GⅢ新潟記念('17年)は今年もローカル+小回りに実績のある馬が勝利ーー回顧

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サマー2000シリーズの最終戦「GⅢ新潟記念」は好スタートからスッと2番手につけ、ゴールまで残り500mの地点で先頭に立つと新潟外回りの長い長い直線を粘りに粘ったタツゴウゲキが1着となりました。小倉記念と新潟記念を連勝し、サマー2000シリーズのチャンピオンとなったタツゴウゲキの今夏の成長は素晴らしく、秋に向けて大きな飛躍を遂げたと言えます。

2着には好位からしぶとく脚を使い、最後までタツゴウゲキを追い詰めたアストラエンブレム、3着に好位からレースを進めジリジリジリジリと最後まで脚をふり絞ったカフジプリンスが入線。勝ちタイムは1分57秒9(良)。

 

今年も小回り向きの馬が先行押し切り

新潟記念の行われる「新潟芝外回り」はホームストレッチが600mを超え、JRA全10場のなかで最長の直線を誇るコース。上り3F(600m)区間がまるまる直線となるため、速い脚を使える馬や差し・追い込み馬が有利というのがこのコースの特徴です。ただし、騎手が長い直線を意識し過ぎてペースが緩み、前々でレースを運んだ馬がそのままアレヨアレヨと残ってしまうのもままあります。

 

平均ペースからの前残り

新潟記念は過去5年、3.2秒の後傾ラップとなった'12年を除くと前後半の1000mが1.0秒差以内におさまる平均ペース。1〜3着馬の上りが34秒台の決着になることも多く、速い脚を使えなくても好走できるレースです。下の表は'17年を含めた'12までの新潟記念の成績をまとめたものになります。

 

GⅢ新潟記念の成績 '12年〜'17年

勝ち時計 着順 人気 馬 名 上り
2017 1:57.9 1 6 タツゴウゲキ 34.6
2 1 アストラエンブレム 34.1
59.0 - 58.9 3 12 タツゴウゲキ 34.2
2016 1:57.5 1 2 アデイインザライフ 32.7
2 1 アルバートドッグ 33.2
58.5 - 59.0 3 9 ロンギングダンサー 33.1
2015 1:58.2 1 6 パッションダンス 34.3
2 9 マイネルミラノ 34.6
58.8 - 59.4 3 13 ファントムライト 34.2
2014 1:58.3 1 1 マーティンボロ 34.2
2 5 クランモンタナ 34.6
59.0 - 59.3 3 3 ラストインパクト 34.0
2013 1:58.9 1 10 コスモネモシン 34.2
2 8 エクスペディション 34.7
59.9 - 59.0 3 7 ファタアモルガーナ 34.8
2012 1:57.6 1 7 トランスワープ 32.3
2 9 タッチミーノット 32.8
60.4 - 57.2 3 8 アスカクリチャン 32.6

過去の1〜3着馬のなかには小倉・函館・福島などのローカル+小回りのコースで好走している馬がゴロゴロといて、東京などの直線の長いコースで好走している馬は少ないことがわかります。今年の新潟記念を制したタツゴウゲキも前走は小倉記念を勝った馬ですしね。

直線の長いコース=ストライド走法

小回り・内回り=ピッチ走法

普通は上記のようにコースによって適性がわけられるのですが、新潟記念に関しては小回り向きの器用さとピッチで走る馬も好走できる舞台となっています。

 

小回り向きの器用さで押し切ったタツゴウゲキ

ローカル・小回りの小倉記念を制して新潟記念に参戦したタツゴウゲキは6番人気。好位から抜け出すレースが得意な馬ということもあって、直線の長い新潟外回りでは少し人気を落としていました。前走の小倉記念は、3〜4コーナーから豪快に捲って直線で先頭に立ったままサンマルティンを、インから馬体を併せての差し切り勝ちでしたが、今走は直線を先に抜け出して外から迫るアストラエンブレムを抑えての押し切り勝ち。

タツゴウゲキはマーベラスサンデー×シングスピールですからHaloのクロスをもち、この器用さが最大の長所。4コーナーから直線にかけてジワリとペースを上げたときにもっともスムーズに走っていたのはこの馬で、ここで後続にアドバンテージを取ってからは母系に引くCure the BluesとVaguely Nobleのスタミナとパワーで粘りに粘るというレース。

好スタートからウインガナドルを先に行かせていつも通りの好位のポジションが取れたこと、馬場状態が良く1000mの通過が59.0と平均的なペースで入れたことが重なり、この馬に向いた流れになりました。

小倉記念のレース回顧については下の記事をご覧頂ければ幸いです。

GⅢ小倉記念('17年)はサンマルティンの捲りをインから差したタツゴウゲキの勝利にーー回顧 - ずんどば競馬

 

