古馬サンマルティンは父ハービンジャーに重賞8勝目をプレゼントできるのか?ーー福島記念

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2017年の秋華賞を制したディアドラ(3歳牝馬・橋田満厩舎)は、父ハービンジャーに初めて「GⅠ」の栄冠をプレゼントしました。今年の3歳馬はハービンジャー産駒の「当たり年」と言われ、ディアドラを含む3頭がGⅠで連対を果たしています。

ハービンジャー産駒のGⅠ連対馬

2017年

皐月賞2着:ペルシアンナイト 牡馬

オークス2着:モズカッチャン 牝馬

秋華賞1着:ディアドラ 牝馬

キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを11馬身差で圧勝したハービンジャーは、デインヒル直仔のDansiliを父にもつめ、日本の「時計の速い」芝に対応できる産駒を出せるのかに注目が集まりました。蓋を開けてみれば、2014年にデビューした初年度産駒からベルーフ(5歳牡馬・池江泰寿厩舎)が京成杯(GⅢ・中山芝2000m)を制し、種牡馬として順調なスタートを切ることに。

ただ、3歳クラシック路線や古馬になってからGⅠへ出走できる馬を出せず、「期待外れ」と言われることもしばしば……。評価が下降しつつあった種牡馬ハービンジャーを救ったのは、今年の3歳馬たちです。

参照記事

ハービンジャー産駒の特徴と「今年の躍進」については、以下の記事に詳しく書いてありますので、よければそちらもご覧下さい。

2017年版ハービンジャー産駒の特徴を解説!ーーディアドラが産駒として初GⅠを制覇 - ずんどば競馬

ディアドラの活躍によって「ハービンジャー、ワッショイ!」というムードが漂うものの、種牡馬ハービンジャーには1つだけ気がかりな点があります。それは古馬(4歳以上)になってから重賞を制する産駒が出ていないこと……です。

 

ハービンジャー産駒の重賞勝利はすべて2、3歳限定重賞

ここまで(2017年11月5日終了時点)、ハービンジャーの制した重賞は「7」を数えます。それらのすべてが2、3歳限定戦です。

ハービンジャー産駒の重賞勝利

・2015年

GⅢ京成杯(3歳):ベルーフ

GⅢラジオN杯京都2歳S(2歳):ドレッドノータス

・2016年

GⅢ京成杯(3歳):プロフェット

・2017年

GⅢアーリントンC(3歳):ペルシアンナイト

GⅡフローラS(3歳):モズカッチャン

GⅢ紫苑S(3歳):ディアドラ

GⅠ秋華賞(3歳):ディアドラ

古馬になってから重賞を制している馬がいないため、「成長力」にはまだ「?」がつきます。今年の3歳馬が来年以降、大レースで好走できるのかは注目のポイントでしょう。

 

GⅢ福島記念にサンマルティンが出走

現4歳以上のハービンジャー産駒のなかでもっとも重賞制覇に近いのは、今夏の小倉記念(GⅢ・小倉芝2000m)を2着と好走したサンマルティンです。名牝ディアデラノビアの仔として大きな期待のかかる同馬は、初重賞制覇をかけて福島記念(GⅢ・福島芝2000m)に出走します。

 

サンマルティン 5歳騸馬

父:ハービンジャー

母:ディアデラノビア(母父:サンデーサイレンス)

厩舎:国枝栄(美浦)

生産:ノーザンファーム

折り合いの巧みなルメール騎手が乗っても引っ掛かってしまうほど気性の難しいサンマルティン。それだけ、もっているエンジンが優れているとも言えるので、スムーズに折り合えればため息の出るくらい素晴らしい脚を使えます。

前走の小倉記念は3コーナーから外目をバキューンと捲ると、直線で先頭に立つ積極的なレース運び。ゴール前でインのポケットからスルっと抜け出したタツゴウゲキに差されてしまったものの、「小回り+中距離+折り合いスムーズ」の3点セットが揃えば、重賞級の脚をもっていることを十分に示しました。

 

血統

母ディアデラノビアはGⅡフローラSをはじめ重賞を3勝し、GⅠでも3着が3回ある名競走馬。その母ポトリザリスはアルゼンチンの年度代表馬に輝いた名牝で、Northern DancerやMr. Prospectorなど現代の主流の血をもたないのが大きな特徴です。

ディアデラノビアしかり、その仔たちも全体的に成長曲線が緩やかなのは、このポトリザリスの異系の血が大きく影響しているからでしょう。

サンマルティンはGⅢ京都2歳Sを勝ったドレッドノータスの全兄ですが、同馬はよりハービンジャーのキレる脚が伝わっています。気性の難しさはこの母系につきもので、馬へのあたりが柔らかい戸崎騎手が乗ってもガツンガツンと引っ掛かるほど……。

ルメール騎手と戸崎騎手が乗っても折り合えなかった馬と言えば……そう、札幌記念でモーリスを破ったネオリアリズムの名前がパッと思いつき、「だからこそ」サンマルティンの脚も「重賞級」なのです。

 

福島記念に向けて

母ディアデラノビア譲りのピッチ走法のため、折り合いさえつけばバキューンと小回りを捲れる馬。とにかくコーナーでの加速力が抜群で、小回りコース+中距離がベスト。

3コーナーからペースがアップする福島コースであれば、そこまで折り合いに苦労はしないでしょうから、前走のようにスムーズに走れればここも好勝負にもちこめます。

気性が勝ったタイプということもあって、休み明けは苦にしませんし、後は戸崎騎手が上手にエスコートできれば……。前走の2着を気にし過ぎて仕掛けが遅れるようだとやや不安も、折り合いを欠くシーンがなければ凡走は考えにくい1頭です。

 

「火花が散る」ような美しい捲りを!

サンマルティンの最大の武器は、「パチっ」と「火花が散る」ような美しい「捲り」脚をもっているところ。前走の小倉記念では、他馬もスピードアップを図っているのにもかからず、外から涼しい顔でひと捲り……この脚を観たときはこめかみのところに「火花」が散りました。

あの美しい捲りをもってすれば、重賞制覇もすぐそこです。そんな「火花が散る」ような美しい脚をもつサンマルティンにはPerfumeの名曲『FLASH』を贈ります。

 

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この3人のダンスのように美しい捲り……。

 

まとめ

初GⅠ制覇を上げたハービンジャー産駒にとって、次に超えなければならない壁は「古馬になっての成長力」。今年の3歳世代が来年以降に活躍できるのかを占う意味でも、サンマルティンの福島記念での走りに注目しましょう。

 

以上。お読みいただきありがとうございました。