参照:NAKAUCHIDA Stable | Nakauchida Stable's official Website.
2歳のマイル・チャンピオンを決める「朝日杯FS(GⅠ・阪神芝1600m)」は、「大物」と称されるタワーオブロンドンとダノンプレミアムの2頭が出走を予定しており、来春のNHKマイルC(GⅠ・東京芝1600m)やクラシックを占う意味でも重要な1戦です。
タワーオブロンドンは藤沢和雄厩舎+C・ルメール騎手の「ゴールデンコンビ」が自信をもって朝日杯FSへと送り出す素質馬。OPききょうSと京王杯2歳S(GⅡ・東京芝1400m)を圧巻のパフォーマンスで2連勝し、ルメール騎手が「ロードカナロア級」と賞賛する馬だけに、レースぶりに注目が集まります。
ダノンプレミアムは新進気鋭の中内田充正調教師が朝日杯FSに向けて送り出すディープインパクト産駒。前走のサウジアラビアRC(GⅢ・東京芝1600m)を1分33秒0の「2歳マイル・レコード」で走破した素質馬は、マイルGⅠでどのようなパフォーマンスを見せるのかに期待が高まります。
2歳戦が好調な中内田厩舎
開業4年目となる中内田充正厩舎は、2017年12月10日(日)終了時点で、全国調教師リーディング8位と好成績を上げています。今年はすでに昨年の勝ち星(31勝)を超える43勝をマークし、その活躍ぶりから目が離せません。
▼2017年中内田厩舎の成績
JRA成績:(43 - 19 - 23 - 122)
勝率:0.208
連対率:0.300
3着内率:0.411
好調な厩舎のなかで、もっとも素晴らしいのは2歳戦の成績です。ここまで13頭がデビューし、そのなかから3頭が重賞勝ちを上げています。2歳戦は(10 - 4 - 2 - 7)と勝率0.435、連対率0.609、3着内率0.696ともに恐ろしい数字が並ぶことに……。
重賞勝ち馬は3頭
中内田厩舎の2歳戦の成績は「頭がクラクラする」ほどのものがありますが、なかでも素晴らしいのは「3頭が重賞勝ち」を上げている、その中身の濃さです。
▼中内田厩舎の2歳重賞勝ち馬
ダノンプレミアム:サウジアラビアRC
フロンティア:新潟2歳S
ベルーガ:ファンタジーS
牝馬のベルーガは阪神JFに向けた調教中に骨折が判明し、来春に備えて放牧に出されたものの、ダノンプレミアムとフロンティアの2頭はGⅠ朝日杯FSへと出走します。いずれも上位の人気に押される馬ですから、陣容の厚さは特筆すべきものです。
この3頭の他に注目の2歳馬については以下の記事で解説しているので、よければご覧下さい。
好調の勢いに乗ってGⅠ制覇なるか?
開業4年目の中内田厩舎はここまでGⅠ未勝利。昨年の秋華賞(GⅠ・京都芝2000m)2着のパールコードがタイトルに「あと一歩」まで迫ったものの、ヴィブロスの末脚に屈することに……。
朝日杯FSに出走するダノンプレミアムとフロンティアの2頭はGⅠ制覇のチャンスが十分にあるだけに、ここは力が入る1戦です。好調な厩舎の勢いそのままに、2頭はタイトル獲得となるのでしょうか?
ダノンプレミアムとフロンティア
ダノンプレミアムとフロンティアの2頭について、朝日杯FSの展望を含めて解説します。それでは1頭ずつ見ていきましょう。
ダノンプレミアム 2歳牡馬
父:ディープインパクト
母:インディアナギャル(母父:Intikhab)
厩舎:中内田充正(栗東)
生産:ケイアイファーム
騎手:川田将雅
ダノンプレミアムは2歳の早い時期からムキムキの馬体をしており、非力さや緩さが弱点のディープインパクト産駒としてはやや異質のタイプ。新馬戦→サウジアラビアロイヤルCと2戦続けて「ポン」と好スタートを切れたのは、筋肉がついた後脚をしっかりと踏ん張ることができるからです。
ジェンティルドンナやリアルスティールなど2歳〜3歳の早期に活躍できるディープインパクト産駒はスタートをポンと切れる馬が多く、それはレースに勝つために必要な筋肉がすでについているためで、だからこそ、3歳春のクラシックに間に合うと言えます。
血統
ダノンプレミアムの全兄ロードプレミアム(4歳牡馬・斎藤誠厩舎)はHabitat←Sir Gaylordのしなやかさが走りにも表れているため、古馬になってジワジワと筋肉をつけると今夏に2勝目を上げました。同じ父をもつ配合でも、兄は成長曲線が緩やかです。
それに対して、全弟は母インディアナギャルのもつDanzig4×3とBuckpasser5×5のクロスがパワーの源となり、2歳の早期から全体的に筋肉がついています。
DanzigとBuckpasserを通じるZienelleとデインヒル(血統構成が似ている)のクロス、そして父Borealis×母父DonatelloのQueen of Lightがディープインパクトの祖母Burghclereの血と脈略し、スタミナとパワーを増したのがダノンプレミアムだと言えるでしょう。
ディープインパクト×デインヒルというと昨年のGⅠ朝日杯FSを勝ったサトノアレスがパッと思いつきますが、パワータイプに出れば2歳の早い時期から動けますし、しなやかタイプだとロードプレミアムのように完成が遅目に出ます。ダノンプレミアムは2歳のマイル戦で1分33秒台ですから、もうね、ムキムキのタイプに出ましたね。
朝日杯FSに向けて
新馬戦を快勝した阪神外回りコースで行われる朝日杯FSは、パワーストライドで走るこの馬にとってほぼベストのコース。スピードとパワーとスタミナをふり絞るにはもってこいの舞台なだけに、ここ2戦と同じくらいの高いパフォーマンスを期待できます。
川田騎手とも手が合う
ダノンプレミアムはスピードとパワーに優れ、「先行するサトノアラジン」と言えるタイプ。持続力に富んだ末脚で直線を伸び続ける走りは、馬を動かせる川田騎手と手が合います。
繊細な折り合いを求められる牝馬よりも、パワータイプの牡馬に乗せたら「達者」な騎手ですから、ここ2戦と同じように前々から強気の競馬ができれば、GⅠ制覇の大きなチャンスでしょう。
不安点は?
