JBCクラシック、チャンピオンズC(中京ダート1800m)へとつながるダート中距離重賞「GⅢシリウスS」は、阪神ダート2000mで行われるハンデ戦。シリウスSは2007年以降、施行距離が2000mへ延長され、2014年2着のナムラビクター、15年1着のアウォーディー、16年3着のアポロケンタッキーと近年は秋のGⅠ路線で連対 or 優勝する馬の活躍が目立つレースになりました。
今年も秋のGⅠを展望したいダートの実力馬が顔を揃え、ハンデ戦らしい白熱したレースが期待できます。ハンデ戦であっても近年は平穏な結果の続く重賞とあって、上位人気馬がしっかりと好走できるのかに注目です。
シリウスSの上位人気馬について
今年のシリウスSは、単勝オッズ1桁台の5頭が上位人気を形成します。その5頭は以下の通りです。
ミツバ 5歳牡馬:松山弘平(57.5kg)
マスクゾロ 6歳牡馬:酒井学(57.5kg)
モルトベーネ 5歳牡馬:M・デムーロ(57.5kg)
ピオネロ 6歳牡馬:福永祐一(56.0kg)
ドラゴンバローズ 5歳牡馬:和田竜二(54.0kg)
ハンデ頭57.5kgの3頭が上位の人気に支持されています。過去10年で斤量57.5kgは(1 - 1 - 2 - 2)の好成績、58kgでも(0 - 1 - 2 - 5)と3着内に好走する馬がでており、斤量の重さはそれほど気にする必要はありません。それでは、斤量57.5kgの3頭を1頭ずつ見ていきましょう。
ミツバ 5歳牡馬
父:カネヒキリ
母:セントクリスマス(母父:コマンダーインチーフ)
厩舎:加用正(栗東)
昨秋のOP特別ブラジルCは横山典弘騎手を背に「大逃げ」を打ち、アポロケンタッキーやラニなどの強敵相手に逃げ切り勝ちを上げ、それまでの追い込み一辺倒から脚質に幅が出てきました。前走のGⅢマーキュリーカップ(盛岡ダート2000m)で地方交流重賞を制覇。昨年4着だったシリウスSでリベンジができるのかな注目です。
血統
ミツバの父カネヒキリはJRAと地方交流重賞を合わせてダートGⅠ7勝の実績をもつ名競走馬。種牡馬としては2014年に初年度産駒がデビューしています。ロンドンタウン(4歳牡馬)が今夏のGⅢエルムS(札幌ダート1700m)で産駒としての初重賞制覇を飾り、ダート路線でますます目が離せない種牡馬です。
カネヒキリ自身は強いクロスをもたない5代アウトブリードの配合で、母の特徴を引き出しやすい種牡馬と言えます。エルムSを勝ったロンドンタウンの母はIn Reality3×4、ミツバの母セントクリスマスはNorthern DancerとRaise a Nativeの4×4をクロスをもち、いずれも好配合と言えるでしょう。
祖母ゴールデンジャックの父アフリートは馬群をイヤがる気性を伝えるため、ミツバが「逃げ」あるいは「追い込み」と極端なレースをするのはこの血の影響によるものです。追い込みでなくともOKで、外目からスムーズなレースができれば。
シリウスSに向けて
昨年のシリウスSは少頭数+大外枠とこの馬にはぴったりの条件でしたが、スローからの前残りになってしまい、外から追い上げての4着。今年は昨年から斤量が3.5kg増え、多頭数+6枠からのスタートと条件としては悪くなります。8枠2頭に外から被されてイヤ気を出さなければ、この枠ならミツバも我慢できそうです。また、有力馬がミツバよりも内に入ったことで、スムーズに外から追い上げる展開にもち込みやすいのはプラス。
上級条件に上がってからは1着か4着以下かという成績が続いており、好走するなら頭まで突き抜けることの多い馬。昨年よりも有力馬の仕掛けが早くなれば、3〜4コーナーから動きたいこの馬に向く流れになりますね。
マスクゾロ 6歳牡馬
父:Roman Ruler
母:サラヴァティ(母父:Giant's Causeway)
厩舎:岡田稲男(栗東)
昨年のシリウスSを3連勝で制し、重賞初制覇を飾りました。その後は長期休養に入り、今夏のOP特別「名鉄杯」で復帰を目指しためのの、レース前に除外。立て直した前走のBSN賞(OP・新潟ダート1800m)を2着と好走し、上積み十分でこのレースへ向かいます。
血統
父Roman RulerはFusaichi Pegasus直仔で、種牡馬としても多くの重賞勝ち馬を出しています。Mr. prospector2×4、Northern Dancer4×5と強いクロスをもつため、配合としてはクロスのうるさくない繁殖牝馬と交配させるのがベター。
母サラヴァティは北米血統で固められた繁殖牝馬で、Nearcticの5×4のクロスをもつのが特徴です。Roman Rulerと交配するとMr. Prospector3・5×4と強いクロスが発生します。マスクゾロがダート馬としてはしなやかなフットワークで走るのは、こなMr. Prospectorのクロスと母系に入るBlushing Groomの影響によるもの。
母系にWild RiskやVaguely Nobleと気難しく揉まれ弱い血を引くので、スンナリと逃げ・先行のレースができるなら、好走も可能。溜めてキレるタイプではないので、母父Giant's Causewayのようにゴリゴリと先行するレースが合っています。
シリウスSに向けて
