共同通信杯、弥生賞、若葉ステークスと皐月賞の主要なステップレースが終わっても、「今年の3歳牡馬は強い馬が…」というムードが漂っています。
3着までにGⅠ皐月賞への優先出走権が与えられるスプリングS。2017年の牡馬クラシックの主役を担える馬が現れるでしょうか?
出走馬を眺めると
出走頭数はフルゲートを割る11頭と少なくなりました。
注目を集めるのは、昨年の2歳牡馬チャンピオンを決める朝日杯FSを制覇したサトノアレス、京王杯2歳Sを制し朝日杯FS2着のモンドキャンノ、500万下の特別戦を勝ち上がってきたアウトライアーズ、ウインブライト、トリコロールブルーなど。
上記の5頭が前日発売の単勝オッズで10倍以下の支持を集めています。
有力馬を解説
それでは人気上位の5頭をそれぞれ解説していきます。
サトノアレス
父:ディープインパクト
母:サトノアマゾネス(母父Danehill)
厩舎:藤沢和雄(美浦)
未勝利→500万下→GⅠ朝日杯FSと3連勝。新馬・未勝利戦の連続2着が嘘のような鮮やかさでGⅠを制覇しました。
朝日杯FSは、後半3F11.5 - 11.2 - 12.1(レース上り)の残り200mのところでマイラーらしい瞬発力を発揮して勝負を決めたという内容のレース。
母譲りの馬格でいかにもパワーがありそうなマイラーですから、時計勝負よりは上りが掛かるところをバテずに踏ん張って伸びるタイプで中山や阪神、中京のような直線で勾配のきつい坂があるコースはプラスです。
血統
サトノアレスは父ディープインパクトのしなやかさよりも母サトノアマゾネスの父Danehillのパワーがより表現されています。日本の芝だと重過ぎる(Danehill産駒の多くは日本だとダートに適性が寄ってしまいがち)血がディープインパクトにパワーを補完して、2歳の早い時期から一線級で活躍する筋肉をつけさせているのです。
長い直線をしなやかに斬れるタイプではなく、コーナー加速力も問題ないので、中山の1800mは適性としては合っています。
不安点
ストライドとピッチのどちらとも言えない走法で、おそらくコース不問で走る馬ですが、不得手な展開は2パターンあります。
1. 上りの速いレース
2. 道中ハイペースでスタミナが問われる
このパターン以外ではソツなく走ると思いますが、スイートスポットと言える適性がないと言えばないので、勝てないけれど好走を繰り返す善戦マンになる可能性も十分ありそうです。
モンドキャンノ
父:キンシャサノキセキ
母:レイズアンドコール(母父サクラバクシンオー)
厩舎:安田隆行(栗東)
函館2歳S2着、京王杯2歳Sではレーヌミノルをきっちりと差し切っての1着と、スピード溢れる走りが持ち味。東京、阪神の外回りで好結果を出しているように、スプリンターというよりはマイラーに適性が寄っている馬で、しなやかさがある分だけ直線で末脚が伸びてきます。
阪神JFでは加速力でサトノアレスに詰め寄りましたが、阪神の坂を駆け上がるパワーの部分が劣っていたのでは…という負け方でした。本質的には内回りよりも外回りでしなやかな末脚を活かすタイプですから中山はマイナス。
血統
母のレイズアンドコールは1000〜1200mで4勝を挙げたスプリンターで、産駒にもその豊かなスピードを伝えます。
モンドキャンノは父キンシャサノキセキ×母父サクラバクシンオーとスプリンター同士が掛け合わされた配合ですが、血統の字面以上にしなやかさがあるので、距離はマイルまではOK。
不安点
モンドキャンノのベスト舞台は末脚を伸ばせる直線の長いコースなので中山はマイナス。また、1Fの距離延長は当日のペース次第で、スタミナを要求される流れだと…
アウトライアーズ
父:ヴィクトワールピサ
母:ウィストラム(母父フレンチデピュティ)
厩舎:小島茂之(美浦)
前々走の百日草特別は、1着がアドマイヤミヤビ、2着がカデナと後の重賞勝ち馬を2頭輩出したハイレベルな1戦でした。アウトライアーズはなだめてインのポケットで我慢し、直線は内へ進路を取りましたが伸びきれずに3着。もう少しスムーズなレース運びであればカデナとの差は逆転できたのではないかと思わせる内容。