アストラエンブレムはここも2着……

新潟記念の上位人気馬のなかで、直線の長いコースに向いたストライドで走る馬はアストラエンブレムとトーセンバジルの2頭。前者は好位のポジションを取ってからストライドを伸ばす馬で、前半1000mが59.0という流れもこの馬には向きました。

レース前に小島茂之調教師が「前の馬を抜こうとしないので、早めに仕掛ける競馬を」と言っていた通りに、しっかりと仕掛けられたものの前を走るタツゴウゲキを交わすことができませんでした。前走のエプソムカップではしなやかにキレるダッシングブレイズに内をすくわれ、今回は前を走る馬を交わさない……気性的に難しい馬なのだな、と思わせる敗戦が続きます。

母ブラックエンブレムも気性的に難しい馬で、母系に入るウォーエンブレム×ヘクタープロテクター×Vaguely Nobleと外目をスムーズに回らないと力を発揮できない種牡馬がこれでもか!と重ねられています。この底力にあふれる分だけ気難しい血が、アストラエンブレムの勝ち切れなさを表しています。

これで1600〜2000mまでの距離をこなし、重賞でも連続好走ができましたから、気性的な面が成長すれば「GⅠでも」と思わせる馬。この馬自身は強いクロスをもたないので、これからまだまだ成長が見込めますし、成長曲線とレースぶりがジャスタウェイにかぶる……というのは言い過ぎでしょうか……。

前走のエプソムカップのレース回顧については下の記事をご覧頂ければ幸いです。

マーメイドSとエプソムカップ回顧ーー重賞はスローがデフォルト - ずんどば競馬

 

3着カフジプリンスと5着フルーキーについて

今年の新潟記念は「荒れる」と決め打ちしたため、「2桁人気のカフジプリンスとフルーキーの入った4枠から枠連で!」というのがレースの予想でした。

予想記事にも書いたように、カフジプリンスもフルーキーもここで買えるだけの要素はあったものの、2頭ともにもうひと押しが利きませんでしたね。

GⅢ新潟記念('17年)は魅力的な人気薄の2頭、カフジプリンスとフルーキーが同枠に入ったので、枠連で!ーー予想 - ずんどば競馬

 

カフジプリンス:3着

中谷騎手が好位から早め早めのレースをしたのはこの馬の適性を考えると大正解。今年の新潟記念はレースの上りが34.6、全体のレースラップを見ても12.9 - 10.9 - 11.4 - 11.7 - 12.1 - 12.3 - 12.0 - 11.4 - 11.2 - 12.0と持続的な流れになり、速い脚を欠くカフジプリンスにとっては願ってもないペースになりました。直線の入口から速い脚を使った馬に交わされたものの、その後もジリジリと脚を使って差し返したのはいかにもこの馬らしい走り。

ズブい馬なので、長い距離を使われていましたが、やはり小倉記念と新潟記念のレースぶりからもベストは中距離なのでしょう。また、この馬の父ハーツクライは新潟のような速い上がりを求められる競馬場の重賞レースだと、好走はしても勝ち切れないのがデフォルト。というわけで、安定の3着でしたね。

 

フルーキー:5着

道中は中団を追走し、直線では内目を通って追い上げての5着。残り400〜300mのことろで前を走るロイカバードに進路をふさがれてややスムーズさを欠くシーンもあったものの、立て直してからはしっかりと伸びて掲示板を確保しました。

この馬は小回り向きのピッチ走法なので、もう少しスローよりのペースになっていたら……と悔やまれますね。直線でスムーズさを欠いた分だけ最後のひと脚につながった分もあるので、大きな不利とは言えません。これだけペースが流れたなかでしっかりと前と差を詰めたことを考えると、体調も整っていたのでしょう。大きな力の衰えはないため、まだまだ重賞でも力を発揮できますね。

 

その他の注目馬について

3歳馬ながら逃げて4着に粘ったウインガナドルは大健闘。このペースで逃げたことも好走の要因で、津村騎手は新潟の外回りも内回りも巧みな逃げを当てるので、先行馬に乗せたら怖いですね。父ステイゴールド×母父メジロマックイーンですから、オルフェーヴルやゴールドシップと同じニックス。父系を通して京都の下り坂わスムーズに走れるため、菊花賞に出てくるのなら面白い存在になりそうですね。

 

まとめ

新潟記念は今年も小回り向きの馬が勝ち切りました。ただ、スローまでペースが落ちることはなく、ピッチで加速する馬にやや辛くなります。コーナーで器用にスピードを上げられる馬に有利で、ローカルの小回りに実績のある馬を狙いたいレースです。来年はまたここが予想の入口になりますね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。