GⅢ札幌2歳S('17年)はハッピーグリンに代わってミスマンマミーアに◎をーー予想

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6週間におよぶ札幌開催もいよいよ最終週を迎えます。9月2日(土)のメインレースは2歳限定の重賞「GⅢ札幌2歳S(札幌芝1800m)」。ダービ馬ジャングルポケットや宝塚記念を制覇したアドマイヤムーンなど、後にGⅠ馬となった馬が制した出世レースとあって、来年のクラシックを占う意味でも注目の1戦です。

今年は函館芝1800mのデビュー戦を2歳のレコードタイムで快勝したクリノクーニング、未勝利戦を8馬身差で楽勝したカレンシリエージョ、新潟の新馬戦を上り3F32.5の鋭さで勝ち上がったロックディスタウンなどの素質馬が顔を揃えました。このレースを足がかりにGⅠへと手の届く馬が現れるのでしょうか? 今回の記事では札幌2歳Sをドーンと予想していきます。

 

時計のかかる札幌の芝コース

札幌競馬場は雨のなかでのレースとなった8月12日以降、馬場コンディションが「良」発表でもやや時計のかかるタフな状態が続いています。8月12日(土)〜27日(日)までに芝1800〜2000mのレースは合計18鞍行われており、勝ち馬の上り3Fのタイムが35.0を切ったのはわずか2レースのみ。

 

8月12日〜27日 札幌芝1800mの計9鞍

日付 R クラス 距離 勝ち時計 上り3F
8/12 2 2歳未勝利 芝1800m 1:52.8 36.7
10 2歳OP 1:51.3 35.8
8/13 5 2歳新馬 1:52.3 35.9
9 3歳以上500万下 1:50.2 35.0
8/19 1 2歳未勝利 1:51.7 36.9
10 3歳以上500万下 1:48.9 37.0
8/20 5 2歳新馬 1:50.6 34.4
8/27 1 2歳未勝利 1:51.5 37.1
12 3歳以上1000万下 1:48.8 36.2

(*上りは勝ち馬のラスト3Fの数字)

札幌の芝1800mは9鞍組まれ、その内6鞍が2歳限定戦。2歳戦では1分50秒を切る時計はマークされず、ほとんどが上り35.0以上。3歳以上の2つのレースでは1分48秒台に突入しているものの、上りは37.0、36.2とかかっており、前半のペースが流れるほど後半は消耗戦になっていることがわかります。

 

8月12日〜27日 札幌芝2000mの計9鞍

日付 R クラス 距離 勝ち時計 上り3F
8/12 6 3歳未勝利 芝2000m 2:04.7 37.4
12 3歳以上500万下 2:03.4 36.7
8/13 10 3歳以上1000万下 2:02.1 35.0
8/19 7 3歳未勝利 2:03.4 36.6
8/20 8 3歳以上500万下 2:02.1 34.9
11 GⅡ 2:00.4 35.0
8/26 6 3歳未勝利 2:02.7 35.6
11 3歳以上1600万下 2:01.0 36.2
8/27 12 3歳以上500万下 2:02.5 36.3

芝2000mのレースは9鞍組まれ、すべてが2分台の決着となっています。19日以降は良馬場でレースが行われ、それでも時計はかかったまま……。時計の推移を見ても、今週から急激に回復することは考えにくい状況です。

 

時計のかかる洋芝で好走する種牡馬

上記の計18鞍の内、1〜3着に入った馬の父を調べたのが以下の表で、時計のかかる洋芝でどのような種牡馬の産駒が好走しているのかがわかります(*2回以上馬券圏内に入った馬が対象)。

順位 種牡馬名 回数
1 ディープインパクト 6
2 ステイゴールド 4
ハービンジャー
マンハッタンカフェ
ルーラーシップ
6 アドマイヤムーン 3
ワークフォース
8 メイショウサムソン 2

ディープインパクトが最多6回の1位。軽い芝の合うディープインパクトでも母父にTapit、Unbridled、Songandprayerなど北米のダート血統の種牡馬をもつ馬が活躍しており、パワー系統が入っていないと苦しい馬場と言えるでしょう。2位以下はいかにも洋芝巧者の種牡馬という顔ぶれが揃いましたね。

 

札幌2歳Sの1〜3番人気の馬について

上位人気3頭の内、クリノクーニングとロックディスタウンは新種牡馬のオルフェーヴル産駒。もう1頭のカレンシリエージョは姉に今春のヴィクトリアマイルを勝ったアドマイヤリードをもつ良血のハービンジャー産駒です。

オルフェーヴルはステイゴールド直仔ですからパワーも十分で、この1〜3番人気については血統的に時計のかかる芝もそれほど苦にはしないでしょう。

 

クリノクーニング 2歳牡馬

父:オルフェーヴル

母:クリノビスケット(母父:パラダイスクリーク)

