4歳以上の牝馬が出走できるJRAのGⅠは、春のヴィクトリアマイル(東京芝1600m)と秋のエリザベス女王杯(京都芝2200m)の2レース。
エリザベス女王杯の特徴は?
1800〜2000mの距離を得意とする4歳以上の牝馬は、どうしても似たローテーションとなり、同じようなメンバーでレースをすることが多くなります。
「どの馬が逃げて、どの馬が先行して……」と手の内がわかるレースになれば、全体のペースは落ち着きます。そのため、上りの瞬発力勝負のレースになってしまうのです。
✳︎エリザベス女王杯へのステップレースとされる府中牝馬S(GⅢ・東京芝1800m)を観ても、スローペースになることがほとんど。
エリザベス女王杯も瞬発力勝負のレースに
エリザベス女王杯は2012年と2015年のように馬場が重くなったり、シンメイフジが大逃げした2011年のような展開にならなければ、道中でペースが中だるみし、上りの瞬発力勝負になるのがデフォルト。
過去5年、上り3F34.5秒以内の「瞬発力」が問われたレースは3レースです。
▼瞬発力勝負になったエリザベス女王杯
2016年
上り34.1(11.5 - 11.2 - 11.4)
1着:クイーンズリング
2着:シングウィズジョイ
3着:ミッキークイーン
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2014年
上り34.1(11.5 - 11.3 - 11.3)
1着:ラキシス
2着:ヌーヴォレコルト
3着:ディアデラマドレ
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2013年(重馬場)
上り34.5(11.7 - 11.6 - 11.2)
1着:メイショウマンボ
2着:ラキシス
3着:アロマティコ
赤色でマークした2014、13年の3着馬ディアデラマドレとアロマティコは、小回り向きのピッチ走法の馬。京都外回りコースであっても、スローの上り勝負になると俊敏に反応(加速)できるピッチの馬が好走することも。
1〜3着馬の名前を見ると、持続力勝負に強い馬はミッキークイーンくらいですから、ペースが緩めばストライドを伸ばして走る馬には苦しくなります。
今年もスローになるのか?
今年は逃げ馬がクロコスミアの1頭のみ。同馬はステップレースの府中牝馬Sをスローの上り勝負で逃げ切っており、ペースを引き上げるとは考えにくく……。
気性的に「逃げ」もしくは「先行」したい馬も他に見当たらないので、今年も上り3Fが34秒前半になる可能性が高いと言えるでしょう。
上りの勝負が得意な馬は?
スローの上り勝負に強い馬は、以下の7頭。
モズカッチャン
クイーンズリング
ディアドラ
スマートレイアー(✳︎)
ジュールポレール
ヴィブロス
ルージュバック
✳︎スマートレイアーは前走で上り33.4の脚を使っているものの、加齢とともに持続力型へとシフトしているため、「俊敏な加速」を問われるレースは不利。
このなかで、もっとも俊敏に加速できる(=トップスピードに乗るまでの時間が短い)のは、ヴィブロスです。もし、スローからの瞬発力勝負になるのなら、この馬が最有力候補でしょう。
今年のエリザベス女王杯は混戦
今年のエリザベス女王杯は1桁人気に推される馬たちのどれが勝っても驚かないレースです。それだけ、上位は混戦。騎手も「1着」を意識して乗るので、前半はスロー+残り4Fからのスパートの戦いに……。
3〜4コーナーから前々のポジションへと押し上げて行ける騎手に有利な流れになり、そうすると、「ミルコー!」のモズカッチャンになってしまうというオチ……。
昨年のクイーンズリングとシングウィズジョイの「M・デムーロ&C・ルメール」のワンツーが、今年も再現されるかもしれません。
エリザベス女王杯の「楽チン1分予想!」
さて、混戦だからこそ、時間をかけずにサクッと予想したいですよね!そんなあなたにピッタリなのが、「楽チン1分予想」です。
スローペースになるなら、エリザベス女王杯は深く考えることのないレースなので、以下のポイントに合う馬を見つけて、そこから1〜8人気に流せばOK!
▼ポイント
・1〜3人気からチョイス
・スローの瞬発力勝負に強い
・社台系ファーム生産馬
・外国人騎手
う〜ん、ヴィブロスとルージュバックの2頭が残りました。後は、この2頭のワンツーにならないことを祈りつつ、どちらかから上位人気の馬へ流せば、「楽チン1分予想!」のデキアガリ!
✳︎ヴィブロスとルージュバックのどちらかを軸に決め、この2頭同士の買い目をのぞいて7人気まで流せば、買い目は5点。馬連オッズで5倍以上の配当だと元は取れます。
「どんなレースが観たいのか」を考える
労力をかけない予想も魅力があるものの、やっぱり、「ああでもない、こうでもない」と考えるのが好きなので、ここからは妄想全開で!
