配合は東京などの直線の長いコースがベストです。
エマノンも全弟と同じく成長曲線は緩やかで、5歳となったこれからもっと強くなるでしょう。重賞を好走できるポテンシャルを十分にもっているだけに、今後の走りに期待しています。
マーメイドSに向けて
今年のマーメイドSは「逃げ」馬が不在。もともと牝馬限定の重賞は何度も顔を合わせたメンバーで争うことからスローになりやすく、ここもペースは落ち着くでしょう。スタートさえ決まればエマノンが逃げれる組み合わせ。鞍上の松若騎手は、2016年のリラヴァティで4コーナー先頭から同レースを制していますし、そのイメージで乗れればチャンスもあります。
エマノンは本質的に直線の長いコース向きの馬なものの、3〜4コーナーで前々のポジションを取れればしぶとく粘り込めるはず……。スタートが安定していていないので、リカバリーのしやすさを考えると内枠よりも外枠がベター。内枠ならスタートの後手は致命的になります。
内回り・小回りコース向きのトーセンビクトリー、レイホーロマンス、エテルナミノル、キンショーユキヒメの実績馬4頭は素直に強敵。ただ、これらの馬は高速馬場がずんどばなタイプではなく、勝ち時計が1分59秒ソコソコで上りの速い競馬になるならエマノンにもチャンスが出てきます。
まとめ
阪神競馬場は日曜日に雨の予報が出ているので、今の馬場がどこまで継続するのかがポイント。上位人気に推される4頭は「高速馬場がバッチリ!」というわけではないので、恵みの雨になるのか……。
以上、お読みいただきありがとうございました。