GⅠ大阪杯(2018年)は社台系ファームの運動会!?ーー非社台のヤマカツエースは好走できるのか?

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昨年、古馬による芝の中長距離GⅠ(JRA)は6レース行われ、その内の4勝を年度代表馬に輝いたキタサンブラックが上げました。そして、残りの2つのGⅠはノーザンファーム生産のサトノクラウンとシュヴァルグランが制し、日本の馬産を支える「社台系ファーム」の面目はいくらか保たれたと言えるでしょう。

▼2017年 古馬・芝の中距離GⅠ

大阪杯:キタサンブラック

天皇賞・春:キタサンブラック

宝塚記念:サトノクラウン

天皇賞・秋:キタサンブラック

ジャパンカップ:シュヴァルグラン

有馬記念:キタサンブラック

今週の大阪杯(阪神芝2000m)は、キタサンブラックが引退した後に行われる初めての古馬・芝中距離GⅠとあって、スワーヴリチャード、サトノダイヤモンド、アルアイン、シュヴァルグラン、ミッキースワロー、ペルシアンナイトと社台系ファーム生産馬一色に染まりました。2018年は昨年の鬱憤を晴らすことになるのでしょうか?

 

社台系ファームはGⅠレースに強い

「GⅠレースは社台系ファームの運動会」と揶揄されたのも、それが「当たり前」になってからはほとんど見聞きすることがなくなりました。この日本NO.1と言える馬産グループがもっとも強さを発揮するのは3歳クラシックレースで、昨年の皐月賞の1〜3着を独占したのは記憶に新しいところです。

非社台の王者キタサンブラックが引退したことで、今年の古馬・中長距離路線は勝ち馬が替わったとしても、社台系のファーム生産馬であることは変わらない決着が多くなると予想できます。

 

大阪杯の1〜5人気は社台系ファーム生産馬

今年の大阪杯で1〜5人気に推されるのはすべて社台系ファーム生産馬です。そのため、上位人気馬の騎手たちが「日替わりランチ」のようにコロコロと配置転換されるのも、その是非は別として自然なことではあります。

それでは、社台系ファーム生産馬にどんな騎手が配されているのかを見ておきましょう。

アルアイン+川田将雅騎手

サトノダイヤモンド+戸崎圭太騎手

シュヴァルグラン+三浦皇成騎手

スワーヴリチャード+M・デムーロ騎手

ダンビュライト+浜中俊騎手

ペルシアンナイト+福永祐一騎手

マサハヤドリーム+北村友一騎手

ミッキースワロー+横山典弘騎手

メートルダール+松山弘平騎手

ドバイミーティング(ドバイ・ワールドカップ・デー)開催にともない、C・ルメール騎手や武豊騎手、岩田康誠騎手などが不在。それを考えると、社台系ファームはしっかりと上位騎手を配置できたと言えます。

馬個体の能力を抜きにすれば、もっとも不安なのはシュヴァルグランと三浦皇成騎手のコンビ。もともと叩き良化型の馬だけに、この配置からはあまり勝負気配は感じられませんね。

✳︎三浦皇成騎手が上手いかどうかではなく、実績から考えてということです。

昨年の有馬記念でも、どうしてスワーヴリチャード+四位騎手、シャケトラ+田辺騎手、シュヴァルグラン+福永騎手ではないのかが不思議でしたし、ここでも社台系ファームの「忖度」が見え隠れしますね。

このなかで継続騎乗となるのは、アルアイン、スワーヴリチャード、ミッキースワローの3頭のみ。馬とのコンタクトという部分(馬と人との信頼関係)において、GⅠの舞台での乗り替わりは決してプラスではありません。反対に言えば、大阪杯に向けての準備の面で、上記の3頭はプラスの評価ができるでしょう。

 

非社台系+乗り替わりなしの実力馬

今年の大阪杯に出走する馬の中で、「非社台系+乗り替わりナシ」の馬は3頭います。

ウインブライト+松岡正海騎手

サトノノブレス+幸英明騎手

ヤマカツエース+池添謙一騎手

この内、ウインブライトはデビューから松岡騎手が手綱を取っていますし、ヤマカツエースは15戦連続で池添騎手とのコンビです。ともに人馬の信頼関係は強固なものがあり、だからこそ、結果を恐れることなく「パートナーの力を信じ」て仕掛けることもできます。

社台系ファームの忖度なしに、思い切った騎乗で好走する可能性があるとしたら、キタサンブラックと武豊騎手のように、「お互いに分かり合えている」コンビによるものと考えるのが自然です。

 

ヤマカツエース 6歳牡馬

父:キングカメハメハ

母:ヤマカツマリリン(母父:グラスワンダー)

