オルフェーヴル産駒のロックディスタウンとラッキーライラックは阪神JFを好走できるのか?ーー種牡馬の特徴も解説!

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2017年の2歳世代が初年度産駒となるオルフェーヴルは、12月3日(日)終了時点で2頭の重賞勝ち馬を出すなど、種牡馬として好スタートを切りました。

札幌2歳S(GⅢ・札幌芝1800m)1着のロックディスタウン、アルテミスS(GⅢ・東京芝1600m)1着のラッキーライラックともに、2歳女王を決める「阪神JF(GⅠ・阪神芝1600m)」に出走します。昨年はソウルスターリングが無傷の3連勝で勝ち上がったレースだけに、来春のクラシックを占う1戦です。

今回の記事では、オルフェーヴル産駒の特徴と重賞馬2頭の今後について見ていきましょう。

 

新種牡馬オルフェーヴル

競走馬として3歳牡馬クラシックの3冠を制し、2年続けて凱旋門賞2着となるなど「規格外」の強さを誇ったオルフェーヴル。フランスでも日本でも、そしてコースや距離を問わない素晴らしい走りは、今でも多くの競馬ファンから「最強馬」として名前の挙がる1頭です。

 

プロフィール

父:ステイゴールド

母:オリエンタルアート(母父:メジロマックイーン)

厩舎:池江泰寿(栗東)

生産:社台コーポレーション白老ファーム

オルフェーヴルは宝塚記念と有馬記念のグランプリを制したドリームジャーニーの全弟として大きな期待を集めました。兄は内回り・小回りをスパーンと捲るピッチ走法の馬。それに対して、弟オルフェーヴルは脚を速く回転させながらもしなやかにストライドを伸ばせる馬でした。

兄に較べて馬格があり、凱旋門賞の行われたロンシャンの芝も苦にすることはありませんでしたし、気難しさ(4歳時の阪神大賞典における逸走は、この馬の気難しさを物語るエピソードの1つ)さえ出さなければ、コースも馬場も不問の一流馬と言えます。

 

血統

母オリエンタルアートはドリームジャーニー=オルフェーヴル全兄弟を産み、アベレージヒッターというよりはホームランバッタータイプの名牝。父ステイゴールドも「社台」の歴史が詰まった名血・名種牡馬です。

ノーザンテースト4×3のクロスをもつため、ラストランの有馬記念を圧巻のコーナー加速力で捲ったパワーが長所の1つ。タフな馬場だった凱旋門賞を苦もなく走れたのは、この日本を代表する種牡馬のパワーを受け継いだからでしょう。

小回り向きのパワーだけではなく、直線の長いコースでもしなやかにキレるのがオルフェーヴルの最大の長所と言えます。この柔らかさは父ステイゴールドと母父メジロマックイーンに流れるパーソロンやリマンドによるもの。これらの血が発現しているところが何よりも素晴らしいのです。

 

産駒の特徴は?

オルフェーヴルがノーザンテースト3×4をもつため、産駒はこのクロスを活かすと小回り・内回り向きのピッチで走るパワー型が出ます。札幌の新馬戦をレコード勝ちしたクリノクーニングなどがこのタイプ。

新潟の外回りの新馬戦→アルテミスSを連勝したラッキーライラックはNorthern Dancerのクロスが薄く(6・5×6・6)、産駒のなかでは「柔らかい」走りをするのが特徴です。ノーザンテーストの血に触れなければ、直線の長いコースをしなやかに走る産駒も出るのでしょう。

2戦2勝の重賞勝ち馬が2頭も出ているように、オルフェーヴルはその父ステイゴールドと同じく、「1発長打!」のタイプ。平均的に「走る」仔が出るというよりも、重賞級をポコポコ出すイメージが湧きます。

 

現2歳の成績

初年度産駒となる現2歳はここまで(12月3日終了時点)に73頭が出走し、その内7頭が勝ち上がり。2勝以上がロックディスタウンとラッキーライラックの2頭です。同じく新種牡馬のロードカナロアと較べてみると、オルフェーヴルがアベレージヒッターではなくホームランバッターだということがわかります。