古馬の有力馬と3歳馬3頭については、週中に詳しい解説を書いているので、そちらを参照して下さい。
エリザベス女王杯(2017年)に出走する1〜4人気の古馬4頭をドーンと解説!ーー展望 - ずんどば競馬
エリザベス女王杯(2017年)に出走する3歳馬ディアドラ、リスグラシュー、モズカッチャンの3頭を解説!ーー展望 - ずんどば競馬
混戦ということは、「ほんのちょっとしたこと」でガラリと着順が入れ替わるような争いとなります。そして、それらをすべて予想することなどできません。
どんなレースを観たいのか?
1〜3着に好走する馬の予想が難しいのですから、健全なのは以下の2通りです。
1. 好きな馬を買う
2. どんなレースを観たいかを考える
1はシンプルですよね。好きな馬、応援したい馬から馬券を買う、それだけ。2は好走馬ではなく、「どんなレースを観たいのか?」で考えること。
馬券代を「レースの観戦料」だとするなら、今年のエリザベス女王杯は「こんな戦いが観たい!」という願望を買いたいレースです。
理想のレース
2011年、R・ムーア騎手を背にスノーフェアリーが連覇を達成したエリザベス女王杯。あのレースは、馬券が当たっても外れても、競馬を知らない高校生でも競馬ファン歴の長い人でも、素直に「素晴らしい!」と拍手できる戦いでした。
シンメイフジが「これでもか!」というほどに逃げに逃げ、ホエールキャプチャとアパパネが捕まえに行き、アヴァンチュラは外から捲り、スノーフェアリーがインをズバッと伸びてくる、上り3F11.8 - 12.9 - 12.4の死力を尽くした持続戦。
観戦した人の100%が「素晴らしい!」と感じるようなGⅠレースはなかなかなくて、だからこそ、それに近づけるような白熱した争いを、勝者にも敗者にも拍手を送れる戦いを観たいのです。
私の「観たいレース」は?
ペースが流れて、3コーナーから各馬が仕掛け合い、上り3Fの内12秒台が2つ以上マークされるような、そんな直線の叩き合い……可能性としては1mmあるかないかですが、今年のエリザベス女王杯はそんなレースを期待します。
◎ミッキークイーン 5歳牡馬
父:ディープインパクト
母:ミュージカルウェイ(母父:Gold Away)
厩舎:池江泰寿(栗東)
生産:ノーザンファーム
母系に多く入るNasrullahなどのしなやかさを伝える血が、ミッキークイーンの美しいストライドを形作りました。
柔らかく動けるから、加速するまでにやや時間がかり、中距離のスローペースだと差し遅れてしまいます。
その替わり、持続戦になれば牡馬一線級とも互角に戦える馬。上り3Fの内12秒台が2つマークされるようなレースがもっとも合っています。
もっともお互いをわかっているコンビ
今年のエリザベス女王杯は乗り替わりが多く、ヴィブロス+ルメールやモズカッチャン+M・デムーロも秋から結成されたコンビ。
GⅠレースでは、馬と騎手のお互いがわかり合えているかどうかも結果に大きく影響します。そのため、15戦の内14戦でミッキークイーンの手綱を取っている浜中騎手に期待をしたいところ。
◯リスグラシュー 3歳牝馬
父:ハーツクライ
母:リリサイド(母父:American Post)
厩舎:矢作芳人(栗東)
生産:ノーザンファーム
2歳の阪神JF2着からGⅠで好走を続けるリスグラシュー。ハーツクライ産駒らしくズドーーンと重厚なストライドで走ります。
上りの速い競馬だとパフォーマンスが落ちるので、理想はラスト3Fで12秒台が2つ入るレース。前走の内回りコースから今走の外回りコースに替わるのは大きくプラスで、持続戦になるなら◯印に。
ただ、ハーツクライ産駒は京都のGⅠレースだと2着はあるものの勝ちきれないため、1着まではどうでしょうか……。
その他は?
◎◯以外で持続戦がOKなのは、スマートレイアーとディアドラ、人気薄ではマキシマムドパリでしょうか。その他はスローがベターな馬たちなので、評価を下げます。
買い目
◎→◯への馬単を。もうこの1点で。持続戦になるなら、コレだけで十分です。
馬単
10 → 6
まとめ
「スローになったら、ウワーーン」と泣きたくなるような馬単ですが、この2頭がゴール前で叩き合う、そんなレースを期待します。
今年のエリザベス女王杯は、ヴィブロス、モズカッチャン、ルージュバック、クイーンズリングとスローに強い馬がズラリと揃いましたから、「あえて」の持続戦を予想……この時点で外れそうですがね……。
以上、お読みいただきありがとうございました。
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