3歳牡馬クラシックの第1冠・皐月賞(GⅠ・中山芝2000m)は、7人気のエポカドーロ(藤原英昭厩舎)が4コーナーからスムーズに加速して直線で先頭に立つと、サンリヴァルの追撃を振り切っての勝利を上げました。騎乗した戸崎圭太騎手はこれが嬉しいクラシック初制覇。
2着に9人気のサンリヴァル、3着に8人気のジェネラーレウーノが入り、昨年に続いて1〜3人気が馬券圏外へと敗れる波乱となりました。
エポカドーロはスローバランスで走破
今年の皐月賞は逃げ争いを演じたアイトーン、ジェネラーレウーノ、ジュンヴァルロの3頭が後ろを大きく引き離し、前半1000mが59.2と速いタイムでの通過。ただ、道中4番手のエポカドーロは1000mの通過が61秒台の緩いペースでの追走となり、4コーナーから自身の上り3F35.1の脚で後続を完封しました。
馬場が悪かった影響も出たのか、3コーナーからのロングスパート戦となる「いつもの」皐月賞と異なり、今年は4コーナーからビュンと加速したエポカドーロとサンリヴァルがそのまま前で残る展開。集団馬群の先頭と2番手の馬のワンツー決着になったのですから、近年のなかでは珍しい流れだったと言えます。
「そして、誰も仕掛けなかった」
エポカドーロの1000m通過はあきらかな「スロー」にもかかわらず、展開のカギを握っていた武豊騎手とジャンダルムや上位人気の3頭は3コーナーからペースを引き上げる仕掛けをしませんでした。後続の誰もが3コーナーで動かなかったのですから、戸崎騎手は4コーナーを余力十分に回れることに……。
前々からレースを運んだ勝ち馬に、この馬場で上り3F35.1の脚を使われたら、後続が差し切るのは難しかったと言えます。縦長の展開にもかかわらず集団のペースがスローというレースはままあって、その場合に後続の仕掛けが遅れるのはよく目にするシーンです。
馬場が悪化していたこと、全体のペースが読みにくい展開だったことを考えれば、後続の馬が仕掛けられなかったのは仕方のないことですし、誰も仕掛けないのだから戸崎騎手がペースを上げる必要性はありませんでした。
エポカドーロ 3歳牡馬
父:オルフェーヴル
母:ダイワパッション(母父フォーティナイナー)
厩舎:藤原英昭(栗東)
前走のスプリングSは2番手(大逃げのコスモイグナーツを除くと、集団馬群はスローペース)から器用に抜け出したものの、直線でステルヴィオに差し込まれての2着惜敗。
皐月賞はスプリングSと似たような展開となり、この馬のコーナーでの俊敏性としぶとさを発揮した勝利だったと言えるでしょう。2分00秒8の勝ちタイムや展開や馬場がこの馬に向いたとは言え、それをしっかりとモノにできるのは能力が高いからに他なりません。
血統
母ダイワパッションはフィリーズレビューとフェアリーS(当時は中山芝1200mの重賞)の2つの重傷を勝った短距離馬。エポカドーロは父中距離馬×母スプリンターという配合ですから、母のスピードで先行する脚質になったのも納得です。
ポンと好スタートを切れるパワーとスピードは母譲りで、コーナーを俊敏に動ける器用さは父系の血によるものでしょう。そのため、父の全兄ドリームジャーニー産駒のミライヘノツバサとエポカドーロは似たようなタイプです。
オルフェーヴル産駒の特徴
父オルフェーヴル産駒の代表格と言えるラッキーライラックとエポカドーロはその馬体や走法は異なるものの、しなやかに「バキューン」と弾ける脚を使えない点では共通しています。
ラッキーライラックは大きなフットワークで走る馬で、直線の長い阪神外回りと東京コースの重賞を勝っています。ただ、ディープインパクト産駒のようなしなやかにキレる脚をもっているわけではなく、上り3F11.5 - 11.5 - 11.5と実直に伸び続けられるのが特徴です。
エポカドーロはラッキーライラックよりも小気味の良いフットワークで走り、直線の長いコースよりも小回り・内回り向きの脚質です。それだけに、上りのかかるレースでパフォーマンスを上げるタイプで、オルフェーヴル=ドリームジャーニー産駒のスタンダードと言えますね。
