GⅢ紫苑S('17年)はハービンジャー産駒の春の実績馬ディアドラが勝利ーーレース回顧

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秋華賞トライアル(3着までに優先出走権)のGⅢ紫苑Sは、1番人気のディアドラが後方から大外を捲り、先に抜け出したカリビアンゴールドをハナ差捕らえて1着でゴールを駆け抜けました。2着に6番人気のカリビアンゴールド、3着に4番人気のポールヴァンドルが入線。勝ちタイムは1分59秒8(良)。

 

ハービンジャー産駒の初GⅠ制覇はディアドラか?

現3歳世代のハービンジャー産駒は「ゴールデン・エイジ」と呼べるほど活躍馬が出ています。皐月賞2着のペルシアンナイト、オークス2着のモズカッチャン、そして紫苑Sを制したディアドラが世代トップクラスの走りを披露。まだ産駒のGⅠ勝利が「0」のハービンジャーにとって、この3頭の走りは種牡馬としての価値を高めるものになりました。

 

ディアドラはGⅠ秋華賞へ

紫苑Sに勝利したディアドラはアクシデントがなければGⅠ秋華賞へ向かいます。札幌→中山と小回りコースのレースを2連勝したことで、直線の短い京都芝内回りで行われる秋華賞にも大きな不安ありません。

オークスから2ヶ月半の休み明けで臨んだにもかかわらず大きく馬体を減らしてしまった前走の札幌戦から、紫苑Sではしっかりと馬体を回復させての出走。馬体重を戻しながらの調整で、重賞を制覇したのはディアドラの能力がこのメンバーに入ると一枚抜けていたからでしょう。

秋華賞は長距離輸送のない地元関西圏でのレースとなり、しっかりと調整ができるのもプラス。紫苑Sは秋華賞への出走間隔がローズSよりも一週分長くなるので調整もしやすく、今度は馬体を気にせずに調教ができます。

ディアドラがハービンジャー産駒として初めてのGⅠ勝利を上げることができるのかに注目です。

ディアドラは父ハービンジャーに初GⅠをプレゼントできるのか?ーーGⅢ紫苑Sの展望 - ずんどば競馬

 

紫苑Sのレース回顧

1着ディアドラ、2着カリビアンゴールド、そして4着ブラックオニキスまでがオークス出走馬。今年の紫苑Sは春の実績馬が上位を占め、クラシックに未出走だった馬は3着に入ったポールヴァンドルだけという結果になりました。この1戦だけとれば、春の勢力図は一夏を越しても大きくは変わらなかったと言えます。

 

クラシックはノーザンファーム生産馬

紫苑Sの1、3着馬はノーザンファーム生産馬で、やはりクラシックとなると社台系ファームの強さが際立ちます。今年の春のクラシックは1〜3着にノーザンファーム生産馬が少なくとも1頭は入線し、ダービーでは上位独占という結果。以下は桜花賞からダービーまでの4つのGⅠで1〜3着に入線した馬の生産牧場を表にまとめたものです。

 

2017年 春のクラシックの成績と生産牧場

レース 着順 馬 名 生産牧場
桜花賞 1 レーヌミノル フジワラファーム
2 リスグラシュー ノーザンファーム
3 ソウルスターリング 社台ファーム
皐月賞 1 アルアイン ノーザンファーム
2 ペルシアンナイト 追分ファーム
3 ダンビュライト ノーザンファーム
オークス 1 ソウルスターリング 社台ファーム
2 モズカッチャン 目黒牧場
3 アドマイヤミヤビ ノーザンファーム
ダービー 1 レイデオロ ノーザンファーム
2 スワーヴリチャード ノーザンファーム
3 アドミラブル ノーザンファーム

ノーザンファーム生産馬を赤色でマークし、その他の社台系ファームについては青色でマークをしました。今年のクラシックもノーザンファームが席巻し、近年はレースを予想する上で生産牧場のチェックが欠かすことのできないものとなっています。

紫苑Sはノーザンファーム生産が5頭出走し、その内の2頭が1、3着ですから、クラシックへの出走がかかったトライアルでも生産牧場は重要視したいところですね。

 

紫苑Sはかなりのスローペースに

戦前の予想通り、ミッシングリンクが好スタートから1コーナーに入る前にハナに立ってレースを先導すると前半1000mの通過が61.3とかなりゆったりとしたペースになりました。後半の1000mは12.3 - 11.9 - 11.5 - 11.4 - 11.4とラスト1Fが失速しない上りの速い競馬。これをディアドラは大外から捲ってねじ伏せたわけで、その強さが光りました。この日の中山はペースが緩むと逃げ・先行馬が残る馬場だったことからも、この外差しには驚きましたね。

