JRAで唯一の「直線1000m」の重賞アイビスサマーダッシュ('17年)の展望とコースについての解説

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JRAは7月29日(土)から札幌、新潟、小倉へと開催が替わり、いよいよ夏競馬も本番を迎えます。開幕週の新潟メインを飾るのは直線1000mの重賞「GⅢアイビスサマーダッシュ」。今回の記事は、JRAの芝レースのなかで最短距離の重賞を展望していきます。

 

直線1000mの重賞はスピード比べのレースに

JRAで唯一の直線1000mの重賞というだけあって、アイビスサマーダッシュはスピード比べになることが多く、過去10年のうち良馬場で行われた8レースの平均勝ちタイムは54.1秒。すべて良馬場で行われた過去5年の勝ちタイムを見てみると、ほぼ同じ時計の決着になっていることがわかります。 

 

アイビスサマーダッシュの過去5年の勝ちタイムと上り

'13年から夏の開催前にエアレーションを2回実施するようになってからは勝ちタイムと上りは毎年ほとんど変わりません。1000mで争われるアイビスサマーダッシュは距離が短いためタイムが一定になりやすいのですが、ここまで差が少ないと「タイムレース」としての要素も問われることになりますね。

馬 名 歳性 勝ちタイム 上り
16 ベルカント 牝5 54.1 31.7
15 ベルカント 牝4 54.1 31.9
14 セイコーライコウ 牡7 54.3 31.9
13 ハクサンムーン 牡4 54.2 31.9
12 パドトロワ 牡4 54.2 32.2
平均 54.18 31.92

良馬場で行われた過去5年の平均勝ちタイムが54.18、平均の上りが31.92。'12年は上りが32.2とややかかっていますが、それを除くとすべて31秒台の上りが記録されています。上り最速が昨年ベルカントの記録した31.7秒ですから、前半の2Fを22.5よりも遅いダッシュ力だと勝つのは難しいレースです。

 

アイビスサマーダッシュはダッシュ力だけでは乗り切れない

直線1000mという舞台だけあって、「ダッシュ力」を問われるのがアイビスサマーダッシュの大きな特徴ですが、スタートからガンガン飛ばせばOKというわけではありません。上にも書いたように、勝ち馬の上り3Fから計算すると前半の2Fは22秒台前半で入るのが理想です。

前半2F
16 22.2
15 22.1
14 21.7
13 22.3
12 21.5
平均

21.96

アイビスサマーダッシュの前半2Fの平均は21.96とスピード自慢が集まるレースのため、どうしてもペースが速くなります。また、新潟競馬場の直線1000mはスタートから上り坂のあるコース。上り→下り→上り→下りとアップダウンがあることもガンガン飛ばすだけの馬が残れない要因となっています。ゴールまで800mから600mの区間は下り坂になっていて、どうしてもスピードが出てしまうのですが、ここでしっかりとペースを守らないとラストがバタバタになることも……。スタートしてひとつ目の上り下り(2F)をどのようなペースで走れるのか、ここは馬だけではなく騎手の手腕も問われるところです。M・デムーロ騎手の直線1000mの成績が(5 - 1 - 1 - 1)と恐ろしいことになっているように、このコースと相性の良い騎手を探すのも予想をする上の大きなポイントになります。

 

枠と斤量と年齢の有利と不利

新潟1000mは予想をする上で欠かせないポイントが3つあります。もうすでに多くの競馬ファンにとってはよく知られていることとは言え、もう一度見おさらいしておきましょう。

 

1. 外枠は有利?

新潟の直線1000mのレースを観たことがあればすぐにわかるように、ほとんどの騎手と馬は外ラチに向かって進路を取ります。外枠のスタートが有利なのは外ラチを走るのに距離のロスが少ないから。この傾向は多くの競馬ファンにとって広く知られているので、外枠に入った馬が上位の人気を集めるのもこのレースの特徴です。

ただし、内枠の馬もしっかりとペースを守って走ることができれば好走することが十分に可能です。そのため、内枠だからと言ってバッサリと切ることはオススメしません。

 

2. 斤量

斤量の軽い馬も有利で、重い馬は不利になります。過去10で57kg以上の斤量を背負って3着以内に入ったのは'08年なシンボリグラン(2着)のみ。新潟の直線1000mは減量騎手が騎乗している馬や牝馬、3歳馬など斤量面での恩恵を受ける馬の活躍が目立つのも、究極のスピード勝負においては重量の差がレースに大きな影響を与えるからです。牝馬が強いレースというよりも「斤量の軽い馬」が有利なレースと言えます。

 

3. 高齢馬

一般的に高齢になるにつれて衰えるのはスピード能力と言われます。究極のスピード勝負となるアイビスサマーダッシュですから、加齢によるスピード能力の衰えはチェックをしておきましょう。加齢とともに近走のダッシュ力が鈍くなっているような馬には注意が必要です。

'14年に7歳馬のセイコーライコウが1着となったように高齢馬がまったく走れないというわけではないものの、過去10年で1〜3着に入った馬の平均年齢は4.83ですから4、5歳馬が中心になるレース。

 

今年の人気上位馬について

アイビスサマーダッシュのおおまかな特徴をつかんだところで、今年の人気上位馬について見ていきましょう。今回は3頭について取り上げます。

 

ネロ 6歳牡馬

父:ヨハネスブルグ

母:ニシノタカラヅカ(母父:サンデーサイレンス)

厩舎:森秀行(栗東)

昨年の同レース2着馬で、直線1000mの成績が(3 - 2 - 0 - 0)と現役屈指の舞台巧者。安定して54秒台前半の時計をマークできるスピードも申し分なく、不安な点は58kgの斤量と6ヶ月の休み明けだけです。休み明けと重い斤量はスピード能力を削ぐ可能性が高く、そこが克服できるのかどうか……。

父ヨハネスブルグも鞍上の戸崎騎手も過去5年の当舞台における複勝率が4割を超えており、上位の人気に支持されることは間違いありません。

 

フィドーシア 5歳牝馬

父:メダーリアドーロ

母:ビリーヴ(母父:サンデーサイレンス)

厩舎:松元茂樹(栗東)

前走、直線1000mのOP韋駄天ステークスを54秒3の好タイムで勝利し、アイビスサマーダッシュを好走するためのタイム面での不安はありません。

母ビリーヴは言わずと知れたスプリント界の女傑で、父メダーリアドーロはSadler's Wells系のパワー型の中距離馬。直線1000.mの舞台はダートも走れるパワー血統が好走していることからも血統的にもOK。

前走から斤量据え置きの54kgも他の馬と比べて有利で、ここは好走の条件が揃いました。

 

アクティブミノル 5歳牡馬

父:スタチューオブリバティ

母:ピエナアマゾン(母父:アグネスタキオン)

厩舎:北出成人(栗東)

前走のCBC賞(GⅢ)の3着は一時期の不振を脱したかのような好走を見せました。

直線1000mの舞台は初出走となるため、この舞台で54秒ソコソコの時計で走れるのかがまず注目です。今週の栗東坂路で50秒台の時計を出したことから、直線1000mの適性はあると考えられます。

あとはペースを守ってしっかりと走ることができるのかどうか……。もともとハイペースよりもミドルからスロー寄りのレースで好走しているように、それほどテンのダッシュ力で勝負するタイプではないので、逃げにこだわらないレースができればチャンスも十分に。

 

まとめ

新潟競馬場でしか行われない「直線1000m」のレース。開幕週を飾るのに相応しい重賞レースですから、今から白熱したレースを期待したいですね。

今年はどんな「54秒」の決着が待っているのでしょうか。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。

 

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