アーモンドアイ不在のローズS(2018年)はノーザンファーム生産馬が好走するのか?ーー展望

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秋競馬の2週目は9月15(土)〜17(祝)の変則3日間開催。中山と阪神の東西で牡馬と牝馬のクラシックのトライアルが行われます。

ローズS(GⅡ・阪神芝1800m)

セントライト記念(GⅡ・中山芝2200m)

春のクラシック2冠を制したアーモンドアイはローズSをスキップし、秋華賞へ直行するローテーションが組まれました。秋の飛躍を展望する馬たちがローズSでどのような走りをするのか、今からレースが楽しみです。

 

秋のクラシック路線もノーザンファーム生産馬が中心

9月8日(土)、中山競馬場で行われた秋華賞トライアルの紫苑S(GⅢ・芝2000m)は、ノーザンファーム生産のノームコアがC・ルメール騎手の手綱に導かれて完勝しました。「ノーザンファーム生産+外国人騎手」の組み合わせは、馬券から外すことが難しくなっています。

 

桜花賞とオークスはノーザンファーム生産馬の上位独占

桜花賞からダービーまでの春のクラシックもノーザンファーム生産馬の活躍が目立ち、今年の桜花賞とオークスは1〜3着をノーザンファーム生産馬が独占。

生産者にとって「クラシック」はGⅠのなかでも特別な舞台ですから、レースに向けてより多くのリソース(資源)を1頭の競走馬にそそぐことのできるメジャーな生産者が好成績を上げるのは自然なことです。

一夏を越し、ノーザンファーム生産馬たちの勢力図がどのように変わっているのか、紫苑SとローズSの2つのトライアルがそれを物語ります。

 

サトノワルキューレは非ノーザンファーム生産馬

昨年のローズSは「非ノーザンファーム生産馬」の1人気ファンディーナ、2人気モズカッチャンが掲示板外に凡走しました。今年の1人気サトノワルキューレは下河辺牧場の生産馬とあって、休み明けを好走できるのかに不安が残ります。

 

ローズSはノーザンファーム生産馬が多数出走

今年のローズSはノーザンファーム生産が多数出走します。上位人気に推される馬もいることから、馬券を考える上でもチェックは欠かせません。

 

ノーザンファーム生産馬は?

今年のローズSに出走予定の18頭のなかで、ノーザンファーム生産馬は以下の8頭です。

アドマイヤクィーン

アンコールプリュ

ウラヌスチャーム

サラキア

センテリュオ

ダンサール

フィニフティ

レッドランディーニ

注目を集めるのはディープインパクト産駒のサラキアとフィニフティの2頭。ともに春の重賞で好走している実績馬なので、一夏を越してどれほどパワーアップしているのかが鍵となります。

 

サラキア 3歳牝馬

父:ディープインパクト

母:サロミナ(母父:Lomitas)

厩舎:池添学(栗東)

生産:ノーザンファーム

今春はチューリップ賞とフローラSをともに4着と敗退し、後一歩でGⅠへの出走が叶いませんでした。その後、賞金加算のために出走した白百合S(OP・京都芝1800m)は2着に惜敗し、休養に入ります。復帰した夏の小倉の特別戦(500万下)は馬体重を+10kg増やした上での快勝。パワーアップした姿でローズSへ向かいます。

 

血統

母サロミナは独オークス馬で、その父Lomitasは'91年に独の年度代表馬に輝いた名競走馬。Lomitasはドイツ産馬として初めて凱旋門賞を制覇した牝馬デインドリームの父としても知られています。

サロニカは、代々の母の頭文字に「S」がつく「ドイツSライン」に属しています。始祖SchwarzKutteに遡るこの名門牝系は代々の牝馬の頭文字に「S」がつけられ、現代においてもその血はしっかりと受け継がれています。日本ではビワハイジ→ブエナビスタ母娘、種牡馬としてもGⅠ馬を出しているマンハッタンカフェがこの牝系の出身です。

非Northern Dancerの血脈で固められたスタセリタと異なり、サロミナはLomitas(Nijinsky系)×Tiger Hill(デインヒル直仔)ですからNorthern Dancerのクロスをもっている点が大きな特徴です。サロニカは母系の2分の1がドイツ血脈で固められており、ソウルスターリングに似たしなやかな走りはここからきているのでしょう。

