3歳牡馬クラシックの第1冠・皐月賞は16年のディーマジェスティ、17年のアルアインが2年続けてレースレコードをマークしています。昔から「もっとも速い馬が勝つ」と言われるレースだけに、今年も1分58秒を切る好タイム決着となるのでしょうか?
「皐月賞ウィーク」は高速馬場になる?
過去5年、皐月賞の勝ちタイムはイスラボニータの2014年を除いて、もっとも遅いのが15年ドゥラメンテの1分58秒2(レースレコードに0.5差)。このことからも近年の皐月賞は、開催の最終週にもかかわらず、時計の速い馬場コンディションになっていることがわかります。
▼皐月賞・過去5年の勝ち時計
2017年
1分57秒8:アルアイン
2016年
1分57秒9:ディーマジェスティ
2015年
1分58秒2:ドゥラメンテ
2014年
1分59秒6:イスラボニータ
2013年
1分58秒0:ロゴタイプ
中山開催の最終週(次週から東京競馬場)に行われる皐月賞がどうして高速馬場になるのでしょうか?
中山の芝が速くなるのは?
中山の芝が「高速化」する原因と考えられるのは以下の2つです。
1. エクイターフの導入
2. 開催1ヶ月前のエアレーション作業
3. 排水性の向上
エクイターフの導入
エクイターフは「傷みにくい野芝」と言われます。これにより、競走馬が踏みしめる衝撃に耐えられ(芝の根が千切れにくい)、極端に馬場が荒れることは少なくなりました。
以前は開催が進むと、内ラチ沿いの芝を避けて通る馬も目立ちましたが、近年はそれも減少しています。ただ、今年は昨秋の大雨の影響で、例年よりも内ラチ沿いは荒れ気味です。
開催1ヶ月前のエアレーション作業
JRAは長年、「柔らかい(ソフト)」、「クッション性のある」馬場づくりを進めています。そのために導入したのが開催1ヶ月前のエアレーションです。これは馬場に穴を開けて路盤をほぐす作業のこと。
柔らかい馬場は開催当初はクッションが利くものの、競走馬によって踏み固められると少しずつ締まってきます。開催最終日に馬場が硬くなるのは、エアレーション作業による部分も大きいと言えるでしょう。
排水性の向上
2014年、中山競馬場は排水性の向上を目的とした路盤の改造工事を行いました。これにより雨が降っても陽が差せばすぐに芝が乾くため、傷みにくく時計のかからない馬場へと変化したのです。
これによって、降雨の後で芝が完全に乾くと、それまでよりも速い時計の出る馬場へと変わります。昨年の皐月賞がレコードの出る馬場になったのも、前の週に雨が降り続くなかでレースが行われ、「重」まで芝が悪化したことによるものでしょう。
今年の皐月賞の馬場は?
今年の皐月賞はここ2年と同じような高速馬場になるのでしょうか?
関東地方は土日に雨の予報が……。そのため、JRAの馬場造園課は芝の育成を目的とした週中の「散水」を控えます。これにより、雨が降るかどうかで馬場に影響が出るのです。
土日に雨が降る
→時計のかかるコンディション
土日に雨が降らない
→芝の含水率が低く、高速馬場に
雨が降るかどうかは誰にも予想できないので、週末を待つしかありませんね。
昨年ほどの高速馬場にはならない
今年は前の週に馬場が悪化しなかったことから、昨年のように「急速に乾く」ことは考えられないですし、昨秋の大雨の影響も残っているので、土日に晴れたとしてもそれほど高速にはならないでしょう。
重馬場の適性がある馬は?
もし、今年の皐月賞が重馬場に悪化したなら、どの馬にチャンスが巡ってくるのでしょうか?
時計がかかり、パワーを求められるタフな馬場であれば、DanzigとRobertoの血は外せません。歴史的な不良馬場となった昨秋の菊花賞でも、この血をもつ馬が上位を独占しました。
▼2017年菊花賞
1着キセキ:Danzig
2着クリンチャー:DanzigとRoberto
3着ポポカテペトル:Roberto
今年の出走予定馬のなかで、DanzigとRobertoをもつ馬を探してみましょう。
Robertoもちの馬
先日の記事にも書いたように、皐月賞に出走予定のRobertoもちの馬は以下の6頭です。
グレイル
ケイティクレバー
ジェネラーレウーノ
ジャンダルム
タイムフライヤー
マイネルファンロン
(50音順)
Danzigもちの馬
今年はDanzigの血を引く馬が多く、こちらも6頭となりました。
グレイル
ケイティクレバー
ジェネラーレウーノ
ジャンダルム
ジュンヴァルロ
ダブルシャープ
これを見てもわかるように、今年はクリンチャーと同じくRobertoとDanzigの両方をもつ馬が赤色でマークしたグレイル、ケイティクレバー、ジェネラーレウーノ、ジャンダルムの4頭もエントリー!
このなかでいかにも「中山コース+重馬場」が似合うのは、4分の3兄にダービー卿CTを制したロジチャリスをもつグレイル(父ハーツクライ)ですね。母プラチナチャリスはハーツクライを配しても中山向きのパワーと機動力を仔に伝え、グレイルももう少しトモがパンとして先行できるようになれば……。
この4頭は上りがかかればかかるほど粘り強く走れるので、かなり馬場が重くなっても対応できます。どれもソコソコに人気ですし、雨が降ったとしても、それほどの波乱は見込めないかもしれませんね。
重馬場だとピッチ走法が有利
重馬場は小脚の使えるピッチ走法の馬に有利です。パワフルに地面を掴めることもそうですし、小さなフットワークは水分を含んだ滑る馬場に向いています。これは、雪の上を滑らないように歩くときは小脚になるのと同じ原理です。
✳︎もちろん、重馬場の巧拙は地面を掴む蹄の形や前肢と後肢のバランスにも影響するので、ピッチ走法だからOKというわけではありません。
あきらかなピッチ走法のジャンダルムは重馬場によるハイペースの消耗戦にさえならなければ、チャンスが大きくなります。DanzigとRobertoもちですし、渋れば狙いやすい1頭です。
ストライドは不利
柔らかい体質によって、大きくしなやかなストライドで走る馬は重馬場が不得手……。ただ、昨秋の菊花賞を制したキセキのように、パワフルなストライドであれば不良馬場でもこなせます。
今年の出走予定馬のなかでは上位人気に推されるステルヴィオはしなやかなストライドで走るため、本質的には重馬場が得意ではありません。ワグネリアンは野路菊Sで重馬場をこなしているとはいえ、上り3F33.0をマークできる馬場でしたから、やはり馬場が悪化するのはマイナスでしょう。
まとめ
皐月賞ウィークは「高速馬場」がデフォルトですが、今年は土日に雨の予報が出ていることで、馬場の想定も難しくなりました。レースが行われている時間帯(10時〜16時)に雨が降り続くなら、いかに排水性の良い中山の芝コースも荒れて時計がかかるようになるでしょう。
今年の皐月賞は圧倒的な1人気のダノンプレミアムが回避したこともあって、「重馬場か高速馬場か?」、そのどちらになるのかが大きなポイントになります。
以上、お読みいただきありがとうございました。