GⅢ札幌2歳S('17年)はオルフェーヴル産駒の牝馬ロックディスタウンが、外から豪快に捲って初重賞制覇ーー回顧

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芝1800mの2歳重賞「GⅢ札幌2歳S」は9月2日(土)、道営の2頭を含む14頭で争われ、1番人気に支持されたオルフェーヴル産駒のロックディスタウン(2歳牝馬 二ノ宮敬宇厩舎)が4コーナー手前からスパートし、先に抜け出したファストアプローチをゴール前で首差交わして1着のゴール。この馬自身と新種牡馬の父オルフェーヴルにとって嬉しい重賞初制覇となりました。2着には4番人気のファストアプローチ、3着には道営のダブルシャープが入線。勝ちタイムは1分51秒4(良)。

 

ロックディスタウン 2歳牝馬

父:オルフェーヴル

母:ストレイキャット(母父:Storm Cat)

厩舎:二ノ宮敬宇(美浦)

生産:社台コーポレーション白老ファーム

直線の長い新潟芝1800m外回りの新馬戦を上り「32.5」の脚でアッサリと勝ち上がり、札幌2歳Sへと駒を進めたロックディスタウン。この重賞勝利は新馬戦で見せた「素質」が確かなものであることを示した1戦となりました。1800mの距離で行われるようになった'97年以降、牝馬による勝利は'13年のレッドリヴェール以来となる2頭目。ロックディスタウンにとっては今後が大きく拓ける勝利だったと言えます。

 

血統

母ストレイキャットは3連勝でクイーンC(GⅢ・東京芝1600m)を制したキャットコイン(父ステイゴールド)、今夏に1600万下のレースを勝ってオープン入りを果たしたワンブレスアウェイ(父ステイゴールド)などの活躍馬を出している好繁殖牝馬。

ロックディスタウンは父がオルフェーヴルに替わり、上記2頭の姉とは4分の3妹にあたります。新種牡馬の父はノーザンテースト4×3のクロスをもつため、ステイゴールドよりもパワー型の産駒を出す確率は高いと言えるでしょう。

Storm Cat産駒のストレイキャット自身はノーザンテーストの血をもたないものの、Northern Dancerと同配合のIcecapade(Nearctic×Native Dancer)を引くため、この2頭の3×4のクロスをもちます。また、ノーザンテーストと似通った血のStorm Birdをもつことから、ロックディスタウンはより姉たちよりもパワー型に振れています。

この馬はキャットコインよりもワンブレスアウェイに体型も走りも似ていて、牝馬としては馬格に恵まれているのも好印象。ルメール騎手が札幌2歳Sのレース後に「小回りは忙しい」とコメントしていましたが、配合から小回り向きです。

 

札幌2歳Sのレース内容

五分のスタートを切ると、外枠の馬を先に行かせて中団の外目を追走。1コーナーで頭を上げる姿勢になったものの、ルメール騎手がすぐになだめ、2コーナーでは折り合いもスムーズでした。3〜4コーナーでファストアプローチがじわりとペースを上げたのを見て、ルメール騎手が仕掛けて直線へ。先に抜け出したファストアプローチを外からグイグイと伸びたロックディスタウンがクビ差捕らえたところがゴール。

今の札幌の芝はややタフで時計がかかり、外差しがバンバン決まる馬場コンディション。ロックディスタウンにとっては外枠のスタートと外目をスムーズに走れたことが好走できた要因として上げられます。

新馬戦は上りの速い瞬発力勝負、今走は全体的にタフな馬場での持続力勝負となり、まったく異なる質のレースで2連勝というのは高く評価できるものです。

 

今後に向けて

牡馬相手に加え、適正として合っているとは言えない小回りコースで重賞を制覇したのは、「ここではモノが違う」からでしょう。牝馬としては490kgと馬格にも恵まれ、この牝系に特有の気性の繊細さが出てこなければ、今後が楽しみな1頭。

 

ファストアプローチ 2歳牡馬

父:Dawn Approach

母:ジョリージョコンド(母父:Marju)

厩舎:藤沢和雄(美浦)

生産:ノーザンファーム

香港所属のK・ティータン騎手が乗って勝ち上がった札幌芝1500mの未勝利戦は、大外枠のスタートからこの馬のもてるパワーで強引に押し切ったという内容。ロスの多かった未勝利戦からすると、札幌2歳Sは一転して終始スムーズな競馬ができました。それにしてもティータン騎手からの乗り替わりは次々と馬券になっていて、これからもこのパターンはちょいちょい見掛けるはずですから、注意が必要です。

https://twitter.com/hakusanten/status/902215503908704256

 

