新設GⅠ大阪杯の初代チャンピオンに輝いたのは、昨年の年度代表馬キタサンブラック。菊花賞、天皇賞・春、ジャパンカップに続く4つ目のGⅠタイトルになりました。
それでは、張り切って回顧を!
レース
戦前の予想通りにマルターズアポジーがハナへ行き、2番手にロードヴァンドール、直後の外3番手にキタサンブラック。向正面では隊列がすんなりと決まりました。
キタサンブラックは1〜2角にかけて外をサクラアンプルールに張り付かれましたが、向正面ですぐにロードヴァンドールの直後につけたのは武豊騎手の好判断。キタサンブラックの長所と言える緩急自在のペースメイクで、3角までは淡々とレースが進みます。
逃げたマルターズアポジーの1000m通過は59.6秒でしたが、キタサンブラックの通過はおよそ61秒を切るペース。3角でスムーズに外3番手の位置を取り、後ろからプレッシャーをかけられないのであれば、キタサンブラックはどのようにでもレースを支配することができます。
キタサンブラックが3角過ぎから仕掛けて捲りながら前へ取りつくと、直線半ばで先頭に立ち、そのまま後続の追撃を許さない押し切り勝ち。2着にはキタサンブラックのすぐ後ろのポジションを取ったステファノスが流れ込み、大外を捲り差したヤマカツエースが3着に入線。勝ちタイムは1:58.9(良)。
キタサンブラック
キタサンブラックの作ったペースは後傾ラップで、さすがに上り34.3を後ろの馬が差すのは厳しかった…消耗戦になった昨年の宝塚記念もキタサンブラックは直線で二枚腰の粘りを見せているわけですから、武豊騎手も3角過ぎで仕掛け始めた時に「これなら!」と思ったでしょう。
前傾、後傾のどちらのラップにも対応し、外目をスムーズに走れていれば常に自身の能力を発揮できるのは地力が高いことの証明です。
ストライド走法のキタサンブラックにとって、インに押し込められるのが考えられる負けパターンですが、武豊騎手もそこは理解していて、大阪杯でもサクラアンプルールに外を張り付かれないようすぐに対応したのはさすがの一言。
それにしても、キタサンブラックは馬体の厚みも上々で、成熟というかさらに成長しているのではと思わせる充実振りを見せました。大阪杯では後傾ラップを難なく押し切ったのですから、これからどこまで強くなるのか楽しみが増えますね。
サトノダイヤモンドが待つ天皇賞・春に向けて上々のスタートを切りました。
他の有力馬は
サトノクラウンは適性がズレた舞台での走りですから、どうしても物足りなくは映ってしまいましたが、そこは情状酌量の余地があるとして。
キタサンブラックを負かしに行ったのは、サトノクラウンを除けば川田騎手のステファノスだけで、結果として、マカヒキもヤマカツエースもアンビシャスもこれなら勝てる!という仕掛けになったのかどうか…レースを観戦し終わった後でもそのような印象をもってしまうのは、それだけキタサンブラックの地力が抜けていたのでしょう。
それぞれの有力馬を1頭ずつ解説します。
◎マカヒキ:4着(2番人気)
後傾のラップで上りの瞬発力勝負になったのはマカヒキにとってはプラスの流れになりました。ただ、弥生賞の3〜4角で見せた「美しい」捲り脚が今日は影を潜め、先に捲ったヤマカツエースにコーナー加速で遅れをとってしまったのが…
直線で33秒台の脚は使っているものの、内回りコースでは4着まで押し上げるのが精一杯というレース。Haloクロスらしい俊敏な脚捌きで捲るのがこの馬の長所ですから、それが見られなかったのは残念でした。
ダービーを勝った3歳時はベストの距離が2000mだったマカヒキも古馬になって筋肉がつき、しなやさよりもパワーが増したことで、姉のウィキウィキのように距離の適性がもう少し短くなってくる可能性はあります。
大阪杯では上位の馬と力の差があるなという内容でしたが、それは距離適性にあるのか馬個体の能力によるものなのかは、次走ではっきりするはずです。
ステファノス:2着(7人気)
