GⅢサウジアラビアRC(2017年)は重馬場の適性から◎ハクサンフエロと◯ダブルシャープの2頭に注目ーー予想

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JRAの2歳馬GⅠは牝馬限定の阪神JF(阪神芝1600m)、牡馬・牝馬のどちらも出走可能な朝日杯FS(阪神芝1600m)とホープフルS(中山芝2000m)の3レース。2017年から芝2000mで行われるホープフルSがGⅡからGⅠへ昇格し、マイルと中距離の2歳チャンピオンを決める番組編成となりました。

10月7日(土)、東京競馬場の芝1600mで行われるGⅢサウジアラビアロイヤルCは朝日杯FSへ向かう2歳馬たちにとっての前哨戦。直線の長い東京コースでの重賞レースとあって、今年も「素質馬」と目される馬たちが出走します。年末の2歳GⅠあるいは来春のGⅠへ展望を拓くために、デビュー間もない馬たちが争う白熱したレースから目を離すことはできません。サウジアラビアロイヤルCからスター候補生となる馬が現れるのでしょうか?

 

2戦2勝のステルヴィオが人気の中心

今年のサウジアラビアロイヤルCで1番人気に支持されるのは、新馬→コスモス賞を連勝してここへ挑む関東馬のステルヴィオ(2歳牡馬・木村哲也厩舎)。新種牡馬ロードカナロア産駒としても注目を集めるステルヴィオは、余力たっぷりの勝利でまだそこを見せていないのが魅力です。サウジアラビアロイヤルCが行われる東京芝1600mのコースはすでに新馬戦で経験しており、重賞レースに向けて大きな不安はありません。

 

ステルヴィオ 2歳牡馬

父:ロードカナロア

母:ラルケット(母父:ファルブラヴ)

厩舎:木村哲也(美浦)

生産:ノーザンファーム

新馬戦は好位から抜け出しての完勝。直線でルメール騎手に追い出されると、パワーで力強くというよりもしなやかな動きで差し切る競馬。もう少し前脚がスッスッと伸びるようになるとよりキレが出てくるのでしょう。

2戦目のコスモス賞(札幌芝1800m)は小回り+道悪(重)馬場とこの馬には苦しい条件でしたが、3コーナー過ぎから悠然と捲るとミスマンマミーアの追撃を振り切って1着。ゴール前で道営馬に詰め寄られたものの、ハイペースの流れを外から捲って直線で先頭に立つレースぶりは、この馬の能力が1枚上だったことを示しています。

 

血統

新種牡馬ロードカナロアは10月1日終了時点で13頭が新馬・未勝利戦を勝ち上がり、上々のスタートを切っています。ロードカナロア産駒は父が活躍した1200mだけではなく、1600m以上の距離で好走している馬も多いのが特徴です。ゴリゴリとパワーで押し切るスプリンターというよりもしなやかにキレるマイラーという仔が多く、ステルヴィオもこれに当てはまるでしょう。

母ラルケットはJRAで4勝した活躍馬で、4分の3兄のボルゲーゼ(父キングカメハメハ)は2勝を上げています。キングカメハメハの血を引きながら、ボルゲーゼとステルヴィオの体質が違うのは、ロードカナロアがよりしなやかなフットワークで走る産駒を出す種牡馬だからと言えます。

ステルヴィオはNureyevとFairy Kingの5×3のニアリークロス(Fairy KingはSadler's Wellsの全兄弟で、Nureyevとは4分の3同血の間柄)をもち、母系に入るSpecialやテスコボーイのNasrullah血脈、スピードシンボリのRoyal Charger(Nasrullahと4分の3同)がしなやかさの源だと考えられます。

ステルヴィオの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

サウジアラビアロイヤルCに向けて

走法から東京芝1600mはほぼベストの舞台。追い出されてからフォームがぐっと沈むようであれば、前脚も伸びやかになりさらにキレ味が増すでしょう。

木村哲也厩舎+ノーザンファーム生産+ルメール騎手は好相性のトリプルコンボですから、重賞レースでは外すことができません。不安点を挙げるなら、金曜日の午後から降り続けている雨の影響がどこまで芝に影響を与えるのか……。前走で重馬場をこなしているものの、パワータイプではないのでプラスとは言えません。

 