・オルフェーヴル

出走頭数:73

勝馬頭数:7

勝利数 :9

重賞勝馬:2

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・ロードカナロア

出走頭数:78

勝馬頭数:27

勝利数 :32

重賞勝馬:0

オルフェーヴルとロードカナロアの出走頭数はほぼ同数にもかかわらず、勝馬頭数や勝利数は大きく後者が引き離しています。その替わり、重賞を勝ち切っているのが前者です。これらの成績が産駒の特徴を端的に表していると言えるでしょう。

 

ロックディスタウンとラッキーライラックについて

それでは、2戦2勝で重賞勝ち馬となったロックディスタウンとラッキーライラックの2頭をそれぞれ見ていきましょう。

 

ロックディスタウン 2歳牝馬

父:オルフェーヴル

母:ストレイキャット

厩舎:二ノ宮敬宇(美浦)

生産:社台コーポレーション白老ファーム

ロックディスタウンは直線の長い新潟芝1800mの新馬戦を、上り3F32.5の脚でアッサリと勝ち上がり、重賞レースへと駒を進めました。牡馬混合の札幌2歳Sはタフな馬場をものともせず、3コーナー過ぎから馬場の外目を捲ると2着ファストアプローチをパワーでねじ伏せる強い競馬。この重賞勝利は、新馬戦で見せた「素質」が確かなものであることを示す1戦となりました。

札幌2歳Sが1800mの距離で行われるようになった1997年から、牝馬による勝利は2013年のレッドリヴェール以来となる2頭目。ロックディスタウンにとっては、年末の2歳牝馬GⅠの阪神JF、そして来春のクラシックへ向けて大きく展望の拓ける勝利だったと言えます。

 

血統

母ストレイキャットは3連勝でクイーンC(GⅢ・東京芝1600m)を制したキャットコイン(父ステイゴールド)、今夏に1600万下のレースを勝ってオープン入りを果たしたワンブレスアウェイ(父ステイゴールド)などの活躍馬を出している好繁殖牝馬。

ロックディスタウンは父がオルフェーヴルに替わり、上記2頭の姉とは4分の3妹にあたります。新種牡馬の父はノーザンテースト4×3のクロスをもつため、ステイゴールドよりもパワー型の産駒を出す確率は高いと言えるでしょう。

Storm Cat産駒のストレイキャット自身はノーザンテーストの血をもたないものの、Northern Dancerと同配合のIcecapade(Nearctic×Native Dancer)を引くため、この2頭の3×4のクロスをもちます。また、ノーザンテーストと似通った血のStorm Birdをもつことから、ロックディスタウンはより姉たちよりもパワー型に振れています。

この馬はキャットコインよりもワンブレスアウェイに体型も走りも似ていて、牝馬としては馬格に恵まれているのも好印象。ルメール騎手が札幌2歳Sのレース後に「小回りは忙しい」とコメントしていましたが、配合から小回り向きです。

 

今後は?

母ストレイキャットの仔は2歳〜3歳春にかけて、そのスピードとパワーで重賞でも好走する仕上がり早のタイプが出ます。ロックディスタウンは小回り向きのパワーを強調した配合をしていますが、柔らかみのあるフォームで走るのが特徴です。

これから父母のパワーが発現してきたときに、この柔らかさをキープできるのであれば、東京などの直線の長いコースでもビュンと弾ける脚が使えるでしょう。3歳の春まではスピードとパワーで押し切れる血統なので、少なくとも桜花賞までは楽しみが続きます。

 

阪神JFに向けて

ロックディスタウンはキャットコインよりもワンブレスアウェイに体質や走りが似ており、ベストは直線の長いコース。パワーだけでなくしなやかさも感じさせる走りから、芝1600m外回りの阪神JFはほぼベストの舞台です。ゴール前に待ち構える坂もOKで、コース・レイアウトに不安はありません。

不安点を挙げるのなら、開幕したばかりの阪神芝は速い時計の出るコンディションになっていること。よほどのスローにならないかぎり、勝ちタイムは1分34秒前半〜33秒後半が想定され、道中で速いラップを踏んだ上で新馬戦のような上り3Fの脚を使えるのかがポイントです。