厩舎:須貝尚介(栗東)

生産:様似渡辺牧場

新種牡馬のオルフェーヴルは自身がノーザンテースト4×3という強いクロスをもつだけに、Northern Dancerの血が濃くない繁殖牝馬との配合が望ましいと言えます。オルフェーヴルの全兄ドリームジャーニー産駒の獲得賞金上位のミライヘノツバサ、エスティタート、ワンスインアライフ3頭は母系にNorthern Dancerのクロスを引いていません。クリノクーニングはとにかくクロスのうるさい馬で、だからこそ2歳の早い時期から高いパフォーマンスを見せているとも言えるのですが、ここからさらにグングンと成長するのかは「?」がつきます。

 

新馬戦の内容

函館芝1800mの2歳レコードとなった新馬戦は2着カレンシリエージョを1馬身半、3着以下を8馬身以上引き離す楽勝。後半の1000mはすべて12.0以内のラップを踏み、59.5秒で上がったのは能力のある証です。クロスのうるさい新馬らしくデビュー戦からしっかりと速い時計に対応できたのは納得。ただ、この開催の函館競馬場はレコードが連発していたこともあり、この時計はそれほど驚くものではありません。

 

札幌2歳Sに向けて

デビュー戦から2ヶ月近く間隔が空き、この期間にどれほどの成長を見せているのかが好走のキーポイント。時計のかかる馬場も血統や走法からはそれほど苦にするとは思えず、この時点の完成度で他馬を上回れるのかどうか……そこだけでしょうね。

 

ロックディスタウン 2歳牝馬

父:オルフェーヴル

母:ストレイキャット(母父:Storm Cat)

厩舎:二ノ宮敬(美浦)

生産:社台コーポレーション白老ファーム

母ストレイキャットは3連勝でクイーンCを制したキャットコイン(父ステイゴールド)、今夏に1600万下を勝ってオープン入りしたワンブレスアウェイ(父ステイゴールド)などの活躍馬を出している好繁殖牝馬。

ロックディスタウンは父がステイゴールド直仔のオルフェーヴルですから、半姉の成績を見ると今後の活躍に期待がもてます。クリノクーニングとは異なり母ストレイキャットはNorthern Dancerのクロスはもたないものの、Storm Catの父Storm Birdがノーザンテーストと8分の5同血という間柄であり、この影響が強く出ると……。ただ、社台系ファームの生産ということもあり、オルフェーヴル産駒の配合としては好形。

ノーザンテーストの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

Storm Birdの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

新馬戦の内容

直線の長い新潟外回りの芝1800で行われた新馬戦「らしい」極端なスローのレースを、上り32.5の脚であっさりと勝ち上がりました。上り3F32秒台というのは、このペースであればそこまで驚くものではないとは言え、前が壁になって実質的に仕掛けられたのが残り300mからと考えると、しっかりとギアを替えて速い脚を使っていることがわかります。

オルフェーヴル産駒としては馬体にそれほど緩さもなく、だからこそバキューンと速い脚を引き出せるのでしょう。キャットコインよりもワンブレスアウェイに似たパワー・ストライドで、直線の長いコースがベターのタイプ。

 

札幌2歳Sに向けて

繊細な気性をしていた姉のキャットコインのことを念頭に置くと、札幌への長距離輸送+デビューから2戦目でのテンションが心配ではあります。

今の時計のかかる札幌の馬場と小回りコースは適正としては合っているとは言いにくく、父オルフェーヴルのパワーとこの馬の素質で克服出来るのかがキーポイント。現時点では姉の2頭よりも完成度は高いはずで、キャットコインが中山芝1600mのひいらぎ賞で外から捲りを決めたようなレースができれば……。後はひと捲りが決まる相手関係なのかどうかでしょう。

 

カレンシリエージョ 2歳牝馬

父:ハービンジャー

母:ベルアリュールⅡ(母父:Numerous)

厩舎:鈴木孝志(栗東)

生産:ノーザンファーム

母ベルアリュールⅡは今春のヴィクトリアマイルを制したアドマイヤリード(父ステイゴールド)を出しました。父がハービンジャーに替わっても、母のもつ重厚なキレがカレンシリエージョには伝わっていると考えられます。

母父Numerousは日本でも活躍馬を多く出したジェイドロバリーの全弟で、名牝Special(Nureyevの母で、Sadler's Wellsの祖母)を祖母にもつ良血馬。ハービンジャー産駒の活躍馬と言えば、皐月賞2着のペルシアンナイトとオークス2着のモズカッチャンが思い浮かびますが、この2頭はいずれも母系にNureyevの血を引いています。

カレンシリエージョは父ハービンジャーと相性の良いSpecialと重厚なキレを増すRivermanが入り、奥行きのある配合をしているのが特徴です。まだまだ成長段階にあるはずで、この時期にこれだけの走りを見せるのですから、素質も高いのでしょう。