中内田厩舎の評判馬ダノンプレミアム

サウジアラビアロイヤルCで2番人気に推されるのは、新鋭の中内田調教師が管理する評判馬のダノンプレミアム。6月の阪神芝1800mで行われた新馬戦を快勝し、そのレースから3ヶ月の休養明け初戦となるサウジアラビアロイヤルCでどのような走りを見せるのか、注目が集まります。

ダノンプレミアムについては週中に詳しい解説記事を書きましたので、よければそちらをご覧下さい。

新進気鋭の中内田調教師が管理する期待馬ダノンプレミアムはサウジアラビアRCを好走できるのか? - ずんどば競馬

 

スワーヴエドワードとダブルシャープについて

3番人気が新馬戦を快勝してここへ挑むスワーヴエドワード、そして、4番人気に推されるのは札幌2歳S3着のダブルシャープです。この2頭について簡単に見ておきましょう。

 

スワーヴエドワード 2歳牡馬

新馬戦をノーステッキで快勝したスワーヴエドワードは新種牡馬エイシンフラッシュ産駒。ドイツ血脈を引くエイシンフラッシュは自身がアウドブリードの配合のため、産駒はおおむね晩成傾向で、繁殖牝馬によってさまざまなタイプの馬を出すことになると考えられます。スワーヴエドワードの母スルージエアーはディープインパクトの母ウインドインハーヘアーの孫にあたり、ダンスインザダーク×デインヒルですからパワーとスタミナに優れ、Northern Dancerをベースにしたいかにも欧州的な配合。

スワーヴエドワードが東京の新馬戦でしなやかにキレたのはいかにもエイシンフラッシュ的で、この馬はエイシンフラッシュの母父Platiniの部分でドイツの異系血脈を取り込んでいるのが最大の特徴です。重馬場はOKの血統ですが、父エイシンフラッシュのようにスローからのキレ味勝負が合っている印象。

 

ダブルシャープ 2歳牡馬

前走の札幌2歳Sは「大物牝馬」と呼ばれるロックディスタウンにゴール前で迫った道営馬のダブルシャープ。クローバー賞ではこちらも大物タワーオブロンドンを破る金星を上げており、2戦続けてJRAの芝レースで強敵相手に好走したのは力のある証拠です。

ダブルシャープの父父Cape CrossはSea The StarsとGolden Hornの2頭の凱旋門賞馬を出した名種牡馬。この他にも2年連続でジャパンカップに出走し、L・デットーリ騎手に(Enableが凱旋門賞馬を勝つまでは)「騎乗した中でNO.1の牝馬」と言われたウィジャボードなど、多くの活躍馬を出しています。

Cape Crossは2頭の凱旋門賞馬を見てもSea The Starsは母系にSir Ivor、Golden HornはSir Gaylordとしなやかな血と相性の良いことがわかります。ダブルシャープは母メジロルーシュバーがアグネスタキオン×マルゼンスキーでしなやかなTom Foolの血を引くのが特徴。この馬が先行タイプではなく差し馬に出たのは、血統的にも順当です。

クローバー賞も札幌2歳Sも上りのかかる流れを差してきたように重い馬場はプラス。サウジアラビアロイヤルCは長距離輸送があるので、馬体重の減りやすいこの馬にはマイナスですが、その点をクリアできれば重馬場の東京芝1600mは願ってもないコースと言えます。

ダブルシャープの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

予想

今夏は日照時間が少なかったことから芝の育成も例年通りではないことが予想されます。さらに、開幕週は雨の降る中でレースが行われることが確実ですから、スローから上りの速いレースにはならないでしょう。上りがかかったときにズドーンと差してこれる馬と逃げ・先行でしぶとく粘れるタイプの馬をピックアップしたいところです。

 

サウジアラビアロイヤルCは1〜5人気の決着がデフォルト

2015年から重賞に格上げされたサウジアラビアロイヤルCは、前身のいちょうSも含めて1〜5番人気での決着がデフォルト。過去10年でも2012年3着のコスモハヤブサ(12人気)が2桁人気で好走しているくらいで、1 - 2着には人気薄の好走がありません。もっともシンプルなのは1〜5人気の馬連ボックス10点でプラスの払い戻しになるように買う方法でしょうか。