前走は長期休養明け+除外明け後と不安の多い1戦でしたが、スムーズに流れに乗って手応え以上にしぶとく伸び、2着を確保しました。シリウスSは多頭数の競馬ながらピュアな逃げ馬が不在で、スンナリとハナに立てそうなメンバー。前半でペースを落とし、3〜4コーナーでスッとスピードを上げることができれば……。
昨年よりも1.5kg斤量が増えるものの、メキメキと力をつけてきたモルトベーネをのぞけば強敵と言えるほどの馬も少なく、叩き2戦目のポカさえなければ好走も……。
モルトベーネ 5歳牡馬
父:ディープスカイ
母:ノーブルエターナル(母父:アフリート)
厩舎:松永昌博(栗東)
年初の東海Sを12番人気ながら実力馬グレンツェントの2着と好走すると、その後はOPや重賞で1着→4着→1着。前走のアンタレスSは、エルムSをレコード勝ちしたロンドンタウンを2着に下して重賞初制覇を飾りました。インコースを器用に立ち回れ、直線でも馬群を割って伸びてこれるのが最大の長所です。
血統
父ディープスカイは競走馬としてはNHKマイルCや日本ダービーを制するなど芝で活躍をしましたが、産駒はスピードよりもパワーに優れるダート馬が多く出ています。これはディープスカイの母アビがもつKey to the MintのスタミナとパワーがONになりやすいからでしょう。
モルトベーネもミツバと同じように母系にアフリートを引き、本質的には美顔に揉まれるのをイヤがる気性。ただ、前走のシリウスSで馬群を割って出てきたように、精神的な部分が成長して成績が安定してきました。
3〜4コーナーからのロングスパートになりやすい阪神ダート2000mはスタミナとパワーを振り絞りたいモルトベーネにはプラス。
シリウスSに向けて
今回は内枠に入ったので、前走のアンタレスSと同じように好位のインから馬群を割って伸びてくるような競馬をするでしょう。不安点は馬群に揉まれたときに前走のようにスパッと伸びきれるかどうか……。休養明け初戦ですから、本来の気性が顔を出す可能性はあります。
また、スパッとキレるタイプではないので、できればレースのペースが上がって欲しいところです。デムーロ騎手はダートだと内に突っ込んだときに進路がないというシーンもまま見受けられるので、その辺りが好走の鍵となります。
予想
マスクゾロに競りかけるようなピュアな逃げ馬が不在のため、今年のシリウスSはスンナリとした展開が有力。夏の上がり馬はドラゴンバローズとマインシャッツの2頭。前者はシリウスSと好相性のローテーションとなるオークランドRCT組、後者は伸び盛りの4歳馬と魅力がたっぷりです。
先に述べたように上位人気の3頭はそれほど大きなマイナス点がなく、いかにも好走しそう……。ただ、コロッと負けても驚けない馬たちでもあるので、ここはまとめて負かせる可能性のある馬を◎にピックアップします。
◎メイショウスミトモ 6歳牡馬
父:ゴールドアリュール
母:ムゲン(母父:アジュディケーティング)
厩舎:南井克巳(栗東)
重賞やOP特別のレースでも1.0秒差以内の負けが多く、上位馬と大きな力の差はありません。前走のラジオ日本賞は雨の降りしきるなかでレースが行われ、3〜4コーナーでは勝ち馬のセンチュリオンと同じように捲りましたが、直線ではキレ負けしての僅差の7着。今夏の札幌3戦はいずれもテイエムジンソクの出走したレースで、レコード決着となったGⅢエルムSは外から捲るこの馬には苦しい流れでした、
少しずぶくなってきた今なら、阪神ダート2000mを捲る展開が合いそうです。先行馬が揃ったこのメンバーであれば、中団をスムーズに走れるはずで、タイミングよく捲れるのであればここでも大きな力の差は感じません。理想としてはミツバよりもワンテンポ早く仕掛けたいところでしょう。
テイエムジンソクでエルムSを勝てなかった古川吉騎手の奮起に期待して、メイショウスミトモに◎を。
◯トップディーヴォ 5歳牡馬
昆貢厩舎+横山典弘騎手という魅惑のコンビ。馬群に揉まれてもOKの馬なので、できれば内枠が欲しかったところですが……。ただ、阪神ダート2000mですし、この馬の脚質を考えれば大外枠でも問題はありません。前走はこの馬らしい伸び脚を見せ、マスクゾロを撃破。休養明けから3戦して6着→5着→1着と着実に調子を上げ、この後は一息入れそうなローテーションだけに、ここはメイチの仕上げかな、と予想します。
ジリジリジリジリと脚を使うタイプですから、メイショウスミトモと一緒に捲ってくれることを期待しての◯印。
その他の有力馬は?
上位人気な馬も一長一短ですし、人気の薄い馬にも2、3着のチャンスがある今年のシリウスS。人気の薄いところでは△ブライトアイディア、△キクノソル、△スリータイタンあたりをカバーします。
上位人気馬の中ではもっとも外枠に入った△ピオネロが福永騎手で前目のポジションを取れるのなら有力です。
買い目
◎◯の馬連と◎◯から△への3連複を。
馬連
4 - 15
3連複
4. 15 - 1. 8. 10. 13
まとめ
JBCクラシックやチャンピオンズCに向けて、実力馬たちが顔を揃えました。例年、平穏な決着の多いシリウスSだけに、高配当も期待はしにくいですが、ここはあえてのメイショウスミトモに期待します。
皆さまにとっても素晴らしいレースになりますように。
以上、お読みいただきありがとうございました。