6週間(全12日間)におよぶ夏の新潟開催もいよいよ最終週を迎え、9月3日(日)のメインレースはサマー2000シリーズの第5戦「GⅢ新潟記念」。シリーズ優勝馬のオーナーや厩舎関係者に「褒賞金」が贈られることもあり、チャンピオンを決定するこのレースは白熱した争いが期待できます。
▼サマー2000シリーズポイント表
順位 | 馬 名 | ポイント |
1 | サクラアンプルール | 13 |
2 | タツゴウゲキ | 11 |
3 | ゼーヴィント | 10 |
4 | ルミナスウォリアー | 10 |
… | ||
8 | マイネルフロスト | 5 |
… | ||
11 | ソールインパクト | 4 |
新潟記念に登録のある馬のなかでシリーズチャンピオンの可能性があるのは4頭。赤色のマーキングをした2頭、タツゴウゲキとルミナスウォリアーはこのレースを勝てば他馬の成績に関係なくシリーズチャンピオンが決定し、青色の2頭は勝ったとしても他馬の成績次第でのシリーズチャンピオンとなります。
今年の新潟記念はサマー2000シリーズには関係のないアストラエンブレムが1番人気に支持されるとあって、どの馬がチャンピオンになるのかは混沌とした状況です。
新潟記念は直線の長い外回りコースで行われるけれど……
新潟記念の行われる「新潟芝外回り2000m」はホームストレッチが600mを超え、JRA全10場最長を誇ります。上り3F区間がまるまる直線のため、速い脚を使える馬が有利かつ差し・追い込みが優勢というのがデフォルトです。ただし、騎手が「長い直線」を意識し過ぎてペースが緩み、前々でレースを運んだ馬がそのまま粘り込んでしまうことがあるのも新潟記念の特徴のひとつです。先週行われた新潟2歳Sは逃げ・先行馬が1〜3着を独占したように、騎手の意識があまりにも後ろへ向くようだと思わぬレースになることも……。
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過去5年間はほぼ平均ペースに
新潟記念の過去5年間を観ると、前後半1000mの差が1.0秒以内の範囲におさまり、レースのペースはほぼ平均になることがわかります。'12年は3.2秒の後傾ラップになっていることから、新潟競馬場の外回りらしい「瞬発力勝負」となりましたが、残りの4レースはほぼ平均ペースと呼べるものです。
▼新潟記念の過去5年の1〜3着馬
年 | 勝ち時計 | 着順 | 人気 | 馬 名 | 上り |
2016 | 1:57.5 | 1 | 2 | アデイインザライフ | 32.7 |
2 | 1 | アルバートドッグ | 33.2 | ||
58.5 - 59.0 | 3 | 9 | ロンギングダンサー | 33.1 | |
2015 | 1:58.2 | 1 | 6 | パッションダンス | 34.3 |
2 | 9 | マイネルミラノ | 34.6 | ||
58.8 - 59.4 | 3 | 13 | ファントムライト | 34.2 | |
2014 | 1:58.3 | 1 | 1 | マーティンボロ | 34.2 |
2 | 5 | クランモンタナ | 34.6 | ||
59.0 - 59.3 | 3 | 3 | ラストインパクト | 34.0 | |
2013 | 1:58.9 | 1 | 10 | コスモネモシン | 34.2 |
2 | 8 | エクスペディション | 34.7 | ||
59.9 - 59.0 | 3 | 7 | ファタアモルガーナ | 34.8 | |
2012 | 1:57.6 | 1 | 7 | トランスワープ | 32.3 |
2 | 9 | タッチミーノット | 32.8 | ||
60.4 - 57.2 | 3 | 8 | アスカクリチャン | 32.6 |
過去5年間の1〜3着馬を見てパっと気付くのは、「あれ? 直線の長い新潟コースなのにしなやかなストライドで走る馬が少ないな」ということ。東京や中京、外回りコースで好走していた馬たちよりも小回り・内回りを得意とする馬たちがズラリと並んでいます。下の表は、過去5年の新潟記念で1〜3着に入った馬の重賞実績をまとめたものです。
▼新潟記念を好走した馬の重賞実績
馬 名 | 主な重賞実績 |
アデイインザライフ | GⅢ京成杯3着 GⅡ弥生賞3着 |