ただ、先週のGⅢシリウスSのように平穏な決着が続いた重賞からイキナリ高配当が飛び出すこともあるので、その辺りはケアをしたいですね。今年は重馬場でのレースになることが間違いのないところですし、「あっ!」と驚くような決着になっても……。

 

◎ハクサンフエロ 2歳牡馬

父:シルポート

母:メンブランツァ(母父:タイキシャトル)

厩舎:牧光ニ(美浦)

父シルポートはGⅡマイラーズC連覇を含む重賞3勝の快速マイラー。1分56秒1の大レコードが出た2011年の天皇賞・秋は逃げたシルポートの前半1000mの通過が56.5秒。とにかくケレン味のない逃げ馬で8歳になってもびゅんびゅんと逃げていたのは記憶に新しいところです。シルポートの父ホワイトマズルは代表産駒のアサクサキングスやイングランディーレを見ても、スタミナとパワーに優れた逃げ・先行馬を多く出しています。

ハクサンフエロはHalo4×4のクロスをもち、父よりもさらに機動力に特化した配合。母メンブランツァはタイキシャトル×Barathea×Gone Westですからマイラー×中距離馬×マイラーと素軽いスピードとスタミナがバランスよく配されている繁殖牝馬ですから、シルポートのスタミナとパワーとスピードをストレートに産駒に伝えるでしょう。機動力に優れているため、東京よりも中山コースを向きの器用さのある馬ですが、重馬場+スローペースであればこの馬の器用さとパワーが最大限に活きる条件が揃いました。

腹袋がしっかりとしたパワーのある馬体からも重馬場はこなせるはずで、楽に先手を取って逃げられればアレヨアレヨが期待できるメンバー。石橋脩騎手はソツのない騎乗ができるので、これだけ人気が薄いのであれば前残りを狙いたいですね。

ハクサンフエロの血統表 | 競走馬データ - netkeiba.com

 

◯ダブルシャープ 2歳牡馬

馬体重が減りやすい馬の初の長距離輸送と初の左回り、そして、ここまで休みなくレースに使われている疲労の蓄積など、不安要素を挙げればキリがないものの、上りのかかる展開では安定した力を発揮できるダブルシャープ。鞍上の石川倭騎手が東京コースに対応できるのかも未知ですし、枠がもう少し外なら……。

ただ、ここ2走は強敵相手の好走で、重賞級の力があることは間違いありません。重馬場もベーカバド産駒であればプラスですし、東京コースでキレ味勝負にならないのであれば◯より下に印を下げることはできない1頭です。

GⅢ札幌2歳S('17年)はオルフェーヴル産駒の牝馬ロックディスタウンが、外から豪快に捲って初重賞制覇ーー回顧 - ずんどば競馬

 

その他の有力馬

△ダノンプレミアムは最内枠で上手く捌けるのかがポイント。川田騎手が「逃げてもOK」くらいの意識で前々の好位を取れるのなら、好走の可能性は十分にあります。

△ステルヴィオは木村哲厩舎+ノーザンファーム+ルメール騎手の黄金トライアングルで、3着内の可能性の高い馬。ただ、重馬場が確実でここまでグリグリの人気だと狙いにくい……。

△テンクウは質の高いヨハネスブルグ産駒で、外枠の田辺騎手であればソツなく乗ってくるでしょう。

△コスモインザハート

上りのかかる展開はどんと来いのハーツクライ産駒で、前走の札幌2歳Sも及第点の内容。このメンバーでこの人気なら。

△エングローサーは母父が揉まれ弱いアフリートなのでこの最内枠はマイナス。とは言え、道悪馬場になり他馬が外へ外へ進路を取り、直線でガラリと内が空けば突っ込んでこれるだけの脚があるので、これだけ人気が薄いのなら。

 

買い目

ハクサンフエロの単勝と◯と△への馬連を。3連複は◎◯の2頭軸から△への5点で。

 

単勝

5

 

馬連

5 - 6. 2. 16. 14. 9. 1

 

3連複

5. 6 → 2. 16. 14. 9. 1 

 

まとめ

東京競馬場の開幕週初日に行われる2歳重賞は芝の状態がどうなるのかに注目です。日曜日にはソウルスターリングなどが出走する毎日王冠が組まれているだけに、芝のコンディションはしっかりとチェックをしておきたいところ。

皆さまにとっても素晴らしいレースになりますように。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。