厩舎:池添兼雄(栗東)

生産:岡田牧場

金鯱賞の連覇を含め、重賞5勝の実力馬。GⅠでは16年有馬記念4着、17年大阪杯3着と後一歩のところで栄冠に手が届いていません。芝の中距離路線ではGⅡクラスの力があるだけに、社台系ファームに対抗する筆頭格と言えるでしょう。

 

小回り・内回りコース向き

ヤマカツエースの父キングカメハメハは自己主張が強くなく、牝馬のもつ資質を引き出すのに長けた種牡馬。ドゥラメンテ、ロードカナロア、ホッコータルマエなど、芝・ダート・距離を問わずに一流馬が出せるのは、繁殖牝馬の長所をしっかりと産駒に伝えるからでしょう。

母ヤマカツマリリンは芝のOPまで出世したスプリンターで、グラスワンダー×Deputy Minister系という血統の字面通りのパワータイプです。ヤマカツエースはNorthern Dancer5・5×5の薄いクロスしかなく、母のスピードとパワーが表現された中距離馬。

ここまでの重賞勝ち鞍は中山2、福島1、中京2ですから、小回りか上りのかかるコースで好走しています。母系に入るRobertoらしいパワーのある捲りが最大の武器で、阪神であれば内回り>外回りコースという適性でしょう。

昨年の大阪杯はマルターズアポジーが離して逃げたものの、2番手を追走したキタサンブラック以下はスローのペース。レースは「残り4Fからのスパート+速い上り」を求められたことで、後方に構えたこの馬にはノーチャンスでした。ただ、3〜4コーナーでの捲りの速さは素晴らしく、あの脚を使えるなら今年のメンバーだとチャンスも広がりますね。

 

同厩舎・同馬主のヤマカツライデン

マルターズアポジーが回避したことで、レースの主導権を握るのはヤマカツエースと同じ厩舎&馬主のヤマカツライデンとなるでしょう。「サポート役として大逃げするのでは?」との見方もありますが、もし、厩舎の看板馬をアシストするための出走なら、3コーナーからヤマカツエースがバキューンと捲れるように、道中の馬群を縦長にするような逃げは打たないはずです。

また、ヤマカツエース自身も前半はゆったりと入ってのロングスパート戦がベストなだけに、ライデンが大逃げを打ったとしてもあまり展開利がありません。ただ、ドスローの瞬発力勝負がもっとも避けたい流れなので、その意味ではヤマカツの2頭出しはプラスです。

 

大阪杯に向けて

前走の金鯱賞はこの馬の競走能力の低下が心配される走りでした。「近くに牝馬がいると気が散ってしまう」ことによって調整が難しく、明らかな太め残りだったこともあり、情状酌量の余地はあります。

叩き台と割り切れば、大きなダメージもなく本番を迎えられるのは大きなプラス。枠順と展開と池添騎手の大舞台でのスーパーな手綱さばきがぴったりと噛み合えば、社台系ファームの上位独占を崩すことができる1頭です。

 

社台系ファームのワンツースリーも……

大阪杯は社台系ファームのワンツースリーもあるメンバーだけに、馬個体の能力よりも「ここへ向けてどのような準備をしてきたのか?」が問われるレースになりました。厩舎と外厩によって体調を調整し、どの騎手を確保できたのか……すべての準備をしっかりと整えた陣営に勝つチャンスは訪れるでしょう。

「スワーヴリチャードが左回りを上手く走れるのか?」を心配するよりも、庄野厩舎は芝のGⅠを勝つだけの「準備」ができるのかをよく考えたいところです。

 

社台系ファームの忖度に疲れたら……

これから始まるGⅠ戦線は、社台系ファーム生産馬について考えなければならない時間が増えていきます。そんな「日本NO.1ファーム」の忖度に疲れたら、非社台系の馬から馬券を組むのも一興です。検討する頭数もグっと減りますし、何より楽チンなのがいいところ!

早速、大阪杯でもヤマカツエース⇔ウインブライト馬券なんてグッドかもしれませんね。

 

まとめ

王者キタサンブラックが引退し、今年はいよいよ社台系ファームの反撃が始まります。スワーヴリチャード、サトノダイヤモンド、アルアイン、シュヴァルグランなど、どの馬が大阪杯を勝つのかはわからないものの、今春シーズンは「社台系ファームの週替わりランチ」となるのか……う〜ん、香ばしいランチになりそうですね。

それに対して、非社台系のヤマカツエースは人馬の信頼関係をもとに上記の馬たちに対抗するしかありません。この馬がどのような走りを見せるのかに注目しましょう!

以上、お読みいただきありがとうございました。