ローズS(2019年)はノーザンファーム生産馬に注目のレースになるのか? それとも……

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9月15日、阪神芝1800mで行われるローズS(GⅡ)は秋華賞(GⅠ・京都芝2000m)に向けたトライアル・レースです。牝馬3冠を達成したアーモンドアイや今年の皐月賞馬サートゥルナーリアなど、ノーザンファーム生産の素質馬はトライアルをスキップしてGⅠに臨むのがトレンド。

今年の3歳牝馬はクロノジェネシスがオークス3着からの秋華賞へ直行しますが、その他の有力馬は紫苑SかローズSをステップとして本番へ向かいます。

✳︎)オークス馬のラヴズオンリーユーは蹄の不安があるとのことで、秋華賞を回避する予定

クラシックのトライアル・レースはどうしても「ノーザンファーム」を無視することはできません。今年「も」ローズSはノーザンファームが幅を効かせることになるのでしょうか?

 

ローズSもノーザンFが優勢

2019年上半期のGⅠレースは、ダートのフェブラリーSとスプリントの高松宮記念を除き、勝ち馬はすべてノーザンFの生産(育成)馬でした。

JRAのレースはこの日本を代表する生産牧場による寡占化が進んでおり、この傾向はすぐには変わらないでしょう。

ローズSはノーザンFの上位独占(ワンツースリー)が一度しかなく(2015年のみ)、過去5年の1〜3着の占有率は「7/15(0.467)」。ただ、毎年3着内に好走している馬を1頭は出しています。

ローズS過去5年

2018年

1着:カンタービレ

2着:サラキア

3着:ラテュロス

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2017年

1着:ラビットラン

2着:カワキタエンカ

3着:リスグラシュー

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2016年

1着:シンハライト

2着:クロコスミア

3着:カイザーバル

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2015年

1着:タッチングスピーチ

2着:ミッキークイーン

3着:トーセンビクトリー

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2014年

1着:ヌーヴォレコルト

2着:タガノエトワール

3着:リラヴァティ

2015年はワンツースリーと上位を独占したものの、ここ3年は1頭しか馬券内に好走できていません。これはどうしてなのでしょうか?

 

トライアルのスキップ&使い分け

この寡占率が5割を超えないのは以下ふたつの点によるもの。

1. 素質馬がトライアルをスキップ

2. 素質馬によるレースの使い分け

アーモンドアイ級の素質馬はトライアルをスキップして、GⅠへ直行するのがノーザンファームのトレンド。

またひとつのトライアル・レースに有力馬が集中しないよう、レースの使い分け(ローズSと紫苑Sに分散)をするのもノーザンファームならではと言えるでしょう。

✳︎)仮に、2018年と17年の秋華賞馬アーモンドアイとディアドラがローズSに出走していたとしたら、寡占率は「9/15」でぴったり6割です

今年はクロノジェネシスがトライアルをスキップすることが決まっており、今後も「ぶっつけでGⅠ」というローテを歩む有力馬は増えることが予想できます。

 

今年のノーザンファーム生産馬は?

今年のローズSに出走予定のノーザンファーム生産馬は以下の6頭。

ウィクトーリア

シャドウディーヴァ

スイープセレリタス

ダノンファンタジー

ビーチサンバ

モアナアネラ

(50音順)

出馬登録12頭の内、半数の6頭がノーザンファーム生産馬という状況。もうこれはアレですね、さすがにここ以外から勝ち馬を期待するのは厳しいのかなと。

阪神JF(GⅠ・阪神芝1600m)勝ち馬のダノンファンタジー、オークス4着ウィクトーリアなどの好メンバーが揃った印象。ラヴズオンリーユーとクロノジェネシスの名前がないのは寂しいですが、ノーザンファームの層の厚さを十分にうかがえる陣容です。

注目はシルクレーシングのウィクトーリアとスイープセレリタスの2頭。前者は戸崎騎手、後者はC・ルメール騎手を鞍上に迎え、トライアルに向けての準備も万全です。

 

ウィクトーリア 3歳牝馬

父:ヴィクトワールピサ

母:ブラックエンブレム(母父ウォーエンブレム)

厩舎:小島茂之

馬主:シルクレーシング

今春にフローラS(GⅡ・東京芝2000m)で初重賞制覇を飾ると、続くオークスを4着と好走。この世代の牝馬としてトップクラスの実力があることを示しました。

母ブラックエンブレムが秋華賞馬ですから、この馬自身のコースへの適性に不安はありません。母娘の同一GⅠ制覇へ期待が高まります。

 

血統

ウィクトーリアの4分の3兄ブライトエンブレムとアストラエンブレムがともにOPまで出世しているように、母ブラックエンブレムは競走馬としただけではなく繁殖牝馬としても優秀です。

