マイルCSの行われる京都競馬場の芝は「軽い馬場」と表現されることが多く、勝ちタイムと上り3Fが速くなる傾向があります。軽い芝に高い適性をもつディープインパクト産駒が京都を得意とするのも、速い上りを使ってバキューンと差せるからでしょう。
秋の京都開催は高速馬場?
秋の京都開催は秋華賞(開催4日目)が1分57〜58秒台の好タイム決着となることから、時計の速い馬場コンディションがデフォルトです。ただ、芝の成長が盛んな春と異なり、雨などで傷んだ馬場が急速に回復することは少なくなります。
現在の京都芝は標準か若干時計の速いコンディション。週末に雨の影響がなければ、馬場は先週よりも少しだけ軽くなる可能性があります。マイルCSの予想をする上でも、土曜日のレースには注目です。
マイルCSは1分31秒台の決着になるのか?
マイルCSは過去10年において、1分31秒台の決着が2回あります。
▼1分31秒台決着のマイルCS
・2014年
勝ちタイム:1分31秒5
前後半800m:45.3 - 46.2
1着:ダノンシャーク
2着:フィエロ
3着:グランデッツァ
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・2010年
勝ちタイム:1分31秒8
前後半800m:45.3 - 46.5
1着:エーシンフォワード
2着:ダノンヨーヨー
3着:ゴールスキー
この2レースは前半800mが45.3と速く、ダノンシャークとエーシンフォワードは直線で内を突いて鋭く伸びてきました。前半が45.5を切るラップになると、1800mベストのマイラーや中距離馬は追走で脚を削がれてしまい、直線で思うような末脚を発揮できません。
この2年で連対したダノンシャーク、フィエロ、エーシンフォワード、ダノンヨーヨーの4頭はすべて1400〜1600mベストのマイラー。1分31秒台の決着になるときは前半800mが自然と速くなっているので、このタイプの馬が好走します。
今年の想定タイムは?
今年のマイルCSは2010年や2014年ほどの「高速」なコンディションではなく、想定されるの勝ちタイムは1分32秒5〜9です。ピュアな逃げ馬がいないことから、前半800mは46秒台になる可能性が高いでしょう。
前後半800mの想定ラップ
46.0 - 46.5(前傾)
46.5 - 46.0(後傾)
前傾になるか後傾になるかで2つのパターンを想定しました。前半800mが46.5前後だと1800mベストのマイラーにも好走のチャンスがあり、前半が46秒を切るようだと1400〜1600ベストのマイラーの舞台となります。
1400〜1600mベストの馬
今年のマイルCSに出走を予定している馬のなかで、1400〜1600mがベストなタイプをピックアップしてみましょう。
✳︎除外対象のグァンチャーレとベステンダンクは除きます
▼1400〜1600ベストの馬
✳︎アエロリット
カツジ
ケイアイノーテック
ジュールポレール
ヒーズインラブ
ブラックムーン
モズアスコット
レッドアヴァンセ
レーヌミノル
ロジクライ
ロードクエスト
(50音順)
今春の安田記念を1分31秒3の好タイムで快勝したモズアスコットは間違いなく1400〜1600ベストのマイラー。高速馬場に強く、前半800mが45秒台になってもまったく苦にしないタイプです。
✳︎のアエロリットはこれまで1800mベストのマイラーだと考えていました。ただ、安田記念2着のパフォーマンスは、古馬になって1600mベストのタイプへとモデルチェンジしたのかと思わせる走り。マイルCSを制したミッキーアイルなどが出る牝系だけに、今なら1600m>1800mなのかもしれません。
レッドアヴァンセは好マイラーを多く出す名繁殖牝馬エリモピクシーの仔で、1600mベストのタイプ。マイルCSを得意とするディープインパクト産駒だけに、高速決着になっても対応可能でしょう。
今春のヴィクトリアマイルを制したジュールポレールは、レッドアヴァンセと同じディープインパクト産駒で、1600mがベストのマイラー。ややパワー体質なので、京都だと1分32秒台の決着がベターです。
モズアスコットはスローになるようだと
モズアスコットはしなやかなストライドで走るマイラーなので、東京や京都の外回りコースに向いています。ただ、しなやかな体質であるため、瞬時に加速することが苦手なタイプ。
もし、マイルCSが46.5 - 45.5のような後傾ラップになると、ポジションによっては差し損ねる可能性も十分です。また、血統表内に欧州の血を多く引くもののパワータイプではないので、道悪やタフな馬場はマイナス。
アエロリットは安田記念のレースがベスト
アエロリットは後傾ラップとなったヴィクトリアマイル4着、前傾ラップとなった安田記念2着という成績からも、脚をためてしなやかにキレるわけではなく、ペースを引き上げて粘り込むレースで力を発揮します。
今走はR・ムーア騎手が乗るとあって、2・3番手から早目に抜け出す競馬をするでしょう。問題は前半800mが46.5よりも遅くなるかどうか……。後傾ラップだとヴィクトリアマイルと同じようなレースになる可能性もあり、その点が不安です。
✳︎R・ムーア騎手が逃げるの手に出ることはほぼありません
1800mベストの馬
次に1800m(2000mも含む)ベストの馬をピックアップします。
アルアイン
ウインブライト
エアスピネル
ステルヴィオ
ペルシアンナイト
ジャンダルム
ミッキーグローリー
皐月賞馬アルアイン、スプリングS勝ち馬のウインブライトとステルヴィオ、大阪杯と皐月賞2着のペルシアンナイトは1800mベストのタイプ。上記の馬たちはペルシアンナイトの勝った昨年のマイルCSのように、前半800mが遅くなると力を発揮します。
どの馬もマイルを好走する能力はあるものの、1分32秒台前半の決着になるようだと苦しいでしょう。アルアインとステルヴィオは高速馬場に高い適性があるとは言え、ピュアマイラーではないので……。
ペルシアンナイトの連覇は?
昨年のマイルCSを制したペルシアンナイトは、主戦のM・デムーロ騎手が「1800mがベスト」と語っているように、マイルのGⅠであれば時計のかかる決着がベターです。
この馬については詳しい解説記事をすでに書いているので、よければ以下をご覧下さい。
アルアインはマイルに対応できるのか?
皐月賞馬のアルアインは1800mベストの中距離馬。マイルそのものは対応できますし、京都コースも苦にしません。ディープインパクト産駒としてはビュンとキレるタイプではないので、本来的にはペースを引き上げたいタイプです。ただ、それだと追走で脚がたまらない可能性も……。
先行勢はノーザンファーム生産馬
今年のまいるCSはノーザンファーム生産の有力馬が揃いました。アルアイン、アエロリット、ロジクライ、レッドアヴァンセと先行馬が多く、これらの馬がチームプレイで先行馬ペースを作るようだと、1800mベストのタイプに向いたペースになることも考えられます。
枠順にもよるものの、アエロリットが2・3番手の競馬となるように、逃げてもOKのレッドアヴァンセとロジクライが引っ張る展開もあり得るでしょう。モズアスコットが外国産馬(非社台系)とあって、ノーザンファーム(+追分ファーム)の包囲網を突破できるのかも注目です。
まとめ
馬場コンディションとしては1分32秒台の決着となってもおかしくありませんが、ペースを引き上げたいのが上位人気のアエロリットのみとあって、どのようなペースになるのか見当もつきません。
前半800mのペース次第によって、結果がガラリと変わるレースだけに、今から展開を想像するのも楽しいですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。