'17年、ハービンジャー産駒の特徴に変化が?!ーー春のクラシックを賑わせたハービンジャー - ずんどば競馬

 

札幌2歳Sに向けて

新馬戦ではクリノクーニングに完成度の差で負けましたが、しっかりと2戦目の未勝利戦を快勝したのは好印象。姉よりも馬格があるため、より重厚なストライドで走ります。Numerous=ジェイドロバリーらしい器用さももち合わせ、小回りの札幌コースもOK。

父がハービンジャーですから時計のかかる洋芝もドンと来いのタイプです。不安点を上げるとすれば、重賞未勝利の鈴木孝志厩舎ということくらいでしょうか。

 

予想

この他の有力馬、シスターフラッグについては週中に記事を書いたので、そちらをご覧下さい。

西村真幸厩舎は小倉2歳Sと札幌2歳Sに管理馬をスタンバイーー展望 - ずんどば競馬

上位人気に支持されるであろう1頭のファストアプローチは父ドーンアプローチ×母ジョリージョコンド(母父:Marju)ですから、ぴかぴかの良血馬。いや、もう、血統と未勝利勝ちのレースを観たら◎を打ちたくなりますが、鞍上が……蛯名正義騎手。蛯名騎手が上手いとか下手とかを言いたいわけではなく、藤沢和雄厩舎の期待馬だったら重賞でルメール騎手を乗せるでしょうし……。よほど馬の能力が抜けていないかぎり、蛯名騎手を重賞で◎や◯にするという選択肢は……ありません。

 

◎ミスマンマミーア 2歳牝馬

父:タニノギムレット

母:サンデーメモリー(母父:サンデーサイレンス)

厩舎:松本隆宏(北海道)

生産:新生ファーム

正直に書けば、コスモス賞2着のミスマンマミーアよりも、3着のハッピーグリンの方が好走の可能性は高いのでは……と思っています。3〜4コーナーにかけてのハッピーグリンの捲り脚は「ハッ!」とさせるものがありましたから。

ただ、コスモス賞でロードカナロア産駒の素質馬ステルヴィオをゴール前で追い詰めたミスマンマミーアも、高い能力を持っていることを示しました。タニノギムレットらしいパワー・ストライドで、今の札幌の馬場は適正に合っています。カレンシリエージョが未勝利戦のように先行馬を捲る展開になれば、コスモス賞の再現も十分。

不安は道中の追走で置かれないかという点。少なくとも前走よりも道中のペースは速くなるため、あまり後ろに置かれすぎると届かないおそれがあります。また、前走のように内々をロスなく立ち回ってポジションを上げられるのかも……。このメンバーで大外からの捲りではさすがに苦しいですから。

骨っぽいメンバーもそれほどいない今年の札幌2歳Sですから、これほど人気が薄いのであれば思い切ってここから狙いたいですね。

 

◯カレンシリエージョ

上位人気の馬のなかでもっとも不安点が少ないのがこの馬。鈴木孝志厩舎が……う〜ん、プリメラアスールのマーメイドSの印象が悪すぎて、どうしても◎を付けることができずにこの印に。

ハービンジャー産駒としてはなかなかの好配合ですし、器用さと「キレる脚」を兼備したタイプ。後は未勝利戦からどれほど成長しているのかも楽しみにしたいですね。

 

以下は△候補として

以下はなかなかの混戦模様。できれば配当的妙味のある馬をピックアップしたいですね。

△ロジャージーニアス

父ネオユニヴァース×母父Red Ransamですから、Roberto的なパワーで時計のかかる小回りコースをバキューンと捲れるはずです。

△サージュミノル

牝馬だったら……名繁殖になれるのではと思わせるエンパイアメーカー産駒。母系も面白い配合で、ここでどんな走りを見せるのか楽しみですね。

△マツカゼ

War Frontはパワー・スプリンターのDanzig直仔ながら日本の芝もOKな種牡馬だと思うので、この印に。未勝利馬にもかかわらず福永騎手騎乗であまり人気になるようなら嫌いたいものの、War Frontが気になる……。

△ファストアプローチ

ジョリージョコンドの仔ですから、無印というわけにはいきません。蛯名騎手が乗っているのが不安点。

△シスターフラッグ

札幌2歳Sと言えば岩田騎手。

 

買い目

◎からの馬連で◯と△の各馬へ。3連複は◎◯の2頭軸で△の各馬へ。

 

馬連

3 - 4. 5. 12. 13. 14. 1

 

3連複

3. 4 → 5. 12. 13. 14. 1 

 

まとめ

時計のかかる札幌で各馬がどのような走りを見せるのかに注目が集まります。オルフェーヴル産駒の初重賞制覇となるのか、今からレースが楽しみですね。皆さまにとっても素晴らしいレースになりますように。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。