好スタートからすぐに内ラチ沿いをぴったりと回り、キタサンブラックの直後のポジションを取りに行ったのは川田騎手のファインプレー。3角ですっとキタサンブラックの外へ進路を取った時は「川田が勝ちに出た!」と色めき立ちました。4角でスピードに乗せて直線は重厚なストライドでキタサンブラックに追いすがり、ヤマカツエースの差しを封じての2着。これでQE2世S、天皇賞・秋に続くGⅠでの2着となり、底力の問われる舞台ではどこでも好走しますが、勝ち切れないのは…
'15と'16年の天皇賞・秋はそれぞれ10番人気2着、6人気3着ですから、GⅠになると人気以上に走れるタイプで、今日の大阪杯の7番人気2着も終わってみれば…というレースでした。
とは言え、今日はこれまでのようなレースの体勢が決してからの追い込みではなく、先行で結果を出したのですから、安田記念などのマイル路線に向かっても好走できるかもしれません。
ヤマカツエース:3着(4人気)
3角過ぎ、キタサンブラックがペースを上げたのに合わせて仕掛けたのは池添騎手の好判断で、勝ちに行くならあそこから動くしかなかったと思います。大阪杯を走る前までは阪神の内回りコース(0 - 0 - 0 - 3)でしたが、適性としてはずんどばなところを今日の走りで示しました。3〜4角の捲りはこの馬がもっともスムーズに加速をしていて、直線でも十分な伸びを見せたものの、このペースで上りの勝負になるのは辛かったですね。
ただ、勝ちに行っての3着なので、ヤマカツエースはGⅠを正攻法から戦える力がついてきています。同じ阪神内回りの宝塚記念でもチャンスはありますが、陣営が「暑い時期はレースを使わない」と表明しているので…今日の走りを見せられるとローテーション変更の可能性も十分考えれるものの、どうなるのでしょうか。
アンビシャス:5着(5人気)
折り合いもスムーズに後方からの競馬。上り3Fはレース最速の33.6。
あー、もー、分かっていたこととは言え、やっぱり、この結果は寂しいです。
音無調教師は、「よし! このレースでも上り最速をマークしているのだから、やっぱりアンビシャスは強い! もう少しペースが流れてくれれば勝てたのに…」と思っているのでしょうか。アンビシャスがほぼ最後方からの競馬をするなら、そりゃ、上り最速をマークできます。
勝てないですけどね!
サトノクラウン:6着(3人気)
M・デムーロ騎手がスタートから押して出して行き、道中はステファノスとほぼ同じような位置取りになりました。3〜4角にかけてペースが上がったところですっと反応できないのはこの馬がしなやかなストライド走法で走るからで、直線ではバテずに伸びてきますが、瞬発力の差で6着。もう少し持続戦になれば着順は上げられたかもしれませんが、決して適性が合っているとは言えないレースでの6着はサトノクラウンが完成期に入っているからでしょう。
外回り>内回り、距離は2400m〜という適性をもつサトノクラウンにとって、阪神2000mの瞬発力勝負ではさすがに分が悪かったです。今日の走りであれば、今後大きく崩れることはなさそうで、直線の長い東京競馬場で行われるジャパンカップに出走することになれば見直しが必要です。(そこまでの臨戦過程でこの馬の人気が落ちてくれるのならシメシメですが…)
タラ・レバの話をすれば、今年のドバイ・シーマクラシックに出走していれば好走していたのではないか、と。それほどに今は充実していると思います。
▲モンドインテロは8着
キレないディープインパクト産駒のモンドインテロにとっては、持ち味が発揮できない後傾ラップになってしまいました。2000mという距離も短かったのか、3〜4角にかけて捲り脚を見せることができず、直線で追い込んでの8着。
敗因はさまざまあるはずですが、今日に関して言えば上位とは力の差があったのだと思います。GⅠの舞台を経験してこれから力をつけていけば、有馬記念などの内回りコースで狙ってみたい1頭です。
予想は…
マカヒキが4着になった時点で外れコースに…
チーン…終了しました。