スプリンターズS(2019年)で1・2人気に推されるダノンスマッシュとミスターメロディの2頭を解説!

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スプリント・チャンピオンを決めるスプリンターズS(GⅠ・中山芝1200m)から秋のGⅠレースが開幕。今年はキーンランドCを快勝した4歳馬ダノンスマッシュが人気の一角を占めることになりそうなだけに、スプリント路線の『新星誕生!』となるのかに注目です。

 

1人気を争う4歳馬の2頭

昨年の春秋スプリントGⅠを連覇したファインニードルが引退し、この路線は「またも」や王者が不在()となりました。そのなかで、GⅠ・高松宮記念を制したミスターメロディと、前哨戦の重賞をハイパフォーマンスで勝ち上がったダノンスマッシュの4歳馬2頭が1人気を争うことになるでしょう。

この2頭が今後のスプリント路線を引っ張る存在となれるのかに注目です。香港スプリントを「ぶっこ抜ける」ほどの、そう、ロードカナロア級の「新星」が現れるのでしょうか?

ファインニードル、レッドファルクスなど春秋のスプリントGⅠを連覇する馬もいましたが、ロードカナロアが引退してからのスプリント路線は長い間「混戦」の状態が続いています

 

ダノンスマッシュ 4歳牡馬

父:ロードカナロア

母:スピニングワイルドキャット(母父ハードスパン)

厩舎:安田隆行(栗東)

生産:ケイアイファーム

芝短距離路線の名馬を多く管理した名伯楽・安田隆行調教師の管理馬。2歳時からOP馬として活躍し、朝日杯FS5着、NHKマイルC7着とマイルGⅠでもソコソコの走りを見せました。

昨夏の北海道シリーズから1200m路線へとシフトすると、京阪杯(GⅢ・京都芝1200m)→シルクロードS(GⅢ・京都芝1200m)と重賞を連勝。その2戦後にGⅠ・高松宮記念に挑戦したものの、直線でいつもの伸びを欠いての4着と敗退。

前走のキーンランドCは高松宮記念からの休み明けをモノともしない快勝劇を演じ、GⅠの前哨戦として100点満点の内容でした。

 

血統

母スピニングワイルドキャットは4分の3兄War ChantがBCターフを制したGⅠ馬という良血。DanzigとRobertoのパワー血脈を引くため、しなやかさを伝えるディープインパクトやロードカナロアなどの種牡馬と好相性の繁殖牝馬と言えるでしょう。

ロードカナロア産駒のダノンスマッシュは、朝日杯FSを制したダノンプレミアムと似た配合。この2頭に共通するトモのボリューム感とパワフルな走法は母系に入るDanzig×Roberto譲りで、スプリント〜マイルに向いたものです。

ダノンスマッシュは父ロードカナロアのスピード能力もよく受け継いでおり、プレミアムよりも短距離への志向が強くなりました。パワフルな走法とあって、中山の直線の急坂も苦にしないでしょう。また、それほどストライドを伸ばすタイプではないので、小回りコースもずんどばです!

 

スプリンターズSに向けて

前哨戦のキーンランドCは前後半3F「33.2 - 36.0(2.8の前傾)」のペース(レースのラップ)を中団やや前のポジションから、直線の外目を豪快に伸びての快勝。この馬自身は「33.9 - 35.3」と1.4秒の前傾ラップをモノともせず、外から他馬をねじ伏せるような走りでした。

前走において、前傾ラップになったとしてもビュンと弾ける脚を使えたのは大きな収穫。また、「洋芝+コーナー距離の長い」札幌コースでハイ・パファーマンスを叩き出せたのは、「小回り+急坂」の中山コースに向けて明るい材料と言えるでしょう。

不安点を上げるなら、近年のスプリンターズSはレッドファルクスが2016・17年と連覇を果たしているように、「1400mベストのしなやかスプリンター」が差し切れてしまう傾向にあること……。これは前後半3Fのペースが「後傾〜平均」になり、しなやかに差すタイプにもチャンスが生じることを示しています。