アルバートドッグ | GⅢ小倉大賞典1着 GⅢ七夕賞1着 |
ロンギングダンサー | GⅢ新潟大賞典3着 |
パッションダンス | 新潟大賞典1着(2回) |
マイネルミラノ | GⅢ函館記念1着 |
ファントムライト | GⅢ中日新聞杯2着 GⅢ福島記念3着 |
マーティンボロ | GⅢ中日新聞杯1着 GⅢ小倉記念2着 |
クランモンタナ | GⅢ小倉記念1着 |
ラストインパクト | GⅡ金鯱賞1着 GⅡ京都大賞典1着 GⅢ小倉記念1着 |
コスモネモシン | GⅢクイーンS2着 GⅢ福島牝馬S2着 |
エクスペディション | GⅢ小倉記念1着 GⅢ鳴尾記念2着 |
ファタアモルガーナ | GⅡステイヤーズS2着(3回) |
トランスワープ | GⅢ函館記念1着 |
タッチミーノット | GⅢ中山金杯1着 GⅢ七夕賞2着 |
アスカクリチャン | GⅡアルゼンチン共和国杯1着 GⅢ七夕賞1着 |
(*新潟記念の実績は省略。重賞勝ちのない馬は好走歴を載せています)
小倉・函館・福島などのローカル+小回りのコースで好走している馬がゴロゴロといて、東京などの直線の長いコースで好走している馬が少ないのが大きな特徴。普通は直線の長いコース=ストライド走法、小回り・内回り=ピッチ走法と分けられるのですが、新潟記念に関しては小回り向きのピッチで走る馬でも好走できる舞台となっています。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?
新潟記念で小回り向きの馬が好走する理由は?
新潟記念では「小回り向き」の馬が好走する傾向にあって、考えられる理由は2つ。
1. 直線が長過ぎるため、スロー+中弛みのレースになる
2. 夏が得意な馬がその勢いで好走してしまう
1つ目は新潟外回りコースの直線の長さによるものです。先にも述べたように「直線が長い=騎手の意識が後ろへ」向くことになり、スローペースからの前残りが発生すること。また、直線の長いコースであってもスローになると俊敏に加速できる(トップスピードになるまで時間がかからない)ピッチ走法の馬が有利になり、そのため小倉や福島、函館コースに良績のある馬でも好走してしまいます。
2つ目は「夏馬」かどうかということ。夏のローカル開催は新潟と中京を除くと他場は小回りコースでレースが行われます。夏が得意な馬は小回りに出走することが多く、その勢いのまま直線の長い新潟でも……が起きるのでしょう。適性よりも体調面の良さが上回っての好走という形ですね。
今年の新潟記念登録馬のなかで内回り・小回り向きの馬は?
今年の新潟記念に登録している古馬のなかで、内回り・小回りに適性(実績)のある馬は8頭(3歳馬の2頭はここでは除外します)。それでは1頭ずつ解説していきます。
タツゴウゲキ 5歳牡馬
前走の小倉記念を好タイムで勝ち、初の重賞制覇となったタツゴウゲキ。好位のインをロスなく立ち回っての勝利は、M・デムーロ騎手から急遽乗り替わった秋山騎手の落ち着いた騎乗と、この馬のもつ器用さによるものでしょう。タツゴウゲキはペースの上がる3〜4コーナーで器用に立ち回れ、前半のペースが速くなっても後半でしっかりと脚を使えるのが最大の長所。
ピッチで俊敏に抜け出すというよりは、父マーベラスサンデー譲りの無駄のない脚さばきでコーナーをロスなく走れるのが武器ですから、スローペースの新潟で俊敏に抜け出せるのかが好走の鍵となります。
ルミナスウォリアー 6歳牡馬
強敵相手の重賞で再三好走歴のある実力馬が前走の函館記念で初重賞制覇となりました。ルミナスウォリアーは2000m前後の距離であればどのコースを走っても凡走のないタイプで、後半4Fの上り勝負に長けた馬。
GⅠ2着を積み重ねるサウンズオブアースと似たタイプで、コースを問わない器用さがあるため、「このコースの適性はバッチリ!」というものがなく、それが最大の長所でもあり短所でもありましたが、前走は詰めの甘さを払拭する快勝を見せました。
タツゴウゲキと同じく、ピッチ走法で俊敏に加速するというよりは器用に立ち回れるタイプ。ただ、同じメイショウサムソンを父にもつ重賞馬のデンコウアンジュがスローからの上り勝負を得意としているだけに、緩い流れになればこの馬の好走の可能性も十分にあります。
マイネルフロスト 6歳牡馬
