父フランケル、母スタセリタ、名血・名競走馬の両親から産まれたソウルスターリングは、4戦4勝の成績で春の牝馬クラシック第1冠「桜花賞」に出走します。
競走馬として14戦14勝(GⅠ10勝)の成績を残した父フランケルの軌跡をたどるように、無敗のまま突き進むソウルスターリング。年明け初戦となった前走のチューリップ賞は有力他馬を寄せ付けない完勝で、桜花賞でも1番人気の支持を受けることが確実視されています。
今回は、ソウルスターリングの全4戦と競走馬としての特徴も併せて解説します。
ソウルスターリング
美浦の藤沢和雄厩舎に所属する3歳牝馬。父フランケル、母スタセリタというぴかぴかの良血馬で早くから注目を集めることになりました。
2戦2勝で迎えたGⅠ阪神JFを1:34.0の好タイムで完勝し、この世代のトップ評価を受けることに。
年明け初戦となったチューリップ賞も危なげない勝利で無敗の4連勝。いよいよ、クラシック第1冠目の桜花賞へ向かいます。
血統
父:フランケル
フランケルは父Galileo×母父Danehillという欧州の良血馬です。名血かつ優れた競走能力を発揮した種牡馬は、同じように高い競走能力をもっていた繁殖牝馬との掛け合わせが成功しやすいと言われます。母スタセリタは仏オークスをはじめGⅠ6勝の活躍馬で、ソウルスターリングは父と母からストレートに高い競走能力を受け継いだのでしょう。
フランケルはその父GalileoがSadler's Wells直仔、母父が欧州のパワースプリンターのDanehill(デインヒル)ですから、日本の芝だとスピードと素軽さに欠ける配合。母スタセリタもドイツのリーディングサイアーMonsunを父にもつクラシック血統で、ソウルスターリングの血統の字面からはあの素軽い走りとスピードがどこから生まれるのかイメージするのは難しいと言えます。
父フランケルの血統表のなかでもっともしなやかさと柔らかさを伝えるのはMiswakiです。このMiswakiの母父がTom Fool直仔のBackpasserで、フランケルの母父Danehillも母系にこのBackpasserを持ちます。おそらくこのBackpasserのクロスがソウルスターリングを日本の芝向きにした源なのでしょう。
全4戦をプレイバック&解説
それでは、ソウルスターリングの全4戦を1つずつ見てみましょう。
2歳新馬 札幌芝1800m
馬場状態:良
出走頭数:8頭
着順:1着(1人気) 着差:0.0秒
タイム:1:51.4 上り:34.2
通過順: 5 - 5 - 6 - 4
鞍上:C・ルメール
解説
伸び上がるようなスタートからルメール騎手が少し促し、1〜2角で先頭から2馬身ほど離れた中団5番手の位置を取ります。1角では少し頭を上げるようなところがありましたがすぐに落ち着き、後はスムーズな追走。向正面で最後方にいたライフラインが一捲りでハナに立つと少しずつペースが上がり、ソウルスターリングは3〜4角の中間からじわっと仕掛けて前を追いかけます。直線でアドマイヤマンバイが先頭に立ったところを外からソウルスターリングが追いつめ、ゴール前でクビ差捕らえての勝利。
11.7 - 11.5 - 11.7のレース上りをソウルスターリングは34.2で差し切りました。4角手前からの素軽い捲りと直線に入ってから前肢が伸びるフォームがこの馬の特徴です。前半がスローだったので、上り3F34秒台前半の数字は驚くものではありません。しかし、後半の1000mが58.9と2歳戦としてはロングスパートになったので、瞬発力というよりも持続力のある末脚に見所があった内容でした。
アイビーS 2歳オープン 東京芝1800m
馬場状態:良
出走頭数:9頭
着順:1着(2人気) 着差:0.3秒
タイム:1:48.9 上り:33.9
通過順: 3 - 4 - 3
鞍上:C・ルメール
解説
新馬戦とは一転した好スタートを切り、外からライズスクリュー、内からエトルディーニュを行かせて3番手の位置で落ち着きます。ライズスクリューがペースをガクンと落としたので、外からダイシンクイントが「引っかかるくらいなら」と最後方から捲って残り1200m手前で先頭に立ち、ソウルスターリングは単独の4番手の位置で折り合いに専念。1000mの通過が61.9秒のスローで、直線を向いてもソウルスターリングの手応えは楽なまま。坂下から追い出すと残り150mでエトルディーニュを交わして先頭に立ち、後ろから迫るペルシアンナイトを振り切っての1着ゴール。