スローペースにもかかわらず、ディアドラ鞍上の岩田騎手は3コーナーまで折り合いだけに気をつける乗り方をしていて、これは「このメンバーなら4コーナーからバキューンと脚を使えば勝てる」とパートナーの力を信じ切った騎乗。桜花賞からずっと手綱を取り続けた主戦だからこそできた騎乗と言えます。

 

2着:カリビアンゴールド

カリビアンゴールドは好スタートから好位のインをしっかりと確保してレースを進め、4コーナーを抜群の手応えで回ると馬場の真ん中を鋭く伸びました。田中勝春騎手は100点満点の騎乗でこの馬をリードしましたが、あと一歩重賞制覇に届かずに2着。

父ステイゴールド×母父Cape Crossという配合らしく、それほどストライドが伸びない走法で、中山や札幌といった小回りコースのコーナーを俊敏に動けるのが長所。母父Cape Crossは凱旋門賞馬シーザスターズやゴールデンホーンなどを出し、産駒には前向きな先行力とスピードを伝える種牡馬です。カリビアンゴールドはクラシック・ディスタンスに強いCape Crossが母父に入り、強いクロスをもたない(Northern Dancer 5×5)ことからもまだまだ成長を見せるでしょう。

内回りコースで行われる秋華賞はこの馬の器用さを活かせる舞台で、内枠からすっと先行できるのなら怖い1頭。ただ、紫苑Sでも上りは34.0に留まったように、パワー型の産駒を出す父と母父から、京都の芝で瞬発力勝負になるようだとやや不安も……。

 

3着:ポールヴァンドル

道中は勝ち馬のすぐ前のポジションで流れに乗ると、3〜4コーナーでは四方をふさがれて上手くスピードに乗れませんでしたが、直線入口で前がクリアになってからは鋭く伸びての3着。ダイワメジャー産駒とは思えない33.7のレース最速の上りで好走したのは驚きました。

前走のかもめ島特別と今走ではカリビアンゴールドと着順が入れ替わった結果になったとは言え、これは位置取りの差だけ。この2頭は2走続けて好走を見せたことから、しっかりと力をつけていることがわかります。

ダイワメジャー×ファスリエフ(母父スプリンター)ですから、先行して粘るのが本領を発揮できる戦法。今回は後ろから差してきての好走でしたが、これだとディアドラのキレにねじ伏せられ、カリビアンゴールドを差せないということがわかりました。秋華賞ではもち前の機動力をしっかりと発揮したいところでしょう。

 

◎ミッシングリンクは7着

すっとハナに立ち前半のペースを61.3でコントロール。上りが34秒そこそこしか使えないこの馬にとっては少しペースが緩すぎました。後半1000mを1Fすべて11秒台で走れたらもう少し抵抗できたのかもしれませんが、少なくとも1着馬とは格負けでしたし、2、3着馬の脚を道中で削ぐような逃げではありませんでしたね。直線先頭で一瞬は後続を突き放したものの、上り3Fが33秒台の決着になるようなレースでは苦しかったと言うしかありません。

重賞で逃げて見せ場を作ったのは今後に活かされるはずで、しっかりとペースを作るレースができれば今後も楽しみな1頭と言えます。

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その他の有力馬

2戦2勝のルヴォワールは直線で大外を伸びたものの6着と掲示板を捕らえることができませんでした。長期の休み明け、体質の弱さから仕上げが難しいことも影響したのでしょう。馬っぷりの良さと走りのしなやかさは春先と変わらずで、完成が遅めのハーツクライ産駒ですから順調に使えるようになれば楽しみです。

春先にはオークス候補と評判の高かったホウオウパフュームは9着と凡走。フローラ→オークスと凡走からの立て直しができず、苦しい敗戦となりました。今後は自己条件からの再スタートとなり、スランプから脱出できるのかが鍵になりますね。

ディープインパクト産駒のドイツ娘サロニカは直線で伸びかかったものの8着と敗戦。母系に気難しい血を引くので、直線でディアドラに外から交わされた時点で戦意喪失という内容。今後は逃げた方が結果を出せるはずです。しなやかさのあるピッチ走法ですから、小回り・内回りで先行力を活かす形がベストでしょう。

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まとめ

秋華賞に向けて楽しみな3頭が好走した紫苑S。昨年から重賞に格上げされたこともあり、全体的なレースレベルが上がってきました。

ハービンジャー産駒として初GⅠ制覇の期待がかかるディアドラがしっかりと勝利をものにし、今年の春の実績馬は層が厚いなと印象付ける1戦。ローズSでは春の実績馬がしっかりと好走することができるのか、そちらも楽しみなレースです。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。