1人気が3連敗の桜花賞(2018年)を2歳女王のラッキーライラックは好走できるのか?

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2歳女王のラッキーライラックはステップ・レースのチューリップ賞を快勝し、3歳牝馬クラシック第1冠「桜花賞」へ向かいます。デビューからここまで4戦4勝。そのレースぶりも「ケチ」のつけようがないもので、現3歳牝馬路線の「主役」となるのは間違いありません。

前走のチューリップ賞はポンと好スタートを切って先行し、最後の直線でグイグイと抜け出しての勝利。2着マウレア、3着リリーノーブルといった阪神JFの上位2頭を寄せつけず、昨年よりも一段とパワーアップした走りを見せました。

桜花賞はここ3年、1人気に推された馬が不振のレース。昨年は「2歳女王+無傷の4連勝+1人気」のソウルスターリングが3着と敗れており、ラッキーライラックにとっても安心はできません。このオルフェーヴル産駒の素質馬が「桜の女王」を戴冠することになるのでしょうか?

 

1人気と2歳女王は……

先にも述べたように、近年の桜花賞は1人気と2歳女王にとって鬼門のレース。まずは15年〜17年まで、1人気が敗れた理由を確認しておきましょう。

 

15年ルージュバック:9着

逃げたレッツゴードンキの作ったペースは前後半800mが50.0 - 46.0(4.0秒の後傾ラップ)と1600mのGⅠと思えないほどのスローペース。レースの上りが33.5ですから、スタートから後方に位置したルージュバックにはノーチャンスとなりました。

また、この時点でのルージュバックはコーナリングが苦手(スピードを乗せようとすると外に大きく膨れてしまう)で、外側に馬がいると伸び脚を発揮できないなどの弱点を抱えていたため、もう少しペースが流れていたとしても苦しいレースになったと考えられます。

 

16年メジャーエンブレム:4着

「2歳女王+C・ルメール騎手」のブランドとクイーンCでマークした1分32秒5の好時計が評価され、単勝1.5倍の1番人気に支持されたメジャーエンブレムは、内枠からのスタートで馬群に包まれると、最大の武器である持続的な脚を使うことなく4着に敗れました。

ダイワメジャー産駒らしく「上り3F」の速さを求められるレースになると、どうしてもキレ負けしてしまうため、スタートから積極的に出して行けなかったことが最大の敗因でしょう。ルメール騎手であっても、GⅠレースのプレッシャーに打ち勝つことができませんでした。

 

17年ソウルスターリング:3着

「2歳女王+4戦4勝+C・ルメール騎手」とあって、1人気に推されたソウルスターリング。ただ、昨年の桜花賞は稍重のタフな馬場でのレースとなったことと前後半800mが46.5 - 48.0のハイペースになったことで、中距離馬のソウルスターリングには苦しい流れだったと言えます。

タフな馬場とハイペースによって追走に脚を使ってしまった中距離馬が、マイラーのレーヌミノルを差し切るのは難しい……。高速馬場であれば、ソウルスターリングは前半が46.5でも脚をためられはずです。

 

過去3年の1人気には共通点がある

過去3年の1人気は上記のようにハッキリとした敗因がありました。また、この人気を裏切った3頭はすべて「関東馬」という共通点をもつのもポイントでしょう。

ラッキーライラックは関西馬という点でプラス。馬場と枠とペースさえまともなら、力を発揮できる可能性が高くなります。ただ、週末の雨予報は不安要素のひとつですね……。

 

単勝1倍台の1人気の馬が勝つのは?

ラッキーライラックはおそらく単勝1倍台の人気に推されるでしょう。それでは、過去10年の桜花賞において、単勝1倍台の馬はどのような成績なのでしょうか?

過去10年・単勝1倍台の馬

2017年ソウルスターリング:3着

2016年メジャーエンブレム:4着

2015年ルージュバック:9着

2014年ハープスター:1着

2009年ブエナビスタ:1着

09年、14年の2頭は1着となっています。この2頭に共通するのは、4コーナーをほぼ最後方で回ってきていることです。桜花賞は2007年に外回りコースで施行されるようになってから、バキューンと鋭く追い込む馬に有利なコースとなりました。このレースでディープインパクト産駒の相性が良いのも、「弾ける脚を使える」からです。

15年のルージュバックは後方からレースを進めたとは言え、スローで馬群に揉まれる形でしたからそもそもノーチャンスでした。それを除けば、弾ける脚で追い込む馬が人気に応えています。

 

ラッキーライラックは追い込むのか?