スローの上り勝負だったこともあり、33秒台の脚で差し切りました。坂を駆け上がるところで後ろから迫るペルシアンナイトを離したように、しなやかなフォームのなかにもパワーが秘められていることが分かります。新馬戦に較べてスタートが改善され、スローでいくらか頭を上げるシーンもありましたが、操縦性の高いスムーズな走りが印象的でした。
アーリントンCを圧勝する牡馬のペルシアンナイトを寄せ付けない走りで2連勝となり、阪神JFに向かうことになります。
阪神JF GⅠ 阪神芝1600m
馬場状態:良
出走頭数:18頭
着順:1着(1人気) 着差:0.2秒
タイム:1:34.0 上り:34.8
通過順: 3 - 4
鞍上:C・ルメール
解説
好スタートからルメール騎手がムリに抑えることなく3角では3番手のインで折り合いに専念。アリンナの逃げで前半の800mは46.7、後半が47.3なのでわずかに前傾のラップになりました。
ソウルスターリングは終始インを通り、直線に向いても手応えは楽なまま。ルメール騎手が軽く促しながら残り200mでインから先頭に立つと、後ろの勢いを確認しながらの追い出しで鞭を入れたのは1発だけ。馬場の真ん中をレーヌミノル、大外をリスグラシューが伸びてきますが、前を走るソウルスターリングは見た目以上に余裕のある走りで1着。
この日の阪神芝コースはインが有利な馬場コンディションだったので、ルメール騎手が内ラチ沿いに進路を取ったのは好判断でした。インベタ馬場を差し引いても大人びたソウルスターリングの走りは素晴らしく、前傾ラップをインの3番手で余裕綽々の追走ですから、マイラーとしてのスピード能力も確かなものがあると言えます。
ソウルスターリングは父フランケルに母が仏オークス馬の配合なので、本質的には中距離馬なのかと思いましたが、ベストは1600〜2000mのタイプに完成するのかもしれません。
阪神JF1着は同舞台で行われる桜花賞に向けて視界良好の走りでした。
チューリップ賞 GⅢ 阪神芝1600m
馬場状態:良
出走頭数:12頭
着順:1着(1人気) 着差:0.3秒
タイム:1:33.2 上り:33.8
通過順: 5 - 5
鞍上:C・ルメール
解説
好スタートから控えて、道中は外目5番手を追走。ワールドフォーラブとアンバーミニーが予想以上にペースを引っ張り、前半800mは46.8。直線に入って残り400mからルメール騎手が追い出すと、抜け出して先頭に立つ時の脚が圧巻でした。先頭に立ってしまえば阪神JFでも見せた持続力の脚を存分に発揮して後続を寄せ付けずに1着でゴール。
勝ちタイムは1:33.2で前後半46.8 - 46.4のほぼイーブンペースですから、ソウルスターリングのスピードと持続力はかなりのハイレベルにあることが分かります。
ソウルスターリングはメジャーエンブレムをしなやかに、かつ素軽くしたタイプ。走るたびにパフォーマンスが上がっているのも好印象で、ここまで大人びた走りを見せられると、大きな欠点は見当たりません。
チューリップ賞については以下の記事も参考にして下さい。
桜花賞に向けて
ソウルスターリングは4戦4勝で桜花賞へと向かいます。全4戦をプレイバックしてみても、この血統の字面からは想像し難いほどの素軽さとしなやかさをもっている馬です。スピードの持続力に優れたレース振りで、メジャーエンブレムにタイプとしては似ていることから、極端な上りの競馬(レッツゴードンキの勝ったドスローの桜花賞のような)になると一瞬のキレで遅れを取るかもしれませんが、その他には欠点らしいものは見当たりません。
スピードの乗りがマイラーのようにも見えるので、馬体が完成したときにどのような距離適性にシフトしているのかは現段階ではわかりませんが、少なくとも1600mの距離で行われる桜花賞に関しては心配の必要はありません。
あえて粗を探すのであれば、チューリップ賞、桜花賞と2走続けて関西への長距離輸送となることで、テンションが高くなって…という点くらいでしょうか。
まとめ
3戦無敗の大物牝馬ファンディーナは皐月賞へ向かうことが発表され、ソウルスターリングとの対決はお預けとなってしまいましたが、桜花賞はそのことを抜きにしても有力馬が集まって楽しみな1戦になりそうです。
5戦5勝の桜花賞馬が誕生するのか?
今からレースが待ち遠しいですね。
以上、お読みいただきありがとうございました。