GⅠスプリンターズS(2017年)はハイペースとどんな馬場にも対応できるセイウンコウセイに◎をーー予想

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秋のスプリント路線のチャンピオンを決めるGⅠスプリンターズS(中山芝1200m)は、今春のGⅠ高松宮記念(中京芝1200m)を制したセイウンコウセイと昨年のスプリンターズSの覇者レッドファルクスが「スプリント王者」をかけて争います。 

日本が誇るスプリンター「世界のロードカナロア」がターフを去ってから、JRAの短距離界は「王者」と呼べるような強さをもった馬が不在。「スプリントのチャンピオンホースになれるのでは?」と期待されたビッグアーサーも昨年のスプリンターズSで「まさか」の敗戦を喫した後は順調さを欠いている状況です。

2017年のスプリンターズSはスプリント路線の混戦を断つようなスターホースが誕生するレースになるのでしょうか?

 

GⅠスプリンターズSのポイントは2つ

スプリンターズSを予想する上でポイントとなる点は大きく2つあります。

 

1. 前傾ラップを好むピュアスプリンターが少ない

2. 路盤改修が行われて以降の中山競馬場の馬場傾向

 

1. 前傾ラップを好むピュアスプリンターが不在

ロードカナロアが連覇した2012年と13年のスプリンターズSは、いずれもレースの前半3Fを32秒台で通過+前後半差が1.0秒以上の前傾ラップがマークされています。ところが、新潟の代替開催だった2014年をのぞいたここ2年のスプリンターズSは、前後半の3Fの差が1.0秒以内におさまる平均ペースでの決着でした。

 

ロードカナロアが連覇した2012、13年のスプリンターズS

2013 1:07.2 1 1 ロードカナロア
2 2 ハクサンムーン
32.9 - 34.3 3 15 マヤノリュウジン
2012 1:06.7 1 2 ロードカナロア
2 1 カレンチャン
32.7 - 34.0 3 9 ドリームバレンチノ

(*赤色でマークした前後半の差は2レースともに1.0秒以上=前傾ラップ)

前半のペースが緩むと、追走で脚を使うことのない「1400mベストの馬」が台頭し、ペースが速くなるとパワー型のスプリンターが先行で押し切るレースになります。2015、16年のスプリンターズSで上位1〜3着馬のすべてが1400m以上の距離の重賞勝ち馬だったことは、偶然ではないのです。15年1着のストレイトガールはGⅠヴィクトリアマイル(東京芝1600m)を連覇し、16年1着のレッドファルクスは今春のGⅡ京王杯SC(東京芝1400m)を制し、続くGⅠ安田記念(東京芝1600m)を3着と好走。さらに16年2着のミッキーアイルもマイルCS(京都芝1600m)を制覇しています。

今年はピュアスプリンターが活躍できるようなペースになるのかが1点目のポイントです。「ピュアスプリンター vs 1400mベストのマイラー・スプリンター」については週中に詳しい記事を書いているので、よければそちらもご覧下さい。

GⅠスプリンターズS('17年)は前半3Fのペースに注目!ーー今年はピュアスプリンターが好走できるのか? - ずんどば競馬

GⅠスプリンターズS(2017年)は「ビッグアーサー」タイプと「レッドファルクス」タイプの争いにーーレース展望 - ずんどば競馬

 

2. 路盤改修が行われて以降の中山競馬場の馬場傾向

ここ2年、秋の中山開催の開幕週はエアレーション作業によって、クッションの利いたソフト(柔らかい)な馬場になっているのがデフォルト。そのため、やや時計がかかり差し馬に優勢な馬場コンディションでした。ところが、今年は2013年の秋の中山開催に近い速い時計が出ています。
秋の中山開催の馬場について考察した記事にも書いたように、JRAは今年の馬場をやや硬めに作ってきましたね。詳しい解説については、よければ下の記事をご覧下さい。

秋の中山開催開幕週はエアレーション作業によって2017年も「外差し」になるのか?ーー馬場考察 - ずんどば競馬

そして、気をつけなければいけないのは、「路盤改修以降の馬場」と「開催1ヶ月前にエアレーション作業が実施された馬場」を混同してしまうことです。

 

14年に実施された路盤改修とは?