ダノンスマッシュはどちらかと言えば、1200mベストのスプリンターだけに、「しなやかなキレ」を問われるペースになったときに対応できるのかが不安です。

 

ミスターメロディ 4歳牡馬

父:Scat Daddy

母:Trusty Lady(母父Deputy Minister)

厩舎:藤原英昭(栗東)

生産:外国産馬

父Scat Daddy×母父Deputy Minister(母系の奥にIn Realityが入るのも好印象)のミスターメロディは間違いなく「ダートのA級配合」。デビュー戦が東京ダート1300mだったというのも納得です。

3歳春にファルコンS1着→NHKマイルC3着と芝の重賞・GⅠで好成績を上げると、その後は芝路線のローテーションが組まれました。今春には1分7秒3の好タイムで高松宮記念を制覇。「芝・ダート両生類」の競走馬として、今後が大きく期待される1頭です。

 

血統

北米3冠馬Justifyを出した父Scat Daddyは「ヨハネスブルグ×Mr. Prospector×Nijinsky」の配合。名種牡馬であるMr. ProspectorとNorthern Dancerの2頭のクロスが重ね続けられ、ここがScat Daddyのスピードとパワーの源と言えるでしょう。

ミスターメロディの母Trusty Ladyはアウトブリードな配合(4×5以上のクロスをもたない)ため、クロスのうるさい父Scat Daddyにぴったりの繁殖牝馬です。また、Deput MinisterやRelaunchなど母系に入って良さの出る種牡馬が代々重ねられているのもプラスと言えます。

配合は「北米の短距離ダートGⅠを勝てるのでは?」と思わせるもの。そのため、高松宮記念を1分7秒3の好タイムで制したのは驚きです。ミスターメロディの高い芝適正は、しなやかなスピードを伝えるMr. Prospectorの血が多く配されていることによります。このしなやかさこそ、高松宮記念を制した原動力と言えるでしょう。

 

スプリンターズSに向けて

ミスターメロディは「1400mベストのしなやかスプリンター」です(現時点での評価)。それは今年の高松宮記念のレースラップからも伺えます。

高松宮記念の前後半3Fは33.2 - 34.1(レースラップ)と1.1の前傾ラップとなりました。ただ、ミスターメロディ自身は「33.7 - 33.6」のラップで走破しています。後傾ラップをしなやかに差すのがしなやかスプリンターの特徴ですから、ミスターメロディもレッドファルクスやストレイトガールなどと似たタイプでしょう。

ダノンスマッシュのところでも書いたように、近年のスプリンターズSはゴリゴリの前傾ラップになることが少なく、そのため、しなやかスプリンターが活躍しやすいレースと言えます。ミスターメロディは1.5秒以上の前傾ラップになるようだと、苦しくなるかもしれません。

 

スプリント路線はノーザンファームの力が及ばない

ご存知の通り、2018年、そして2019年の上半期のGⅠはノーザンファーム生産馬(またはノーザンファーム育成馬)が独占しました。「GⅠレースはまずノーザンファームかどうかをチェックする!」、それが現在のトレンドと言えるでしょう。

ところが、まだノーザンファームの力が及ばないカテゴリーのレースがあります。それはダートとスプリント路線の2つです。この2つは「まだ」生産牧場を気にすることなく馬券を買うことができるので、非ノーザンファームのダノンスマッシュとミスターメロディにとってはプラスと言えるでしょう。

 

まとめ

ダノンスマッシュとミスターメロディはタイプの異なるスプリンターです。そのため、今年の高松宮記念がそうだったように、この2頭がともに1〜3着内に入る可能性は高くありません。

ダノンスマッシュは前傾ラップ、ミスターメロディは後傾ラップを好む馬ですから、今年のスプリンターズSがどのようなペースになるのかに注目です。今からレースが楽しみですね。

以上、お読み頂きありがとうございました。