紫苑S(2018年)に登録しているディープインパクト産駒は好走できるのか?ーーマウレアなど

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中山競馬場の芝2000mで行われる紫苑S(GⅢ)は、3着以内の馬に秋華賞(GⅠ・京都芝2000m)への優先出走権が与えられます。

今年の出走予定馬のなかでもっとも注目を集めるのは、桜花賞とオークスを5着と好走したマウレア(手塚貴久厩舎・美浦)。現3歳牝馬路線は2冠牝馬アーモンドアイもさることなが、阪神JFからオークスまでの1〜3着のメンバーがほぼ変わらず、ハイレベルな世代であることがわかります。

春のクラシックにおけるマウレアの好走は世代の上位であることは疑いなく、一夏を越してさらなるパワーアップがあるのかに注目です。また、秋華賞を展望したい上り馬にとって、マウレアはアーモンドアイとの力差を測るためのモノサシともなるので、紫苑Sのレース内容は今後を占う意味でも大きいと言えます。

 

紫苑Sに登録したディープインパクト産駒は4頭

紫苑Sに登録のあるディープインパクト産駒は、上記のマウレアを含めて4頭。3歳GⅠに抜群の相性を誇る種牡馬だけに、その4頭のチェックは欠かせません。

ディープインパクト産駒

オハナ

フィニフティ

マウレア

レッドベルローズ

フィニフティについては既に解説記事を書いているので、詳しくは以下をご覧下さい。今回の記事では残りの3頭について考察します。

 

マウレア 3歳牝馬

父:ディープインパクト

母:バイザキャット(母父:Storm  Cat)

厩舎:手塚貴久(美浦)

生産:下河辺牧場

桜花賞馬アユサンの全妹で、これまでのレースぶりからも高い素質をもっていることは間違いありません。春のクラシックは獲得賞金の関係でクイーンCから押せ押せのローテーション。紫苑Sはリフレッシュした復帰戦となることから、結果だけではなく内容も問われるレースとなるでしょう。

 

血統

「ディープインパクト×Storm Cat」は多くのGⅠ馬を出している有名なニックス配合。マウレアは姉アユサンよりも胴の長い馬体をしており、マイラーというよりも中距離馬です。ハイペースになったマイル戦のクイーンCで伸びを欠いたことからも、この馬の距離適性がわかります。

また、この全姉妹はしなやかなストライドで走るので、ベストは東京など直線の長いコースです。紫苑Sは小回りの中山とあって、この馬の走法的にはマイナスの舞台と言えます。武豊騎手がいかにこの馬のストライドを伸ばせるのかがキーポイントとなるでしょう。

 

紫苑Sに向けて

秋の中山開催は2013年から(新潟開催だった2014年を除く)エアレーション作業が実施されており、外差しの利く馬場となっています。以前のディープインパクト産駒は上りのかかる中山コースが不得手だったものの、外差しが利くことと高速馬場化によって、近年はなかなかの好成績。しなやかなストライドで走るマウレアにとっては大きなプラスです。

秋華賞に向けたトライアルとして紫苑Sを選択したのは、確実に賞金を上積みしたいこと、そして、関西への長距離輸送の回数を少なくするためでしょう。ただ、この馬のコース適性を考えると、内回りの秋華賞よりも外回りのエリザベス女王杯がベター。それだけに、陣営がどのような仕上げで紫苑Sに臨むのかは蓋を開けてみないとわかりません。

 

オハナ 3歳牝馬

父:ディープインパクト

母:ハウオリ(母父キングカメハメハ)

厩舎:堀宣行(美浦)

生産:社台ファーム

デビューから2戦2勝で臨んだクイーンCは馬券圏内を外す4着。その後のフローラSとオークスは2桁着順と大きく敗れたため、一夏を越して春から違った姿を見せられるのかに期待がかかります。

 

血統

祖母ノースフライトはその父トニービンのパワフルなストライドを受け継ぎ、牡馬相手の安田記念とマイルCSを制した女傑。母ハウオリはそこに万能種牡馬のキングカメハメハが配され、祖母と同じ「持続的な末脚」を高確率で産駒に伝えます。

オハナの全兄キロハナは4勝、全姉のハナレイムーンは3勝と、産駒のすべてが2勝以上の活躍をしており、母ハウオリは間違いなく好繁殖牝馬です。母のもつキングカメハメハ×トニービンの組み合わせは種牡馬ルーラーシップと同配合。そのため、この母の仔はズドーンとパワフルに差す末脚を受け継ぎます。

 

紫苑Sに向けて

ディープインパクト産駒としては重厚なストライドで走るので、エアレーション馬場もそれほど苦にはしないでしょう。ただ、410kg台の細身の馬体は成長途上。2000mの距離は問題ないものの、多頭数で揉まれたときに馬群を割れるかどうかは不安が残ります。

堀宣行厩舎の管理馬ですから休み明けはそれほどマイナスではなく、この期間にどれだけ馬体がパワーアップしているのかが鍵になるでしょう。パワフルなストライド走法なので、ベストは直線の長いコース。それだけに、小回りの中山はマイナス材料です。

 

レッドベルローズ 3歳牝馬

父:ディープインパクト

母:レッドファンタジア(母父Unbridled's Song)

厩舎:鹿戸雄一(美浦)

生産:ノーザンファーム 

フェアリーS→クイーンCとハイレベルなマイル重賞では連対こそ果たせませんでしたが、2000mへと距離を延ばした前走のミモザ賞は余力十分に快勝。中距離馬としての素質の高さを示しました。その後のフローラSは7着と凡走したものの、重賞級の能力があることは間違いなく、一夏を越してのパワーアップが期待される1頭です。

 

血統

名種牡馬Unbridled's Songはサンデーサイレンス系の種牡馬と好相性を誇ります。大阪杯を勝ったスワーヴリチャードや菊花賞馬のトーホウジャッカル、朝日杯FSのダノンプラチナなど、その配合馬はしなやかなストライドで走るのが特徴です。

ただ、この馬は母系の奥に母系の奥に単調なスピードとパワーを伝えるPhone Trickが入るので、しなやかさよりもパワーで捲る脚に優れています。中山コースのミモザ賞を完勝したのも、この血によるものでしょう。Unbridled's Song×Storm Cat×Phone Trickと北米のスピードを伝える種牡馬が代々配されており、あきらかに高速の芝向き。そして、早熟さを伝えるPhone Trickが強く発現しているだと、成長力に「?」が付きます。

 

紫苑Sに向けて

配合としては「小回りコース+高速馬場」は適性に合った舞台。紫苑Sに登録しているディープインパクト産駒のなかでは舞台への適性がもっとも高い1頭です。不安点は成長力と距離適性の2つ。

成長力については今後の走りから判断するしかありませんが、もし春よりも馬体に筋肉が付くようだと、距離適性はマイルへシフトしている可能性があります。中山芝2000はすでに勝ち鞍があるとは言え、ハイペースの持続戦になれば苦しくなるでしょう。

 

まとめ

今年の秋の中山開催はエアレーション作業の実施によって、外差しの利くコンディションになることが近年のデフォルトです。この馬場状態はしなやかに差すディープインパクト産駒にとって大きなプラスです。また、昨秋のような高速馬場になるようなら、さらに「ディープ向き」と言えるでしょう。さて、今年は紫苑Sから秋華賞を好走する馬が現れるのでしょうか?

以上、お読みいただきありがとうございました。