牡馬クラシックの第1冠「皐月賞」は18頭がエントリー。69年ぶりに牝馬による皐月賞制覇を目指すファンディーナ、2歳牡馬チャンピオンのサトノアレス、京都2歳Sと弥生賞を勝ったカデナ、共同通信杯勝ちのスワーヴリチャードなど重賞勝馬10頭が顔を揃える楽しみな1戦になりました。
皐月賞、レースの特徴
皐月賞は同じ舞台で行われる弥生賞とはレースの流れが大きく異なります。弥生賞はスローからの捲り勝負になりやすいですが、皐月賞は道中のペースもやや速いのが特徴です。そのため、平均的に速い流れを追走しながら、さらに4角手前から脚を使える馬が適性としては合っているレースと言えます。
直線の短い中山コースですから、4角を過ぎてからの仕掛けで差し切るというのは難しいのが皐月賞。3〜4角にかけてスピードに乗せながら、コーナーをコースロスなく回れる器用さも問われます。もちろん、2015年のドゥラメンテのように、ムチャクチャなコーナリングで勝ってしまう怪物もいるとは言え、基本的には小回り・内回り向きの器用さをもっている馬が有利なコースです。
捲りがもっとも速いのは?
逃げ、先行、差し、追い込み、どの位置取りで競馬をするとしても、皐月賞では3〜4角からペースを上げて、さらに一脚を使える馬が強いのがデフォルトです。コーナーでいかにスピードを上げながら捲れるかがこのレースで好走するポイントですから、まずはどの馬の捲りがもっとも速いのか?を考えないといけません。
捲りの速さはコーナーの加速
中山コースで速い捲りを打つためには、コーナーでスムーズに加速できることが不可欠です。コーナーを回りながらスピードを上げた時に、外に大きく膨れてしまったり、他の馬に遅れをとってしまうのは捲りが苦手な馬の特徴。
また、競走馬の走法によってもコーナーでの加速がスムーズなのかが分かります。もっともはっきりと巧拙が出るのは、「ピッチ」走法なのか「ストライド」走法なのか。
◯ピッチ→脚の回転の速さでスピードを上げるので、コーナーもスムーズに走れる
◯ストライド→フォームを伸ばしてスピードを上げるので、コーナーの走りは不器用
そのため、ピッチ走法の馬でコーナーをスムーズに回れる馬の方が捲りが得意と言えます。
皐月賞出走馬のなかで捲りが速い馬は?
2017年の皐月賞出走馬の中で、捲りが速いのはどの馬でしょうか? 今回の記事ではピッチ走法で小回り・内回りに適性のありそうな出走馬を5頭ピックアップします。
それでは張り切って見ていきましょう!
サトノアレス
父:ディープインパクト
母:サトノアマゾネス(母父:デインヒル)
朝日FSを勝った2歳牡馬チャンピオン。阪神外回りのGⅠを勝っていることから、ストライドが伸びるタイプのように見えますが、ベゴニア賞1着(500万下)のフォームはピッチ走法だと分かります。豪腕のムーア騎手がインを切り裂いたベゴニア賞はスローの上り勝負で、ピッチ走法のこの馬にとってはプラスの流れになりました。
前走のスプリングSは出遅れて後方からの競馬。前を走っていたアウトライアーズとウィンブライトが捲った後をスムーズに加速していきましたが、戸崎騎手が仕掛けたのは直線を向いてから。小回りの中山であの競馬では苦しく、反対に、ペースの上がるGⅠ皐月賞では3〜4角でスピードが上がったときにすっと捲れる可能性が高まります。
アウトライアーズ
父:ヴィクトワールピサ
母:ウィストラム(母父:フレンチデピュティ)
アドマイヤミヤビ、カデナと接戦を演じた百日草特別3着がクローズアップされる馬ですが、「捲り」に注目するのであれば、500万下のひいらぎ賞で見せた後方からの捲り差しは圧巻のパフォーマンス。スプリングSではひいらぎ賞で2着に下したウィンブライトに敗れはしたものの、父ヴィクトワールピサらしい無駄のない脚捌きとピッチ走法は小回りのコーナーでこそ活きる加速。