ダービーに向けて
ダービーはバキューンと弾ける脚を使えるタイプが勝ちやすいレースでもあり、ビュンと加速するピッチ走法のエポカドーロに向いているとは言えません。ただ、昨年のレイデオロのように、ピッチ走法の馬でも「スロー」になれば勝ち切るチャンスも出てくるので、その展開になれば……。
管理する藤原英昭調教師は、エイシンフラッシュでダービーを制覇していることから、レースに向けての調整に大きな不安はなく、皐月賞からさらにパワーアップしていれば、好走のチャンスもあるかもしれませんね。
2着のサンリヴァルと3着のジェネラーレウーノについて
サンリヴァルはエポカドーロをマークするレース運びで2着に流れ込みました。先にも述べたように、エポカドーロが逃げていたと仮定するなら、「行った行った!」の前残り決着となり、展開的にもこれがほぼベスト。「タラ・レバ」を言うなら、エポカドーロと枠の並びが逆ならもう少し着差は縮まったかもしれませんね。
3着のジェネラーレウーノはDanzig4×4のクロスをもつ馬らしい単調な走り。今走はハイペースに巻き込まれた形になり、いかにも強いレースぶりでしたが、例えばサンリヴァルとポジションが逆だったとしても、着順が上がったかは「?」が付きます。ビュンと弾けるタイプではないので、スピードとパワーに任せての「先行」で勝負するタイプでしょう。
4着ステルヴィオと7着ワグネリアンについて
4着ステルヴィオは1800mベストの中距離馬ですから、上りのかかる馬場で縦長の展開になるとどうしても苦しくなります。1分58秒台の決着だったのなら、もう少しパフォーマンスは上がったはずです。
7着ワグネリアンはスタートしてすぐに福永騎手が馬を外へ誘導したことから、自ら動いて勝ちに行く競馬をする予定だったと考えられます。ただ、コーナーで器用に加速できるタイプではないだけに、レース中ずっと外を回らされたのも致し方ありません。また、この馬場とペースで伸び切れなかったことから、この馬もステルヴィオと同じく1800mベストなのかも……。
展開のカギを握るジャンダルムは……
このレースにおける展開のカギはジャンダルムが握っていました。エポカドーロ以下はスローのペースですから、ピッチ走法のジャンダルムにとってコーナー加速力を活かせる展開に。ただ、武豊騎手は3コーナーから俊敏に加速するレースをせずに、勝ち馬に合わせてしまいましたね。
これは、武豊騎手がジャンダルムにとって2000mの距離はやや長いと考えていたことによる仕掛けの遅れだったのかもしれません。4コーナー手前からのスパート戦だと、この馬のピッチ走法が活きることもなく……。少なくともダービーでパフォーマンスが上がるタイプではなく、NHKマイルCに向かうのかどうかも含めて、今後のローテーションに注目です。
ノーザンファーム生産馬の惨敗
今年の皐月賞はノーザンファーム生産馬が4〜7着を占め、馬券圏内に入ることができませんでした。予想記事でも書いたように、タフな芝になると連対を外してしまうこともあるので、今後の課題は「馬場をどう解消するのか?」でしょう。
ノーザンファームは皐月賞の結果を糧にダービーに向けてしっかりと準備をするはずで、皐月賞を好走した馬だけではなく、ブラストワンピースなどの別路線組にも注目です。
Roberto&Danzigもち
重馬場になるとRoberto&Danzigもちの好走が目立ちますが、皐月賞の1、2着馬はそのどちらの血ももちません。つまり、本質的にパワーとスタミナを問われるレースになったわけではなく、今年は器用さと加速力(俊敏性)に優れた馬が好走する流れだったと言えますね。
まとめ
ダノンプレミアムが出走するのかどうかも含めて、今年のダービーは皐月賞以上に難解なレースになります。青葉賞などの別路線組にもチャンスがあるので、今後の重賞レースにも注目です。
以上、お読みいただきありがとうございました。