フィリーサイアーと呼ばれる父ヴィクトワールピサは母のもつMr. Prospectorのクロスを継続し、さらに機動力抜群のHalo4×5のクロスを生み出します。

Mr. Prospector的な柔らかなキレとHalo的な器用さがウィクトーリアの最大の長所。ただ、馬群を嫌うVaguely Nobleの血が母系に入るので、揉まれる競馬だと力を発揮できないシーンも……。

スムーズな競馬ができさえすれば、能力は重賞級。母と同じく1800〜2000mがベストな中距離馬ですから、ローズSの舞台に大きな不安はありません。

 

ローズSに向けて

この馬の好走はとにかく揉まれずにスムーズなレースができるかにかかっています。現在の阪神芝は「前々+インベタ」有利な馬場コンディションとあって、ポンとスタートを切るなら逃げの手に出るのもアリですね。

母と似たしなやかな体質なので、直線の長いコースもOKですし、この父と母ですから直線の坂を苦にすることもないでしょう。阪神1800mは適性としてほぼズンドバの舞台と言えるので、GⅠに向けていかにダメージを残さずに走れるのかも課題となります。

 

スイープセレリタス 3歳牝馬

父:ハーツクライ

母:スイープトウショウ(母父エンドスウィープ)

厩舎:藤沢和雄(美浦)

馬主:シルクレーシング

ハーツクライ産駒は3歳春の時点でやや伸び悩むことがあるため、スイープセレリタスが500万下で足踏みしたのは順当と言えば順当。

前走の月岡温泉特別は先行策をとると、いかにもハーツクライ産駒という「ズドーンとした末脚」で直線を抜け出しての完勝。夏を越してパワーアップの跡がはっきりとわかる勝利でしたね。

 

血統

母スイープトウショウはGⅠ3勝の名牝。ただ、繁殖牝馬としては今までに思ったような活躍馬を出せずにいます。

父ハーツクライの産駒は総じて成長が遅めです。代表産駒のシュヴァルグランやリスグラシューなども馬体(とくにトモ)がパンとしたのは古馬になってから。

また、産駒の馬体の完成を早めるには母系にNorthern Dancerのクロスを引くことが望ましく、3歳でGⅠを制したハーツクライ産駒のヌーヴォレコルトとワンアンドオンリーはともにこの傾向に当てはまります。

スイープセレリタスは母スイープトウショウがNorthern Dancer4×4のクロスをもつため、ハーツクライ産駒としては成長は早目。また、母系にPrincely GiftやSir Gaylordなどのしなやかな血を多く引くので、バキューンとした脚を使えるのも大きな長所です。

 

ローズSに向けて

ノーザンファーム+藤沢和雄厩舎+C・ルメール騎手の組み合わせですから、これだけで好走の確率はグンと高まっています。リスグラシューに似たハーツクライ産駒ですから、阪神芝1800mはほぼベストの条件でしょう。

今走はこの世代のトップクラスの牝馬たちと初めて競うとあって、どこまで力が通用するのか試金石の1戦となります。重賞級の血統背景をもつ馬だけに、その走りには注目です。

 

非ノーザンファームにもチャンスが……

今年のローズSはラヴズオンリーユーとクロノジェネシスの有力馬2頭が不出走とあって、非ノーザンファームの馬にも好走のチャンスが十分にあります。

条件としては以下の点をクリアしている馬が最有力候補と言えるでしょう。

POINT

高速馬場(時計勝負)がOK

現在の阪神芝はかなりの高速馬場だけに、速い時計がOKな馬でないと苦しくなりそうです。候補としては次の2頭をピック。

シゲルピンクダイヤ

ビックピクチャー

ローズSを制したシンハリーズとタッチングスピーチ、また2着と好走したクロコスミアは母系にSadler's Wellsが入ります。そのため、母系にSadler's Wellsをもつシゲルピンクダイヤは血統的にバッチリ!

ただ、シゲルの父ダイワメジャーはしなやかにキレる脚がないので、差しに回ったときに今の阪神の馬場で届くのかどうかは「?」が付きます。

ビックピクチャーの父ディープインパクトは高速馬場を得意とする名種牡馬。4分の3姉のストレイトガールは1400mベストのマイラーでしたが、父がディープに替わったことで1600m以上の距離でも対応できるでしょう。

 

まとめ

今年のローズSはノーザンファームの上位独占もありえますし、非ノーザンの馬たちが好走する可能性も十分にあって、パッと見ただけでも難解なレース……。

しかも、ノーザンファームの馬たちはどうしても人気サイドになるので、どのように馬券を買うのかも大きなポイントとなるでしょう。

さてさて、どのような結末が待っているのか……今からレースが楽しみですね。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。