血統

母ジョリーショコンドはGⅠ宝塚記念を勝ったサトノクラウン、英GⅠチェヴァリーパークS(芝1200m)を勝ったライトニングパール(牝馬)の全姉。母の父Marjuは英ダービー2着、マイルGⅠのセントジェイムズパレス1着という成績を残したラストタイクーン産駒。サトノクラウンが活躍するまで、日本ではジャパンカップ2着の香港馬インディジェナスの父として知られるくらいでした。

ファストアプローチの祖母にあたるジョコンダⅡはRossini(Miswaki直仔)×Vettori(Machiavellian直仔)というしなやかなマイラーの血が詰まった名繁殖牝馬で、ここに英ダービー2着のMarjuがかけられ、牡馬のサトノクラウンは中距離馬、牝馬のライトニングパールはスプリンターになりましたが、これは牡牝の性差によるものでしょう。

(*欧州のパワータイプの種牡馬はファルブラヴやバゴのように、自身は中距離〜クラシックを走っていた馬でも、牝馬の産駒にはスピードだけが伝わりやすいと言えます。例として、ファルブラヴ産駒の代表的な牝馬はワンカラットもアイムユアーズもエイシンヴァーゴウもフォーエバーマークもスプリント重賞を制覇しているように、父のスタミナ的な要素はあまり伝わっていません)

父Dawn Approachはデビューから7連勝で英2000ギニー(GⅠ 芝1600m)を制したマイラーで、欧州の名種牡馬Galileoの孫。Galileo直仔のFrankelがソウルスターリングを出して日本の芝へ適性を見せたように、パワーが強過ぎるSadler's Wellsも代を経ることで時計の速い芝へも少しずつフィットしてきています。500kgをゆうに超える馬体でいかにもパワー型のファストアプローチが洋芝の札幌で好成績を上げたのは、この父によるもの。今後は時計の速い決着に対応できるかがキーポイント。

 

札幌2歳Sのレース内容

大外枠からのスタートとなり、スムーズに好位の外目につけると道中は終始楽な手応えで進み、4コーナーでは鞍上の蛯名騎手が後ろのロックディスタウンの手応えを確認するほど……。時計のかかるタフな洋芝はこの馬にとっては願ってもない舞台ですから、ここでロックディスタウンに差し切られ、ダブルシャープに詰め寄られたのはいくらか不満が残ります。ただ、この馬も重厚なストライドで走るので、本来は直線の長いコースが合うはずで、そこは情状酌量の余地がありますね。

 

今後に向けて

走法としては重厚なストライドですから小回り・内回りは本質的に向きませんが、この馬のパワーを考えると直線の長い東京でスパっとキレるのかは難しいところです……。パワーが要る阪神の外回りであるとか中京コースがベストの舞台となるのでしょう。時計の速いコースでどのようなパフォーマンスを見せられるのかに注目です。

 

◎ミスマンマミーアは7着

スタートでやや出負けをすると、道中は後方のインを追走。3〜4コーナーのポジションを前へ押し上げたいところでスピードを上げられず、直線だけの競馬になってしまいました。直線は1頭だけインへ進路を取って一瞬「おっ!」と思わせる伸びを見せましたが、外差しのコンディションを考えても7着が精一杯という結果に……。同じく道営馬のダブルシャープが最後方から大外を一気に捲る競馬をしての3着だっただけに、ミスマンマミーアが脚を出し切れなかったのは残念ですね。ただ、中央馬相手でも十分に好戦できるだけの能力をもっているので、次走に期待したい1頭。

 

クリニクーニングは6着、カレンシリエージョは10着

2番人気のクリニクーニングは直線でやや不利を受け、伸びを欠いての6着。カレンシリエージョはこの馬場が合わなかったのか、見せ場もなく10着に敗退しました。心配なのはオルフェーヴル産駒のクリノクーニングの敗退で、これだけクロスのうるさい馬だけにここからグングンと成長する可能性は低く、ここで好走しておきたかったところでしょう……。

カレンシリエージョは半姉のアドマイヤリード(父ステイゴールド)を見ても、これから少しずつ成長を見せるはずで、精神的・身体的なケアをしてしっかりと立て直しを図って欲しいところです。

GⅢ札幌2歳S('17年)はハッピーグリンに代わってミスマンマミーアに◎をーー予想 - ずんどば競馬

 

まとめ

オルフェーヴル産駒の初の重賞制覇となったロックディスタウンにとって、この勝利は今後のローテーションを考えても価値の高いものとなりました。この馬が阪神JFでハープスターを敗った名牝レッドリヴェール級の存在になれるのか、今後の活躍が楽しみですね。

皆さまにとっても素晴らしいレースになりましたでしょうか?

 

以上、お読みいただきありがとうございました。