前走のサウジアラビアRCでは前後半800mが46.1 - 46.9(0.8の前傾ラップ)のラップを2番手から進め、直線半ばで先頭に立つと後続を寄せ付けずに余力たっぷりにゴール。「稍重」のコンディションでも「高速」状態だった馬場を差し引いても1分33秒0の2歳レコードは立派です。
このレースで「時計の速い決着+前半800m46秒台で通過」の2つのポイントをクリアしており、流れが速くなる可能性の高い朝日杯FSに向けて大きな不安はありません。もし、不安点を上げるとすれば、スローペースからの3Fの瞬発力勝負になったときでしょう。
ダノンプレミアムはビュンと俊敏に加速するのではなく、サトノアラジンのようにバキューンと持続的な脚が優れたタイプ。そのため、1F10秒半ば〜後半の脚が求められる質のレースになると不安が残ります。ただ、レースのペースを引き上げられる先行脚質なので、川田騎手が強気になれるのなら心配はありません。
フロンティア 2歳牡馬
父:ダイワメジャー
母:グレースランド(母父:トニービン)
厩舎:中内田充正(栗東)
生産:社台コーポレーション白老ファーム
騎手:岩田康誠
新馬→新潟2歳Sと芝のマイル戦を連勝。前走のデイリー杯2歳Sは極端なスローペースから「俊敏な加速力」を求められたため、ダイワメジャーを父にもつフロンティアには苦しい流れになりました。
連勝した2戦ともに前々から押し切る安定感のあるレースぶりで、2歳馬としては気性的な難しさを見せていないのが好印象。前走は位置取りと仕掛けの部分で消極的だったことが響いた敗戦ですから、ノーカウントでOKです。
新潟2歳Sは上り3F32.9の脚を使っており、スローペースだったことを差し引いてもこの馬の素質の高さが伺えます。過去のこのレースで上り3F32秒台の脚を使ったのは、ジャスタウェイ、ハープスター、イスラボニータなど後にGⅠを勝った馬が揃うことから、フロンティアも今後が楽しみな1頭です。
血統
GⅠでの2着が3回ある活躍馬ドリームパスポート (父:フジキセキ)の半弟。母グレースランドはサッカーボーイ、ステイゴールド、ショウナンパンドラなどのGⅠ馬を出したダイナサッシュ牝系の出身で、底力を秘めています。
ダイワメジャー産駒のGⅠ馬は、メジャーエンブレム(母父オペラハウス)やカレンブラックヒル(母父Grindstone)、コパノリチャード(母父トニービン)とすべて母父にクラシック路線を走れるスタミナをもつ種牡馬が配されていることから、母父トニービンのフロンティアも大きな期待をかけられます。
ただ、この馬が上記の3頭と異なるのは、パワーとピッチ走法を伝えるノーザンテーストのクロスをもつこと。父ダイワメジャーの頑強なパワーが増すことで、スピードやしなやかさに欠ける恐れが出てしまいます。フロンティアは母系に引くPrincely Giftのしなやかな血がどれほどオンになっているのかがポイントです。
朝日杯FSに向けて
直線が平坦な京都のマイルよりも、直線に急坂のある阪神芝1600mは適性に合った舞台。ただ、瞬発力勝負では分が悪いため、前半からしっかりとペースを上げて上りのかかる展開にもち込めるかどうかが鍵となります。
前走は上りのかかるレースだったとは言え、馬場の影響が出たもので、「高速馬場+上り34.5ソコソコ」のレースになるならもてる力は発揮できるでしょう。後はダノンプレミアムやタワーオブロンドン、ステルヴィオなどとの現時点での力関係がどうなのか……。
不安点は?
これまでの3戦はすべてスローペースでのレースだったことから、前半800mが46秒台に入ったときに追走で脚を削がれるかどうかが不安の1つです。前走でスタートからの3F35.7を楽々と追走していたことからも、それほど心配はないですが……。
仕掛けられてからしなやかなストライドで走るので、上りの勝負にもソコソコ対応できる器用さもあるタイプ。ただ、前走のようにラスト2Fの急加速戦は合わないですし、前後半800mが47.0 - 46.5くらいのバランスが理想です。
まとめ
中内田厩舎のダノンプレミアムとフロンティアの2頭はともに似たような脚質と適性をもっています。そのため、タワーオブロンドンに対してどのような作戦で臨むのかはレースのポイントとなるでしょう。
初のGⅠタイトルをこの素質馬のどちらかが厩舎へもたらすことになるのでしょうか?
以上、お読みいただきありがとうございました。