開業4年目となる中内田充正厩舎は、2017年11月5日(日)終了時点で、全国調教師リーディング7位と好成績を上げています。今年はすでに昨年の勝ち星(31勝)を超える40勝をマークし、その活躍ぶりから目が離せません。
好調な厩舎のなかで、もっとも素晴らしいのは2歳戦の成績です。ここまで11頭がデビューし、そのなかから3頭が重賞勝ちを上げています。2歳戦は(9 - 3 - 2 - 4)と勝率0.500、連対率0.677、3着内率0.778ともに恐ろしい数字が並ぶことに……。
中内田厩舎
— 白三点 (@hakusanten) 2017年11月3日
ベルーガで2歳重賞3勝目!
2歳戦は(9 - 3 - 2 - 4)。
す、す、凄すぎる。
今回の記事では、重賞を勝ったフロンティア(GⅢ新潟2歳S)、ダノンプレミアム(GⅢサウジアラビアRC)、ベルーガ(GⅢファンタジーS)の3頭と、すでに勝ち上がっているその他の3頭について解説します。
デビュー戦を勝ち上がった6頭
中内田厩舎の管理する2歳馬の内、すでに勝ち上がった6頭はいずれもデビュー戦で勝利を上げています。
オペラグローブ:(1 - 0 - 0 - 0)
ダノンプレミアム:(2 - 0 - 0 - 0)
タングルウッド:(1 - 0 - 0 - 0)
フォックスクリーク:(1 - 0 - 0 - 0)
フロンティア:(2 - 0 - 0 - 0)
ベルーガ:(2 - 0 - 0 - 0)
*50音順に上から並べました
赤色でマークしたのが重賞勝ち馬です。11月5日(日)までに行われた2歳重賞は8レース。その内の3勝をすべて異なる馬で上げているのですから、中内田調教師が管理する2歳馬全体のレベルの高さがわかります。
重賞馬フロンティア、ダノンプレミアム、ベルーガの3頭について
重賞馬3頭については、それぞれの血統やレースの解説を書いているので、よければそちらをご覧下さい。
フロンティア 2歳牡馬
父:ダイワメジャー
母:グレースランド(母父:トニービン)
生産:社台コーポレーション白老ファーム
新馬戦(中京芝1600m)1着の後に臨んだ新潟2歳S(新潟芝1600m)を勝ち、2戦2勝の素質馬。
ダノンプレミアム 2歳牡馬
父:ディープインパクト
母:インディアナギャル(母父:Intikhab)
生産:ケイアイファーム
新馬戦(阪神芝1800m)を楽勝した後に臨んだサウジアラビアRC(東京芝1600m)は、ステルヴィオなどの素質馬を退け、1分33秒0の好タイムで1着。来春のクラシックへ名乗りを上げました。
ベルーガ 2歳牝馬
父:キンシャサノキセキ
母:アドマイヤライト(母父:Kris. S)
生産:ノーザンファーム
札幌芝1200mの新馬戦を快勝すると、間隔をあけて臨んだファンタジーSは直線外から豪快に差し切りました。さらに200m距離が延びる阪神JFへ向け、上々の内容だったと言えます。
来春のクラシックに向けて
来春のクラシックに向けて、もっとも期待を集めるのはサウジアラビアRCを好タイムで勝ち上がったダノンプレミアム。新馬戦で1800mをこなしていることから、今後マイルと中距離のどちらの路線に向かうのかに注目です。
ここまで、「大物」と呼ばれている馬は、京王杯2歳Sを制し朝日杯FSへ向かうタワーオブロンドン、新馬戦→OP野路菊Sを連勝したワグネリアンの2頭。前者はマイル路線、後者は中距離路線を歩む予定で、ダノンプレミアムにとって強敵となります。
タワーオブロンドンとワグネリアンについては以下の記事に解説記事を書いているので、よければそちらをご覧下さい。
タワーオブロンドン 2歳牡馬
GⅡ京王杯2歳Sは素晴らしいフットワークでタワーオブロンドンが勝利ーーレース回顧 - ずんどば競馬
ききょうSを勝ったタワーオブロンドンはパワフルな馬体とフットワークをもつ好素質馬ーー血統も上品で素敵すぎる! - ずんどば競馬
ワグネリアン 2歳牡馬
その他の期待馬
ここでは、重賞馬3頭をのぞく、デビュー勝ちを上げた他の3頭について、それぞれ解説します。いずれも素質のある期待馬です。
オペラグローブ 2歳牡馬
父:Speightstown
母:Funny Moon(母父:Malibu Moon)
生産:My Meadowview LLC
Speightstown産駒の外国産馬。阪神ダート1400mの新馬戦は3コーナーからジワリとハナを奪い、直線で1人気のスーブレットと馬体を併せての追いくらべを制して1着。完成度の高さと良質なスピードを利して、しっかりと勝利を上げました。
Speightstown産駒は外れが少ない?