 

ローズSへ向けて

ディープインパクト×母父中距離馬(2400mがベストのLomitas)ですから、ジェンティルドンナやミッキークイーン、ヴィルシーナとヴィブロス姉妹のように母父スプリンター or マイラーの血で3歳の早くからバキューンと弾ける脚が使える配合ではありません。

LomitasもTiger Hillも芝2400mの大レースを勝った馬で、サロニカも完成は遅目になるのでしょう。ひと夏を越してパワーアップしていればローズでも十分に戦える血統構成をしています。

しなやかさのある配合ですから、外回りの阪神1800mは適性に合った舞台。揉まれ弱い気質のため、後方から追い込む(捲り差す)レースをしていますが、本質的には好位から粘りこむのがベター。内枠だと揉まれる怖れがあり、外枠に入れば好勝負でしょう。

 

フィニフティ 3歳牝馬

父:ディープインパクト

母:ココシュニック(母父クロフネ)

厩舎:藤原英昭(栗東)

生産:ノーザンファーム

「ディープインパクト×フレンチデピュティ(クロフネの父)」はマカヒキやショウナンパンドラなどのGⅠ馬が出るニックス配合。ただ、母ココシュニックはパワーに優れたRobertoやDanzigなどの血を引くため、その仔はややしなやかさに欠けるのが特徴です。

全兄ステファノスはしっかりとした馬格があり、パワフルな末脚が最大の武器。国内外を問わず、さまざまなコースのGⅠで好走できるのはこのパワーによるものでしょう。そのため、GⅠ級となるにはパワーを活かせる「馬格」を必要とします。

 

フィニフティはショウナンパンドラになれるのか?

先にも述べたように、ショウナンパンドラとフィニフティは「ディープインパクト×フレンチデピュティ」の牝馬です。この2頭は重賞級の配合をしているものの、異なる点は母系に「しなやかな血」をもつかどうか……。

ショウナンパンドラはステイゴールドの母として知られるゴールデンサッシュ牝系の出身で、しなやかな「Princely Gift」などの血を引きます。それに対して、フィニフティはダート重賞路線で活躍したゴールドティアラを祖母にもち、しなやかさよりもパワーに優れた母系です。

祖母ゴールドティアラやフレンチデピュティのパワーを活かすには、それを支える筋骨量が必要です。フィニフティはパワーを活かす配合をしているため、しなやかなショウナンパンドラとは異なります。この馬がGⅠ級となるには、馬体がもう少し成長しないといけません。

 

ローズSに向けて

ローズSは阪神の外回りコースとあって、しなやかな差し脚をどこまで引き出せるのかがポイント。このレースはスローの瞬発力勝負より、上りのかかる持続戦になることが多く、薄手の馬体をしたフィニフティにとって、一夏を越してのパワーアップが不可欠です。

ステファノスの戦績からも、この母系は成長曲線が遅目。フィニフティの本格化は来年以降かもしれませんが、GⅠを展望するためには3歳秋の時点でのパワーアップも欠かせません。しっかりとパワーが付いていれば、阪神の急坂をグイグイと駆け上がれます。

 

高速馬場はOK

阪神の開幕週は土日ともに雨が降り、芝は「重」まで悪化しました。ただ、馬場が傷んだことで時計がかかっていたわけではなく、芝の含水率が下がればもとの高速馬場に戻るでしょう。

フィニフティは牝馬ということもあって、ややパワー不足なのがウィークポイント。高速馬場はそのマイナスを補ってくれるため、速い時計の決着になるのがベターです。

 

まとめ

アーモンドアイ、ラッキーライラック、リリーノーブルがローズSに不出走のため、ノーザンファームはサラキアやフィニフティなどの素質馬をズラリと揃えました。

外国人騎手の2人が非ノーザンファーム生産馬に乗るだけに、その点だけが不安です。

ここからアーモンドアイへ挑戦状を叩きつける馬は現れるのでしょうか?

以上、お読みいただきありがとうございました。