前走のひいらぎ賞は百日草特別とは一転して最後方から一捲りの競馬で快勝し、スプリングSへと駒を進めてきました。3角過ぎから動いて上り34.5の脚を繰り出し、いかにも小回り向きの爆発力を見せつけた内容。2着に下したウインブライトはその後の500万下を圧勝したように、レースレベルも十分なものがありました。
血統
父ヴィクトワールピサ譲りのHalo的な機動力と母父フレンチデピュティのパワーが合わさって中山をきれいに捲る脚質に出たのは順当。
東京や新潟などの直線の長いコースでは末脚が鈍るので、小回りで機動力を活かす競馬がベター。
不安点
捲り脚質の馬ですから、ペースが淡々と流れると動くタイミングが掴めないおそれがあります。ただ、鞍上が中山を捲らせたら現役屈指の田辺騎手ですからあまり心配はないかもしれませんが…
前々走のようにペースが緩くなりすぎると気性的にかかる可能性があるので、当日のテンションにも注意が必要。
トリコロールブルー
父:ステイゴールド
母:ペンカナプリンセス(母父Pivotal)
厩舎:友道康夫(栗東)
前走のフリージア賞(東京芝2000m 500万下)は道中5番手で折り合って、直線では進路が取れずに追い出しを待たされましたが、ピッチ走法から脚の回転の速さで馬群を抜け出しての勝利。むしろ、東京の長い直線では追い出しを待たされたのが結果としてはプラスに働いたと思います。
新馬からの3戦はすべて2000m戦に照準を絞ったローテーション。気性的にも掛かるところのない馬で操縦性の高さがレース振りからも窺えます。
回転の速いピッチ走法なので、小回りの中山はOK。前々走の2着に敗れた黄菊賞でも4角でははっとさせられるコーナー加速力を見せていたので、コーナー4つのコースも苦にしないはずです。
血統
ペンカナプリンセスの母父Pivotalは日経新春杯勝ち馬のミッキーロケット、明日のフラワーCに登録している大物牝馬ファンディーナの母父としても知られ、産駒にはパワーとしなやかさを伝えます。
トリコロールブルーは父ステイゴールドの影響が強く出たピッチ走法が伝わっていますが、こちこちのパワーだけではなく柔軟性があるのは母系に入るPivotalのCozzene←Caroのラインから補完されているのではないでしょうか。
ピッチ走法ですから小回りの中山は適性としてずんどばで上りがかかるのもOK。
不安点
ピッチ走法ですから、持続力を問われるような速い流れになるのはマイナスです。
ウインブライト
父:ステイゴールド
母:サマーエタニティ(母父アドマイヤコジーン)
厩舎:畠山吉宏(美浦)
前々走のひいらぎ賞はアウトライアーズの桁違いの捲りに屈しましたが、前走の若竹賞では単勝1倍台の人気に応えて、直線ではほぼ追うところなしだったにも関わらず上り34.7で快勝と目を見張る強さを見せました。その前走は3角過ぎから一気に捲り、直線の入口では先頭に並びかける強気な競馬で、他馬とは力が違ったという内容でした。
マイル戦だったひいらぎ賞よりもコーナー4つの1800m戦の方が機動力が活かせる分だけレースがしやすく、競馬を使われるにつれて1戦毎に力を付けている印象を受けます。
血統
阪神JF2着ウインファビュラスの全弟で、父母母のダイナサッシュ、母父母アドマイヤマカディを通してノーザンテーストをクロスする配合。ここからパワーとピッチを受け継いで小回りを力強く捲る脚質に出たのは順当と言えます。父がステイゴールドですから上りのかかる競馬もコーナーが4つの中山1800mもずんどば。
不安点
他馬との力関係がどうか?です。
予想
スプリングSはオールザゴー、エトルディーニュ、プラチナヴォイスのどれがハナを主張するとしてもピュアな逃げ馬ではないので各馬折り合ってのスローが濃厚。
アウトライアーズ、トリコロールブルー、ウインブライトのピッチ走法の3頭がそれぞれどのタイミングで捲るかによってレースの質がガラっと変わることになりそうです。
展開の鍵を握るのは?