現在、北米リーディングサイアー・ランキングの20位(Bloodhorse.com参照)のSpeightstownは、Gone West直仔の軽快なスプリンター。
日本では今春のNHKマイルC2着のリエノテソーロの他、ドスライスやエーシンジェイワンなどのOP馬を出しています。2017年11月5日(日)終了時点で、JRAに出走した20頭内16頭が勝ち上がっているように、かなりの好確率で走る仔を出している種牡馬です。
Speightstown産駒は短距離向きのスピードと完成度の高さが武器で、芝・ダートを問わずに1400m以下で好成績を上げているのが特徴。GⅠを勝ち切るまでの底力には欠けるものの外れが少なく、馬主にとっては重宝する種牡馬と言えるでしょう。
オペラグローブの配合は?
母父Malibu MoonはA. P. Indy直仔で、北米リーディングサイアー・ランキング8位(Bloodhorse.com参照)に位置する人気の種牡馬。Seattle Slew系らしくしなやかなストライドを産駒に伝えます。
オペラグローブから数えて3代母Populiが主流ではない血統構成をしており、そこにEasy Goer×Malibu Moonと北米の主流血統がかけられたのが母Funny Moonです。
Gone WestとMalibu Moonは似たような血統構成をしているため、オペラグローブ自身もクロスが多くなっています。Mr. Prospector3×4らしいしなやかさのある走りで、東京や中京などの直線の長いコースに向くタイプ。2歳の早期から活躍でき、完成度は高めです。芝・ダートを問わず、コンスタントに好走できるでしょう。
タングルウッド 2歳牡馬
父:Siyouni
母:アピールⅡ(母父:Selkirk)
生産:ノーザンファーム
京都芝1800mの新馬戦は、評判馬サトノエターナルとの対決となりました。タングルウッドは最内枠からジワっとハナに立つと、4コーナーから徐々にスピードを上げ、上り3F11.6 - 11.3 - 10.8の加速ラップで逃げ切り勝ち。全体のペースが遅かったとは言え、2着以下を寄せ付けないこの瞬発力は素晴らしいの一言です。
均整のとれた好馬体で、走り出すとパワフルなストライドが魅力。馬体はトモが非力ですから、まだまだ成長するでしょう。次走が楽しみな素質馬と言えます。
血統
父Siyouniは仏GⅠジャンリュックラガルデール賞(芝1400m)などを勝ったフランス産のスプリンター。
Siyouniは父Pivotal×母父デインヒルなので、Northern Dancer系のスプリンター同士がかけ合わされた配合をしています。このスピードとパワーが重ねられた配合は日本の軽い芝にも対応できるため、産駒が輸入された場合には注目です。
母アピールⅡ自身はNative Dancer4×5のクロスをもつため、Siyouniを配するとNorthern Dancerの血を継続(Northern Dancerの母父がNative Dancer)する形になります。代々流行血脈とは言えない種牡馬が配された母に、Northern Dancer系の血で固められたSiyouniを父にもつタングルウッドは、バランスの良い好配合。
タングルウッドは全体的にパワー系の血脈が固められているものの、Caro5×6のクロスと母系に入るイエローゴッドのしなやかさが走りに現れていて、スッと加速できるのが強味です。
今後に向けて
馬体や新馬戦の走りからは1800mベストの中距離馬。成長にともない馬体に筋肉がついてくるようなら、マイルにシフトするかもしれませんが……。新馬戦は瞬発力を発揮する好内容。次走は自己条件の500万下に出走するのか、それとも一気にOP・重賞へ挑むのかに注目です。
追い出されるとグっとストライドの伸びる走りから、現状では直線の長いコースがベストでしょう。クラスが上がり、道中のペースが流れたときに新馬戦のような脚を使えるのかに注目しましょう。
フォックスクリーク 2歳牡馬
父:ディープインパクト
母:クロウキャニオン(母父:フレンチデピュティ)
生産:ノーザンファーム
POG御用達の名繁殖牝馬クロウキャニオンの仔が、今年は中内田厩舎に入厩しました。全兄のカミノタサハラ、ボレアス、マウントシャスタ、ベルキャニオンなどを見てもわかるように、3歳春までに2勝は計算できる配合です。
ドーンとGⅠまで突き抜けるような馬は出ていないものの、OP入りはまず外さない血統なので、中内田調教師としても腕の見せ所でしょう。
今後に向けて
稍重馬場だった新馬戦(京都芝1800m)は、単勝オッズ1.8倍の人気に応える快勝。馬体は1つ上の兄クリアザトラックよりも少しだけ胴長で、478kgと重さがあるのも好印象。
順調に行けば中距離路線を進むのでしょうが、じっくりとキャリアを積んで来春へと向かいたいですね。ディープインパクト×フレンチデピュティはマカヒキやショウナンパンドラなどのGⅠ馬が出る配合で、3歳春のクラシックまでは2400mもOK。
兄たちが果たせなかった皐月賞、ダービーでの好走を期待したい1頭です。現在(11月6日時点)は放牧に出されており、次走が楽しみです。
まとめ
重賞勝ちの3頭だけではなく、タングルウッドやフォックスクリークなど、来春のクラシックを展望できる素質馬が揃った中内田厩舎。まだGⅠを手にしていないので、来年には……と期待をかけたくなりますね。
2歳戦で「中内田」の名前を見かけたら、必ずチェックするようにしましょう!
以上、お読みいただきありがとうございました。