内回り・小回りを先行させたら重賞級のしぶとい脚が使えるマイネルフロスト。父ブラックタイド×母父グラスワンダーという血統の字面通りに、パワーにあふれた力強い前脚のかき込みでグイグイと先行しての粘り込みがこの馬のもち味です。
昨年のレースでは不振が続き大きな着順が目立っていたものの、今春の新潟大賞典で着用したブリンカーの効果によって、ここ数走は重賞です好走と本来のしぶとい脚が戻ってきました。復活走となった新潟大賞典もスローペースからの粘り込みで、無駄のない脚さばきで直線を抜け出せれば久しぶりの重賞制覇のチャンスも十分に。
ソールインパクト 5歳牡馬
母クリームオンリーが内回り・小回りをパワーと器用さで捲る配合をしており、ディープインパクト産駒ながらも直線の長いコースではキレ負けしてしまうのがソールインパクト。古馬になってから内回り・小回りコースでは(0 - 0 - 0 - 0)と複勝率が100%ですから、スローペースになれば好走の可能性も……。
この馬は、コースやクラスを問わずに相手なりに走るのが長所でもあり短所でもあって、とにかく3着が多いのが特徴。ここでも好走の可能性は十分にあるものの勝ち切るまでは「?」がつきます。
フルーキー 7歳牡馬
もう、フルーキーも7歳ですか……。小気味の良いピッチ走法が最大の武器で、中山1800mのGⅠがあれば……と悔やまれます。この馬のベストパフォーマンスは「スーパーGⅡ」と言われた昨年の中山記念4着。ドゥラメンテ、アンビシャス、リアルスティール、ロゴタイプ、イスラボニータなどのGⅠ級の馬を相手にもち前のパワーピッチで好走しました。
直線の長い新潟外回りコースであればドスローが理想で、このメンバーに入っても俊敏な加速力は1番。今年に入ってから力が衰えたかのような凡走が続いていますが、ペースが噛み合って本来の力が発揮できれば……。
ラストインパクト 7歳牡馬
重賞3勝、GⅠジャパンカップ2着の実績を誇るラストインパクト。小倉記念を捲って楽勝しているように、小回り向きの器用さを兼ね備えたタイプです。ジャパンカップの2着もR・ムーア騎手がスローを読んでインベタで回ってきてのもので、直線の長いコースであればスローがベター。
現状は高齢化による不振からダートを使われたりと、復活をかけて厩舎がアレコレと方法を模索しています。このメンバーではダントツの実績をもつ馬ですから、田辺騎手騎乗でどのような走りを見せるのかに注目です。
カフジプリンス 4歳牡馬
とにかくズブい馬で、直線の長いコースでの瞬発力勝負よりもロングスパート戦でもち味が活きるタイプ。そのため、機動力に優れているというよりは、3コーナーからペースの上がる小回り・内回りに良績があります。俊敏に加速できる馬ではなく、とにかくパワーでねじ伏せるられるかどうか……。小回り向きとは言え、直線の長い新潟コースでロングスパート戦いになるのかは「?」がつきます。
ただ、前走の小倉記念は見所のあったレースで、この馬がしっかりとペースを刻んでの逃げの手に出るならチャンスがあるかもしれません。
スピリッツミノル 5歳牡馬
パワーとスタミナに優れた馬で、カフジテイクと似たタイプです。こちらは母父がパワーピッチで捲るラムタラとあって、ロングスパート戦になりやすい小回りの中長距離はずんどば。いくらかパワーとスタミナに勝ちすぎていることから、スローの瞬発力勝負をピッチで抜け出せるのかには「?」がつきます。
また、揉まれ弱い気性は古馬になってからも変わらずで、馬群に包まれるのをイヤがるタイプ。スムーズなロングスパート戦になれば……。カフジプリンスとセットで馬券になるタイプですね。
まとめ
スローをピッチでズバっと抜け出すイメージであれば、上記の馬の中でもっともぴったりなのはフルーキー。ただ、先週の新潟2歳Sが先行決着だったことを考えると、新潟記念がそこまでスローになるのかは微妙なところです。得てして、ペースが速くなると言われていると遅くなり、遅くなると言われると速くなるのが競馬なので……。
新潟記念の予想の入口は、スローになって小回り向きの機動力型が上位を占めるのか、それともペースが流れてしなかやかにストライドを伸ばすストレッチランナーが上位を占めるのか、それがポイントになります。今からレースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。