2018年・下半期のGⅠ(✳︎)はファインニードルの制したスプリンターズSを除くと、秋華賞、菊花賞、天皇賞・秋、エリザベス女王杯とすべてノーザンファーム生産馬が1着となっています。
✳︎JBCなどのJpnⅠを除く
▼2018年・下半期のGⅠ
スプリンターズS
1着:ファインニードル
生産:ダーレー・ジャパンF
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秋華賞
1着:アーモンドアイ
生産:ノーザンファーム
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菊花賞
1着:フィエールマン
生産:ノーザンファーム
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天皇賞・秋
1着:レイデオロ
生産:ノーザンファーム
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エリザベス女王杯
1着:リスグラシュー
生産:ノーザンファーム
今年のGⅠでトレンドとなっているのは、「ノーザンファーム天栄+関東馬+C・ルメール騎手」の組み合わせ。エリザベス女王杯をリスグラシューが制したことで、この流れは止まったものの、結局は「ノーザンファーム生産馬+外国人騎手」の結果でした。
ノーザンファームはC・ルメール騎手を確保するために、レイデオロとアーモンドアイ、ディアドラのレースを使い分けて(✳︎)います。もう、年内の残りのGⅠをすべてノーザンファーム生産馬が勝ってしまうのでは? と思えるほどのレース選択です。
✳︎アーモンドアイはジャパンカップ、レイデオロは有馬記念、ディアドラは香港国際競争へ出走
マイルCSは「ノーザンファーム生産馬」?
今年のマイルCSに登録している20頭の内、ノーザンファーム生産は7頭を数えます。
▼ノーザンファーム生産馬
アエロリット
アルアイン
ステルヴィオ
ヒーズインラブ
ミッキーグローリー
レッドアヴァンセ
ロジクライ
(50降順)
ここに向けて素晴らしいメンバーが揃いました。昨年のマイルCSは追分ファーム(社台系ファーム)のペルシアンナイトが制しているので、ノーザンファームとしても巻き返したいところでしょう。
このなかでもっとも人気を集めるのは今春の安田記念を2着と好走したアエロリット。休み明けだった前走の毎日王冠を快勝し、マイルCSに向けて好スタートを切っています。
アエロリットの他にも、皐月賞馬のアルアイン、今年の3歳クラシックの中心にいたステルヴィオ、富士Sを快勝したロジクライ、良血馬レッドアヴァンセなどの有力馬が揃いました。
ノーザンファームの戦略は?
ノーザンファームの主戦はC・ルメール騎手です。そのルメール騎手はモズアスコットに騎乗するため、ノーザンファームがどの馬にどの騎手を配置するのかは予想をする上で大切なポイントとなります。現時点での想定は以下の通りです。
アエロリット:R・ムーア
アルアイン:川田将雅
ステルヴィオ:W・ビュイック
ヒーズインラブ:藤岡康太
ミッキーグローリー:戸崎圭太
レッドアヴァンセ:北村友一
ロジクライ:C・デムーロ
モレイラ騎手が一時的に日本を離れるため、アエロリットの鞍上はR・ムーア騎手となりました。ムーア騎手は2015年のマイルCSをモーリスで制しており、コースに不安はありません。
アルアインは秋のGⅠで好調な川田騎手をゲット(✳︎)。「池江寿厩舎+川田騎手」のコンビと言えば、安田記念を制したサトノアラジンなどがおり、コレは大幅な鞍上強化と言えるでしょう。
✳︎川田騎手はエリザベス女王杯の当日に負傷しており、マイルCSに騎乗できるのかは不明です
W・ビュイック騎手はこれまでマイルCSに2回出走し、2014年5着、2013年5着とソツのない騎乗をしています。ステルヴィオはC・ルメール騎手が主戦を務める馬だけに、ノーザンファームの期待も大きい1頭です。
レッドアヴァンセはノーザンファームからの信頼が厚い北村友一騎手とコンビを組みます。北村友騎手は外国人騎手の乗れないノーザンファーム生産馬に騎乗することが多く、関西の石橋脩騎手のような立ち位置です。
ロジクライはC・デムーロ騎手を確保しました。前走の富士SでC・ルメール騎手が騎乗したことから、ノーザンファームにおけるこの馬のポジションがアップしていることは間違いありません。ここでC・デムーロ騎手を配したのは大きな期待の表れでしょう。
先行馬が多く出走
上記の7頭の内、先行馬はアエロリット、アルアイン、レッドアヴァンセ、ロジクライの4頭。今年のマイルCSはこの4頭の他に強力な先行馬が不在とあって、レースのペースをノーザンファーム生産馬が支配することが可能です。
今年のマイルCSで上位の人気に推されるモズアスコットとペルシアンナイトは差し・追い込み馬。この4頭がチームを組んで先行することになれば、人気2頭の末脚を封じるシーンも……。
もちろん、この4頭が「先行馬に有利なペース」を作ることは、それぞれの能力を発揮することにつながるわけで、プラスにしかなりません。「チーム」としてレースのペースを握ることができれば、ノーザンファーム生産馬から1着馬を出す可能性が高まります。
注目馬は?
