皐月賞のトライアル・レース「GⅡスプリングS」は、朝日杯FS2着以来の出走だったステルヴィオが直線の坂下で先頭に立った2人気のエポカドーロをゴール前で捕らえ、1着でゴール板を駆け抜けました。
2着には最後までステルヴィオを苦しめたエポカドーロ、3着には好位からじりじりと伸びたマイネルファンロンが入り、弥生賞に続いてスプリングSも人気通りの決着。ダノンプレミアム1強を覆す馬は現れるのか、今から皐月賞が楽しみですね。
ステルヴィオ:1着
新種牡馬ロードカナロアの産駒は父らしいおっとりとした気性の馬が多く、マイルよりも長目の距離で活躍馬を出しています。また、産駒のほとんどはしなやかなストライドで走り、小回りよりも直線の長いコースに向くのも、産駒に伝わる大きな特徴と言えるでしょう。
ステルヴィオはエンジンのかかりが遅い?
ステルヴィオがダノンプレミアムの2着と好走したサウジアラビアRCと朝日杯FSは、ともに後方からバキューンと弾ける脚で追い込んだレースでした。この馬はストライドで走るのでトップスピードに乗るまでほんの少し時間がかかります。そのため、どうしても「エンジンのかかりが遅く」見えてしまうのです。
適性は1800m以上の距離
スプリングSは1800mの距離だったことから、道中ではマイルだったここ2戦よりも前目のポジションを取ることができました。ステルヴィオはしなやかなストライドなので、スタートしてからもスピードに乗るまで時間がかかり、マイル戦だとどうしても後方からの競馬になってしまいます。
気性的な問題から後ろのポジションでレースをしていたわけではないので、距離が延びればそれだけ追走も楽になります。折り合いに心配のない馬だけに、先行して抜け出すような競馬もできるようになるでしょう。
スプリングSのレース内容
今年のスプリングSはコスモイグナーツが大きく後ろを離した逃げにもち込んだので、2番手以降の馬はスローペースでのレースとなりました。
ステルヴィオは中団の外目をリラックスした状態で走り、4コーナー手前からマイネルファロンの外へと進路を取ると、直線では追えば追うだけ伸び、ゴール前でエポカドーロを捕らえる勝利。
パトロール映像を観ても、この馬はコーナーでやや他馬に置かれ気味になり、しっかりとストライドが伸びたのは直線に向いてからです。スローのペースを利して楽に抜け出したエポカドーロをしっかりと捕らえる走りは、ここだと素質が一枚抜けていた証だと言えます。
皐月賞に向けて
スプリングSはルメール騎手がいかにもトライアルというレース運びで、結果としてエポカドーロをきっちりと捕らえたものの、本番を見据えた余裕のある走りが印象的でした。
ノーザンファームの生産馬とあって、皐月賞までの仕上げに関しては抜かりはなく、不安は「どの騎手が乗るのか?」と「小回りコースへの対応」の2点です。
どの騎手が乗るのか?
ルメール騎手は社台系ファームの専属に近いので、皐月賞をどの馬で臨むのかは未定。クラシック・レースは「乗り替わり」が大きなマイナスのため、ルメール騎手が乗り替わるようだと……。
昨年のダービーを勝ったレイデオロはデビューからルメール騎手が手綱を取り続けたからこそ、「あの思い切った仕掛け」ができたのです。馬と騎手がお互いにわかり合っていることはGⅠにおいて大きな力となります。
小回りコースへの対応
スプリングSはそもそも素質が一枚上の走りだったので、ステルヴィオは外目をスムーズに押し上げていくレースができました。
ただ、フルゲートの皐月賞では、3〜4コーナーで外を回すようだとかなりのコース・ロスとなりますし、そもそもが小回り向きの脚質ではありません。
本番はRobertoの血を引くタイムフライヤーやジャンダルム、グレイルなど小回りを俊敏に捲れる馬が揃うため、ゴールまで残り1000mは緩みのないラップを踏むことになり、この馬のストライド走法はマイナスとなります。
小回りコースに適応できるかは、このスプリングSだけでは判断ができないので、本番はここが最大のポイントでしょう。
2着以下の馬について
2着のエポカドーロはスローを俊敏に抜け出し、ステルヴィオをゴール前まで苦しめました。オルフェーヴル産駒らしいピッチ走法でこの舞台は合っていますし、土曜日に行われたファルコンSをミスターメロディで制した藤原英昭厩舎の勢いも2着を後押ししたはずです。
器用さのあるタイプで、皐月賞も適性としては合っていますし、人気以上の好走を期待しましょう。母ダイワパッションの牝系はここまで目立った活躍馬がおらず、この馬が重賞級となるのかに注目ですね。
✳︎戸崎騎手が離れた2番手でレースをコントロールしたことで、集団のペースは緩くなり皐月賞に繋がりにくいレースの質になってしまいました。レースのラスト3Fが12.4 - 12.2 - 11.8ですから、例年の皐月賞とは真逆の加速ラップに……。
3着マイネルファンロンの母系は弥生賞を制したマイネルチャールズを出すなど、中山コースはずんどばの舞台なので、この3着は納得です。
◎レノヴァールはスタートでやや出負けして後方からの競馬となり、ステルヴィオよりも後ろでのレースとなりましたから、あそこから勝ち負けにもち込むのは苦しかったですね。3着争いに食い込めたのは、馬個体の能力というよりもノーザンファーム生産馬の後押しがあったからでしょう。
今年の皐月賞は面白い!
皐月賞のトライアルレースが終わり、本番に向けての勢力図がほぼ出揃いました。昨年のアルアインは次週に行われる毎日杯経由だったので、まだまだ本番に向けての切符は残っていますが、大きな勢力図の変更はないはずです。
今年の皐月賞は現時点でダノンプレミアム1強の状態。また、先にも述べたように3〜4コーナーを俊敏に捲れる馬が多く、出走馬の死力を振り絞ったレースが期待できます。
このメンバーでレースをするとなれば、3〜4コーナーからペースアップするはずで、「どの馬の捲りが速いのか?」を競うことに……。今年はしなやかなストライドよりも、コーナーを俊敏に加速できるパワーと器用さをより求められるため、「これぞ皐月賞!」というレースが期待できます。
ダノンプレミアムがその重厚なストライドで他馬を圧倒する走りをするのか、今からレースが楽しみです。
まとめ
弥生賞、スプリングSと朝日杯FSの1、2着馬がしっかりと勝ち切ったことにより、2歳時の勢力図がそのまま皐月賞へと繋がることになりました。
今年もいよいよクラシックが開幕します。やはりこの時期は胸が高まりますね。