サマー2000シリーズの最終戦「新潟記念(GⅢ)」は9月1日(日)、JRA全10場のなかで最長を誇る新潟競馬場の外回りコースを舞台に行われます。長い直線でのレースとは言え、人気薄の馬が好走するのは先行して粘り込む形でのもの。今年もこのパターンが当てはまるのかに注目しましょう。
新潟記念は小回り・内回り向きの器用さが求められることも?
直線の長いコースに適性をもつのは、身体をしなやかに伸縮させてスピードを上げる「ストライド」走法の馬。トップスピードをゴールまで維持するストライド走法の馬に対して、一瞬の加速で抜け出すピッチ走法の馬は直線の長いコースが不向きです。
ところが、新潟記念の過去5年の1〜3着はストライド走法でしなやかに末脚を伸ばす馬が「意外に」少なく、小回り・内回り向きの器用さをもつ馬がチラホラと登場します。さて、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?
スローペースはピッチ走法が有利
競走馬のフットワークは「ストライド」と「ピッチ」の2つに分けられます。この内、後者はトップスピードを長く持続するのが苦手です。そのため、新潟の外回りのような直線の長いコースに向きません。
ただし、スロー(後傾ラップ)の瞬発力勝負になると、瞬時に加速のできるピッチ走法が有利。そのため、スローペースがデフォルトの新潟記念は、ピッチ走法の馬がビュンと抜け出して好走することもままあるのです。
小回り・内回り向きの先行馬は?
今年の出走予定馬の中で、小回り・内回り向きの先行馬を探してみましょう。イメージとしては一昨年の新潟記念を2番手から押し切ったタツゴウゲキのようなタイプがベストです。
ちなみに、過去10年間で先行力を武器に好走した人気薄の馬は以下の6頭が上げられます。
【*先行基準は「4コーナー3番手以内」+「8〜18人気」の2点】
2009年
3着:メイショウレガーロ(12人気)
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2010年
2着:サンライズベガ(9人気)
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2012年
2着:タッチミーノット(9人気)
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2013年
2着:エクスペディション(8人気)
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2015年
2着:マイネルミラノ(9人気)
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2017年
3着:カフジプリンス(12人気)
2018年のブラストワンピース、2016年のアデイインザライフなど、後方から速い上がりを使って差し切ってしまうのも新潟記念と言えますが、人気薄の馬が先行してアレヨアレヨと粘ってしまうのも大きな特徴のひとつです。
さて、出走予定馬をツラツラと眺めていると、今年は「先行馬がそもそも少ない!」ことに気付かされます。というわけで、小回り・内回り向きかの前に、逃げ・先行馬をピックしてみましょう。
クラウンディバイダ
クリンチャー
コズミックフォース
ダイワキャグニー
ブラックスピネル
(レイエンダ)
う〜ん、ピュアな逃げ馬が不在(*)。これだとブラックスピネルかダイワキャグニーのどちらかポンとハナを取り切った方が逃げてしまいそうなメンバー構成となりました。
*クラウンディバイダはもともとは逃げ馬でしたが、ここ最近は出脚もつかなくなっています
また、1人気が想定されるレイエンダは、前走のエプソムカップを2番手から押し切って勝ったとは言え、もともとが先行馬ではないこともあり、C・ルメール騎手が今回どのようなポジション取りをするのかが不透明……。そのため、()の表記としました。
小回り・内回り向きの馬は?
レイエンダを除く上記の5頭のなかで、あきらかに小回り・内回り向きの馬はコズミックフォースのみ(*)です。
*レイエンダは小回り向きの器用さをもち合わせているので、この後で取り上げます
新潟記念(2019年)の注目馬は?