ノーザンファーム生産馬のなかでもっとも注目しているのは、名繁殖牝馬エリモピクシーの仔レッドアヴァンセです。牡馬相手だった前走の富士Sの予想でも◎にしたように、直線の長いコースのマイル戦はベストの舞台。
エリモピクシーの仔は高い確率でOPまで出世し、クラレントとレッドアヴァンセとレッドヴェイロン3頭がGⅠ3着の好走歴をもっています。GⅠを制するにはあと1歩が足りないものの、ノーザンファームによるチームプレイの後押しがあれば2・3着に入線することも……。
レッドアヴァンセ 5歳牝馬
父:ディープインパクト
母:エリモピクシー(母父ダンシングブレーヴ)
厩舎:音無秀孝(栗東)
生産:ノーザンファーム
エリモピクシーの6番仔レッドアヴァンセは今春のヴィクトリアマイルを3着と好走し、改めてマイルへの適性の高さを示しました。
前走の富士Sは7番手のポジションからバキューンと脚を使ったものの3着に敗退。本質的には2・3番手から粘り込む競馬がベストなので、前目に付けられれば前走よりもパフォーマンスを上げられます。
外目から揉まれずに先行できれば重賞級の力を発揮できるだけに、「牡馬相手のGⅠでも!」と期待したくなる1頭です。
血統などについては以下の記事に詳しく解説しているので、よければご覧下さい。
北村友一騎手とのコンビ
北村友一騎手は今秋、秋華賞でラッキーライラック(✳︎)、天皇賞・秋でアルアインに騎乗するなど、GⅠにおいても有力馬が回ってきています。
✳︎石橋脩騎手が負傷のために乗り替わり
ノーザンファームは「セカンド・ドライバー(✳︎)」として北村友騎手を育成しているのでしょう。重賞やGⅠにおいても北村友騎手を積極的に乗せることが多くなりました。
✳︎外国人騎手が手配できなかったときの代役
レッドアヴァンセと北村友騎手のコンビは今年から。阪神牝馬S、ヴィクトリアマイル、富士Sと乗り替わることなく起用されており、北村友騎手はこの馬を完全に任されたのだと考えられます。これなら、騎手に大きな不安はありません。
揉まれずに先行できれば……
エリモピクシーの仔はクラレント、レッドアリオン、サトノルパンと馬群に揉まれることが苦手。この気性はレッドアヴァンセにも受け継がれており、好走のパターンは外からスムーズに先行したときです。
内枠に入ってしまうと馬群に揉まれる怖れがあるので、5枠よりも外に入るのがベター。もし1枠に入ってしまったら、腹を括っての「逃げ」の手も考えられます。
逃げる可能性も?
「チーム・ノーザンファーム」として考えると、アエロリットとアルアインとロジクライの3頭は「逃げ」の選択肢を取りにくく、逃げるとすれば揉まれ弱いレッドアヴァンセが有力です。
ただ、管理する音無調教師が「逃げ、絶対ダメ!」なタイプなので、どうしますかね? もしレッドアヴァンセがマイルCSで逃げるようだと、ノーザンファームの意向が強く出たと考えられるでしょう。
個人的には1枠に入ってしまったら逃げるのがベスト。半兄のレッドアリオンは関屋記念で逃げ切り勝ちを上げていますし、血統的に大きなマイナスはありません。
まとめ
今年のマイルCSはノーザンファーム生産の先行馬がレースを支配できるのかが大きなポイント。アエロリットにR・ムーア騎手を手配したことから、ノーザンファームは前々から進める馬に有利なペースとなるような組み立てを考えるはずです。
先行馬ペースに乗って好走するのはアエロリット、アルアイン、ロジクライ、レッドアヴァンセのどの馬なのでしょうか。今からレースが楽しみになりますね。
以上、お読みいただきありがとうございました。