5週連続でGⅠが行われる春の東京開催は、芝コースが時計の速いコンディションとなっています。NHKマイルCの週から「高速馬場」へと変化し、京王杯SCではレコードタイムが計時されました。
▼2018年
NHKマイルC:1分32秒8
京王杯SC:1分19秒5(レコード)
ヴィクトリアマイル:1分32秒3
「稍重」+「大粒の雨が降る」なかで行われたヴィクトリアマイルの勝ちタイムが1分32秒3ですから、もう手がつけられないほどの「高速馬場」になっていることは間違いありません。
ヴィクトリアマイルの行われた5月13日(日)は昼過ぎから雨が落ち始め、メインレースの頃にはザーザー降りとなりました。ただ、芝コースは雨の影響をものともせず、「稍重」ながらも速い時計の出るコンディション。東京の芝コースは排水性が良いため、これくらいの雨では「タフ」な馬場にはならないということでしょう。
東京の天気は週末にかけて下り坂
東京は18日(金)と19日(土)に雨の予報が出ており、週末にかけて天気が下り坂です。現在の東京の芝はかなりの高速馬場ですが、19日(土)に雨の中でレースが行われるとすれば、いくらかタフな馬場へ変わることも考えられます。
同開催の京都は、13日(日)の大雨によってあっという間に「不良」へと変わり、逃げ・先行馬が好走するタフな馬場となりました。18日と19日の雨量によっては、東京競馬場の芝コースが急変し、馬場の巧拙がレースに影響する可能性も十分にあります。
雨量によっては重馬場も……
近年、春開催の東京芝は時計が速くなるのがデフォルトです。理由は以下の3点が考えられます。
1. 東京競馬場の排水性の良さ
2. エアレーション作業+エクイターフの導入
3. 芝の成長が早い
1と2については「高速馬場がどのように作られるのか?」を考察した記事があるので、詳しくはそちらをご参照下さい。
この時期は気温の上昇とともに芝の成長が早く、多少の雨であればすぐに馬場が回復します。また、エアレーション作業によって、開催が進むにつれて路盤が踏み固められ、時計が速くなるのも特徴と言えるでしょう。
重馬場になるとしたら?
東京競馬場が「タフな重馬場」になるとすれば、雨がレース中だけでなく終日降り続けたときです。馬場の含水量が高い状況でレースが行われると、どうしても芝が傷みます。昨年の天皇賞・秋の週などが、タフな馬場になる典型的なパターンです。
良馬場で行われると?
オークス前日の19日(土)に雨が降ったとしても、当日がカラッと晴れれば重馬場になることはありません。また、東京競馬場は晴れ間が出ると馬場が「内ラチ沿い」から乾き、「イン有利のコンディション」になることもあるので、注意が必要です。
昨年のオークスは「イン+前目有利」
昨年、ヴィクトリアマイルは稍重馬場で行われ、出走馬が内ラチ沿いを避けるようなレースとなりました。ところが、次の週になると馬場が回復し、一転してインコースが有利なコンディションに。オークスが1枠2頭のワンツーになったことからも、インコースが有利だったことがわかります。
重馬場か良馬場かでコースの有利・不利が出てくるので、馬場のチェックは欠かせませんね。
オークス出走馬で重馬場に適性があるのは?
今年のオークス出走する18頭の内、重馬場に適性があるのはどの馬でしょうか?
今年のオークスはディープインパクト産駒7頭、ルーラーシップ産駒4頭が出走を予定しています。まずは、この13頭について考えてみましょう。
重馬場ならディープインパクトよりもルーラーシップ
前提として、しなやかさや柔らかさを伝えるディープインパクト産駒よりも、トニービンらしいパワフル・ストライドを伝えるルーラーシップ産駒が重馬場を得意としています。柔らかなストライドは高速馬場に向くものの、パワーが求められるタフな馬場だと割引です。
ルーラーシップの初年度産駒キセキが歴史的な「不良」馬場となった菊花賞を制したことからも、トニービンのパワーが重馬場に適していることがわかります。
13頭のなかで重馬場OKなのは?
それでは、ディープインパクトとルーラーシップのそれぞれに分けて、重馬場が得意そうな馬をピックアップしてみましょう。
ディープインパクト産駒
カンタービレ
レッドサクヤ
(50音順)
カンタービレは母シャンロッサがGalileo×ラストタイクーン(母父Mill Reef)で、母系の奥にトニービンの父父Kalamounを引くコテコテの欧州血統。ディープインパクト産駒としてはパワー優先の配合で、小回り中山のフラワーCを制したのも納得です。少なくとも、重が下手ということはないでしょう。
レッドサクヤの母サクラサクⅡはパワー・スプリンターのデインヒル直仔で、4代母が欧州の名繁殖牝馬Specialという良血馬。マイラー色は強いものの、重馬場それほど苦にしないはずです。
ルーラーシップ産駒
パイオニアバイオ
リリーノーブル
パイオニアバイオは母系に「重の鬼」レインボーアンバーを引きます。母アニメイトバイオは歴史的な不良馬場となった昨年の天皇賞・秋で3着と好走したレインボーラインの半姉。自身も稍重馬場のオークスを4着と好走しており、この牝系は全体として重が得意です。
リリーノーブルの母ピュアチャプレットはビーバップに遡る牝系で、イースターやデウスウルトなど時計がかかるタフな芝でパフォーマンスを上げる馬が多く出ています。リリーノーブル自身も馬体以上にパワフルなフットワークで走るので、馬場が渋るのはプラスでしょう。
その他の重馬場適性のある馬は?
ディープインパクトとルーラーシップ産駒以外で、重馬場に適性のある馬は以下の1頭です。
ランドネ
ランドネの父父Archはタフな馬場を得意とするRobertoとDanzigとAlyderを併せもつ種牡馬。自身はBound≒Nureyev3×4のニアリークロス、Northern DancerやBuckpasserなどパワー型のクロスをもつことから、タフな重馬場はずんどばでしょう。配合からは渋った馬場がベターです。
アーモンドアイとラッキーライラックは?
アーモンドアイは稍重のシンザン記念を快勝していること、Nureyev5×3のクロスがあることから、渋った馬場そのものは苦にしません。ただ、ロードカナロアの母レディブラッサムのしなやかさや柔らかさを強く受け継いでおり、タフな馬場は割引です。稍重くらいであれば能力でこなしてしまうでしょうが、重〜不良まで悪化するようだと不安があります。
ラッキーライラックの3代母ステラマドリッドからは、ミッキーアイル、アエロリット、テイエムジンソクなどスピードとパワーに優れ、前向きな気性をもつ活躍馬が出ており、タフな馬場そのものは苦にしません。父は2年連続で凱旋門賞を2着と好走したオルフェーヴルとあって、重〜不良になっても十分にこなせるでしょう。アーモンドアイとの比較で言えば、重馬場適性ならこちらが上です。
まとめ
オークスが重馬場か、それとも高速馬場になるのかはまだわかりません。今年はアーモンドアイとラッキーライラック、サトノワルキューレの素質馬3頭が出走しているため、馬場適性を競争能力が上回ることも……。ただ、もしタフな重馬場になるようだと、100%順当な決着になるとは言い切れません。そのためにも、土曜日の馬場状態はしっかりとチェックしておきたいですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。