前哨戦のスプリングSは田辺騎手が意図的に馬群のなかから抜け出す競馬を試したような走りで、ウィンブライトと一緒に外を捲り上げていれば…という内容でした。かかりやすい馬なので、ペースが上がるGⅠの舞台ももってこいで、中山で捲りを打たせたら現役NO.1の田辺騎手がエスコートするのもプラスです。
ウインブライト
父:ステイゴールド
母:サマーエタニティ(母父:アドマイヤコジーン)
前哨戦のスプリングSはサトノアレスやアウトライアーズといった有力馬を4角手前からの豪快な捲りで封じ込めました。ステイゴールド産駒らしいピッチ走法とパワーのある走りで、直線の長いコースよりも小回りの中山は適性としてずんどばです。
東京で未勝利戦を勝ち上がった後の中山での3戦はすべて捲りで好走したもので、圧巻のパフォーマンスだったのが4角手前からスピードを上げると直線を馬なりで先頭に立った若竹賞。他馬を子供扱いするような素晴らしい捲り脚で、いかにも重賞級の走りを見せました。
前走のスプリングSで馬体重が前走比10kg以上減っていたことから、体調面が整っているのか? ピークを過ぎているのではないか? などの不安点はありますが、捲りの速さで言えば出走メンバーのなかでも屈指のものがあります。
プラチナヴォイス
父:エンパイアメーカー
母:プレザントブリーズ(母父:マンハッタンカフェ)
前走のスプリングSでは和田騎手が4角手前から積極的に仕掛けて直線入口で先頭に立つと最後まで粘りを見せての3着。新馬戦→萩Sと京都の外回り1800mを2連勝しましたが、いずれも抜け出すときの俊敏さはピッチそうほうならではのもの。細身の馬体でエンパイアメーカー産駒らしいしなやかさももっていますが、ぴゅっと加速できるのはパワーのある証拠です。
捲るスピードはこの出走馬のなかに入っても見劣りしませんが、俊敏な加速に秀でたタイプで、捲り切った後の末脚がどこまでもつのか…は未知数。
ファンディーナ
父:ディープインパクト
母:ドリームオブジェニー(母父:Pivotal)
前走のフラワーCでは4角手前で岩田騎手が手綱を緩めて軽く促すと、びゅーんと捲ってしまい、直線では突き放す一方の圧勝劇。牝馬ながら500kgを超える馬体で、このパワーを生む馬格が惚れ惚れするような捲りを引き出しています。
この馬はストライドも伸びる走法なので純粋な「ピッチ走法」とは言えないものの、脚の捌きの滑らかさと回転の速さから小回りを器用に立ち回ることが可能。
ストライド+脚の回転の速さ(ピッチ)の両方がフォームに現れている馬で、それに加えてパワーもあるのですから、おそらく捲りの競馬は得意なはずです。まだ、全力でびしっと追われたことがないため、皐月賞のやや速いペースを追走した上で捲り脚が出せるのかは未知数ですが、名牝になれる可能性ももった馬のレース振りには注目。
血統に関しては以下の記事を参考にして下さい。
捲りの速さをランク付けすると
上記の5頭のなかで捲りの速さの順番をつけるのは難しいのですが…
脚の回転の速さとピッチ走法から考えるとーー
1位:サトノアレス
2位:アウトライアーズ、ウインブライト、プラチナヴォイス
5位:ファンディーナ
ただ、捲るにはパワーも不可欠なので、それを加味するとこの5頭は甲乙をつけるのが難しいですね。
まとめ
GⅠの皐月賞を勝ち切るためには、ただ素早く捲るだけではなく、コーナーをスムーズに加速した後で、さらに直線でそのスピードを持続させるための脚が必要になります。この5頭のなかで、どの馬が直線でもスピードを維持して伸びてくるのかはこれからじっくりと考えたいところです。
今年の皐月賞も昨年のような捲り合戦になるのか?
今から、レースが楽しみですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。