14年に実施された路盤改修の最大の目的は「馬場の排水性の向上」です。この改修工事は、もともと水はけの悪かった中山競馬場の路盤の下に暗渠排水管を設置したことが大きなポイント。これにより中山競馬場の水はけは劇的に変化し、かなりの雨量があっても芝が「不良」まで悪化することを防いでいます。

今春のGⅠ皐月賞は、前の週に重馬場まで悪化した馬場があっという間に回復し、レースレコードがマークされるほどの高速馬場になったように、排水性の向上によって馬場の傷みが少なく、レースの時計が速くなるのが今の中山競馬場の一つの特徴です。

 

開催1ヶ月前のエアレーション作業

開催1ヶ月前のエアレーション作業は馬場をソフトにするためのものですから、基本的に「時計はかかる」ようになります。排水性の向上を目的とした路盤改修と、このエアレーション作業の実施が同じ時期に行われていたため混同されるのですが、15年と16年の秋の中山開催は時計の速い馬場ではありません。むしろ、馬場硬度を下げて時計がかかるようになっているのです。

 

今秋の中山開催はやや時計の速い馬場

今秋の中山開幕週に行われた京成杯AHの勝ちタイムは1分31秒6がマークされました。ここ2年が1分33秒台のタイムだったことを考えると、路盤改修前の水準に戻っています。そのため、開催1ヶ月前のエアレーション作業が馬場の硬度を下げるのに、大きな効果をもたらしていないと言えるでしょう。少なくとも、ここ2年とは異なる芝になっていることは確かです。

 

1と2のポイントから、前半3Fのペースがレースの鍵に!

上記の1と2のポイントから、今年のスプリンターズSの鍵は前半3Fのペースになります。前半を33.0前後で通過するなら1400mベストの差し馬には苦しい流れになり、パワーで先行するピュアスプリンターに有利。それに対して前半が33.5前後に緩むと、直線で1400mベストの馬たちが「ワァー」と差し・追い込んでくる展開になります。

ここ2年のスプリンターズSは「サンデーサイレンス」の血を引く馬が多く活躍していますが、これは「高速馬場=サンデーサイレンスのしなやかさが活きる馬場」なのではなく、しなやかに差すような1400m型の馬が差してこれるような緩いペースになっているからです。

今年の出走メンバーは前傾ラップ型と後傾ラップ型のタイプがはっきりと分かれているので、どちらの質のレースになるのかを決め打って予想をしていきます。

 

今年はピュアスプリンターが好走するレースにーー予想

スプリンターズSは近2年、1400mベストの馬が大活躍をするような緩いペースのレースになっています。JRAの重賞レースは「このレースはこのような傾向!」と決めてかかるとアッサリと覆されるのがデフォルトなので、今年は「あえて」のハイペースを想定。しかも、「何が何でもハナ!」というタイプが不在の今年のスプリンターズSは、いかにも「ペースが落ち着きそう……」な前フリがされているため、ここはハイペースになる条件が揃いました。

 

レース展開

逃げる可能性があるのは、内の枠から順番にセイウンコウセイ、ワンスインナムーン、ダイアナヘイロー、ネロ、シュウジの5頭。セントウルSで逃げたフィドゥーシアは今回、「前に馬を置いて」というコメントが出ているので、抜群の好スタートを切って押し出されなければ逃げることはないでしょう。

 

前半3F33.0を想定

もっとも問題になるのは、セイウンコウセイとダイアナヘイローの枠の並び。この2頭を比較すると、スタートの速さはダイアナヘイローで、二の脚はほぼ互角です。そのため、外から被されたくはないセイウンコウセイが好ポジションを取るために内からどれほど主張していくのかがポイントとなります。ワンスインナムーンやシュウジが好スタートから前を主張し、セイウンコウセイが引くに引けない展開になったときは、前半3Fが32秒台に突入することも……。

前半33.0 - 後半34.0〜34.5=67.0〜67.5の勝ちタイムを想定。もし33.0前後で前半を通過すれば、ピュアスプリンターかつ逃げ・先行馬+インからの差し馬が有利になります。

 

前半3F33.5になると……

ワンスインナムーンとダイアナヘイローが好スタートから内に切れ込み、外枠のネロとシュウジが好位で折り合うようだと前半のペースが緩むことも……。セイウンコウセイの幸騎手が函館スプリントSで前半32秒台のハイペースに巻き込まれたことを意識し過ぎると、アッサリと控えて逃げ馬にペースをコントロールされる恐れも十分にあるだけに。その流れだとレッドファルクスの馬券圏内が濃厚です。