ラッキーライラックのセールスポイントはポンと好スタートを切って前々でレースを運べること。もっとも後ろの位置取りになったのが阪神JFの「8番手」ですから、先行して押し切る競馬を得意としています。

極端な内枠を引くか、スタートで後手を踏まないかぎり、ほぼ好位でレースを進めるでしょうし、ディープインパクト産駒のような「弾ける脚を使える」かは微妙なので、そうなるとハープスターやブエナビスタのような競馬を試みるとは思えず……。

06年のコース改修以降(外回りコース)の桜花賞は、稍重馬場だった昨年や歴史的なスローを逃げ切ったレッツゴードンキを除けば、先行して押し切ったのはアパパネとダイワスカーレットの2頭のみ。ラッキーライラックがこれまでと同じようなレースぶりで桜の女王になるなら、これらの名牝と肩を並べることになります。

 

ラッキーライラック3歳牝馬

父:オルフェーヴル

母:ライラックスアンドレース(母父:Flower Alley)

厩舎:松永幹夫(栗東)

騎手:石橋脩(美浦)

生産:ノーザンファーム

ノーザンファーム生産馬なので、クラシック・レースを勝ち切るだけの準備はしっかりと整っています。デビューから石橋脩騎手が手綱を取り続けているのもプラスです。

血統などについては詳しい解説を書いているので、以下を参照して頂くとしてここでは簡単に。

母ライラックスアンドレースはアエロリットやミッキーアイル、テイエムジンソクなどの活躍馬が出ているステラマドリッドに遡る牝系。これらの馬たちからも、ラッキーライラックが小気味よく先行する脚質に出たのも納得です。

この牝系はバキューンとしなやかに弾けるというよりも、スピードとパワーでゴリゴリと押し切るレースを得意とする産駒が活躍しています。母系はGⅠを好走する活力にあふれているだけに、クラシックでヒケを取ることはありません。

 

桜花賞に向けて

馬個体の能力とレースへの準備については申し分なし。単勝1倍台の馬が桜花賞で不振なことと「桜花賞がずんどば!」の適性なのかは不安があるので、馬場と枠とペースによっては取りこぼす可能性も……。

もっとも可能性の高い負けパターンは、16年のメジャーエンブレムのように内で包まれ、ディープインパクト産駒の得意な瞬発力勝負にもち込まれてしまうこと。その展開になっても3着を外してしまうかは「?」ですが、なるべくなら5枠よりも外へ入りたいですね。

 

外差しバキューンが利く馬場なのか?

ブエナビスタ、マルセリーナ、ハープスター、ジュエラーなどの桜花賞馬はほぼ最後方からバキューンと弾ける脚を使って追い込んできました。ただ、先週の阪神の馬場状態は「大外バキューン」が利かないコンディション。しなやかストライドで差す馬たちに不利な馬場であれば、好位から粘り込むラッキーライラックにとってプラスです。

 

週末の雨予報は……高速馬場になることも

現在、阪神競馬場付近の天気は金曜日に雨マークが付いています。馬券を検討する上で最も怖いのは、「雨予報→JRAが芝コースの散水を控える→雨が降らない→高速馬場へ」のパターン。もし、馬場造園課が週中の散水を控えるようだと、週末に雨が降るかどうかは大きなポイントになるでしょう。

 

高速馬場だと1400mベストのタイプも

ラッキーライラックは父オルフェーヴルがスピードタイプではないだけに、マイルのトップ・スピードでは他馬にやや当たる可能性があります。もし高速馬場になったとすると、1400mベストのタイプのスピードに負けてしまう恐れも……。

1600mのGⅠで時計が速くなると、ヴィクトリアマイルのストレイトガール、安田記念のレッドファルクスのように、1400mベストのタイプが好走します。今年の桜花賞が1分33秒0前後の決着になるようだと、あっと驚く決着になることも想定しなければなりません。

 

重馬場ならOK

ラッキーライラックは血統や走りから重馬場はOK。タフな馬場での消耗戦になった場合は「どんと来い!」とは言えないものの、適度に時計がかかるのは苦にしないでしょう。高速馬場になるくらいなら、重馬場になるのがベターです。

 

まとめ

単勝オッズ1倍台の馬が3年連続で連対を外している桜花賞。ラッキーライラックは牝馬らしい「キレ」で勝負するタイプではないので、一昨年のメジャーエンブレムのような競馬だけは避けたいところでしょう。

石橋脩騎手がプレッシャーを跳ね除けて、クラシック初制覇となるのか、今からレースが楽しみですね。

以上、お読みいただきありがとうございました。