ピッチ走法3頭の中で、もっとも早いタイミングで動くのはおそらくウインブライト。鞍上の松岡騎手はアウトライアーズの末脚の強烈さを十分に分かっているので、少なくとも最後の直線の入口ではある程度のアドバンテージをとっておきたいと考えるはずです。また、Mデムーロ騎手は馬を瞬時にトップスピードに乗せるのが上手なので、ウインに併せて捲る戦法になりそう。
アウトライアーズはスタート次第ですが、田辺騎手ですからサトノアレスを見る形でのレース。フリージア賞では戸崎騎手鞍上のトリコロールブルーを直線で蓋をしていたのは田辺騎手でしたから、サトノアレスを外には簡単に出させないようなレースをすることも念頭において予想を組み立てます。
◎ウインブライト
全姉のウインファビュラスも主戦として乗っている松岡騎手ですから、この血統の長所は手の内に入れているはずで、それが結実したのが前走の積極的な捲り。
対アウトライアーズで言えば、敗れたマイル戦からコーナーが4つの1800m戦に変わるのはウインブライトにとって大きなプラスで、外目からステイゴールド譲りのパワーで先捲りに出れば直線は有力馬の猛追をぎりぎり凌げるのではないか、と。
おそらく、サトノアレス、アウトライアーズで牽制し合う形ですから、巧く出し抜ければ。
プラチナヴォイスの和田騎手が前を積極的に突ついてペースがあまりにも速くなったときは捲り不発もあり得ますが、ここはトライアルですから常識的なペースに落ち着くと読みます。
◯エトルディーニュ
ソウルスターリングと走っても、アウトライアーズと走っても、スワーヴリチャードと走っても0.5秒差以内の負けに留める「超」堅実派です。いつも前で受けてしぶとく脚を伸ばすタイプで、人気以上に走るのが特長。
捲りや差し脚質の馬が多く、それらが外を回るところを内でしぶとく粘るシーンが想像できます。
▲トリコロールブルー
ウインブライトに併せて仕掛けられる馬で、絶好調のMデムーロ騎手の手綱捌きが見物です。
適性としては中山の1800mはずんどばで、今回のメンバーを考えるとコーナーを回るスピードはウインブライトと並んでトップ。直線に入るまでに有力他馬と差を広げておけば、追撃を凌ぐシーンも十分です。
以下は3着候補で
△サトノアレス
△アウトライアーズ
△プラチナヴォイス
サトノアレスの戸崎騎手は強引に進路を取るような騎乗を好みません。先日の金鯱賞でも、プロディガルサンの田辺騎手がルージュバックの外にぴったりと張りついたため、進路がなかなか取れないシーンがありました(ただ、ルージュバックの場合は進路が出来たからと言って伸びたとは言えませんが)。
もちろん、サトノアレスも力はあるので、馬券圏内は十分に考えられますが、展開面から3着までに。
買い目
ウインブライト1着固定の3連単と、トリコロールブルーからの馬単で。
3連単
1着:10
2着:5. 11
3着:5. 11. 9. 8. 7
馬単
11→10. 5
まとめ
ウインブライト、トリコロールブルー、アウトライアーズの捲り3銃士がそれぞれどのタイミングで動くのかが楽しみなスプリングS。
また、戸崎騎手vs田辺騎手の位置取りの争いも注目です。
皆様にとっても素晴らしいレースになりますように。
お読みいただきありがとうございました。