 

◎セイウンコウセイ 4歳牡馬

父:アドマイヤムーン

母:オブザーヴァント(母父:Capote)

厩舎:上原博之(美浦)

未勝利を勝ち上がるのに7戦を要し、3歳春はNHKマイルCなどの路線へ進むことができなかったセイウンコウセイ。昨夏のさくらんぼSで1000万下を勝ち上がると、その後は走るたびにメキメキと力をつけ今春にGⅠ高松宮記念を制覇しました。まだ伸び代のある4歳馬だけに、今後のスプリント路線を引っ張っていく存在になれるのかに注目です。

この馬の血統やスプリンターズSに向けての展望は週中の記事で詳しく書いたので、よければそちらもご覧下さい。

GⅠスプリンターズS(2017年)はセイウンコウセイの春秋スプリントGⅠ連覇に注目!ーーレース展望 - ずんどば競馬

1400mの渡月橋S(1600万下)を圧勝したのは3歳の秋。4歳になった今年はさらにパワーの増した馬体になっており、前走の函館スプリントSで前傾ラップを楽々と先行できたように、いよいよスプリンターとして完成期に入りつつあります。上位人気馬の中ではハイペースに耐えられ、GⅠ実績があるのはこの馬だけです。「枠の並び」をのぞけば大きな不安点はなく、道悪巧者のイメージが強いものの、パンパンの良馬場もOK。幸騎手が土日と中山で騎乗するのも「馬場」をつかむという点では大きなプラスです。スプリンターズSは、セイウンコウセイのスプリントGⅠ春秋連覇に期待します。

 

その他の馬券候補として

セイウンコウセイの相手候補は難解……。相手は1200m>1400mタイプ、逃げ・先行馬+イン差しのできる馬からピックアップ。まずは1200mがベターなスプリンターを上げてみましょう。

 

1200m>1400mタイプの馬

スノードラゴン

フィドゥーシア

ラインミーティア

ダイアナヘイロー

メラグラーナ

(ビッグアーサー)

ブリザード

ファインニードル

ネロ

シュウジ

(✳︎内枠から順に並べました)

ここから、逃げ・先行馬+イン差しのできる馬を絞ります。スノードラゴンはインを器用に立ち回る差しができるかに「?」がつきますし、1分7秒台の決着だと3着内が苦しい馬……スパッと切りましょう。メラグラーナもこのメンバーで戸崎騎手だと「外差し」しか選択肢がなく、この大好きなパワースプリンターをここで切るのは苦しいのですが、致し方ありません……。

成長途上のメラグラーナはGⅠスプリンターズS(2017年)を勝てるのか?ーーレース展望 - ずんどば競馬

(昨年の高松宮記念の覇者ビッグアーサーは最終追い切りの走るフォームがまだバタバタだったので、パドックを見てから決めたいところですが……)

 

△候補は以下の7頭

スノードラゴンとメラグラーナを切ると残りは8頭。このなかでファインニードルの内田博幸騎手はGⅠの舞台だと不安しかありません。芝の重賞だと不振が続いているので、ここはスパッと切ります。そうすると、残ったのは下記の7頭です。

 

△フィドゥーシア

△ラインミーティア

△ダイアナヘイロー

(△ビッグアーサー)

△ブリザード

△ネロ

△シュウジ

セイウンコウセイ ー ダイアナヘイローだと馬連の配当が低いので、◎からの3連複も考えたいところです。2軸目の相手として取り上げたい2頭は、「ハイペース→ピュアスプリンターが活躍」するレースと決め打って、アイビスサマーダッシュの1・2着馬のラインミーティアとフィドゥーシアをピックします。直線1000mをスイスイと追走できるスプリント力を信頼して。

 

買い目

◎から△への馬連と3連複を。

 

馬連

3 - 4. 5. 7. 10. 12. 14. 15

 

3連複フォーメーション

1軸目:3

2軸目:4. 5

3軸目:4. 5. 7. 10. 12. 14. 15

 

まとめ

2017年のスプリンターズSは前半のペースと馬場がポイントになります。セイウンコウセイが内からスッと先行体勢に入り、前半3F33.0のペースで追走できればスプリント・チャンピオンへの道が大きく拓けます。香港スプリントを勝てるピュアスプリンターの誕生に期待して。

皆さまにとっても素晴らしいレースになりますように。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。