ただ、現時点での完成度がかなり高く、速い時計の決着にもアッサリと対応している可能性も十分あります。関東馬なので長距離輸送をクリアできれば……。

 

ラッキーライラック 2歳牝馬

父:オルフェーヴル

母:ライラックスアンドレース(母父:Flower Alley)

厩舎:松永幹夫(栗東)

生産:ノーザンファーム

スローになった新潟芝1600mの新馬戦は上り3F33.1でビュンと反応し、重厚なストライドで快勝。オルフェーヴル産駒としては脚が脚が長く、見栄えのする好馬体をもっています。

1戦1勝で臨んだアルテミスSは、スタートして外目4、5番手で流れに乗ると、直線に向いても鞍上の手応えは楽なまま。残り300mのあたりから仕掛けられると、重厚かつしなやかなストライドで逃げたサヤカチャンを捕らえました。ゴールまでストライドが乱れることはなく、いかにも素質馬らしい走りでした。

ラッキーライラックは新馬戦→アルテミスSと重厚なストライドで差し切り勝ちを上げたことからも、瞬発力で勝負するよりは持続力のタイプ。もっと積極的に乗っても末脚は衰えないはずで、好位からのレースがベターでしょう。

 

血統

母ライラックスアンドレースは、ミッキーアイルやアエロリットなどのGⅠが出ている名牝ステラマドリッドに遡る牝系。その父Flower Alleyはトーセンラー=スピルバーグ(父)全兄妹の半兄にあたります。名牝プリンセスオリビアの仔Flower Alleyをはじめ、ライラックスアンドレースは代々名牝系の種牡馬が重ねられており、母系の活力は十分です。

ラッキーライラック自身はNorthern Dancerの6・5×6・6のクロスをもち、この名種牡馬の血が薄いのが最大の特徴。オルフェーヴル産駒としてはしなやかさのある走りは、母系に入るフォーティナイナーを通じるMr. Prospectorの血と、北米血統のSeattle Slewによるものでしょう。

 

今後は?

Northern Dancerの強いクロスをもたない母から、2歳の重賞を勝つオルフェーヴル産駒が出たのは素晴らしいの一言です。とにかく、この重厚で美しいフォームからも、ラッキーライラックが素質馬であることは疑いようがありません。

ストライド走法ですから、直線の長いコースに向いており、体型や走りからは中距離馬。マイル戦であれば、前半のペースがゆったりとする流れがベター。

阪神JF→桜花賞→オークスと3歳春のクラシックまでは、GⅠが直線の長いコースで行われますから、ラッキーライラックにとって「どんと来い!」の舞台が続きます。

できれば、できれば石橋脩騎手を続投させて欲しいのですが……次走以降の騎手が誰なのかが気になって……。

 

阪神JFに向けて

ラッキーライラックの前向きな気性はステラマドリッド←My Julietによるもの。同じ牝系出身のテイエムジンソクがチャンピオンズCで2着と好走したように、勢いのある母系です。

母父Flower AlleyがMr. Prospector3×3のクロスをもつので、道中で速いラップを踏むのはOKの血統。速い時計+インコースが有利な現在の阪神芝のコンディションもスっと前の位置につけられるこの馬にはプラスです。1600m外回りもずんどばですし、コースに大きな不安はありません。昨年の阪神JFのような芝の状態であれば、ラッキーライラックには大きなチャンス!

鞍上の石橋脩騎手はソツのない騎乗ができますし、今年はキャリアハイとなる勝ち星を上げています。2012年天皇賞・春のビートブラック以来となるGⅠ制覇のチャンスが巡ってきました。人馬ともに注目の1戦と言えますね。

 

まとめ

オルフェーヴル産駒の2歳重賞勝ち馬は2頭ともに牝馬。初年度から素質あふれる仔を出し、来春のクラシックが楽しみになりました。

この後、名牝シンハリーズの仔シンハラージャなど楽しみな牡馬がデビューを控えています。この2頭に続く大物が現れるのか、新種牡馬オルフェーヴルの産駒から目が離せません。

シンハリーズはオークス馬シンハライトの母

 

以上、お読みいただきありがとうございました。