今年の新潟記念が例年通りのスローペースとなるなら、注目馬は以下の2頭です。
・人気薄
→コズミックフォース
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・人気馬
→レイエンダ
レイエンダは人気馬なので、今回の記事ではコズミックフォースを中心に解説します。
コズミックフォース 4歳牡馬
父:キングカメハメハ
母:ミクロコスモス(母父ネオユニヴァース)
厩舎:国枝栄(美浦)
生産:ノーザンファーム
本馬は昨年のプリンシパルS1着、ダービー3着と直線の長いコースで好走しています。しかし、ピッチ走法だった母ミクロコスモスの血を受け継いたことで、小回り・内回りコース向きのタイプとなりました。
血統
祖母ユーアンミーはコズミックフォースの母ミクロコスモス、チャンピオンズC2着ウェスタールンドなどピッチ走法の馬を多く出す好繁殖牝馬。
*ウェスタールンドが2着と好走した昨年のチャンピオンズCも「スローペースを俊敏に内から抜け出し」ての好走でした
父キングカメハメハは母系の良さをストレートに引き出す種牡馬とあって、本馬も母やウェスタールンドと同じく、「小回りがベスト or 直線の長いコースならスローがベスト」というタイプです。
母系がパワータイプなだけに、芝のレースだと昨年のダービーのように「上り3Fが34.5前後」とそこそこかかるのがこの馬の好走ゾーン。その点、上りの速い新潟芝は不安なものの、上りのかかった時にパフォーマンスを上げるカフジプリンス(2017年の3着)が12人気で好走していることから、ノーチャンスというわけではありません。
新潟記念に向けて
コズミックフォースは昨年のダービー3着以来、(0 - 0 - 0 - 4)と精彩を欠く走りが続いています。休み明けの前走は先行することができずの9着、2走前の中山金杯は勝馬と0.7秒差、3走前の菊花賞は適していない距離での凡走とそれぞれ言い訳のできる敗戦。
今走は前走の福島テレビOPからじっくりと間隔を取っての調整とあって、ガラリ一変なるかが注目です。同馬を管理する国枝栄調教師は関東の名伯楽ですから、「厩舎力」の点では問題ありません。
不安な点を上げるとすれば、「現時点での鞍上が未定+除外対象」の2点です。ノーザンファーム生産馬ですから、出走となればしっかりと騎手を確保するはずですが、まだ未定というのはいくらか心配です……。
馬のタイプとしてはカフジプリンスとイメージのかぶる馬だけに、スムーズに先行してアレヨアレヨと粘り込むシーンも十分に考えられます。高配当を狙うためにも、まずはこの馬がゲートインできるかを祈りましょう。
レイエンダ 4歳牡馬
父:キングカメハメハ
母:ラドラーダ(母父シンボリクリスエス)
厩舎:藤沢和雄(美浦)
生産:ノーザンファーム
【とりあえず、レイエンダも解説を……】
レイエンダは全兄のダービ馬レイデオロと同じく、俊敏な脚さばきが最大の特徴。兄よりも前脚がしなやかに伸びるフットワークなので、直線の長いコースでも苦にはしないでしょう。
兄が歴史的なスローとなったダービーを小気味の良いフットワークで抜け出したように、この馬もトップスピードへ瞬時に加速できるのがセールスポイント。
高速決着もOK
レイデオロ=レイエンダ全兄弟のように「俊敏な脚さばき」で走る馬は、上り3Fと全体の時計が速くなるレースは大の得意です。その理由は以下の2つ。
1. 脚さばきが俊敏なので、時計が速くてもスタミナをロスしない
2. 瞬時にトップスピードに乗れるため、速い上りに対応できる
レイエンダはデビュー2戦目の夏木立賞(芝2000m)で上り3F33.6、勝ちタイム1分58秒8をマーク。また、前走のエプソムCは2番手から上り3F32.7で抜け出して快勝しており、速い上りの出る高速馬場を得意としています。
新潟記念に向けて
今夏も札幌を主戦場として活躍しているC・ルメール騎手がわざわざ新潟まで乗りに来るというのは、関屋記念1着のミッキーグローリー(1人気)と同じシチュエーション。それだけに、レースに向けての不安はありません。
*ノーザンファーム生産馬とあって、C・ルメール騎手を乗せてきたのなら、まぁ、そういうことでしょうね
初重賞制覇となった前走のエプソムCはドスローの瞬発力勝負だったことで、レースの内容としては高い評価とはなりませんが、もう「ノーザンファーム生産馬+C・ルメール騎手+1人気」というコンボを見ただけで、もう詳しい解説は必要がないのではないかと……。
もちろん、グリグリの1人気を裏切った昨年のチャレンジC(7着)の例もあるとは言え、この馬をまったく買わないというのは……難しいところですね。
レイエンダの取捨にリソースを割かない
今年の新潟記念のポイントはレイエンダの取捨。ただ、そこにリソースを割いたとしても馬券的にプラスになるかは微妙です。そのため、この馬が1・2着に入線しても高配当となるような馬券を少ない点数で組み立てるようにしましょう。
*また、この馬が3着内を外すようなら大荒れとなりますから、そのウハウハ馬券のケアも必要です
まとめ
今年の新潟記念はレイエンダが1着となっても、コズミックフォースが2・3着に入ればそこそこな配当が見込めます。出走予定馬を見るかぎり、「スローペース+上り3F勝負」が濃厚なメンバーとあって、ゲートインが叶えば人気薄のコズミックフォースにもチャンスが出てきました。
新潟記念はもともと「あっと驚く高配当」も出る重賞とあって、1人気のレイエンダが馬券外になるようであればウハウハな3連単となりそうです。そんなことを妄想していると、今からレースが楽しみになりますね!